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福井晴敏のオレに聞くなよ!

UPDATE:2014.3.28

福井晴敏のオレに聞くなよ!

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小説家。 1968年、東京都墨田区生まれ。 『1998年「Twelve Y. O. 』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。 その後1999年 「亡国のイージス』、2003年「終戦のローレライ』などのヒット作を次々と生み出し、様々な賞を獲得するだけでなく、映画化にまで至る。 2006年~2009年にかけて月刊ガンダムエース誌上で『機動戦士ガンダムUC』を執筆。
アニメ版でもストーリーを手掛ける。 昨年映画化された『人類資金』の原作小説となる『人類資金Ⅵ』が2月13日に発売。
また、『機動戦士ガンダムUC episode 7』が5月17日より、イベント上映・ネット配信・Blue-ray劇場先行販売がスタート。

――連載開始の告知からすっかり日が空いてしまいましたが、いよいよはじまりました「福井晴敏のオレに聞くなよ!」。 というわけで、まずはご所望通り70年代のTV特撮リストを(福井さんのためだけに!)作ってみました。

福井:本当にやるんだ。

――(ムッとして)やりますよ。 もう告知しちゃったんだから。

福井:で、誰が所望したの? この特撮リストとやらを。

――あんただよ! 「まずは自分が十歳くらいまでに放送していた特撮作品のリストを見て、自分の特撮に関する思い出を確かめたい」って言うから、こっちは各所から情報集めて必死に……。

福井:(リストをじっと見て)抜けがあるね。

――え?

福井:ほら、あれがないじゃん。 女の子が透明人間になるやつ。 確か東京では土曜日に放送してて、なんか変身すると蝶々の羽根が生えてたような。

――(焦り)え、え? この70年放送の『俺は透明人間』ではなく?

福井:違うよ。 そんときオレ二歳じゃん。 その番組のエンディングの最後のカットでね、主人公の女の子がぱっとセーターぬぐの。 そうすると下は透明でしたってオチなんだけど、なんかそれ見てね、まだ小学校四、五年だったと思うけど、ヘソの下あたりに来るものがあったんだよね。
なんて言うの、少年の青いリビドーがこう……。

――(ノーパソで必死に検索しつつ)ひょっとして、『透明ドリちゃん』って番組ですか?

福井:ああそう、それ! ドリちゃん! 何年の制作?

――ウィキによると、78年ですね。

福井:(鬼の首をとったように)ほーら! 抜けてるじゃん。 しかも東映制作で、石森章太郎先生原作だって? 超メジャーじゃん。 読者のみなさんも呆れてるんじゃないかなぁ。 特撮作品で商売してる人がそんなことでいいのかって。 しかも忘れてたんじゃなくて、存在そのものを知らなかったってまずくないですかぁ???

――(くやしー!!!)……すみませんでした。 掲載の際にはちゃんと修正しておきますので。

注:今回使用した『70年代TV特撮作品リスト』はその不完全さが露呈したため、引き続き絶賛更新作業中です。

福井:頼むよ、君ぃ。 ボクも自分の名前を冠したコーナーで不完全なリストを掲載したくないからね。

――(殺意をぐっと堪え)それで、他の作品タイトルをご覧になっていかがですか。 70年代は特撮黄金期ですから、まさに百花繚乱な感じになってますが。

福井:確かにねぇ。 71年なんてすごいよ。 『仮面ライダー』『帰ってきたウルトラマン』『スペクトルマン』『シルバー仮面』『ミラーマン』が一斉に始まってる。 どれもオレでも知ってるメジャー級タイトルばかりだ。

――しかも『シルバー仮面』と『ミラーマン』は放送時間がかぶってましたからね。 なんて贅沢な話。

福井:まだビデオなんかなかった頃だもんねぇ。 少子化なんて言葉もなかったし、かぶってもなんとかなるだろう的なドンブリ勘定が通用したんだろうね。

――で、福井少年はどっちを見てました?

福井:多分『ミラーマン』。

――多分?

福井:あのね、オレ当時三歳よ? 三歳の頃のことはっきり憶えてると思う?

――(本当になんでこの人に聞きにきちゃったんだろうと思いつつ)……じゃあ記憶に残ってる範囲で印象的なタイトルはありますか?

福井:72年放送の『超人バロム・1』。 これは憶えてるわ。 友達とごっこ遊びしてた記憶がある。 あの目の中でケンカしてるカットは印象残ってるなぁ。

――少年2人が「バロム・クロス!」で合体する変身ヒーローですよね。 『ゴルゴ13』のさいとうたかを先生原作でした。

福井:あと『人造人間キカイダー』。 これって志穂美悦子さんが出てる方?

