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UPDATE:2014.8.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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原点となった作品の思い出を交えつつ、クリエイターが自身と自作を振り返る好評連載。今回は劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ』(2014年1月25日公開予定)を制作中、同作のTVシリーズが初監督の錦織敦史監督にお話をうかがいます。
ガイナックスの作品に衝撃を受けてアニメの世界へ飛びこみ、アニメーターから演出、キャラクターデザイン、監督へと進む中で、錦織さんなりに見つけたアニメづくりとは何か? 『アイマス』をアニメ化するにあたり、悩みつつもキャラクターへの愛を大事にして作品づくりを進めてきたその真摯な姿勢は、なるほどと思わせるものがあります。
「群像劇・集団戦」を魅力的に描く、その面白さのツボを探っていきましょう!
『ふしぎの海のナディア』に受けた大きな衝撃
――まずはアニメに関心を抱かれたきっかけからお願いします。
錦織
僕の育った地域(鳥取県米子市)は少年漫画原作の一部のアニメぐらいしかテレビ放送されていなくて、幼稚園のときからキン肉マンなどの絵を描くのは大好きでしたが、アニメも「漫画が動いているんだ」ぐらいの認識でした。それが意識してアニメを好きになったのは小学5年生くらいのときNHKで放送された『ふしぎの海のナディア』(90)からですね。アニメとしてのオリジナリティ、SFテイスト、ロマンや好きなものへの熱量が子どもながらに衝撃的で。そこから「どういう人たちがつくっているんだろう?」と興味をもったのが始まりでしたね。
世界名作劇場っぽい雰囲気から始まり、最後は思いきりSFになる展開や、いろんなパロディなど、大人が本気になって作ったものが次から次へと出てきて、「なんだこれは!?」とワクワクしながら毎週観てました。『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(87)や『トップをねらえ!』(88)にも同じ感じがしたので、僕にとっての原点はガイナックス作品なんですね。なので、入社前から恥ずかしいぐらいにガイナっ子で(笑)。


――アニメの情報はどこから得られていたのでしょうか?
錦織
『アニメージュ』など雑誌を苦心して買い、「都会ではこんなにアニメをやっているんだ」と感心して各話の解説を読んでは、妄想をものすごく働かせていました。その時期のアニメに対する飢えや、大好きだったという感じはいまだに持っていますし、持ち続けたいと目標にしていますね。純粋に「アニメっていいな」と感じたものを、自分でもつくって提供していきたいなと。
――『ナディア』のスタッフで注目されていたのは?
錦織
貞本義行さんと庵野秀明さんはもちろん、特に本田雄さんの原画や版権イラストに注目しました。『ナディア』から『エヴァ』にかけての本田さんの仕事はものすごく新鮮で、フォルムの取り方や女の子のかわいくてキラキラした感じ、なおかつ力強い描き方は、いまだに僕の指針になっています。迷ったときは本田さんの絵を観て、自分の原点に立ち戻るほどです。
――お勧めのエピソードは?
錦織
やはり本田雄さんの作監回(30,35話)とラスト5本でしょう。特に最終回のエピローグは大好きですね。ナディアの頃は前田真宏さんも入っていますから、当時よくあれだけの若い才能が集まりましたよね。驚愕です。
『エヴァンゲリオン』で心機一転、ガイナックスへ
――アニメへの関心を高められていた時期に目された作品は?
錦織
次はOVAの『ああっ女神さまっ』(93)になります。『ナディア』とは本田雄さんや松原秀典さんというつながりもありますが、「自分もかわいい女の子を描いてみたい」と初めて思った作品で、あれがなかったら今、こうして女の子を描いてないと思います(笑)。模写から入り、他人にみてもらうことも意識して雑誌に投稿したりして…(笑)ただ絵を描く人になりたいという意識はまだ漠然としていて、アニメーターを意識したのは、やはり『新世紀エヴァンゲリオン』(95)になります。高校生になってましたね。
――それも『ナディア』のスタッフを意識してですか?
錦織
もちろんそれもありますが、後半の精神世界的になっていく部分に、大きな衝撃を受けたんです。庵野さんの『むきだし』の姿勢に、アニメってやっぱり面白い、まだまだやれることがあるんだなと改めて思い、「自分もやってみたいな」と本気で考えるようになりました。それまでは自分がアニメーターや漫画家になれるとは思っていなかったんですが。
通っていたのは進学校でしたが、大学受験を失敗した事と、『劇エヴァ』がふんぎりになり、決心してこの業界に来ました。ただし劇場版の磯光雄さんのパート(EVA量産機と弐号機の戦闘)を観て、「アニメーターには、かなり特殊な才能が必要なんだ」と絶望感も味わっていますけど(笑)。あの劇場版は作画的にも内容的にも衝撃で、最後の方の「自分は何を観ているんだろう?」という感覚になりましたね。今でもやっぱり好きな映画です。
――その業界入りは、ガイナックスでしょうか?
錦織
上京して専門学校に入ったとき、ちょうど『FLCL(フリクリ)』(00)の動画募集があって運よく採用されたんです。新人を担当されていた鶴巻和哉さんは、絵の上手下手よりも「アニメ観てそう、好きそう」ということを重要視していたようなので、「コイツ女の子描くの好きそうだな」と思われたのかもしれません。
多分、最初のカットは大塚伸治さんによる冒頭の河原のシーンだったと思います。そして動検(動画検査)の人にメタメタに直されてます(笑)。今思っても動画時代は結構スパルタでしたね。そんな中でもフリクリはものすごく上手い原画マンばかりで、1カットでも多く動画をしたかった。本当に幸せな作品でしたね。ガイナックスは「教える」というシステム自体が基本無かったですね。原画にあがってからも鶴巻さんからはひと言ふた言ぐらいで、放り投げられる感じでした。あとは各々人から盗むなり質問するなりで。周囲も年が近いのはが柴田由香さんや久保田誓くんで、すしおさんがふたつ上くらいと上手い人が多かったので、置いていかれないように必死でしたね。
そんな中で『アベノ橋魔法☆商店街』(02)で初めて平松禎史さんと組ませてもらって、その時学んだレイアウトの役割や、動きのつくり方などが僕のアニメーターとしての基盤になっているのかな。勝手に師匠だと思っています。『天元突破グレンラガン』(07)で平松さんから「絵に説得力が出てきたね」と言ってもらえたときはちょっと嬉しかったです…
――「絵の説得力」というのは、具体的にはどんなところなのでしょうか?
錦織
心技一体みたいなことですかね。絵の技術だけではなくて、カットの要求に柔軟に対応できる表現力といいますか…。表情や目線、構図など…アニメはたくさんの記号で出来ていて、自分が『こう見せたい』と思うものにそれを整理して組み立てられる能力の事なのかと思います。
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