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UPDATE:2014.9.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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原点となったアニメ体験の思い出を交えつつ、クリエイターが自身と自作を振り返るインタビュー。今回は劇場最新作『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(11月15日公開)が待機中、『鋼の錬金術師』『機動戦士ガンダム00』など数々のヒット作を手がけ、『夏色キセキ』や『アイカツ!』など少女ものにも手腕をみせる、水島精二監督の登場です。
シリアスでハードなテーマと世界観から、愛らしくキュートな乙女の魂まで、全方位的にカバーする水島監督。企画者や放送局、現場スタッフのさまざまな思いを受け止め、ひとつに束ねて熱量を高める方法論は、どんな経験から編み出されたのでしょうか。そして「現実との接点」を重視した視線は? 水島監督ならではのトータルな演出術を浮き彫りにしていきましょう!
専門学校でフィルムづくりの面白さに出逢う
――少年時代からアニメをご覧になっていたのでしょうか?
水島
アニメや特撮が好きな普通の子でした。毎週日曜日には『(科学忍者隊)ガッチャマン』(72)『サザエさん』(69)から続けて『マジンガーZ』(72)を観るみたいな。6つ上の兄の影響で『宇宙戦艦ヤマト』(74)も観ましたが、マニア的にではなく放送している番組を観るという感覚で。
――それがアニメに深入りするようになったきっかけは?
水島
中学生時代にアニメに詳しい友だちから「『(機動戦士)ガンダム』(79)がすごいぞ」と教えられ、あわてて観たわけです。
するとラストで「あれは憎しみの光だ!」と主人公が叫んでて、まったく理解できず(笑)。
――それは第41話ですから、最終回まで残り2話ですよ(笑)。
水島
気になってしかたがなかったので『アニメージュ』のバックナンバーを借りて読んではみたものの、情報が断片的だからモヤモヤしてしまい。ようやく劇場版で納得いきました。ということで、きっかけは『ガンダム』ではないかと。
――後にご自身がガンダムシリーズの監督になるとは。
水島
まるで想像でませんでした(笑)。そして高校にはアニメ好きの友人がいたので、「アニメに関わる仕事がしたいな」と思いたち、ふたりで東京デザイナー学院に入学するんです。
――その当時、印象的だった先生はいますか?
水島
藪下泰司先生(東映動画最初の長編映画『白蛇伝』(58)を演出)の授業を受けてるんですね。ただ面白かったのは実習の方で、8ミリカメラの名機ZC-1000(コマ撮り・ハイスピード撮影が可能)を使ってアニメだけでなく実写の撮影も覚えて、『ぼくのなつやすみ』のゲームディレクターになる綾部和くんと自主映画をつくりましたね。上映会中にフィルムが止まり、燃え始めて大慌てしたのは良い思い出です(笑)。
――次第に映像づくりが楽しくなっていったわけですね。
水島
卒業制作は16ミリのセルアニメですが、グループのメンバーには後に『電人ザボーガー』(11)や『ヌイグルマーZ』(14)でVFXを手掛ける鹿角剛司くんや、AICで活躍する反田誠二くんもいて、集まって絵を描きペイントするのが楽しくて、絵コンテの一部も描かせてもらいました。制作からフィルムの発表会まで、力を合わせていっしょに何かをつくりあげることは、何によらず楽しかったですね。
就職先は撮影会社
――それで撮影会社に就職されたのは、何か理由があったのでしょうか。
水島
実はバイク事故で入院していたため、就職活動ができなかったんです。それで高校の先輩を頼って撮影会社に願書を出し、就職したというわけです。キツい仕事なので新人が辞めてしまうことが多く、異例で面接をしてもらえたようなんですね。ですからなんとなくアニメ業界に入った感じで、「ものすごく熱意があった」とまでじゃなく、改めて考えると申し訳ないですが……。
――いや、縁のものだと思いますよ。実際に働いてみていかがでしたか?
水島
専門学校で機材の扱い方を学んでいたおかげで、先輩からは「飲みこみが早いね」とほめられました。とはいえ大変な仕事なので、先輩からは怒られてばかりなんです。なので「この先輩ならこのフィルターを使うはずだ」と先回りして用意すると、すごく機嫌がよくなっていろいろ話してくれる。「いかに仕事をスムーズに回すか」「周りのスタッフが気持ちよく仕事ができるよう、作業効率を考えてどう準備するか」は、そこでかなり鍛えられましたね。
――アニメ集団作業ですから大事なことですね。それで演出になった理由は?
水島
実は撮影するとき、演出のタイムシートの書き方がズサンで困ることが多かったんです。それで「これなら俺の方がもっとうまく演出できるぞ」と思い上がり(笑)。当然もともと演出に興味はあったわけですが、本当に「やりたい、やれる」と思ったのはそれがきっかけですね。
――実際に演出されていかがでしたか?
