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UPDATE:2016.1.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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多彩なアイデアを盛り込んだオリジナル作『コメット・ルシファー』
――さて一気に飛ばして、バンダイチャンネルで見放題配信が始まる監督の最新作『コメット・ルシファー』(15)についてお聞きしたいです。完全オリジナル作品ですが、どのような着想から始まったのでしょうか。
菊地
企画の構想を練っている段階で入りましたが、シリーズ構成の野村祐一さんからもらったお題は「“少年と少女によるピュアなラブストーリー”を“ロボットアニメ”で」ということでした。でも、主人公とヒロインのふたりだけだとお話が広がらない。そこでいろんなアイデアをみんなで話し合い、肉づけしていきました。
――世界観については?
菊地
世界観も固まっていなかったので、いっしょに考えていきました。「ヒロインは地中から発見される」ということだったので、「だったら炭鉱を舞台にしましょう」みたいに、野村さんのアイデアを、どんどん膨らませていった感じです。
――なるほど。他に菊地さんから出されたアイデアは?
菊地
「ロボットもの」と「冒険活劇」がベースでしたが、じゃあ「ロードムービーの要素も入るよね」それと群像劇的にしたくて、「もっとキャラクターを登場させたい」と。特にモウラを足したことは、ものすごく良かったです。状況説明してくれるキャラは必要だし、何よりボケてくれるキャラがいないとフィルムは楽しくなりませんから。
――楽しいフィルムという方向性は、菊地監督作品に共通していますね。ひとつのポリシーのような。
菊地
はい。主人公とヒロインだけだと、楽しいことも辛いこともあんまり起こらない気がするんです。それで事件を起こしてくれる人がたくさんほしいなと。「映画の『スタンド・バイ・ミー』(87)みたいに何かを探す旅にしよう」と僕が提案したら、「だったら6人ぐらい必要だね」という話になり、野村さんがロマンというキャラクターを考えてくれました。そのロマンが“強くて頼りになる”キャラクターだったので、「じゃあ子分みたいな人も必要だね」とオットを加える。そんな感じでキャラを考えていきました。
――ロードームービーにして、どうでしたか?
菊地
本当はもっといろんな場所に旅をさせたかったんですが、舞台が毎回変わると美術設定が大変になるんです。美術のイメージは僕が場所ごとに40枚くらいずつ描いているんですが、考えていた全ての美術を出すには、最低4クールは欲しかったですね(笑)
――とはいえ、雑多な舞台を移り変わっていくビジュアルは面白かったです。
菊地
最低でも5箇所ぐらいは旅をさせたいと思ってましたが、当然ですが各キャラクターのドラマもしっかりと描かなくてはいけない中で、「旅して着いて何かが起きて、それを解決してまた旅して」を毎話1本でやるのも慌ただしいので、当初は分離していた炭鉱街とオアシスをまとめて一つの街にしたり、その街のすぐ後ろに次の目的地の山がみえるといった具合に。工夫して、どうにかロードムービーとしてまとめた感じです。いろいろと試行錯誤した結果ですね。
――「ボーイ・ミーツ・ガール」と「成長物語」を重ねたあたりはいかがですか?
菊地
フェリアは、星の化身として昔から存在していたが、ずっと石のなかに埋まってたから記憶もないし、ものを知らない。だったら成長物語にすればいい、という発想でした。主人公の成長物語ではなく、主人公や仲間との関わりでヒロインが成長する物語ですね。これも基本的には野村さんのアイデアをもとに、それを拡げています。
フィルム体験の蓄積を活かしたメカアクション
――「ロボットアニメ」としては、どのように特徴づけようと?
菊地
主人公がロボットに乗り込むのは定番すぎるし、ソウゴも「俺がやる!」というタイプではない。野村さんからは「ガーディアン」という設定が出たので、だったらフェリアを守るマスコットキャラを登場させて、戦ってもらおうと(笑)。
――マスコットキャラが巨大ロボに変わるのは意外性がありました。
菊地
僕としてはもっとゴツゴツした無骨で岩のようなデザインを想像していました。巨神ゴーグや大魔神みたいな位置づけで、イメージはゴーレムです。ところがメカニックデザインの柳瀬(敬之)さんがスタイリッシュに仕上げてくれたので、思いのほかロボットらしくなって、戦闘シーンがしまりましたね。あと柳瀬さんはCGモデルからつくってくれるので、助かりましたね。
――そのCGモデルを実際に使っているんですか?