――それは『キカイダー 01』の方ですね。

福井:あれさぁ、どういう理由か憶えてないけど、志穂美さんが毎回ブラウスのボタンを思わせぶりに外してくシーンがあるでしょ。 あれがなんとも扇情的で、五歳児の青いリビドーを直撃するなにかが……。

――なんかそっち系の思い出ばかりですね。 仮にも作家なんだから、もうちょっと作品内容的に印象に残ったのとかないんですか?

福井:うーん……あ、『ロボット刑事』。 これは鬱な内容だったよね。 主人公のロボ刑事がみんなに嫌われてて、いいことしたつもりでも裏目に出たり。
で、なんか自由の女神みたいな人に叱られて、いつも打ちひしがれてるの。

――自由の女神みたいなのは “マザー ”ですね。 補給基地的な存在です。 厳密には打ちひしがれてばかりいたわけではないですが。 でもよく悩んではいましたね。

福井:よ、さすが! 『透明ドリちゃん』忘れてても詳しー!

――……。 他の作品はどうですか?

福井:おお、あとこれ! 73年放送の『ダイヤモンド・アイ』! オレね、この頃ハワイに行ったことがあるの。

――なんと! 当時的にはすごいことじゃないですか。 下町育ちキャラかと思ってたのに、実はお坊ちゃん!?

福井:うん、いや、まぁ、電気屋さんの懸賞で当たったんだけど、それはまぁ置いといて。 その頃のオレは落ち着きがなかったから、お袋が心配したらしいのね。 「こいつ、飛行機に何時間もおとなしく乗ってられるだろうか」って。

――(今も落ち着きないですよねと思いつつ)ふんふん。

福井:そんで、退屈しないようにって空港でめずらしくおもちゃを買ってくれたわけ。 それがダイヤモンド・アイのソフビ人形。 あのポリバケツみたいな質感のブルーを忠実に再現、かつ目玉にはダイヤっぽい石が組み込まれてるイカすやつを。 オレはそれがたいそう気に入って、ハワイにいるあいだじゅうずっと持ってたと思うんだけどね。 さて日本に帰国しようという段になったら、片目が……。

――なくなっていた、と。

福井:どこで落としちゃったんだかわかんないけど、ハワイにあることは確実なわけよ。 ダイヤモンド・アイだけに、きっとダイヤモンド・ヘッドのどこかに
(我ながらうまいこと言ったと胸を張る)。

――(うまいこと言ったと思ってるんだろうなぁと思いつつ)ハワイでダイヤモンド・アイの片目を見つけた人は、ぜひ福井さんに届けてほしいですね。 他には?

福井:♪サ~ナ~ギ~マンから~♪

――『イナズマン』ですか。 これも73年の放送ですね。

福井:ある意味、『ガンダムUC』の元ネタだよね。

――どこが !?

福井:いや、だってサナギマンからイナズマンって、ユニコーンモードからデストロイモードへってのと……。

――うわぁ、原作者がなんかすごいこと言い出したぞ。 弊社グループ的にはもちろんノーコメントだ。

福井:そんなん、オレと同世代の人ならみんな気づいてるって。 でもそれで思い出したけど、『マジンガーZ』の放送って何年から?

――72年からですが。

福井:ああ、やっぱり。 このリスト見てて、そのくらいの頃から知らないタイトルが増えてきてるなって思ったんだ。 『アイアンキング』とか『サンダーマスク』とか。

――『アイアンキング』は『マジンガーZ』の裏番組ですね。

福井:ほら、そうですよ。 そういうことですよ。 この頃から福井少年の心は特撮からアニメロボに持ってかれちゃったんだ。

――でも、『イナズマン』とか知ってるんだから、まるで見てなかったわけじゃないですよね?

福井:そりゃあね。 ウルトラマンとライダーのシリーズはちゃんと見てた記憶もあるし。 でも追いかけてって感じじゃなくなってたな。 やってたら見るって感じ。

――前回もそんなようなこと仰ってましたけど、なんでなんでしょうね? 福井さんの世代の大半が特撮からアニメに乗り換えたのは。 ロボってことなら、特撮にだって『ジャンボーグA』や『スーパーロボットレッドバロン』とかがあったのに。

福井:あ、それはどっちも見てたな。 『四十の魂』ってエッセイ本にも書いたけど、この時期って「人が乗り込んで操縦する巨大ロボ」が同時多発的に登場してるんだよね。 ジャンボーグもレッドバロンも、マジンガーの放送開始から間もなくスタートしてるから、企画準備の時間とか考えると影響されたとは考えにくい。

――でも、福井少年的にはマジンガーが一番だった?

福井:そうだねぇ。 メカ描写ってことで言うなら、レッドバロンの発進シーンなんかカッコよくて、当時はむしろ特撮の方に軍配が上がったと思うんだけど。 うーん……やっぱり、怖かったのかな?

――怖い? それはどういう意味で??

【後編へつづく】

(註:このインタビューは半分フィクションです)