バンダイチャンネル

クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2016.10.14

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

  • ツイートする
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

クラス18人全員が活躍する『ライジンオー』
――園田さんと言うと『(絶対無敵)ライジンオー』が思い出深い作品です。『ライジンオー』は子ども向けにがんばった作品で、川瀬監督の演出ともども「小学生の夢」の夢を実現という部分に集中しているのに、女性ファンがキャラ萌えみたいな感じになりました。そこはどうとらえられていますか?
園田
あれはまったくの予想外でした(笑)。『超者ライディーン』は作画もイケメンですし、上のお姉さん的なことも視野に入れて多少は狙っていたと思うんです。でも、『ライジンオー』にはまったくそれはなかった。むしろ、まったく考えてなかったからじゃないですか?
――なるほど、考えていないがゆえに、お客さんに見つけてもらったみたいな。
園田
たぶんそうでしょう。それは絵柄にもあると思いますが、『ライディーン』をほのぼのした絵でやってたらどうなったのかな? 意外にウケたかも(笑)。
――『ライジンオー』も玩具販売から企画が始まってますよね。
園田
あれは『ライディーン』どころではなく、本当に極端でした。内田(健二)プロデューサーからいきなりロボットの絵をまず見せられて、「これで頼むよ」という。「えっ、これだけですか?」みたいな会話で(笑)。
――地球防衛組というのも何もなしで?
園田
まったく何もなかったですね。ただ、サンライズとしては営業用の企画書を作って通していたとは思うんですよ。でも僕に発注するときは「それは気にしなくていいよ」という感じで。
――地球防衛組って「コロンブスの卵」ですよね。できあがってみれば、誰もが認めるものすごいアイデアだと思うんですけど。
園田
これも実は僕の中で流れがあったんですね。前の年にやった『ボーグマン』では先生が主人公ヒーローで、生徒もいて学校が基地だったんですが、子どもたちを使いきれていないなという反省があっったんです。それで「もう一度学校を舞台にして子どもたちが主役でやりたいな」と。だから僕の中では続編なんですよね(笑)。
――学校シリーズみたいな(笑)。
園田
だから突然出たわけじゃなくて、会社をまたいでますけど僕の中ではつながるんですよね。「子どもたちの日常をドラマに取り込みながらヒーローものを描きたい」という僕の作家的な欲求がちょうど好都合なことにあった。だから「これだ!」みたいに、バババッと設定を書き上げました。ものすごく早かったです。
――最終的に18人クラス全員が主人公みたいな感じになってますよね。それもいまの流れから?
園田
子どもたちのメインパイロットは3人ですけど、クラス全員でサポートするということにして、ひとりひとりのドラマを描きたい。だとしたら、最大何人ぐらいに挑戦できるかなと。実際の学校のひとクラスはもっと人数が多いですが、さすがに30人は無理だな……って(笑)。削って削って18人ぐらいならなんとか描けるんじゃないかなと。でも結局、描ききれなかったですけどね、全員は。
――キャラソンも全員分あったりしましたが。
園田
実は(島田)愛子ちゃんのエピソードが充分描けていないんです。それは「あんまり描いちゃまずいな」という事情もありまして。つまりそれだけの人数なので、声優さんが兼ね役で二役三役やっているんです。そして愛子ちゃんは主人公を担当した松本梨香の二役なんです(笑)。だから、混乱しないよう最後のほうにしようと思ってたら、結果あまり出せなかったという。そういう裏話もあるんですね。
――ひとりずつスポットを当てても18話分ですから、バリエーションが豊かで見応えありました。
園田
「クラスメイトたちを描いていけば、そのエピソードで作れる」ということでしたが、きっとそこがよかったんでしょうね。「みんなが主人公」というのは、当時あんまりなかったと思うんですね。
――学校を舞台とした群像劇的なものって、今や主流じゃないですか。
園田
そうなんですよ。『ラブライブ!』の先取りですよね(笑)。
――またもや早すぎた作品ですか。
園田
だから氷川さん、僕のことをもっと評価してください(笑)。
――もちろんです(笑)。「今や当たり前になっていることには必ず始めた人がいる」ということにものすごく興味があるし、講義などでも強調しています。そんな『ライジンオー』で思い出深いエピソードというと?
園田
やはり最終話になりますね。1年間続く作品ですから、ラストをああいうふうにしようというのは、最初の段階で決めていたんです。
――あれもビックリしました。ほぼリアルタイムで見ていたので、Aパートでは息がつまりそうになるほどで。
園田
ネタバレしちゃうとまずいですけど、現実と夢の世界みたいなことは最初から考えていました。現実にはつらいことがいっぱい起きている。だから、アニメの世界だけでも楽しんでほしい。そう思って作ってるわけだけど、アニメの世界に逃げこんじゃダメだよ……みたいなことを子どもたちに伝えたいという想いがありました。これも作り手として本来はしちゃいけないことかもしれないんだけど、「やっぱりやらせて」と作った最終回ですね。