菊地
ええ。プロポーションもしっかりしているので、動かすためのボーンを入れて使っています。パーツの干渉などの微調整はオレンジさんにお願いしましたが、基本は元のデザインのままです。
――デザイナーさんのアウトプットそのままが映像に出ているのは嬉しいです。
菊地
ガス機は直線的なデザインできれいに動くんですが、ガーディアンは尖ったパーツが多く、パーツの突き抜けなど修正作業が大変だったみたいです。
――バイペダルアーマーはどういったコンセプトでデザインされたんですか?
菊地
工事現場で運用される重機ですね。「ユンボの発展形で」と発注したら、見事なデザインがあがってきました。ユンボから多脚戦車になり、その発展形がガス機になっていく。実は全部6本脚なんですね。
――空間を意識したメカアクションも見どころのひとつです。
菊地
メカの殺陣にはかなりこだわりました。オレンジさんの力を存分に引き出せるよう、僕がかなり深く関与しています。毎話ごとにシリーズディレクターの中山(敦史)さんに詳しく指示を伝え、それをオレンジさんに伝えて回してもらう。カットによっては、自分でメカアクションのアタリをラフ原で描いてしまいました。個人的には第7話(「温もりの場所」)のボクシングの回、「これをメカでやるのがいいんじゃん!」というこだわりがあります(笑)。もう少しスウェーをちゃんと見せたかったですが。
――バトルにはどんな工夫をされたのでしょうか。
菊地
とにかくロボットがやりそうにない動きやバトルをやらせたい。たとえば第5話の白兵戦では、岩に隠れつつ銃を持ち上げて弾をバラまくシーンがあります。「それ、ロボットでやる意味あるの?」とツッコまれそうなんですが、やっぱり「ロボットでやるからいいんだよ!」と(笑)。そういうのが大好きなんです。
――銃撃戦から格闘戦まで戦闘シーンはバラエティに富んでいますね。アクション映画を参考にされているのですか?
菊地
参考というより、今まで見てきた映画のイメージが脳に焼きついているんですね。それが自然とフィルムに出ちゃう。学生時代やアニメーター時代の初期は、貧乏だけど映画を見る時間は山ほどあったので、そこで蓄積したものが出ているんです。
――どんな作品がお好きだったんですか?
菊地
何でも観てましたね。戦争ものはもちろん、フランスのヌーヴェルヴァーグも見ましたし、マカロニ・ウェスタンはずっと苦手でしたが、去年ぐらいから楽しく見てるし……。ハリウッドの名作や定番とされるものはマストで制覇していかないと。特に『ランボー』(82)や『デスペラード』(95)や『ターミネーター』(84)といったアクションものは外せませんね。あっ、甘い恋愛ものだけは苦手かな(笑)。
――そういったエッセンスがギュッとフィルムに出ていると。
菊地
無意識に出ますね。もちろん意識的に「あのネタを使おう」という場合もあります。そういうときは設定制作さんに資料探しをお願いします。「『スネーク・フライト』(06)っていうB級映画の照明を参考にしたいから借りてきて」とか「『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』(03)の第3シーズン冒頭に似たようなシチュエーションがあるから」とか。
――おそろしくピンポイントですね(笑)。
菊地
設定制作さんには、いつも苦労をかけてしまい申し訳ないです……。
――キャラクターについてはいかがですか?
菊地
フェリアが大人になるのがちょっと早かったかも(笑)。言葉足らずな感じがとても可愛らしかったので、もうちょっと幼い姿を見ていたかった。最終話から逆算すると仕方がないんですね。ホントは毎話少しずつ成長させたかったんです。「今日は字を書くことができたよ」みたいに、小ネタをはさみつつ。
――全体的にキャラクターがみんな清々しくて良かったです。
菊地
主人公のソウゴが、まず単純な石バカですからね(笑)。ロマンは爽やかな男で、むしろ一番主人公っぽいキャラクター。ソウゴには申し訳ないんですが、何もできない主人公の周りに、頼りがいのあるキャラが集まっている。そういうつくりです。
――全体を振り返っていかがですか?
菊地
ソウゴたちだけでなく、敵であるガス一味の楽しいネタや旅先の様々な場所を見せたり、いろんな要素を付け足して仕上げていきましたので、そもそもの設定はややダークなラインでしたが、楽しい冒険活劇にできたのではないかと思います。
――あらためて本作の見どころをお願いします。
菊地
純粋で明るいキャラばかりなので、肩肘はらずに見てほしいなと。あと、ぜひ「なんでやねん!」とツッコミながら見てほしい(笑)。基本的に僕の作品はツッコミポイントが満載なので、リアクションしながらいっしょに冒険してほしいなと。
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