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UPDATE:2017.7.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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情報の乏しい田舎で見たテレビ番組
――先ほど「恥ずかしい」という話題もありましたけれども、『打ち上げ花火』ってもともと小学校高学年から中学生ぐらいで、ちょっと背伸びしてる感じも含めて恥ずかしい話ですよね。その辺はどう捉えられていますか。
新房
「まぁ、そういうこともあるよね」っていうぐらいの感じでしたね。
――ご自身の経験に重ねて、何か思い出されたことはありますか。
新房
それはそんなにないですね。憧れた女の子とか全然いなかったですし。どっちかっていうと「家出したいな」とかそういう感情はわからんでもないです。何かやらかすと、すぐ周囲に知られてしまう狭い地域に住んでたから、早く出たかったっていうのはありますね。
――福島県のどの辺りなんですか。
新房
福島市からちょっと行ったところです。何もない田舎っていう感じですね。本屋がなく、文房具屋に週刊誌が置いてあるぐらい。単行本は10冊ぐらいあるかくらいの、そんなところで育ちました。
――となると、テレビ局も少なかったのでは。
新房
民放が1局しか映らなくて、NHKは総合と教育と2つあるから、合計3局です。小学校4年か5年ぐらいのとき、やっと民放が2局になったんですよ。
――そういう場合、系列はどうなるんですか。
新房
最初のころはTBSが一番強かったと思います。『ウルトラマン』は放送してましたから。でも、みんなより見てるものが圧倒的に少ないですよ。雑誌で「これが始まるよ!」っていう宣伝を見ても、「どうせこっちじゃやらないよな」なんて思ったりして、つらかったですね。一番見たかった『スペクトルマン』とか、やってないんですよ。
――となるとCX、フジテレビの系列がないということですね。
新房
そう、8チャンネルがやたら弱かったです、当時。
――フジは『鉄腕アトム』を始めたテレビ局ですから、いわばアニメ王国なのに。
新房
ただ、『マジンガーZ』は逆に全国放送より30分早く、6時半からやってたんです。でもあるとき、なぜか一週わざと休んで、一週遅れになるんです。
――(爆笑)。
新房
何か大人の事情があったんでしょうね。『(科学忍者隊)ガッチャマン』は当時やってないんですけど、中学になってから再放送の時間帯で観ました。本放送のころはレコードのジャケットの絵をみて、「こういうヒーローが活躍してるんだ」って、悔しかったです。そういう気持ちを埋めたのがマンガなんですよ。いわゆるコミカライズ。特にやっぱり冒険王の存在が大きかったです。
――当時、だいたいのテレビ番組はマンガ化していましたね。
新房
『スペクトルマン』や『ライオン丸』は放送してないけど、一峰大二のマンガで知りました。いまだに一連のマンガは大好きです。意外と描写がグロテスクだったりするので、やたら記憶に残るんでしょう。われわれの世代はなぜか『スペクトルマン』とか『ライオン丸』に引っかかってますよね。
――この連載では、子どものころご覧になってた作品もうかがっています。他に印象的なものを教えていただけますか。
新房
毎朝やってた『冒険少年シャダー』が大好きでした。光る剣(金の秘剣マジックナイフ)のプラモデルを買ってもらえなかったのが、すごく心残りで。妙に欲しかったんですけどね。
――やはり当時って、商品の記憶とつよく結びつきますよね。
新房
そうですね。他に子どものころのアニメだと、『紅三四郎』がすごく記憶に残っていますね。『タイガーマスク』も好きで、主人公の顔がなんとなく似てるから、ああいうタイプの顔の主人公が好きなんでしょうね、きっと。
――どんなところが良かったんですか。
新房
とにかくカッコよくて。長方形の角パッタ(メンコの意)で『三四郎』の絵が描いてあるのを友だちが持っていて、それが欲しくて一生懸命やり取りしたのを覚えてます。当時アニメの絵が載っていること自体が貴重でした。漫画家の絵と違ってアニメの絵を残す方法は当時何もないから、メンコとかの図案がすごく貴重に感じましたね。
――それはわかります。アニメ画面そのままの印刷物自体、ほとんどないんですよね。雑誌に載るのは、だいたいイラストかマンガに描き変えられて、違う絵柄になってる。
新房
「こんなに『紅三四郎』が好きな自分が持ってなくて、なんでコイツが持ってるんだ」という、そういう悔しい記憶ばっかりですよね、子どものころって(笑)。
――物語的には、どうでしたか?