――あれがあるから忘れられない作品になった人も多いと思います。
園田
やっぱり「チャレンジしたい」という気持ちがどこかにあったんですね。結果、やってよかったと思います。僕の中ではやっていいのかどうか、相当悩んだんです。あとは楽しい話ばかりなので、どれも面白いと思います。
――悪役もいい感じで育っていきましたね。
園田
本当に悪い人は出したくないという気持ちもあって、「愛すべき悪役」と表現したいなと。その反面、本当に悪い奴を出してみたくもあり、OVAの方ではそうしてます(笑)。あのシリーズからいろんな脚本家も育っていったし、そういう意味もあったんですよね。『ライジンオー』も、本流からはちょっと外れていたと思います。クリエイターのやりたいことと商品を売るということが相反することって、多々あるんです。みんなその葛藤の中で作ってると思いますが、両方うまくいくというのはなかなかない中で、『ライジンオー』は玩具も売れたし、視聴率もすごく良かったんですよ。
――合体する玩具もテレビのイメージと違わない形で、よくできてましたよね。
園田
ブレスレットにメダルを入れるというのもね……。
――あっ、『妖怪ウォッチ』の先祖のような。また先取りだ(笑)。
園田
そうそう(笑)。
井上ひさし演劇へのあこがれと脚本家デビュー
――残り時間でアニメ業界に関わるきっかけをお願いします。園田さんはアニメファンというわけではなかったと思いますが、小さいころはどの辺が好きだったんですか?
園田
いろんなところに書いていますが、一番影響を受けてるのはNHKの人形劇で井上ひさしさんが脚本を書いていた『ひょっこりひょうたん島』なんです。それとウルトラ世代なので、『ウルトラQ』と『ウルトラセブン』の脚本家の金城哲夫さんにも影響を受けてますね。
――なるほど。集団コメディとSFっぽい要素というのは、納得するものがあります。
園田
結局、一番影響を受けた人の作品の血がどこかに流れてるんだな、というのは感じますね。芝居をやったのも、劇作家・井上ひさしになりたくてなんですよ。僕が18か19歳のとき、森忠明さんという人の童話を読んで感動して、ファンレターを書いて立川まで会いに行きました。やがて師匠になる森さんはタツノコプロで『みなしごハッチ』や『樫の木モック』の文芸を1年間だけ担当してアニメーションに関わった人だったんですね。寺山修司の弟子だった森忠明に勧められて学生時代に演劇を始めることになるんですが、「寺山さんか東京キッド(ブラザース)の東由多加を紹介するから」と言われ、僕は井上ひさしなんで違うなと(笑)。それで劇団日本で役者として芝居を始めたんです。明治大学のSF研にもいたんですけど、自分で台本を書いて作品を上演していくうちに、脚本で生活したいという気持ちが出てきました。それで森さんからタツノコプロにいた小山高生さんを紹介してもらい、脚本を書かせてもらったんですが、最初の脚本は実にならなかったんですね(笑)。『(手塚治虫の)ドン・ドラキュラ』という作品で……。
――あの4話(地方は8話)で打ち切りになった(業界最短クラスで有名な作品)。
園田
だから、幻の作品になってしまったんです(笑)。そのときの演出家が『サイボットロボッチ』という作品に呼んでくれて、それがアニメのデビュー作になります。手塚治虫作品で華々しくデビューするつもりだったのに(笑)。
――おかしなロボットたちがドタバタする集団コメディにたどり着いていますよね。
園田
ド新人なのに会議でもいろいろアイデア出して、けっこうな本数書いたと思います。修行ゼロのドサクサ紛れでデビューしたということです(笑)。
――『ひょうたん島』の「泣くより笑おう」という前向きな精神は、園田さんの作品につながってますよね。
園田
しかもミュージカルでしょ? ミュージカルがすごく好きで芝居の中に歌を入れたりしてますから、やっぱり原体験ってものすごい影響力なんですね。やはり自分だけの力ではないんですよ。「これがやりたい」という感じでいろんなものにぶつかってわけじゃなくて、たまたま向こうから来るみたいな感じですね、すべてが。
――それも「天使の導き」ってことですか。
園田
そう言うと今日の話のテーマみたいですけど、でも僕がテーマを選んでるというわけではなく、作品が僕を選んでるぐらいの感じです。他力本願というか、なんか向こうからやってくるんですよ。本当にもう80年代頭、23~24歳ぐらいの若かったころから、続けてやらせてもらっているんで。ありがたいことです。
――何か今後の活動でアピールしたいことがあれば。
園田
ちょうどこの『超者ライディーン』のあとに『ポケットモンスター』の仕事が始まりました。それがかなり長く続き、劇場版にも関わって、楽しくてやってたTVシリーズから少し離れかけていました。でも去年ぐらいからまたTVシリーズをやるようになり、いますごく面白くやっています。具体的には『ベイブレード バースト』というタイトルですが、ぜひ僕の現在の作品も見てほしいですね。あとは話の中で舞台出身という話もしましたが、相変わらず舞台もずっと継続してやっています。その舞台もぜひ見ていただきたいなと。来年の頭にはKADOKAWA系列の作品で『ロードス島戦記』の舞台化をやります。作・演出するんで、ぜひ見ていただけたらと思います。
――本日は、どうもありがとうございました。

