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UPDATE:2014.8.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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原点となった体験の思い出を交えつつ、クリエイターが自身と自作を振り返る連載。今回はシリーズ構成最新作『シドニアの騎士』が4月から放送開始となる脚本家・村井さだゆきさんにお話をうかがいます。
ドラマ、特撮、アニメとジャンルを問わず活躍。サイコサスペンス『パーフェクトブルー』から心あたたまる『夏目友人帳』まで、心の奥深くひそむものを追求することにかけては随一の村井さん。他に類をみない世界観をもつ『シドニアの騎士』では、どんなことに留意しながら映像化の土台となるシリーズ構成を手がけているのでしょうか。新たなデジタル表現と、これまでの手描きアニメの違いとは?
全方位的な挑戦を続ける村井さんのアプローチから、作品のツボを探っていきましょう!
特撮からアニメへと拡がる脚本への関心
――今回は脚本家の視点から、アニメ作品の物語づくりについてうかがいたいと思います。まず、村井さんが脚本に興味を持たれたきっかけとなった作品は?
村井
1960年代の特撮作品「ウルトラシリーズ」からですね。子ども時代には毎週つくっている人が違うということは気づかなかったですが、中学生になってムックを買い、スタッフリストを観て「脚本家によってこんなに作風が変わるんだ」ということを初めて認識しました。たとえば『ウルトラマン』の脚本家の中では、金城哲夫さんと佐々木守さんのお仕事に注目したのが最初です。
――アニメだと?
村井
1980年代前半にアニメブームの中で活躍されていた金春智子さん(『うる星やつら』(81)など)、首藤剛志さん(『戦国魔神ゴーショーグン』(81)など)のおふたりです。もう大学生になっていたので、「自分も脚本家になりたい」という想いもすでにありました。
――村井さんは特撮、アニメ、実写ドラマとジャンルを超えて、幅広く脚本を書かれている印象があります。
村井
もともと僕は映像全般が好きで、「アニメの脚本家」「実写の脚本家」と分けて考えていませんでしたから。80年代はドラマも脂が乗っていた時期で夢中で観ていましたし、市川森一さんや佐々木守さんらウルトラシリーズの脚本家もさまざまなドラマの脚本を書かれていたので、僕も「脚本家なら全部やるのが当たり前」という意識で仕事をしてきました。いまだに「山田太一さんに勝ちたい」と思って生きています。
――他に刺激を受けたクリエイターと言うと?
村井
70年代前半は円谷プロが日本の特撮を支えていたと思いますが、ハリウッドで1977年に『スター・ウォーズ』でジョージ・ルーカス氏が台頭してきたときはすごく意識しましたし、80年代でジェームズ・キャメロン氏が『ターミネーター』(84)をつくったときも「アメリカにも僕らと同じようなヤツがいるんだ」と、親近感と驚きをつよく意識しました。今でもジェームズ・キャメロン氏をライバルだと思ってますから(笑)。
今 敏監督とタッグを組んだ『パーフェクトブルー』
――さて、そんな村井さんが脚本家としてデビューしたきっかけは?
村井
『飛べないオトメの授業中』(93)で第6回フジテレビヤングシナリオ大賞で大賞を受賞し、局のプロデューサーとご縁ができて2時間枠の温泉が出てくるようなサスペンスドラマを書き始めました。そしてパソコン通信の「Nifty-Serve」で脚本家の小中千昭さんと知り合います。その流れでマッドハウスとご縁ができて、今 敏監督の『PERFECT BLUE』(98)の仕事をいただいたのが、大きな転機になりましたね。
――今 敏監督にとっても初の劇場アニメですね。どんな印象でしたか?
村井
もともと今さんが担当されたOVA版『ジョジョの奇妙な冒険』の第12話(1994年の初出時は第5話)はそれ以前に観ていて「演出のうまい人だな」と注目していました。初対面では、絵がとても上手なのはもちろん、頭が良い方だなと。
――その脚本は、監督とどのようにつくっていかれましたか?
村井
原作者の竹内義和さんから「原作にお気遣いなく変えてください」と言われていたこともあり、僕も監督もそのままつくるつもりはないところから始まりました。今さんからは「主人公の女性が自分自身に追いかけられ、その影に悩まされる」というコンセプトをメモでもらい、その方向性をもとに僕がプロットを書き、さらにキャッチボールして転がした感じです。次の『千年女優』(02)も同じですが、「ジョージ・ロイ・ヒル監督の映画『スローターハウス5』(72)みたいにしたいね」と話したりして、意思疎通もできていましたね。それと途中段階の絵コンテを見せてもらうと、脚本の意図が的確に伝わったうえで、演出でさらに豊かに組み替えていく作業がよく分かり、感激しました。完成前は不安に思っている人もいたかもしれませんが……。
――「主観的な意識を中心に、周囲がズレていく」というストーリーは、省略と誇張で物事を描くアニメだと、表現するのが難しいかもしれませんね。
村井
そうなんです。ああした手法は実写でもまだ珍しかった時代なので、「どうして実写でやらないの?」とよく聞かれましたね(笑)。仮に実写だったとしても、脚本は変わらなかったと思います。
映画への愛あふれる『千年女優』
――今 敏監督と続けてタッグを組まれた『千年女優』は映画で映画を語った作品です。
村井
PERFECT BLUE』と同様、まずアウトラインを固めて細部を埋めていくというつくり方でしたが、今さんのメモは「往年の大女優に男が取材に行く。女優の身の上話の現実と映画の虚構が次第に混交していく」というアイデアだけで(笑)。
――日本映画へのリスペクト、オマージュでその出発点を膨らませた感じでしょうか。
村井
脚本打ち合わせでは自分たちの好きな映画のネタを出し合い、「あれも入れよう、これも入れよう」と実に楽しい作業になりました。タイトルの「千年の時間」を感じさせるボリュームを出しつつ、無理なく物語を展開させようと、あれこれ工夫しています。
――村井さんのお気に入りの映画ネタは?
村井
黒澤明監督の『蜘蛛巣城』(57)ですね。糸車は僕からお願いしましたが、お城から出た直後に弓矢がバッと飛んでくる描写は演出で足されたものだと思います。それと怪獣を無理矢理入れたのは僕なので、ちょっと浮いてしまったかもしれません(笑)。「女囚もの」はどちらが言い出したか覚えてなくて、「満映(満洲映画協会)の話にしよう」と言ったのは僕。忍者を入れたのは今さんだったか……。
――かなり入り乱れてますね。映画好き同士で、さぞかし盛り上がったのでは?
村井
「そうそう、アレだよな」という感じですよ(笑)。今さんとの2作品は本当に楽しかったですし、完成した映像はものすごい映像の表現力に圧倒されました。脚本は演出によって活かされたり殺されたりもしますが、今さんの場合はシナリオで長かった部分を巧妙に組み替えて編集されていて、書いた当人でも「どこをカットしたの?」と分からないほどのレベルですから舌をまきました。本当にとても感謝しています。
――今さんのそういった映画的センスは卓越していましたね。
村井
ええ。今さんのおかげで「アニメを使ってここまで表現できるんだ」というレベルが高められた気がします。
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