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UPDATE:2017.7.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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少女の世界へと近づいていく物語
――アニメにする上で新房監督なりに「ここが大事」というポイントはありましたか。
新房
それはもうヒロインの「なずな」のキャラです。そうは思っていたんですけど、今回、なずなのキャラクターデザインについては、プロデューサーの川村(元気)さんのほうから「ぜひ渡辺明夫さんに」と言われて、それでわれわれの側は「うーん」と。
――どうしてですか?
新房
渡辺さん、忙しいですからね。でも「どうしても」って言われるので、渡辺さんにお願いしたんです。
――新房監督作品としても、物語シリーズや『まどマギ』とは違ったオーソドックスなテイストですよね。
新房
今回もっと一般的だと思いますので、ある程度普通にしないと受けないと思いました。そういう意味では武内さんメインにしたのは、よかったですね。武内さん自身もジブリで原画をやっていますし、ずいぶん普通な感じだと思いますよ、今回は。
――とはいえ逆にシャフト作品としての期待もされてきますよね。どういう手を使ってくるかな、みたいな。
新房
その辺で言うと、美術設定ですかね。物語シリーズも美術設定は武内さんが作っているんです。その前の『月詠』(『月詠 -MOON PHASE-』2004年)から美術設定は武内さんに発注しているので、その世界観の感じは残っています。螺旋階段的なものとか、舞台の配置だとか、そういうところにシャフト風の濃さが残ってるかもしれません。そこはやはりね、何か欲しいところなんですよ、どうしても。
――監督の志向としても、「舞台設定ありき」という部分があるんですね。
新房
そうですね。今回も竹内さんの方から「こんな感じの学校があって、こういう舞台で行きたいんだけど、どうだろう」みたいなことが先に出てきました。自分としては、キャラクターが渡辺明夫さんになったことで、「もしもの世界」になればなるほど絵を漫画風にちょっとずつ変えていこうと思っていたんです。ただそれはスケジュール的に厳しくなったので、あきらめました。
――そうした世界観ごと絵柄で描き分けるのって、たしかにアニメじゃなければできないことですよね。
新房
ええ。「不思議な玉」を投げるのは典道ではあるんだけれど、次第に「典道の世界」ではなく「なずなの世界」になっていくんじゃないかなと、自分は思っていたんです。投げれば投げるほどその……わかりやすく言うと「少女の母性的な世界」に変わっていく。そういう風にもっていこうと。やはり、なずなの持ちものを典道が投げて世界が変わるのが、なかなかピンとこなかったんですね。でも、なずなの方向性を感じさせる世界ビジュアルになるならば、自分の中でもわかるなというところがありました。ただ、いろいろ難しいところもあって…。
――監督にとってはテレビアニメが関係していない映画は初めてになりますが、そこはどうでしょうか。
新房
あまり特別には思ってません。尺が長いだけ、みたいな。
――よく「映画独特の時間」みたいなことも言われますが。
新房
そういう違いもあるとは思うんですけど、実はテレビのクオリティと映画のクオリティの違いって、よくわかっていないんです。いまはテレビも質が上がってきていて、「これって、十分劇場っぽいな」と思うのもありますから。
――たしかにデジタル放送はみんなハイビジョンですしね。
新房
そう。何をして劇場なのかテレビなのか、わからないんです。時間の長さの問題なのか、ちょっとピンと来てないところですね。これは昔からでして、前はテレビとOVAの違いがわからなかったんです。予算が高い分、何をがんばらなければいけないのかなあと。それと同じですね。画面の違いがわからない。ただテレビは個人で見るものだけど、映画のほうは隣に人がいてみんなで見るものだから、映画であまりにも恥ずかしい場面が出てくると、みんな引くんだろうな、とは思っています。気まずくなるのは映画のほうかもしれないなと。
――ああ、それは何かわかるような。
新房
きっと昔とは逆なんですよ。昔はテレビドラマでベッドシーンとか始まると、いっしょにいる親に見られて気まずくなったりしましたが、映画は別に個人個人だからって感じでしたよね。ところがいまはテレビが個人で見るものになっていて、むしろ映画がみんなで見るものになっている。そんな逆転現象が起きていると思うんですよね。
――それは面白い指摘ですね。しかも友だち同士で見に行ったりしたら余計に。
新房
そうそう。だから『まどか』の一本目の総集編のとき、テレビではほむらとまどかが裸になって宇宙空間で話してたんですが、映画では「裸は気まずいな」と思ってキラキラをつけたんですよ。われわれの世代って富野(由悠季)さんの影響が強く、特に『(伝説巨神)イデオン』のインパクトがすごくて、すごい刷り込みみたいなものがあるんです。だから、最初何の疑問も違和感もなく「宇宙空間なら当然裸だろう」と思ってたんだけど(笑)。ところが映画になるとき「これはいかん!」と。