[公演情報]
 舞台版『ロードス島戦記』

【期間】2017年1月6日(金)~14日(土)全14公演
【会場】紀伊國屋サザンシアター
【原作】新装版「ロードス島戦記 灰色の魔女」(角川スニーカー文庫)
【作・演出】園田英樹
【監修】水野良/ KADOKAWA
【出演】パーン:菅谷哲也
ディードリット:多田愛佳(HKT48)ほか


PROFILE
園田英樹(そのだ・ひでき)
1957年、佐賀県生まれ。明治大学政治経済学部在学中、童話作家の森忠明に師事し、演劇活動を開始する。1982年、TVアニメ『サイボットロボッチ』で脚本家デビュー。『光の伝説』(86)、『マシンロボ クロノスの大逆襲』(86)、『超音戦士ボーグマン』(88)と連続してTVアニメのシリーズ構成を手がける。サンライズ制作のTVアニメ『絶対無敵ライジンオー』(91)、『超者ライディーン』(96)でシリーズ構成を手がけ、女性ファンに絶大な人気となる。1997年からは『ポケットモンスターシリーズ』の脚本に参加、2000年の『劇場版ポケットモンスター 結晶塔の帝王 ENTEI』(首藤剛志と共同脚本)からは劇場版の脚本を連続して手がけている。その他のシリーズ構成作品には『出撃!マシンロボレスキュー』(03)、『銀河鉄道物語』(03)、『おまかせ!みらくるキャット団』(15)、『ベイブレードバースト』(16)などがある。


前へ |  |  | 
 関連作品

超者ライディーン

▶視聴はこちら

絶対無敵ライジンオー

▶視聴はこちら

出撃!
マシンロボレスキュー

▶視聴はこちら

銀河鉄道物語

▶視聴はこちら

おまかせ!
みらくるキャット団
▶視聴はこちら

モジャ公
▶視聴はこちら

超星神グランセイザ

▶視聴はこちら