クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2016.5.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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スタイリッシュな演出にあこがれた原体験
――この連載ではクリエイターの子どものころのアニメ体験についても、うかがっています。
安田
小学生のころは、『戦闘メカ ザブングル』(82)、『聖戦士ダンバイン』(83)、『重戦機エルガイム』(84)など富野由悠季監督のロボットアニメを毎年毎年やっていた時期です。まさにガンプラブーム世代ですから、土曜日に学校が半ドンで終わったら、プラモ屋さんに駆けていって並ぶ。順番が遅いとボールやドダイしか買えなかったりして(笑)。ただ、その時点では「アニメの仕事がしたい」という気持ちはなかったです。
――それはちょうど『超時空要塞マクロス』(82)のTV放映時期ですよね。
安田
マクロス』も観てはいたんですが、日曜のお昼の放送ですよね。ボーイスカウトに行けないときだけ観るみたいな感じで、後からフィルムコミックで追っかけてみると「各話ごとに絵がだいぶ違うなー」なんて、そこで初めて意識した感じです(笑)。
――特に『マクロス』は作画の差が激しかったですよね(笑)。
安田
それで劇場版(1984年の『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』)を友だちと観に行くと、今度は良い意味でTVシリーズとのクオリティの大きな差に愕然したのが、思い出深いところです。あそこまで密度が濃くなってるとは思わなかったですし、劇中で英語や外国語が流れたりするので、「何が起こってるんだろう?」みたいな不思議な感じがしました。小学校5年生か6年生ぐらいだったと思います。
――背伸びしたい時期には、ちょうど良かったのかもしれませんね。まさかそれを監督された河森さんとお仕事をすることになるとは……。
安田
ええ、まさかです。サテライトに来てだいぶ経ちますけど、今回ガッツリと組むことになりまして、いつも驚かされています(笑)。
――河森さんのお名前は意識されていましたか?。
安田
そのころは監督さんや演出さんよりも絵の方で、特にメカデザイナーさんに惹かれる部分が多かったですね。「作画監督によって絵柄が変わる」と、スタッフをはっきり意識したのは『超獣機神ダンクーガ』(85)でした。上條(修)さんの話数が非常に濃くて好きになり、「この人の回なら観てみようかな」と。
――ロボットアニメの他には?
安田
うる星やつら』(81)のような方向にはあまり引っかからず、原体験としては『ガンバの冒険』(75)が強烈に刷り込まれているんだと、後々になって分かってきました。出崎統監督作品は、アニメ業界に行くきっかけのひとつになってますね。それで友だちとビデオで『ルパン三世 カリオストロの城』(79)をワイワイ騒ぎながら観ていたときに、「エンターテイメントとしてのアニメって面白いな」と思ったことがあるんです。当時の日本映画は作家性や感情表現の深いところを追求していて、あまり派手ではなかった。でも『ガンバの冒険』も含めて、アニメはセリフも非常に分かりやすいし、音楽の使い方もドラマチックだったりで、エンターテイメントはアニメの方がいいなと、そう思い始めたんです。
――ご自身で絵は描かれていましたか?
安田
業界には制作進行として入るんですが、アニメーターにはいろんな方の絵に合わせる大変さがありますよね。それよりも音楽など含め、トータルで演出的な仕事をしてみたいなと、そんな気持ちが最初からあったように思います。好きな作品も出崎統監督なら『あしたのジョー2』(80)、大友克洋さんの『AKIRA』(88)、川尻善昭監督のOVA『MIDNIGHT EYE ゴクウ』(89)や『CYBER CITY OEDO 808』(90)などスタイリッシュな演出のものなんです。これらは映像、物語、キャラクターとすべてが魅力的ですから、当初めざしていた実写から方向転換するきっかけになったと思います。
――業界にはいる前にアニメの勉強はされていましたか?
安田
勉強というほどではないですが、高校生のころに『風の谷のナウシカ』(84)や『AKIRA』の絵コンテ集を読んでいたので、カメラワークなどはそれで自然と学んでいきました。専門学校にも入りましたが、ほとんど授業に出なくて(笑)。後は本当に現場に入ってから覚えました。
制作進行でアニメ業界に入る
――最初の現場はどこだったのでしょうか?
安田
最初はスタジオ・ファンタジアです。水島精二さんが演出された話数に制作進行としてついたのが初になります。西島克彦さんが監督の『女神天国』(95)や『卒業 Graduation』(95)から『AIKa』(97)の1本目までいました。
――スタジオライブ系ですから、かなり独特な雰囲気だったのでは。
安田
かなりクセが強くて元気な方々でしたね。山内(則康)さんの机のまわりには女性の参考写真がたくさんあったりして、「すごい世界だなぁ……」なんて思ったり(笑)。自分が観ていたのとは、かなり違う世界があるなと。雰囲気ふくめて勉強させてもらいつつ、実はそこで1回業界を辞めているんです。
――やはり大変だったからでしょうか?
安田
そうですね。ただ、まだやりきれない想いも残っていて戻ってきたんですが、そのきっかけも水島さんでした。フラフラしているとき試しに絵コンテを1本描いてみて、その時はシャフトに籍を置いていた水島さんに見てもらいました。そうしたら久保田(光俊)さん(現:代表取締役社長)にも声をかけてもらって、先々演出にさせてもらえる前提で制作としてシャフトに入ったんです。
――制作から演出というルートは多いですね。何か理由はあるのでしょうか?
