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UPDATE:2015.12.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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『TIGER & BUNNY』での関わり
――『TIGER & BUNNY』と『曇天に笑う』は配信中ですから、何か思い出深いことや、みどころなどありましたら、お願いします。
高橋
TIGER & BUNNY』は一作家としての参加ですから、「みどころ」はやはり自分の書いた回です(笑)。初めて書いたのは三姉妹が敵キャラの第9話で、個人的にもすごく好きですから、今でも見てほしいという気持ちがあります。それと第16話。ルナティックというライバル的キャラクターの過去が明かされる回も印象深いエピソードですね。
構成を工夫した『曇天に笑う』
――『曇天に笑う』は、初のシリーズ構成としてどんな工夫をされましたか?
高橋
原作漫画は全6巻で、1クール12話なのに「6巻の内容を全部やる!」と原口浩監督が決めたので、まずはたして尺に収まるのかと(笑)。原作に忠実につくった部分が大きいので、僕の作家性はそんなにありませんが、必要なエピソードと多少は抜けるエピソードの取捨選択と、1話ごとの盛り上がりポイントは慎重に考えました。原作を読んで「ここまでが1話だ」と付箋を貼り、「2話のオチはここだな」みたいに決めていく。
――それは12等分にはならない、ということですよね。
高橋
ええ。原作がものすごく面白いので、「ここはオチになる」というエピソードがたくさんあるんです。その中でも特に強く印象にのこるラストカットを決め、そこに持っていくための1話単位のエピソードをつくっていく。セリフは原作を引用する場合も多かったので、まさに「シリーズ構成」という仕事に全力を注ぎました。
――その構成を決めるためには、何に重きをおかれましたか?
高橋
これは言葉にするのは難しいことですが、「視聴者は1週間に1回しか見ない」ということです。当然なんですけど。シリーズ構成って「1話の終わりにすぐ2話が続く」と、ついつい地続きで考えがちなんです。特に「これぐらいの分量を6話で進めると面白いぞ」なんて思ってしまう。でも、6話分放送するのには1ヶ月半かかるわけです。僕たちがテキストに起こすより、お客さんの体感時間はものすごく遅い。だから説明を重視しすぎると、ストーリーが停滞してしまうんですね。だから多少説明不足でも、出し惜しみせずに毎回毎回ガンガン攻めていく。もったいぶらず、とにかく進む。
――攻めの姿勢で、毎週の体感を大事にしているわけですね。
高橋
説明が多いと答えを全部見させられ、「ふーん、そういう世界なのか」と、完成品を単に眺めるだけの楽しみ方しかなくなりかねない。説明されない余白がたくさんあると「考えてみる」という行為が発生し、作品の深みにつながる。ちょっとズルい考え方に思えるかもしれませんが、それが構成で非常に大事だと思っています。
――お客さんを信頼して想像をゆだるのって、いいですね。
高橋
「この星は1周何万キロだ」と輪郭を説明したら、サイズが分かった気になりますが、あえて具体的に言わないことで「ものすごく広い世界なのかも」と思わせられる。『ラクエンロジック』も日本っぽい雰囲気にしてはいますが、香港みたいな場所、函館っぽい場所を出したりすることで、「ということは、アメリカにもあるのかな」「ロンドンはどうなってるのかな」と、世界の広がりを想起させられる。そんな工夫をしています。
――お客さんといっしょに楽しんでつくってる感じがあります。では、『曇天に笑う』のみどころもお願いできますか。
高橋
曇天に笑う』は、主人公の曇三兄弟というキャラクターたちの愛と涙の物語です。「泣ける時代劇」というノリがある気がします。もちろん、アクションや男同士の友情もありますが、オンエア時の視聴者の感想を聞くと、いつも「泣けるストーリー」と言われていました。悲劇を背負った男たちが生き抜くドラマ。でも、最終的にはどんなときでも笑おう。その想いがタイトルにこめられた作品ですから、ぜひハンカチをご用意してご覧になると良いのではないでしょうか。
アニメと実写の違い
――『ラクエンロジック』にも泣ける要素はありますか?