新房
シャドーマンの話(第8話 魔の超人マシン)をやたらよく覚えています。足に機械を埋め込まれてサイボーグに改造されるお話ですけど、機械を取って普通に戻れるんじゃサイボーグじゃないんじゃないのって、ちょっと不思議に思って(笑)。
――ツッコミ入れてますね(笑)。
新房
まあいいや、カッコいいから、なんて(笑)。『紅三四郎』はとにかく一話の中で変化が多すぎて、すごいんです。よく30分でこんなお話が収まるなあというぐらい詰め込んである。絵が好きっていうのもあるんだけど、お話も好きなんです。
――なにかと展開が大胆でしたよね。
新房
片目の武闘家が三四郎の親父を殺した敵(かたき)で、それを追っているんだけど、途中で砂漠の魔王というのが出るので、それを求めてアレキサンドラ時代だったか、古代に紛れ込んで片目の王と戦う。だけど、どう考えても敵じゃないよね(笑)(第10話 幻の独眼帝王)。他にも「片目の虎」とか「戦争中の片目の軍人」っていうのも出てきて、「いや~、たぶん敵じゃないと思うよ」って(笑)。
――それもまた良しとするバリエーション感がすごいです。
新房
あれのすごいところは、「なにっ、片目!」って言うと、すぐそこに行けるんですよ。そのスピーディさがね、すばらしいなと思って。
――「この映像がすごい」みたいに見たのは、いつぐらいですか。あるいは今の仕事に関係するようなことを思い始めたのは。
新房
アニメを映像で見て「カッコいいなー」と思うようになったのは高校時代だと思います。やっぱり出崎(統)さんの『宝島』(78)、りんたろうさんの『宇宙海賊キャプテンハーロック』(78)とか『(劇場版)銀河鉄道999』(79)とか、宮崎駿さんの『未来少年コナン』(78)とか。あの時期に「アニメ」っていうことが強調されたのかもしれませんね。それまでは、よくわかってなかったですから。絵がすごいと思ったのは杉野(昭夫)さんです。りんたろうさんの演出では『グランプリの鷹』(77)も好きでした。
――あの背景が真っ白な、全面透過光になるやつですか。
新房
そうそうそう。衝撃的でした。ああいうのがいいなと。色がなくて白黒なのに部分的に赤とか、激しく白と黒が明滅するとか、演出がカッコいいなと思ったのは、たぶんあの辺でしょうね。
――出崎さんの作品は、どういう部分がお好きですか。
新房
出崎さんの場合は絵だけでなくて、詩的な雰囲気がやっぱり良かったです。あの頃にそういうのを一気に見たから、そこで取りこまれたのかもしれません。
――出崎さんだと、どの時期の作品がいちばん好きですか? 70年代とか80年代前半とかですか。
新房
そうですね。その頃の作品になりますよね。『ガンバの冒険』(75)はすごかったし、でも、やっぱり『宝島』ですよね。『あしたのジョー2』(80)のころになると、タッチがきれいな感じになってきて、ちょっと。タッチにしてももっと雑なほうが好みで、キレイに均等に入るんじゃなく、もっと適当だったころが好きなんですよ。
――最後に『打ち上げ花火』に関して何か締めくくりのお言葉はありますか。
新房
大丈夫です。もう十分語りつくしたと思います。あとは完成を待つばかりです。
――非常にさわやかな感じがして、いい映画ですよね。
新房
そうですね。エンディングの主題歌などもすごく良いと思いますし、ぜひ楽しみにしてください。


PROFILE
新房昭之(しんぼう・あきゆき)
演出家、アニメーション監督。『メタルファイターMIKU』(94)で監督に。ゴシック・ロマン風OVA『コゼットの肖像』(04)のスタイリッシュな美意識、総監督をつとめた『月詠 - MOON PHASE -』(04)のバラエティ舞台を意識した手法が話題に。2005年以後は後者の制作会社シャフトを拠点として『ぱにぽにだっしゅ!』(05)、『ひだまりスケッチ』(07/総監督)、『さよなら絶望先生』(07)、『化物語』(09)など話題作を続々と監督。タイポグラフィや平面構成、緩急のきいたカット割りと多彩なギャグなど独特の映像感覚が注目され、続編・シリーズ化を生み出すヒットメーカーとして認知される。2011年に虚淵玄、蒼樹うめと組んだ『魔法少女まどか☆マギカ』は国内外を震撼させるヒット作となり、メディア芸術祭アニメーション部門など数々の賞を受賞して劇場映画化。TVアニメの近作はNHK総合で放送された『3月のライオン』(16)。岩井俊二原作による新作映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(8月)では総監督をつとめ、切なさあふれる不思議な青春ストーリーに注目が集まっている。


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©2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会