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UPDATE:2016.1.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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メカと美少女が疾走する『IS <インフィニット・ストラトス>』
――さて、いくつか代表作についてもうかがいたいです。『IS <インフィニット・ストラトス>』(11)は「美少女+メカ」の人気作ですが、参加のきっかけは?
菊地
メディアファクトリーさんからお話をいただいたとき、すぐに「こういうの得意、得意!」とピンときました。シリーズ構成の志茂(文彦)さんにも「菊地さんって、こういうの得意だよね」と言われましたし。キャラ立ちしてる原作ですから、素直にキャラクターを押せばいい、これは絶対に勝てるぞ、と確信しました。原作者の弓弦イズルさんもアニメに積極的に関わってくれて、いっしょに考えながらつくりあげていきました。ただし、3DCGと作画のマッチングについては、すごくハードルが高くなってしまい。
――メカは3DCGで操縦者の顔回りは2D作画ですよね。
菊地
メカのレンダリングを早めに仕上げ、後から顔を作画で乗せる手法です。二重に手間がかかるために『アクエリオン』でも避けてたことですが、カブセ専門のスタッフをひとり用意し、全部の作画が終わったら一気呵成で仕上げてもらうことにしてました。ところが、これがけっこうキツかったんです。戦闘の合間にドラマを入れて間を伸ばすなど、いろんな調整をして、アクションシーンは80~100カットに収めています。
――原作はライトノベルですが、アニメとしてはどのような工夫を?
菊地
原作小説は、もともと1巻TVシリーズ4話分のエピソードとしてきっちり収まっていたので、素直にまとめればいいだろうと。全体のバランスを見て箒のエピソードを足したぐらいですね。設定を後から付け足すのは得意なので、IS学園のバックグラウンドなど、世界観や舞台を詰めていく点では、特に問題はありませんでした。
――放送中、キャラクター人気がすごく爆発した印象です。“ブヒる”というネットスラングを生み出したぐらいで。
菊地
シャルが出た途端ですよね(笑)。「ここまで引っ張れば勝ちだな」と思っていたので、予想どおりで。オリジナルと違って原作ものはどこが当たるか分かるんです。
――『IS <インフィニット・ストラトス>』でオススメの回は?
菊地
もちろんシャル登場の回です。ぜひブヒってください(笑)。
――第1話(「クラスメイトは全員女」)は派手な戦闘シーンからはじまりますが、あれはオリジナルですよね?
菊地
あれは本編の実制作前、PV用として作ったものです。原作を読んで「こういうのが必要だろう」とイメージして、絵コンテを一気に描き上げてオレンジさんに発注しました。その戦闘に本編の素材がある程度出揃った段階で編集でインサートして、PVに仕上げたんです。そのぐらいのスピードでないと間に合わないし、早く依頼した方がオレンジさんも余裕をもって良いものをあげてくれますから。でも最近は似たような作品が増えてきたので、もうあの手は使えません(笑)。
――たしかに「第1話冒頭でいきなりクライマックスバトル」って増えました。
菊地
第1話が特別という点では『マクロスF』の時、本放送に先駆けた年末スペシャルがあったので、戦闘シーンをてんこ盛りにして一本つくることができました。それも音楽シーンとのスケジュールの都合だったんです。本放送では河森さんに「コンサートシーンメインで」と言われて「やっぱりか!」と(笑)。さらに「両方とも入ってるのってBlu-ray用につくったらダメかな?」と言われて「えー、まだやんの!?」と(笑)。
――TV放送版、デカルチャーエディション、ヤックデカルチャー・エディションの3種類あったのは、そういう理由ですか。
菊地
ダビング作業を3回も繰り返しました。演出としては、編集のやり直しが何回もできるのは楽しいんですけどね。
女の子の可愛さが堪能できる『IS <インフィニット・ストラトス>』
――『IS <インフィニット・ストラトス>』に戻りますが、全体的に明るく楽しい雰囲気が、心地よいと思いました。
菊地
設定的にはシリアス方向に振ることもできたんですが、やはり原作の明るい雰囲気を壊したくなかったんです。これはキャラ売りでいこう、「学園もの」として女の子の可愛さ明るさを前面に押し出そうと。キャラ描写としては、箒をいかにフィーチャーするかがポイントでした。ヘタすると無口で無愛想なキャラに見えかねない。ことあるごとにプイっと顔をそむけるカットを入れたり、演出面で工夫しました。「セリフがなくてもキャラは可愛く見せられる!」と(笑)。
――映像作品ならではの工夫ですね。ほかに心がけたことは?
