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UPDATE:2016.3.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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天才とつくった『アクエリオンEVOL』
――『鉄血』と同じ「ロボットもの」でも、かなり作風の違う『アクエリオンEVOL』(11)はいかがでしたか?
岡田
河森(正治)監督の印象が、とにかく強烈で。「天才ってこういう人なんだ」と感じましたね。邪念がなくて純粋、どこまでも突き詰めちゃうタイプです。同時にどこか欠落した部分もあって、そこは『鉄血』の三日月に通じるものがありますね。河森監督のぶっ飛んだ発想をなんとか成立させようとすると、ライターとしては受け手側に回りがちになりますが、むしろ河森さんを驚かせられるようなボールをこちらからも投げていきたい。そんな自分でいたいという気持ちになりました。河森さんとのお仕事はものすごくワクワクして、まるで部活のような気分です。2人で話しているときでも、突然「思いついた!」って叫び出したり、床にしゃがみこんでメモし始めたり。「今のって、スゴかったね!」なんて、2人で盛り上がってみたり(笑)。
――高揚感がある現場みたいですね。
岡田
そうそう! 河森監督はものすごくピュアな方で、パン!と表現できる人なので、こっちもつられて盛り上がるんですよ。アニメだけでなく、演劇やショーなどにもすごくこだわっているし、勉強にもなりました。「アニメはエンタメでないといけない」みたいな言い方が業界の合言葉的にあるのですが、河森さんの場合、わざわざ言わなくても、本人の存在や挙動自体がエンタメなんですよ(笑)。だから素直に信じられる。尊敬していますし、大好きな監督です。ぜひまたいっしょにお仕事をしたいです。
脚本段階で生み出される「リズム」
――他にぜひ言及しておきたい作品はありますか?
岡田
やっぱりオジリナル作品は、企画成立から放映までに何年もかかりますしどれも思い入れがありますが……。原作ものでも、思い入れの強い作品は多いですね。『スケッチブック ~full color's~』(07)もそうです。同年代の監督と組んだのは、長井監督よりも平池監督のほうが先なんですよ。もとは4コママンガで、ふわっと優しい作品なんですが、「萌え」ということでもでもないので、「全13話でどう組もうか」という点に苦労しました。
――実際には、どのように構成されたんですか?
岡田
最近流行の「ストーリーもの」の4コマと違い、一コマずつ独立した話が多いので時系列順にガッと並べてもドラマとして成立しづらいんです。でも、かっちりドラマだてしすぎては原作本来の良さを殺してしまう。あえてコマを入れ替えるときも、リズム感が近いコマを重ねたり頭とお尻で挟んだりして、ゆるやかにグラデーションをつけていくイメージでした。けっこううまくいったかなと……。あ、自画自賛に聞こえたらすみません(笑)。
――いえいえ、どのような意識で構成されているのかうかがえて興味深いです。
岡田
映像化したときの体感は、最終的には絵コンテや演出で加えるところですが、脚本段階でもできるだけ意識していきたいなと思っています。脚本家にとって最初のお客さんって、演出家を含めたスタッフですから、そこで「面白い」と思ってもらわないといけない。ホンは文字情報だけなので、どうしても素材感が強いんです。スタッフの皆を刺激するようなホンを書くにはどうしたらと考えると、ここ数年はなんとなく、先ほども言った「リズム」なのかなと思っています。一つ伏線をおいて、この辺りで回収してという作り方ではなく、ドラマや感情線をメイン以外にもいくつか薄く引いて、強めたり弱めたりでリズムの調整をつけていく。『花咲くいろは』(11)では、そのあたりをものすごく意識しています。最初に提示する情報と追っかけて行く情報、複数のキャラの動きの刻み方などで、文字情報だけでもだいぶ映像に近い見せ方ができるんじゃないかと。でも、まだまだ悩み中なので、自分なりの型を見つけていきたいですね。
「熱量」は視聴者にも伝わる
――岡田さんが子どものころ観た、原体験として印象に残っている作品についても、うかがいたいです。
岡田
出崎統監督の作品に、大きく影響を受けています。特に『ガンバの冒険』(75)は幼いころにも観ていたし、物心がついてからも大好きです。出崎統監督作品は「スゴいものを観ちゃった感」があるんです。特に『ガンバ』は明るいところだけでなく、恐ろしい部分含めて強烈に惹かれました。『宝島』(78)も大好きですし、やはり『劇場版 エースをねらえ!』(79)ですね。とくに冒頭の「雨の日は、ゴエモンけとばす!」というナレーションは、脚本家としてものすごく影響を受けてます。映画全体のリズムがあそこで生まれるんです。ツカミにあれを持ってくるのって、出崎監督ならではの感覚ですよ。単純に大勢のスタッフが集まっただけではできない、何かがある監督。やはり特別な人なんだと思います。出崎さんとは、ぜひ一度お仕事してみたかったですね。
――他には、どんな作品がありますか?
