クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2016.8.26

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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無国籍ファンタジーの可能性を見てほしい
――まずは大きな話題となっている最新作『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』からお話をうかがいたいと思います。台湾に行かれたとき、運命的な出逢いがあったそうで。
虚淵
2年前の2月に台湾でイベントに呼ばれ、観光をしていたときに、何の催し物かもよく分からないまま「霹靂布袋劇(プータイシ)」の博覧会に入りました。これが歴史から仕組みまですべて分かる大規模なもので、その魅力に度肝をぬかれまして、「日本で紹介できないか」と思ったのが発端ですね。台湾では非常にポピュラーですが、そのままでは日本で広く見られるものにしづらいということもあり、日本向けの新作をつくった方が良いかと思って今回の企画が立ち上がったわけです。そしてこちらから霹靂(ヘキレキ)社さんに企画を持っていこうとしたのと同じタイミングで先方からも自分にお声がけがあって、そこも運命的でした。
――それはすごいご縁ですね。日本向けオリジナルでは、どんな工夫をされましたか?
虚淵
「どうすれば布袋劇を日本で分かりやすく親しみやすく、見やすい形にできるか」と、それだけを考えていました。名前とルックスを変えれば西欧風の「剣と魔法のファンタジー」にも見えるようにと。登場人物の言動や価値観は無法者中心、武侠物に近い仕立てにしていますが、チャンバラものとは違う剣のアクションものという意識で、「国境を越えて楽しまれる無国籍ファンタジーものにしたい」という想いがあります。かつて日本の時代劇も海外へ紹介されたことがありましたが、中でも『七人の侍』は別格ですよね。「キャラクターを七人集めて何か苦難に当たっていく」という物語は、どこの国にも通じるものだと。既存の霹靂布袋劇の素還真(ソカンシン)という主人公は、ものすごいスーパーヒーローなので、正義と仁義の人を新たに描いても見劣りがする。ならば差別化を図ろうと。「ピカレスク的な七人の侍」を出発点にして13話の構成を組み始めました。結果的には全然違う話になりましたが。
――たしかに初期エピソードで一人ずつキャラが増えるプロセスは面白いですよね。
虚淵
仲間を集めてパーティー編成するのって、日本のファンタジーものでも王道の展開ですしね。
――キャラクターとしてのみどころは?
虚淵
お互いの関係性も重視していますが、注目は武器です。「弓を使う人」「槍を使う人」ぐらいのメモから始まり、種類をかぶらないようにキャラをつくりました。人形の殺陣をたっぷり見せることで、布袋劇の可能性に注目してほしいと考えたんです。そこが何よりの動機ですから。
――キャラクターの開発は、霹靂(ヘキレキ)社さんとも打ち合わたのでしょうか。
虚淵
最終的な固有名詞は、すべて先方にお任せしました。僕からはキャラクターのイメージとして、英単語の名前を仮につけてます。それとニュアンスの近い台湾風ネーミングの候補を挙げてもらい、日本のPC環境でも変換できるぐらいの漢字で選んでいます。たとえば「カーネイジ(大虐殺)」としたキャラに「殺無生(セツムショウ)」という漢字の名前が来て、「ああ、いいですね」という風に決めてます。
――いい感じのキャッチボールですね。キャラクターデザインや衣装は?
虚淵
全部日本でデザインさせてもらいました。そこも大きなチャレンジで、ニトロプラスで担当することにより、今までの作品にはないテイストになると思ったんです。霹靂布袋劇は風の演出を多用するので、衣装には、はためくパーツをいっぱいつけてくれと。中華風にとらわれず自由な発想で描いたキャラクターデザインイラストをイメージイラストだと思っていただき、布袋戯の構造上の無理をうまく調整した造型にアレンジをお願いして完成したのが今のあのデザインです。服のテクスチャも盛ってもらいました。たとえば蔑天骸(ベツテンガイ)の服についているのは宝石かと思いきやドクロの飾りものだったりして、イラストよりも情報量を詰め込んだ人形にしていただきました。立体物としてかなりグレードが上がっていると思います。
――そうした積みかさねで、虚淵さんの感じた魅力に近づいていったと思うのですが、そのひとつが衣装ということでしょうか?
