クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2017.3.7

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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クラシックの偉人たちを現代に
――最新作『クラシカロイド』を毎週楽しく拝見しています。Eテレ(旧・NHK教育テレビ)のオリジナルアニメには大きな意味もありますし、クラシックを題材に特別な音楽体験ができるアニメも珍しいと思ってます。まず、藤田監督が参加されたきっかけは?
藤田
サンライズの生地さん(現バンダイナムコピクチャーズ)から呼ばれ、「クラシックを題材にした作品を作りたい」という話をされました。その時点で土林(誠)さんのキャラクター原案での参加も決まっており、作曲家ごとにプロデューサーを起用したいという話もありました。それが現在の布袋(寅泰)さんたち著名アーティストさんの参加に繋がっています。
――企画の第一印象はいかがでしたか?
藤田
クラシックについては、学校の音楽室にクラシックの巨匠の肖像画がズラリとか、その程度の一般的な知識しかないけど、大丈夫なのかと。ただ、そちら方向へ深く行くわけではなく作曲家は奇抜な人揃いなのでキャラクターを楽しんでもらえれば大丈夫だと。音楽そのものは大好きなんです。ライブハウスやクラブに出かけることも多いので、とっかかりは見つけられるかもしれないなということで、お受けしました。
――その時点でコメディタッチというのは決まっていたのでしょうか?
藤田
最近は「今回はシリアスで」とオファーされたことがないので、「そういう話に決まってるな」とヒシヒシ感じつつで(笑)。
――オリジナルだと最初に決めなければいけないことも多いかと。何がとっかかりになったのでしょうか。
藤田
自分にとってクラシックの作曲家と言えば、まず映画の『アマデウス』のモーツアルトになるんです。他の作曲家も相当変だったという話はおぼろげに知ってはいたので、そこなら掘れるなと。自分の中にはなんとなく「アパートものをやってみたいな」という気持ちがあって、『めぞん一刻』みたいに血のつながらない人たちを一カ所の舞台に集めたものにして、そういう環境、関係からなんとか形にしていこうと思いました。
――音楽そのものについては、どんな感じで進めていかれましたか?
藤田
最近は「クラシック警察」みたいな方もたくさんいらっしゃるので(笑)。「おい、間違ってるぞ!」みたいなことを回避するためにも、モデルにはなっているけど違う存在にして「実際の偉人ではない」としています。むしろアレンジで流れる音楽メインが良いだろうと。それと、音楽ですから勝ち負けの話にはしたくなかったんですね。
――なるほど、バトルものではなくと。クラシカロイドのキャラクターは、どんな感じで決めていかれたのでしょうか?
藤田
僕たちも「ものづくり」をしているわけで、その点で作曲家たちに共感できるんですね。ものをつくる才能がなかったら、ホントに迷惑で、世の中に置きどころがない人たちという点に、共感があるんです。アニメにしても「なくていいもの」でしょ? もしアニメをやってなかったらどういう仕事がハマるのか、よく分からないんです。現場を見ても、人格を捧げた代わりに才能を獲得したような感じの方を見かけますし(笑)。
――なるほど、クリエイター同士の共感ということですね。宣伝文句にある「闇鍋感」というキーワードは?
藤田
「旗」は自分で立てるものの、中身をカッチリ決めて「こうやれ」というやり方が、あまり好きじゃないんです。ライター、デザイナー、アレンジャー、それぞれバラバラでいいんですよ(笑)。個性が際立つパーツがそろっているから、そのキツイ部分を整えて組み立てるよりも、どーんとそのままお出ししたほうが潔いんじゃないかと。つぶし合っても仕方ないし、統一しすぎず「素材そのまま」です。企画当時はウェルメイドなアニメが多い印象があったので、自分はもっとある種フィジカルなエンタメというか、昭和の活劇のようなものをやろうかなって。それで、こういうかたちになっていきました。
多種多彩なアイデアの組み立て方
――アイデアは、スタッフのみなさんで出し合う感じですか?
藤田
それも毎回バラバラですね。音楽が先だったり、曲タイトルや由来が先になることもあれば、作曲家の逸話ベースにアイデアを出すこともあります。それを持ち寄り、みんなで叩いていく感じで。
――先日のミカン(第17話「みかん!みかん!焼きみかん?!」)のように奇抜なものは?