高橋
泣けます、泣けます。1話から「笑えて泣けること」を目指しているので。ただ、「泣ける」と言っても、人が死ぬから泣ける、壮絶な何かを喪失したから泣ける、そんなシリアスや鬱で出る涙ではありません。もっともっと暖かい涙にしたいんですね。分かり合うことの涙、ケンカしてしまった人たちが仲直りするときの涙。そんな「ポジティブな涙の物語」になっていると思います。
――共感性を重視されていると。
高橋
ええ。あまり息苦しくなく、「良かったね」というハッピーエンドでポロリと泣ける。そこは大きなみどころになると思います。昨今はつらい世の中なので、ファンタジーなエンターテイメントな作品の中では、せめて「良かったね」と暖かい気持ちになってほしい。そんな明るいエンターテイメント、笑って泣けるファンタジーアニメですね。
――期待しています。最後に聞きたいことがひとつ。高橋さんは実写ドラマも手がけられていますが、物語をつくる上でアニメとの違いを意識されたことはありますか?
高橋
実写は1時間もののドラマが多いんですが、アニメは30分ですし、思ったよりも1話分で描けることが少ないなと。『TIGER & BUNNY』はそうでもなかったんですが、『曇天に笑う』では「これくらい入る」というつもりで書いたのに、絵コンテでは全部4分オーバーで、監督が削るための苦労をされました。そこが最大の違いだなと。ただ、アニメ専門の脚本家の方も大勢いらっしゃるので、あえて僕がアニメに関わるなら、実写のノウハウを活かした言葉などを工夫したいです。量が多く説明中心のセリフよりも、生身の人間が演じても成立するような、ナマっぽいセリフ表現を常に意識していきたいです。
――その辺は、今後も求められていく気がします。
高橋
あと、『TIGER & BUNNY』のときに気づかせてもらったことですが、意外にアニメはロケーションが自由ではないなと。実写だと宇宙のロケは絶対に無理でしょう? フランスに行こうと思っても、予算的な制約がある。だからロケーションを限定してストーリーをつくらないといけないんですけど、アニメならいくらでも描けるだろうと思いこんでいたわけです。それで最初に「遊園地でアクションしましょう」という話になったら「いや、それは勘弁してください」というようなことを言われ(笑)。
――乗り物全部の設定をつくらないといけないですからね(笑)。
高橋
そうなんですよ。意外と描くのは大変なんだ、アニメはアニメなりの制約があるんだと思い知りました(笑)。むしろ実写なら、既存の遊園地でロケすればいいんですけど、オリジナルで未来ですから、「このSF的な世界観では、遊園地ってどんな具合になるんですかね?」みたいなところから議論が始まり、それをデザインして絵に落とし込むので、アニメ独特の大変さがある。もしかしたらアニメ業界の方たちからすれば、当たり前すぎることを言ってるのかもしれませんが、そこは大きく違うと思いました。今回の『ラクエンロジック』のキャラクターデザインも、僕のもっているイメージ、島崎さんのイメージ、プロデューサーのみなさんそれぞれのイメージといろいろある中、設定だけでも何度も何度も調整して、ものすごく時間がかかりました。オリジナルの場合って、やはりデザインが大事なんだなと。
――その分、新たにつくっていける部分も大きいですよね。非常に期待しております。ありがとうございました。


PROFILE
高橋悠也(たかはし ゆうや)
1978年生。東京都出身。脚本家、演出家。QueenB所属。劇団UNIBIRD主宰として数多くの舞台を作・演出。ドラマ『怪物くん』で脚本家デビュー。脚本家としての代表作は、映画『エイトレンジャー』シリーズや、TVドラマ『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『金田一少年の事件簿N』『相棒』など。TVアニメ脚本の初参加は『TIGER & BUNNY』で、その後はシリーズ構成・脚本として『曇天に笑う』『ルパン三世 part.Ⅳ』などを手がける。


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ラクエンロジック
2016年1月9日23:00より
配信開始



TIGER & BUNNY

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