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UPDATE:2016.8.26

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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時代を変えた『魔法少女まどか☆マギカ』
――その他の作品も、配信ユーザー向けにピンポイントのご紹介をいただけたらと思います。まず、一番の代表作『魔法少女まどか☆マギカ』から。
虚淵
僕にとっては書きあげてしばらくしてからの放送だったので、「終わってみたらビックリ」みたいな感じ(笑)。プロデューサーからは「新房昭之監督と蒼樹うめさんで魔法少女ものをやるから、『Fate/Zero』の作者にお願いしたい」というのが最初のオファーで、「何を言ってるんだろう?」って始まりでした(笑)。『バトルロワイヤル』風に、毎回キャラクターが脱落する話にしたかったようですが、最初は困惑しまくりで。新房監督の『魔法少女リリカルなのは』(04)を見たものの、どうも自分が要求されている芸風じゃいなと。ようやく『コゼットの肖像』を観たとき「きっとこのベクトルだな」と。キャラクターは可愛いのに、どこか空恐ろしい。それが狙いだろうと納得して書き始めましたが、すさまじい実験作だと思いました。それがあれだけ反響を呼んだのは奇跡で、ありとあらゆる運に味方された不思議な作品です。つくっている誰もが意図しなかった反響だったのではないでしょうか。
――お客さんの熱気が加わって、より盛り上がった気もします。
虚淵
もっとマイナーな受け止められ方をするかと思いましたが、拡散力という点では明らかにお客さんの熱狂が後押しになってくれましたね。何がターニングポイントになるのか、ホントに分からないものなんだなと、我ながら思い知らされました。お客さんが渇望しているものっていつも何かあるわけで、たまたまそこにタイミングよくハマってくれたのが、あの作品だったと思います。
――当事者の虚淵玄さん的には、どんな部分がハマったと思いますか?
虚淵
それが明確に分かるんだったら、毎回ヒット作が出せますよ(笑)。確かに書き上がった段階では「これはいい作品になったぞ」って手応えがありましたが、それが報われたのは完全にお客さんのおかげで、嬉しい限りです。
小説からアニメ化された『Fate/Zero』
――『Fate/Zero』はいかがですか?
虚淵
これは二次創作的なノベライズがアニメ化されたケースですよね。そもそも最初に書いたのは同人誌だったし、『Fate/stay night』を知らない方には面白くないだろうという理由で、大きな展開をする予定はなかった作品です。それが太田(克史)さんという編集者が星海社を立ち上げるときに、たまたま奈須さんと僕の両方とも付き合いがあったもので、「手ぶらも何だから、旗揚げに『Fate/Zero』をやってみてはどうか」という話から文庫になったんです。『Fate/stay night』がコンシューマーに移植されたタイミングでしたし、知名度もどんどん上がっていたから、今なら一般層に出すのもアリかなと。なのに気がついたら、アニメの拡散力を思い知らされる化け方をしていて、影響力に驚きました。あくまで『Fate/stay night』ありきの作品なんですけどね。
――『Fate』の魅力は?
虚淵
10数年続けられる懐の深い世界観を1作目から打ち出していたのは、すごいですよね。魔法で英霊を召喚し、いろいろな時代や場所で戦わせていく。そのギミックの普遍性で、さまざまな物語を展開できる。やはりその驚きですよね。この先もどんどん膨らんでいくでしょうし、その無限の可能性が『Fate』の魅力ではないでしょうか。TYPE-MOON作品もアメコミ並みにものすごく継続的に展開されていますから、その中ですでに『Zero』も過去のものになりつつあるのが感慨深いですね。
未来の刑事ドラマ『PSYCHO-PASS サイコパス』
――ノイタミナ枠の『PSYCHO-PASS サイコパス』(12)は、どんなきっかけの参加だったでしょうか。
虚淵
『踊る大捜査線』など実写畑で評価されてきた本広(克行)監督がアニメをやるという話を聞き、「それは面白くなりそうだ」と参加させてもらった作品ですね。刑事ドラマで、なおかつ『攻殻機動隊』とも『(機動警察)パトレイバー』とも違うもの。そんなオーダーから出てきた企画です。ディストピア的な社会体制の中で翻弄される法務執行者の話、そんなとっかかりで考えていきました。体制になじめなかった人たちの物語でもあるし、体制が体制である以上、その中で生きていく人たちの幸福がある程度は実現されているからこそ体制でもある。そんな世界でどう共存していくかという話になりました。
――みどころは、どんな点でしょうか。
虚淵