藤田
だいぶいろんなバリエーションをやったときに、「そういえば、ホラー系やってないな」って感じです。脚本家のきだつよしさんが特撮系好きですから、「じゃあ、『マタンゴ』やって」と(笑)。(編注:1963年東宝による特撮映画。孤島に漂着した人間が毒キノコを食べキノコに変身してしまう。)
――ああ、なんとなくそんな気はしてました(笑)。
藤田
そんなひと言から、みんなでどんどん転がしていくんです。各ライターさんの強いところ得意なところで勝負できればいいかなと。自分が観ていた時代のアニメは、各話バラバラで意外につながっていなかったですよね。アメリカのドラマでも、いまだに各話のディレクターが全然バラバラなことをやっていたり。いまのアニメーションは、ある種ちゃんとし過ぎているんです。もうちょっと大らかいい加減なエンターテインメントでもいいのになと思って、つくっています。
――かなり自由にやられているということですね。
藤田
もちろんEテレですから、それなりに制約はあります。
――こないだモザイクが出て、心底驚いたんですよ(第16話「働け! ベト モツ」)。
藤田
こちらも「あ、出していいんだ」と(笑)。何が写っているかは濁しているし、怪しいものを隠しているわけではなく、「ご想像にお任せします」というロジックです。思ったよりは、やらせてくれてます。ただ、こちらで自重している部分も当然あります。スパイスみたいなギャグ要素は「ダメ」って言われる可能性が高いので、それが使えないならレシピそのものが変なほうがいい。そういう感じです。
――そういう場合、キャラの配置や役割から工夫されるのでしょうか。
藤田
あまり役割に縛りつけるのもイヤだったので、基本的にはモデルになってる人の逸話からインスパイアを受けます。個性だけ決めておいて、それを並べて動かしたとき、何が起きるかなってやり方ですね。結果的に用意したキャラクターの中では、誰もお話をうまく回してくれないことが分かりました(笑)。もうちょっと便利なキャラを置いておけば良かったかなと。
――いつも大騒ぎになって収集つかなくなるのは、そのせいですか。
藤田
みんな好き勝手に動いて、まとめ役がいないからです。それってある種のチャレンジですけれど、元来やりたかったことでもあるんです。自分はどの作曲家もみんな天才だと思って演出しているつもりなので、キャラクターにお客さんが共感できたら失敗だなと思ってます。「何言ってるんだろ、こいつ」ってわけのわからない人びとを、動物園で観察するような感覚で見てほしいなと。
――なるほど。言われてみれば、理解できてしまったら天才じゃないですね。
藤田
それって『アマデウス』の影響が大きいですね。モーツアルトって子どもよりも大人な分タチが悪く、人としては迷惑しかないですよね。ホントに横にいたらイヤだなと。でも才能はあるし、音楽はすごい。そんな天才だけを並べた結果がこれなんです。クラシカロイド同士も、ぜんぜんかみ合わない。それでコメディっぽく見えてればいいですね。自分はわりと天邪鬼なので、設定の解説的なものが多かったり、ストーリーテリングをすごく分かりやすくする「説明過多なアニメ」と違うエンタメを、バリエーションとして作ってみました。民放だったら許されない流れだったり、リズム感だったりもできますし。
NHKならではの作品づくり
――NHKのアニメは何が違うのでしょうか?
藤田
民放だとマーチャンものか深夜ものですよね。玩具にせよパッケージにせよ、わかりやすく売上の数字を取りにいかないといけない感じが出てしまうかなと。
――Eテレ全体として、子ども向けといいつつも、かなり変わった番組が多いですよね。
藤田
ええ、自分もやってそう思いましたが、枠から解き放たれると、人ってああなってしまうのかって(笑)。せっかくそんなEテレでやれるなら、コアなアニメファンではない人にも届けばいいなと。子どもも見るものなので、説明よりも見た目の楽しさを前面に出していきたいなと。
――教育的な部分は意識されてますか?
藤田
もしもダメな大人になったとしても、一個なんか取り柄があれば、生きていけるかもよって(笑)。かっこよくなくても、全然ダメダメでも、一個いいところがあれば、楽しければいいやって。
――それって生きる勇気をあたえる感じで、いいですね。子どもも、面白いお兄ちゃんたちが騒いでる感じで楽しいでしょうし。Eテレサイドからは何か特別に注文は?
藤田
特にないんですが、「性別や年齢に関係なく、幅広い層が観られるように」みたいなことは言われました。
――えっ? どういう意味ですか。
藤田
クラシカロイドの行動を受ける側を奏助と歌苗の二人を置いてますけど、男女どちらかだけにはしないでくれと。たとえば歌苗ちゃんだけにしてクラシカロイドたちを周囲に置くと、なんだか女性向けっぽく見えるし、逆でもそうなる。そのバランスは気にしてくれと言われました。
――何人か作曲家を女性化したのは?
藤田
わりと最初のうちからですね。時代的に作曲家も全員男性なので、そのままだと言われているバランスにならないんです。それで女性にしても大丈夫な逸話のありそうな該当者を何人かピックアップし、理由をつけて女性に変えていきました。
――反響はいかがですか?
藤田
子どもがワッと楽しく見てくれているそうですね。「ウチの子、ベートーヴェンの真似してギョーザーとか言ってるよ」なんてよく聞きますし、これまでと違う層から跳ね返りがあって、そこには満足してます。配信の取材で言うのもなんですが、ネットとは違うところからお客さんの声が聞けるのは、とても楽しいです。
――そこはEテレのアニメとして大事なポイントですね。
藤田
自分も小学校低学年まではアニメを一生懸命見ていたのに、その後一回アニメから離れてしまったわけです。いまはマーチャンものと深夜アニメだけで、間をつなぐようなニュアンスのものがないので、余計にそうなっているはずです。もちろんお金になりづらいからという理由も分かりますが、でも機会があれば隙間を埋めるものをつくりたいなと、ずっとそういう想いがあって、こんな感じでつくっていった作品ですね。
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