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UPDATE:2017.12.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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人気作の要素を強化した『UQ HOLDER!』
――まず最新作の『UQ HOLDER! ~魔法先生ネギま!2~』(17)からうかがっていきたいです。今年は3本連続とずいぶん監督作をやられていますよね。
鈴木
実は私はJ.C.STAFFの社員なんです。フリーの監督さんがどういう風に仕事を受けるのか知らないんですが、自分の場合は社内で「次はこれをやってほしい」みたいな感じで来るから、自分で選んでいるわけではないんです。3本重なったのも、たまたまということです。
――今回の企画の場合、いつぐらいから動き始めていたのでしょうか。
鈴木
UQ』は私が関与してシナリオや構成が動いたのは、去年の頭か春先ぐらいでしょう。もちろん企画自体はもっとずっと前からです。結果的に放送時期が重なったので、多少は先行して作っていた部分もあるにせよ、いろいろキツかったです。
――監督のお話が来る前から、作品自体はご存知でしたか?
鈴木
それについては誰でもそうだと思いますけど、「『魔法先生ネギま!』の続編って、どんな風になるのだろう?」と、興味深く追っていました。ただ、前のアニメの『ネギま!』(『魔法先生ネギま!』(05)、『ネギま!?』(06)、OVA等)に弊社は全然関わっていなかったので、まさか自分がやるとはと(笑)。ビッグタイトルですから、「私でいいのかな」という戸惑いはありました。世代的に赤松先生と言えば『ラブひな』(00)が大好きです。入社したときに『ラブひな』の撮影も手伝ったこともあり、「あの赤松さんに会えるんだ」と、そういう喜びはありました。なかなかユニークな方でして……。
――何事によらず精力的に活動されている印象がありますよね。
鈴木
押しも強いし、作品以外の活動も含め、いろいろ考えられて動いていますよね。ただし内容に関してはかなりお任せいただき、「こうじゃなきゃいけない」というタイプではないので、すごくやりやすかったです。一方、私のほうは「作家性で売ろう」という感じではない自覚もあるので、なるべく原作の色を大事にしようと、観客側の原作イメージを探りながら入りました。『ネギま!』は人気作ですから、ファンは原作と違う部分がすごく気になるんだろうなと、実は横から見ていて思っていたんです。ですが、赤松さんがおっしゃるには、自分としては全部気に入ってるし、好きなんだけど、みたいな感じなんですね。それで、今回も「アニメはアニメで好きにやってください」と。
――監督から見た赤松作品の魅力とは、何だと思いますか。
鈴木
やはり最初に好きになったのが『ラブひな』(00)ということもあり、「ラブコメそのもの」という部分ですよね。ラブコメで見たいものを直球で全部入れてくる。なおかつ時代を代表する。そんな点がやはり楽しいです。『ラブひな』では、「こういうのを見たかったんだよ!」という要素を全部入れてもらえたなと。岩崎良明監督の演出がすごく好きなので、それも大きかったです。マンガもアニメ版のキャラや展開もすごく好きで、ウチの会社が撮影のグロスで受けたときは、当時あまりやらないタイプの作品だったので、すごく意外だったし、嬉しかったです。そこから時代を経て赤松先生の作品の仕事ができるとは……。こんなこともあるんだなと、ビックリしましたね。
――経歴を拝見すると、撮影は撮影監督までやられてたんですね。
鈴木
そうですね。ちょうど前の『ネギま!』の時期に演出になりました。経験は全然なかったので、軽く転職した感じで(笑)。当時はアニメも仕事で関わらせていただく関係の作品以外は日常的に観ることが少なくなっていましたが、『ネギま!』はいろんな意味で評判でしたし、オープニングも強烈でした。今回も原作を読み返したり、アニメを見返したりしてます。なかなか大変でしたが(笑)。
――アニメも何種類かありますよね。復習してみていかがでしたか。
鈴木
OVAはかなりすごいですし、それぞれいろんな終わり方をしてるんですね。前のアニメの要素をどう活かすか、いろいろ考えてみましたが、制作会社が違ったりするので、直接つなぐとことはできません。むしろ原作でつながってるという前提で、アニメの役者さん、音楽スタッフを同じ方でやらせていただき、直接はあまり追わない方向にしました。実際、『UQ』の連載の当初はどう見ても続編なんだけど、あまり直接そうは言わない謎があったんです。ですがアニメとしては、むしろもっとはっきり「ネギま!色」を出したほうがユーザーが求めてるものに近づくのかなと。
――確かに明らかになった後で、出し惜しみは変ですね。
鈴木
なので原作で『ネギま!』に触れている部分を再構成し、アニメでは最初から推していくことにしました。もちろん新しいユーザー層にも観ていただけるようにしつつ、まずはずっと『ネギま!』から観てくれてハマってる人にサービスというか、満足していただきたいなと。構成会議も、そこをどうするかというところから始っています。赤松先生も、順番を入れ替えたり変えることに関しては、ファンが喜ぶなら、むしろどんどんやってください、みたいな感じでした。
――いきなり頭に回想が入って驚きましたが、そういう方針が関係してるんですね。
鈴木
最初にいきなり『ネギま!』が来るとは誰も予想してないだろうから、ここで一発、意外な感じを出しました。そこから普通の流れにしていき、展開もわりとオーソドックスな感じにしてあるので、そうすれば新規の方にも観やすいのかなと。主人公の少年がいて悪いやつが出てきて、少年がチカラを獲得して、旅立つみたいな……。駆け足にはなりましたが、1話になんとか入ったんで良かったかなと思っています。
――全部で12話ですか?