水島
技術に詳しいだけに、すぐ「こうすれば撮れる」と提案して、一時期は撮影さんから嫌がられる演出家でした。たとえば『機動戦艦ナデシコ』(96)では「コアマルチ(フィルムの巻芯を重ねてセルを積層して遠近を出す手法)で三段」というカットをつくったんですが、撮影から「今後はTVシリーズで劇場みたいなことやめて」と怒られ(笑)。
――話は前後しますが、初期はどんな作品を演出されましたか。
水島
撮出し(セルと背景を組み合わせ、シートをチェックして撮影に素材を渡す工程)ができるということで、最初は演出助手としてスタジオ・ファンタジアに所属しました。そこからそれから友人の田中良くんの紹介でゲーム会社のセタに移り、田中くんが所属していたフィルムマジックで担当していたゲームムービーの制作、演出を担当するようになります。世に出た物では『スーパーリアル麻雀PIV』が演出デビューだと思います。 そういった仕事と並行して、スタジオ・ファンタジアの西島克彦監督で、『甲竜伝説ヴィルガスト』(92)、『卒業 ~Graduation~』(94)、『女神天国』(95)などの演出もやらせてもらえて。
そのあたりで本格的にTVアニメをやりたくなり、フリーになって自ら営業をかけて演出として初めてちゃんとシリーズに関わったのが『スレイヤーズNEXT』(96)になります。その後は『スレイヤーズTRY』(97)やスペシャルの『ルパン三世 ワルサーP38』(97)など、順調に仕事をいただけるようになっていきます。
初監督作品『ジェネレイターガウル』の挑戦
――そして初の監督デビューが『ジェネレイターガウル』(98)です。そのきっかけは?
水島
新世紀エヴァンゲリオン』(95)では第九話(瞬間、心、重ねて)を演出をしていますが、現場のタツノコプロにいた制作スタッフと仲良くなり、新企画でプロデューサーに推薦してもらえたんです。『ガウル』が『エヴァ』の影響下にあるのは、それも大きな理由なんですね(笑)。「庵野さんが『ウルトラマン』なら俺は『仮面ライダー』だ!」と言いつつ、タツノコ的な等身大ヒーローでチャレンジしました。メーカーさんからも「若手スタッフの実験作にしたい」と言われてまして、当時珍しい全12話だったのもそのためです。
ストーリーはきわめて王道にして、タイムパラドックスのSF設定や『ザンボット3』(77)の人間爆弾的なエピソードなど、個々のアイデアは自分だけではなく、きむらひでふみさんと話し合って進めていきました。
――非常に評価も高く、今でも見応えある作品ですが、振りかえってみていかがですか?
水島
初めて監督できることが、ものすごく嬉しかった作品ですね。当時の僕はとても頭が硬かったので(笑)、いかにストレートに表現できるかで苦心しました。おそらくその分だけ力強くなれて、自分でもものすごくいと思いますね。「俺ってこういうのが好きだったな」と、過去の自分の趣向が手にとるようにわかります。
――等身大中心の肉弾アクションも見応えあります。
水島
キーアニメーターは、現在『魔法科高校の劣等生』(14)でアクション作画監督を担当されている富岡隆司さんですし。
――エンディングを見ていると、中村豊、鈴木藤雄、後藤圭二、伊東伸高、今石洋之、木崎文智、すしお、高村和宏(敬称略)と、凄腕アニメーターの名前が並んでいます。
水島
いっしょに仕事をしてきた仲間がこぞって参加してくれて、当初のもくろみどおり「若手がつくる若いフィルム」という感じになりました。メーカーさんも「力のある若手スタッフって、こんなにいるんですね」と喜んでくれましたし、あそこからまた大きく発展したものがあるということでしょうね。
ロボットアニメ『ダイ・ガード』の工夫
――続いて『地球防衛企業ダイ・ガード』(99)を監督されます。「サラリーマンでロボットアニメ」というアイデアが斬新でした。
水島
『ナデシコ』をXEBECで演出したとき、ものすごく楽しそうに仕事をしてたら佐藤徹プロデューサーが気に入ってくれて決まった作品です。等身大ヒーローの次ならロボットアニメだと(笑)。 最初は「アルカイックスマイル」のように少しだけ微笑み、「他の作品に埋没してしまわないよう、『(無敵ロボ)トライダーG7』(80)のように民間が運用するロボットが面白いというのが出発点で、そこからスタッフとロボットの存在理由など、ディテールを詰めていきました。
――世界観を構築するのはオリジナル作品ならではの醍醐味ですね。
水島
スーパーロボット系の外観は、現在はアトラクションとして機能しているからという発想から生まれましたし、戦い方にもカッコよさはなくて非常に泥臭い。山を切り崩して基地から出てくる登場するなんて、そんな資金はないでしょうとか……。リアルに考えれば考えるほど、どんどんビジュアルはショボくなるんです(笑)。拠点も、当時都市博の中止で土地が余っていた湾岸地区がモデルにしましたし、シナリオを先に書いてから熱海でロケハンしたら、登って戦えないくらいの急勾配だということに気づいたり(笑)。いろんな思い出があります。
――本作もそうですが、どこかに現実との地続き感がありますよね。
水島
現実と入り混じった感じ、あるいは接点のある感じが好きなんでしょうね。
――オススメのエピソードは?
水島
佐藤竜雄さんがコンテの「守りたいもの、なんですか?」(第23話)は、ヘテロダインに侵略される前と後の対比が日常風景によく出ています。災害のメタファーという点がきちんと描けてますし、それまで積んでいた人間関係も実にうまく機能しています。その直前、北海道編(第19話「白の契約」と第20話「青の約束」)も面白くできたエピソードですね。ロボットの運用許可が災害救助にどう該当するのかみたいなリアルさが、ものすごくうまく描けています。ハートウォーミングな話も魅力的ですが、硬派なシリアス話にも惹かれますね。
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