虚淵
質感のあるものを豪勢に動かせるのが、アニメにはない特撮のメリットですよね。布袋劇のアナログによる操演マジックは、CGでも絶対にできない。映像がデジタルに傾いていく時流の中で、台湾では今でも現役コンテンツとして通用している。台湾国内だけではもったいないと思いまして、なるべく本質をリスペクトしつつ、海外にも通用するローカライズができないかなと。日本の「スーパー戦隊シリーズ」をアメリカで展開した『パワーレンジャー』に近い発想ですね。
袋に過ぎない人形が演技するマジック
――「マジック」というキーワードですが、人形だからこそ生まれるものでしょうか。
虚淵
構造がかなり特殊な人形なんです。頭と肘から先しかなく、肩さえない。単なる袋にすぎないものを人体であるかのように見せられるのは、すべて人形師さんのテクニックです。だから「袋の劇」と呼ばれているんですね。操作方法も右手一本で頭と身体を支えて体格があるように見せて、薬指だけで右手を操作し、空いた左手で左腕の演技をつけている。全員が左利きになるのは、それが理由です。制約が多いのに二刀流を機敏に動かせるのって、もう神業のレベルですよ。縛りがいろいろある中で、奇術のようにいろんな挑戦をする。そういう芸能なんです。
――なるほど。第0話のメイキング映像で虚淵さんが「不可能性」というキーワードを使われていた部分は、そこですね。
虚淵
そこがアナログの良さなんですよね。デジタルはアイデアとテクニックを発明するところまでがクリエイティブな勝負で、方法論が確立されれば広く再現できるようになる。一方、職人さんにしかできない芸をもっと見たいという欲求もあるわけです。モブキャラを動かすだけで10年、フロントに立つキャラクターは15年修行をしないと演じられない。それだけやって、そこでようやく才能の有無が分かるのが霹靂布袋劇です。やり方が分かっても、修練をつんだマスタークラスの人しか実践できないという希少性。その奇跡に対する驚きが「不可能性」なんですね。生半可では再現不可能なものがいま目の前で起きているという感動は、このデジタル時代に薄れいくものでしょう。それが後世に残っていかないのは、損失であろうと。この布袋劇が広まって欲しいな思う原点も、そこにあります。
――となると演者でキャラを読みこみ、演技を膨らませる感じになるわけですか?
虚淵
脚本にはなかった情念が膨らみ、動作や仕草にかなり盛り込まれていると感じます。そこが大きなみどころですね。殤不患(ショウフカン)が憎まれ口たたきながらも、ずっと丹翡(タンヒ)の様子をうかがって心配する様子から、人形師さんの解釈と動かし方で細やかな感情が伝わってきます。バトルシーンも、実は脚本にはほとんど書いていないんですよ。用語集として技の解説を依頼されましたが、上がってきた画やエフェクトを見て「たぶんこんな技」と妄想を書いているくらいですから(笑)。背景も目の届くところは舞台でセットを組み、アナログの煙も多用していますし、セットに火を付ける場合も多いです。そうやって撮った驚きのある実写映像をCGエフェクトでエスカレートさせ、皆さんにご覧いただいている完成映像に至っています。
――バトルシーンで回ったりするのにも驚きましたが。
虚淵
あれは人形をグルグルと振り回しているんですよ(笑)。肉焼き機みたいな仕掛けを使ったり、釣り竿にぶら下げて振り回したり、テグスを身体に巻きつけてほどくときの反動で回るとか、いろんな工夫で動きを作っています。
――だとすると、ライブな舞台でも可能でしょうか。
虚淵
もともと寺の境内などで見せていた舞台の見世物が出発点ですから。TV布袋劇として展開していく中で、激しいカメラワークやSFXが加わり、映像がエスカレートしたわけです。
――そのTVシリーズは、かなりの本数があるということでしたが。
虚淵
30年間続いているコンテンツですから、数千時間ぶんと圧倒的な数があります。むしろ長い歴史の中でキャラクターの積み重ねが大きくなったため、そのまま日本へは持って来れなかったくらいです。だいぶ前に『聖石傳説 LEGEND OF THE SACRED STONE』(02)という布袋劇の作品が紹介されているんですが、そのとき大ブレイクしなかったのは、素還真(ソカンシン)という英雄が何者なのか、説明が難しかったことが一因だと思ったんです。であれば「布袋劇ってこういうもの」と前提知識が得られる入り口として、日本向けに短いシリーズが必要ではないかと。
声優、主題歌、音楽が加わることで新たな境地を
――日本のベテラン声優さんが演じている点は、いかがでしょうか。
虚淵
そこもローカライズとしての大きな挑戦です。本来の布袋劇は口白師(コウハクシ)という語り部が一人ですべての役を演じ分ける講談スタイルで、その語り口の美しさで劇を展開するのが根幹をなす部分なんです。人形師さんは、その語り口調とリズムに合わせて人形を動かす。でも台湾語が分からないと、その美しさは理解できないわけです。その語り口調の美しさは今回の作品では念白(ネンパク)のみにとどめ、代わりに日本の声優さんの吹き替え術で補おうと。声優さんの演技もまた匠の技ですから。日本のベテラン声優さんが布袋劇の吹き替えをすることは台湾側にとってもなかなか魅力的で、新しい要素として見てもらえていますね。
――口が動かないなどで、声優さんに戸惑いはありませんでしたか?