岡田
やはり女子ですから、「ぴえろ魔法少女シリーズ」はど真ん中でした。『魔法の天使クリィミーマミ』(83)はステッキのオモチャを買ってもらい、自分の部屋に隠れて変身ごっごをやっていたというベタな想い出もあり(笑)。『魔法のプリンセス ミンキーモモ』(82)も大好きで、シリーズ構成の首藤(剛志)さんは、憧れのライターでもあります。
――共通する傾向は、「人間がしっかり描けている」ということでしょうか。
岡田
うわ、めちゃくちゃ嬉しいです。思い返してみると、子ども心に印象に残っていた話って、どれも首藤さんの回なんですよね。
――首藤さんは、子ども向けだからといって容赦がないところもいいですよね。
岡田
私も、そうありたいなと思っています。むしろ、大人げないぐらいに行きたい(笑)。もちろんやり過ぎると作品のマイナスになってしまうこともあるので全てにおいてそれが正しいとは思いませんが、それでも作品や自分に真正面から向き合っていきたいなと。そうでないと、いっしょに仕事をしている人やお客さんにも失礼だし、後悔することだけは避けたいので。
――スタッフの温度感って、案外視聴者にも伝わってしまいますしね。
岡田
観てる人に熱量は必ず伝わる。アニメは共同作業ですから、誰かが本気でやっていない仕事を本気でやるのは難しい。だから多少衝突してでも、健全にぶつかり合ってる現場の作品には力がある。すさまじい熱量でぶっ飛ばせるような作品になるよう、現場に貢献できる脚本、絵の魅力を活かせる脚本を書きたいなと思っています。
最新作での新たなる出逢いと挑戦
――最後に2016年4月放送開始の最新作『キズナイーバー』(16)と『迷家-マヨイガ-』(16)についても、注目ポイントをお聞きしたいです。
岡田
『キズナイーバー』は、読んで字のごとく「絆」と「ナイーブ」を合体させるところからスタートした企画です。TRIGGER制作なので「ガンガンにアクションする」と思われがちですが、実は友情ありラブありの「青春もの」です。小林(寛)監督が「アクションに偏らせたくない」と、キャラクターの関係性メインの話になりました。てらいもなく思春期に取り組んでいますが、『あの花』や『ここさけ』とは、また違った趣なんです。久々に全話脚本にチャレンジしたので、ぜひ観ていただきたいです。
――『迷家-マヨイガ-』は、水島(努)監督と初めてタッグを組まれています。
岡田
ものすごく冒険した作品になっています。水島(努)監督の作品って、あまりにも情報量が多いので、「これってシナリオどうなってるのかな?」と、ずっと不思議でした。映像からシナリオが逆算できない。仕事をごいっしょしてその謎が解けましたが、「シナリオ枚数100枚(200文字ペラ換算)」なんですね。普通、エンディングまで食う回でも75枚くらいですから、100枚ってありえないんです。でも、水島監督はそれを自在に操って、最終的にご自身の色のフィルムにしてしまう。水島さんの手のひらで踊らされた感じです(笑)。
――また新しい出会いに恵まれましたね。
岡田
ええ。「なんだコレ!?」という感じがする作品となっていますので、ぜひご期待ください。
――期待しています。本日はありがとうございました。


PROFILE
岡田麿里(おかだ・まり)
埼玉県出身。Vシネマ、ゲーム、ラジオドラマなどのシナリオに携わり、1998年放送のTVシリーズ『DTエイトロン』でアニメデビュー。『true tears』(08)、『とらドラ!』(08)、『花咲くいろは』(11)、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(11)、『凪のあすから』(13)など、数多くのアニメ作品にシリーズ構成、脚本家として参加し、注目を集める。2015年公開の『心が叫びたがってるんだ。』では初の完全オリジナル劇場映画の脚本を手がけた。2015年10月より放送中の『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』でシリーズ構成を担当。2016年4月新番組では、『キズナイーバー』でシリーズ構成と全話脚本、『迷家-マヨイガ-』でシリーズ構成を手がけている。


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