何と言ってもキャラクターデザイナーに天野明さんを連れてきたプロデューサーの先見の明ですよ。企画を考えてたとき、自分としては小汚いキャラクターをイメージしてて、狡噛も無精髭生やした冴えないおっさん、既婚者で子持ちのつもりでしたから(笑)。「それはあり得ない」って天野さんに言われたらしく、設定を変えましたが、格好いいキャラクターで展開していったのは、うまいなと。あの華やかさがなければ、もっともっと地味なお話になっていたと思います。
――やはりアニメは、知恵を出し合ってるのがいいんですね。
虚淵
まさにプロデューサーの嗅覚や才覚ですよ。誰と誰を組み合わせ、どうつくるか。僕も想像もつかなかった天野さんの起用が見事にハマり、結果的には良いところに落ち着きました。
受験・就活を反映した『翠星のガルガンティア』
――『翠星のガルガンティア』(13)では、また作風が一変しています。
虚淵
あれもプロデューサーの決めた「若者向けのメッセージ性を」という方向性が出発点になっています。「就職活動の困難さ」というイメージで……。
――え? 意味がよく分からないですが。
虚淵
学歴競争からそれが通用しない場所に放り出された戸惑いの中、お仕事としてどう生き方を見つけていくか。そんなテーマ性の企画なんです。つまり受験勉強をもっと大げさに解釈して、ベトナム戦争ぐらいの過酷な闘争劇にしてみたと。闘争の価値が、戦う人たちの価値観には還元されない戦争。そこからいきなり自分の行いが直接評価され、換金されて命の糧に関わる場所に放り出される。つまりそれが就活です。そんなモチーフをSF的な舞台設定に置き換えていったのが『ガルガンティア』で、「若い世代の戸惑いに応援歌になる話を」というオーダーでした。なので、ものすごく現代的な物語だと思っていますね。「ポジティブなメッセージ性を」という課題もあったので、それを伝えるべく物語を作っていきました。
――参加されて、いかがでしたか?
虚淵
監督の村田(和也)さんのこだわりがすごかったです。映像表現に対する緻密さがあり、村田さんが最初に用意した廃墟であり船団でもあるっていうイメージボードで、企画の内容が大きく変わりましたから。せっかくならこの世界観を活かせるかたちにしようと、物語の骨子を大幅に変え、お仕事もので、戸惑いの中で成長していく若者という部分だけ踏襲しました。ロボットものでという課題もあり、全部踏まえた上であのシリーズができあがったんですね。村田さんのビジュアルと表現のこだわりが、企画そのものを牽引する駆動力になっているんです。
――急ぎ足でしたが、振りかえってみて、どんな感想をお持ちでしょうか?
虚淵
本当に素晴らしい作品に参加させてもらったなと、感謝ばかりのフィルモグラフィです。この機会に、ぜひ観ていただければと。
――締めくくりに、今後のご予定などもうかがえればと。
虚淵
8月19日に発表されましたが、劇場公開されるアニメで『GODZILLA』のストーリー原案と脚本を担当させていただきます。世界に誇れるIPですし、一世一代の大仕事で驚きと緊張がありますが、プレッシャーに負けずにがんばりたいなと思います。製作はポリゴン・ピクチュアズさんで、静野孔文さんと瀬下寛之さんのダブル監督なので、きっといいものになると思います。現実世界とのリンクが必須だった特撮とは違ったアプローチでゴジラを描くにはどうするか。そんなチャレンジから始まった企画ですから、まだ多くを語れないですが、これまでと違ったテイストになるのではと思います。海外に向けて映像の狼煙をあげていく作品にもなると思うので、お手伝いをさせてもらって光栄ですし、自分の作品の中でも際だったものになると思いますので、どうかご期待いただければと思います。
――とても楽しみにしています。どうもありがとうございました。


PROFILE
虚淵玄(うろぶち・げん)
1972年、東京都生まれ。ニトロプラスに入社し、ゲーム『Phantom PHANTOM OF INFERNO』(00)でシナリオデビュー。GONZOとニトロプラスの共同製作によるTVアニメ『ブラスレイター』(08)でアニメのシリーズ構成、脚本を手がけ、映像づくりの面白さを体感する。ユニットMagica Quartetとして原作に参加し、全話脚本を手がけたオリジナルTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(11)は時代を代表するヒット作に。TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』(12)、TVアニメ『翠星のガルガンティア』(13)とオリジナル作品のストーリー原案、シリーズ構成、脚本を担当。『Fate/Zero』ではTYPE-MOON作品『Fate/stay night』の前日譚として小説を執筆、それを原作にTVアニメ化された。アニメーション映画『GODZILLA』(17)への参加が発表され、話題を呼んでいる。


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