虚淵
キャラの動きが台湾語の歌い上げるリズムに合わせてあるので、見得の切り方やポージングの勢いは日本語のリズムとズレてきます。なので日本語はあくまで脳内言語だと思っていただき、キャラクターの動きに合わせてほしい、感情は肉体に寄せてください、そんなお願いをしました。大変な要求だったと思いますが、さすがに皆さんベテランですから、少し試行錯誤をしただけで見事になじんでいただけました。
――未見の方に対して、この作品のみどころを紹介するとすればどこになるでしょう?
虚淵
やはり第1話を観てほしいです。特に冒頭のアクションですね。日本人が初めて見る布袋劇の立ち回りになるということで、現地のスタジオがいちばん力を入れてくれた壮絶なアクションです。布袋劇としてのみどころが贅沢につまった30分になってると思うので、まずは第1話で新しい映像ジャンルをたっぷり味わってもらいたいです。気に入ってもらえれば13話まで続けてご覧いただければと。
――美形ですしキャラも立ってて、楽しいですよね。
虚淵
霹靂布袋劇の人形は台湾風の美観と伝統の作りのものでしたが、2010年あたりから次第に無国籍風になっているんです。近年の人形は日本人から見ても美形として通じるものばかりですし、今回の作品でも「アニメ美少女」的なキャラを一人いれています。未来へのチャレンジを常に怠らない方たちなので、これからもっともっと面白くなると思います。
――脚本として気をつけたことはありますか?
虚淵
やはり『七人の侍』の前半に相当する部分ですね。集まってくる過程をていねいに描こうと思いました。集まった後はピカレスクとしての本筋に入るので、それぞれどんな思惑をもって誰がどう動くか、6話ぐらいですでに主人公の命を狙うキャラも何人か出ていますし、その緊張感が後半のお楽しみになると思います。映像の情報量も大きいので、何度か見返してもらえると新発見もあると思います。配信だと時間に縛られず、好きなところを何度でも見返してもらえるので、そこは現代ならではの良い部分ですよね。
――T.M.Revolutionの主題歌と澤野弘之さんの音楽も、日本ローカライズならではの部分ですよね。
虚淵
西川(貴教)さんも澤野さんも、派手さとノリの良さという点では群を抜いてキラキラしたものがありますよね。日本のアニメって音へのこだわりがすごく独特で、クオリティも群を抜いています。音の尖った演出は、手間のかけ方からして違うんです。もともと映像として芳醇なものに、さらにド派手な効果音と音楽が乗ることで何か新しいものが生まれるかもしれない。そんな期待で音響はぜひ日本でやるべきだと思いまして、見事にハマったという手応えがありますし、台湾でもいい反応をもらっています。
――何か今後もチャレンジしてみたいことはありますか?
虚淵
続編はぜひやってみたいです。今回は僕が言い出しっぺですし、ものすごく自由にやらせてもらいました。ある種「終わらせない話」にもなっていますから、継続してシリーズにしていきたいという野心はありますね。
――ご覧になる方へ、何かメッセージがあればお願いします。
虚淵
ようやく本邦上陸、支店第1号店みたいなものですから、ぜひ注目してください。今後日本に根づかせて提供できるかは、今回のお客さんの反応次第です。気に入っていただけたなら、ぜひとも何かしら拡散していただければと。台湾霹靂社さんの映像アーカイブには膨大な量の作品があるので、そちらも日本で見てもらいたい。そんな下地を整えられれば、とても嬉しいですね。
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