――「なんだよ見えないじゃないか」って言った人はいなかったんですか(笑)。
新房
それはいなかったでしょう(笑)。万が一、親と見に行った子どもがいたとしたら、裸だと気まずい感じになったと思いますよ。というか、裸が気になって台詞が頭に入らなくなるのがまずいなと。本当にテレビのほうが個人のものになりましたよね。
実写や3DCGも取り入れ完成度を高める
――シナリオ開発が終わってから、具体的な絵づくりや現場作業はどんな感じで進めていかれたのでしょうか。
新房
その後は、武内さんメインで動いていきました。
――新房監督は、わりと現場に任せるというタイプですよね。
新房
そうですね。作画面などは、現場のほうで動き出してくる感じですから。
――監督なりに、現場づくりで大事にしたことってなんですか。
新房
やはり渡辺明夫のテイストでキャラを描ける人を集めないと、ちょっと難しいな、ということでしょう。もちろん渡辺さんの描いたキャラ表があるんですけれど、本人がやらないと本人の味が出にくいところがあるので。できるだけ渡辺さんに近い方、または経験があるような方がメインで入らないと、難しいだろうなと思いました。
――やはりこの映画では、まずヒロイン“なずな”が一番大事ということですか。
新房
それはもちろんそうです。でも、色をついたのを見てみたら、意外に典道たち男の子キャラがいいなと思ったんですよ。結果的にバランスよくキャラ配置ができたかなと思います。物語シリーズをずっとやってたスタッフですから、大丈夫だと信じています。
――舞台を描く上で、ロケハンには出かけられましたか?
新房
スタッフは千葉のほうに行ったようですね。自分は参加してませんが。だから風景もそこで撮ったものをベースにしているはずです。
――ラッシュでは、自転車の実写が多く入っていましたね。
新房
ええ、あれをもとに作画を描き起こすんです。知ってる顔が実写で映ってるから、なんだか気持ちが全然入りきれなくて(笑)。いまはロトスコープ的なものも簡単にできるんですよね。アニメーターによっては、参考画像をコンピュータに取りこんでガイドにして描いたりしているようで、便利になりましたね。今後はうまいこと融合したらいいなと思っています。アニメの手描きで弱いところは、タイミング的なものも含めてロトスコープや3DCGを使って補っていけばいいし。アップはやはり手描きの味がどうしてもあったほうがいいと。ロング(引き絵)や細かいものは、もう3DCGでいいと思います。特に映画みたいに大画面でやるのなら、余計そうですね。これからはうまく使い分けていくほうが良いなと思っています。
――監督はアニメーター出身ですが、手描き作画へのこだわりは?
新房
アニメーター出身というほどのものではないです。ただ、作画は「描ける人」のほうが、いまでも少ないですからね。そういうことも考慮していくと、CGでなんとかせざるを得ない。われわれの世代は、どうしても「手描きのほうが味があっていいよね」と思いますが、今の若手はゲームも含めて最初から3DCGのアニメを観て育っているわけです。そういう世代からすれば、「CGっぽくて何が悪いんだろう」ってことにもなりかねないでしょう。とは言え、まだまだこだわりたいとは思っています。
――物語シリーズだとスタイリッシュな方向性ですから絵は重要ですし、サジ加減が難しいですよね。過渡期ですし。
新房
長い過渡期だなあ、というのが実感ですね。ただ、なかなか決着つかないだろうなとも思うんです。好みの問題も大きいし、ジャッジする人たちが要はビデオソフトを買う人たちだとしても、もういまは売れなくなりましたから。もし売れたら、買ってくれた人が「こういうのが欲しいからだ」とジャッジしたことになりますが、それもない。今後は配信、特に海外配信で稼いでいくしかないとしたら、その海外の人たちがどっちが気持ちいい、気持ち悪いってジャッジするのか。まったくわからないですよ。だから当分まだまだ混沌とするんじゃないかと、そんな気がしています。
――今回、コンテについては、どなたが描かれたんですか。
新房
コンテは主に武内さんです。チェックはしましたが、何箇所か言ったぐらいで、別に直したりはしていないです。
――どの辺を重視してチェックされましたか。
新房
やはり女子キャラですよね。男の子たちが楽しそうに動く感じになっていたので、女の子のところで、うまく違和感が出てればいいなあと。武内さんも物語シリーズでコンテをやってますから、そういう意味ではシャフトっぽいコンテだと思います。
――ある場面では、原作ドラマから映像を引用した感じにもなっていますよね。
新房
ええ、カット割り含めて原作どおりにした箇所があります。あそこは、ものすごく印象的に見えますよね。やっぱりあそこから観るほうのスイッチが入るような気がします。武内さんも原作のファンだし、作画の人たちにもファンが多いから、しゃべるところの間をきっちり合わせもしているようです。ものすごく熱心なので「じゃあよろしく」みたいな感じでした(笑)。
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