菊地
顔アップばかりだと止まった感じになるので、トメで描かれたとしても、何かしら動きが見えるよう芝居を感じさせる画づくりの気持ちをコンテに込めていました。自分で演出するなら「ここはこういう芝居で」と直接アニメーターさんに説明できてしまうんですが、監督だとそういうわけにもいかないので。
――だとすると、監督として注力しているのはどの部分ですか?
菊地
ライティングです。実写の場合、バックを明るく飛ばしてキャラを逆光で見せられますが、アニメだと背景、作画、色指定、全部で4パターンぐらいの色指定に限られてしまうので、システム上難しい。ライティングをツメられないのは惜しい部分だなと常々思っています。アニメでもハリウッドみたいな画づくりが可能なはずで、いつか撮影監督と詰めるなどして極めてみたいです。
――改めて監督から見た『IS <インフィニット・ストラトス>』の魅力とは?
菊地
ベタな女の子の可愛らしさですね。ゲームのキャラに芝居をつけるような感覚もありました。含みのあるセリフを入れて受けとってもらえないくらいなら、ベタでストレートに表現したほうが伝わりやすい。とは言え、いつかは大人向けのアニメでダブルミーニングなど含み満載な作品もつくってみたいです。
――いわゆる「ハーレムもの」でもありますが、そのあたりは?
菊地
主人公がモテモテなハーレムものは初めて……と思いきや、実は『マクロスF』も似たようなところがあったりしますよね(笑)。
――主人公が美少女に囲まれるという点では、『武装神姫』(12)も同じですね。
菊地
とは言え、『武装神姫』は「ハーレムもの」でも「ラブコメ」でもなく、僕的には「日常もの」だったりします。フィギュアの小さい女の子たちがワキャワキャ遊んでるだけ。ずっとハードな作品が続いていたので、日常ものをやりたい時期でした。ちっこいキャラだとハードな物語はできない。だったら「日常もの」でいいんじゃない? と考えたら、一気に構成が組み上がった感じです。
ツッコミながら見るアニメの楽しさ
――ご自身のキャリアをざっと振り返ってみて、いかがですか?
菊地
もうちょっと硬派な作品をやったほうがいいかもしれないなと(笑)。
――「メカと美少女」で確実にヒットを飛ばし、世間的には“当たる監督”という評価を受けていると思います。
菊地
僕としては、どれだけ“バカフィルム”をつくることができるか、そこに賭けているんです。『マクロスF』も『IS <インフィニット・ストラトス>』もそうですが、ネットの実況向きなんですよね。みんながツッコミながら観られる作品をつくりたいなと。自分でもチェックのときに見て、「ガハハ、こんなのつくったのかよ」とセルフツッコミしたいですし、視聴者の方からも、もっともっとツッコミが欲しい(笑)。
――「ツッコまれたらおしまい」みたいにガードを堅くする方向性とは真逆なのが面白いし、珍しいですね。
菊地
こっちが一生懸命ネタを振ってるのに、スルーされるのがいちばん悲しいんですよ(笑)。
――ちなみに今後手がけられたいジャンルや作品は?
菊地
そうですね……。たった今思いついたんですが、思いきり真面目な作品をつくってみたいなと……。あっ、でもこの発言自体がネタに取られてしまうかもしれない(笑)。
――(笑)。監督のフィルムからユニークな楽しさが出ているのはなぜかと思っていたんですが、必死に振り向かせたいパワーがにじみ出て楽しさの源泉になっているんだなと、そんな気がしてきました。
菊地
僕としては、みなさんにとにかくツッコんでもらいたい。「バカだなー」と言われたい。だって僕がつくるのって、基本ネタアニメなんですから。「こんなネタ考えたよ、見て見て!」と。
――そこが大きく受けている人気の秘密なのかもしれません。どうもありがとうございました。


PROFILE
菊地康仁(きくち・やすひと)
1964年生、青森県出身。アニメーション演出家。エイトビット所属。『トップをねらえ!』(88)で原画デビュー。アニメーター時代を経て、監督としての代表作は『異次元のエルハザード』(98)、『課長王子』(99)、『マクロスF』(08)、『IS <インフィニット・ストラトス>』シリーズ、『武装神姫』(12)など。監督最新作の『コメット・ルシファー』(15)は、完全オリジナルのSF冒険譚として注目を集めた。


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