安田
ひと通り「ものづくりの流れ」を経験できることが大きいですね。今はかなり細分化しているので、違っているかもしれませんが。「撮出し」(セルと背景を組んでフレームを決めてタイムシートをチェック後、撮影に出す作業)があったので、演出さんがどんな仕事をしているのか手伝いながら、じっくり観察できました。手袋ハメて密室に閉じこもり、カット袋の山を前にして、BG(背景)にタップ位置決めて、合わないとBGチョキチョキ切ったりする(笑)。BGの引きスピードをどうしようか、撮影フィルタをどう使おうか、あの手この手で「画づくり」を考える。そこでいろんな勉強ができました。
――あれは単なる物体がアニメになる瞬間があって、面白いんですよね。
安田
手づくり感があるんです。ラッシュが現像所からあがったら映写機にかけ、暗い中みんなでチェックしました。今はコマ送りでチェックしますが、昔はおおらかなので、ちょっとした色パカ(塗りミス)ぐらいは「味」として通すんです(笑)。リテイクは再撮影で多くできないですから、ある種の勢いも出てきて、ちょっと懐かしいですね。現像時間もきっちり決まっていて、完全に終わらせないといけない。完成したらすぐ初号試写だし、チャンスを大切にして一発勝負で決める緊張感で何かとメリハリがあって、やりきった感がありました。もっとも作品数自体が少なかったですしね。
――初の演出作品は何になりますか?
安田
コンテ・演出を担当したのは渡部高志監督の『宇宙海賊ミトの大冒険』(99)です。『ガンバの冒険』みたいに非常に生き生きとした元気なキャラクターがたくさん出てくるので、非常に楽しい仕事でした。同じ渡部高志監督の『ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom』(00)では助監督として呼んでいただき、そこでいろんな演出家の方の技術を見させてもらいました。
――助監督という立場は、各話演出とどう違っていたのでしょうか?
安田
やはり全体を見る点ですね。監督に代わってコンテチェックの手伝いをしますし、細かい撮影打ち合わせや美術さんへの指示を演出さんと合同で進めたりします。シリーズ全体を通して見る経験は初めてでした。渡部さんもパワフルで大胆というか、個性的な監督さんです。まだセルの時代で、ミステリアスでホラーチックな作風ですから、撮影にはいろんなフィルタをガンガンかませてました。オンエアでは真っ暗で見えないこともありましたが、「それでいいんだ!」なんて言われて(笑)。最終回ではフィルタが全部晴れるので、全体を通してのコントロールだったんでしょう。何かと刺激的な現場でした。
CGへの興味で参加した『ノエイン もうひとりの君へ』
――赤根和樹監督の『ノエイン もうひとりの君へ』(05)でも助監督をやられています。この辺からサテライトの仕事になるのでしょうか?
安田
シャフトで『ヒートガイジェイ』(02)をグロス受けしたことがあり、そこで初めて赤根監督と組ませていただきました。ちょうどフリーの演出でやりたくなった時期に声をかけていただき、サテライトさんに移籍して今に至ります。すでに『マクロスゼロ』(02)をやられていてCGに非常に興味があったことも、大きな理由ですね。
――CGへの興味は、どういった部分ですか?
安田
手描きは描き手さんによる味があっていいんですが、CGはひとつモデルをつくれば崩れることがない。これからは、いろんなことができるのではないかと……。つまり夢を見ていたわけです(笑)。いざ始めてみると、CGはCGで非常に大変なものでして、決して魔法の箱ではないと。これは今でも変わっていませんね。
――CGの不自由さは、どういう部分に感じますか?
安田
やはり正確がゆえにウソがつけないところです。『マクロスゼロ』の当時でも、バルキリーのアクションは、板野(一郎)さんが1コマ単位でモデルを大きくしたり膨らませたりして、アニメ的なハッタリをつけていたと聞いています。そうした誇張を加えないと、正確すぎておとなしく見えるんです。ミサイルが飛ぶカットではCGアニメーターが手で描いていることも多く、意外と手作業の部分があるんですね。煙や水、炎などエフェクト関係はCGの得意とするところですが、キャラクターの輪郭に沿った動きになったとたん、一気にハードルが上がってしまう。演出次第と思ってる人も多いんですが、必ずしもそうではないんです。結局、「CGは何カット以内に収めて」とコスト上の制限が出てきてしまいますし、今まさに『マクロスΔ』もそれで苦心しているところです(笑)。
――『ノエイン』では、CGとのハイブリッド的なところはどうされましたか?
安田
赤根さんは非常にアイデア豊かな方ですし、CGとアニメーション作画を組み合わせること自体、まだそれほど例がなくてイケイケな時代でもあったので、家をモデルでつくって回転させるなど、本当にいろんなことを試しました。メカ以外のCGの使い方では、刺激的な現場になりましたね。
――作画は作画ですごいメンバーがそろっていました。
安田
岸田(隆宏)さん、大久保(宏)さん、りょーちもさんたち若手のスタッフに加え、ベテランの松本(憲生)さんも参加されてて、絵柄も毎回違う(笑)。昔ながらの作画の個性を許容する現場でした。各話演出さんには「CGはこういうことはできるが、これはできない」と説明して交通整理的なことをしていたので、スケジュール上のボーダーラインをにらみながら、どこに限界があるのか、どこまでチャレンジできるか、試す日々でした。泊まりこみもしましたし、よくやったな、という思い出ですね。ジュブナイル作品、成長ものとしても、非常に面白い作品だと感じますし。
――バンダイチャンネルでも多くの方がお気に入りに登録していて、長く愛される作品になりました。
安田
クリエイターさんにもわりと評判が良く。変に小さくまとめようとしなかったのが、刺激的だったと思います。また違った立場でああいった作品に関われたら、面白いでしょうね。『ノエイン』からはサテライトさんに席を置かせてもらい、以後は『戦姫絶唱シンフォギア』や『アクエリオンEVOL』などサテライト作品が多いです。
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