鈴木
そうですね。放送は12話で、単行本につける番外編が3本あります。
――どこまでアニメ化するかは、最初の段階で話し合われていたのでしょうか。
鈴木
原作は最初うち、「どこに行くんだろう?」という感じで始まってるんです。前の『ネギま!』もそうでしたが、行ったり来たりしながらメイン的な展開になるまで、わりと時間をかけて描いているんです。今回のアニメ化の話が出たときには11巻か12巻まで出ていたんですが、いろんなブロックがある中で原作どおりの順番にすると、かなり半端に終わりそうだと思いました。それで尺が足りない分、難しくなったとしても、とりあえずそのとき出ていた部分まで全部やってしまおうと。赤松さんからは、本当は一回終わらせるつもりで用意したエンディングもあるという話もうかがったので、それも活かしつつ12話でやりきろうと。加えて、もっと「ネギま!色」を出す。そんな方針でしたね。キャラクターを少し削らなければならなかったのは残念でしたが、続編やOVAがあればと。
――12本で原作のいいところを凝縮みたいな感じなんですね。
鈴木
そうですね。最近は「売れたら次がある」みたいに考えてしまうと、かえって難しくなってしまうので、尻切れになるよりは、「駆け足でも一度キレイに終わらせる」というカタチを目ざしました。
アクションの統一と華やかな録音現場
――「アクションバトル」に力をいれた作品ですよね。その辺は映像化されたときのポイントになってくると思いますが、いかがですか。
鈴木
アクションの出来の良い悪い以前にスタッフがバラバラで、シーンごとで全然違う方向のアクションになって統一がとれなかった作品を経験しているので、「この作品にはこういう方向のアクション」というカラーを出すにはどうしたらいいかと考えました。私が絵描き出身ではなく原画チェックが難しいので、誰かに一元化するしかないということになり、負担はすごく大きくなるんですが、若くて体力のある人(アクション監督:青木健一郎)にひとりで見てもらおうと。全部は作画できないにせよ、いわゆるアクション作監として統一を取ってもらって、ある程度成功したかなと思ってます。
――バラバラになるというのは、どういった部分でしょうか。
鈴木
ギャグ寄りの動きになったり、すごくリアルに描かれたりするんです。話数によっては違う作品のアクションっぽくなって世界観とズレてしまい、大きく直す必要が出たりしたんですね。
――そしていよいよ最終回というタイミングの取材となりましたが、どうでしょうか。
鈴木
最終回には『ネギま!』の3-Aクラスメイトをを全部出そうという話なんですよ。
――その人数の多さは、1作目の当時話題になりましたよね。
鈴木
前は、たとえば2クールで30人のデザインを起こすとしても、1話あたり1~2名なので「まあいいか」ってなるんです。でも、1話分のために30人というのは(笑)。
――そうですよね(笑)。視聴者には分かりづらいんですが、設定費が……。
鈴木
全然採算が採れない。結局、起こしたり起こさなかったりになりました。背景の設定も、赤松さんから「マンガの背景用に作った3DCGあるから使ってください」と言われ、「その分予算が浮くな」と思ってデータをいただいたら、当然のことですが、マンガで使う方向からしか作られていないんですよ。机や壁があるんですが、アニメ用としてはもっと別の角度や細部が必要になるんですね。もちろん何もないよりは全然いいんで、ものすごく助かりましたけど、計算違いはありましたね(笑)。
――全編を通じて、ご苦労されたところはどこでしょう。
鈴木
とにかくキャラが多いことですね。アフレコも大変でした。スタジオに入りきらないので2回に分けたり2部構成にしたり。私が演出を教わったのは木村真一郎監督なんですが、前に『銀英伝(銀河英雄伝説)』のOVAの演出をやってたそうで、そのアフレコも一日中待機して、大物が1時間おきに入ってくるのを待ってたそうです。
――似てますね(笑)。
鈴木
昼から夜10時ぐらいまでずっと待機とかあったので、「ああ、こういう感じだったんだ」と(笑)。初期から『ネギま!』の旧キャラだけのアフレコと、新キャラだけのと2回に分けたりしていました。
――わりと同窓会的な感じもあったのでは?
鈴木
みなさん女性なので、ブースの中が「おひさしぶり!」なんて、まんま同窓会みたいな感じで(笑)。音響監督の鶴岡(陽太)さんはじめ、音楽も羽岡(圭)さんでいっしょですし、ほぼ全員同じスタッフでやれたのは良かったと思います。そんなとき、私だけは若干の転校生感がありましたね。でも、私自身がよく観てた時期のアイドル的な方がいっぱいいらっしゃって錚々たるという感じですし、この光景は二度とないかもしれないなと思いました。赤松さんご自身が、ご自分でユーザーイベントみたいのをやられていて、前のキャストの方々ともとても仲がいいし、ものすごく高いコミュニケーション力を見せていただきました。
――完結にあたってのみどころみたいなことも、お願いできますか?
鈴木
やはり全員出てくる部分でしょう。アクションとしてもどんどん入れ替わりで出て来て、オールスター戦みたいな感じですし。前のファンの方々にも存分に楽しんでいただけるのではないかと。物語としては先があるので、これをきっかけに原作に興味を持ってフォローしていただきたいですし、それでまたアニメ的に新たな展開も生まれれば楽しいんじゃないかなと。
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