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UPDATE:2014.10.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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依頼の方向性を変えた『一騎当千』
――実は私が吉岡さんと初めてお会いしたのは『一騎当千』(03)のDVD用取材でした。これはどんなきっかけで?
吉岡
ヘルプで入った『RAVE』(01)の次に、渡部高志監督のご推薦で行った初の現場でした。それで「三国志の武将が現代の女子高生に転生してストリートバトル」と、すごい説明を受け(笑)。当時はエロい女の子のバトルアクションもの自体ほとんど前例がなく、どこまで見せていいか、どういう見せ方をすればいいのか、監督もスタッフも自分も試行錯誤で工夫を重ねました。どうしても胸やパンツの印象が強いと思いますが、中盤以後はほとんどオリジナルで、13本ギッチリと伏線をガチガチに固めて書きているんです。全話通して観ていただければ、かなり楽しめるんじゃないかと思います。
――当時は原作が進んでいないのに、アニメ化される例が多かったですね。
吉岡
しかも「続編はない」とも言われていましたし、13本全部書いたのも初めてで、自由度が高くて良かったです。何より自分にとって一番大きかったのは、この作品以降、こういう系の仕事が次から次へと来るようになったことです(笑)。
――確かに、絞め技かけられて失禁ですからね(笑)。
吉岡
女の子が出てきて殴りあって、服が破けてみたいな(笑)。困ったのは、『三国志』を知らないと闘士たちの葛藤が伝わらない部分が多々あるんですよ。それで最後にナレーションを入れて、エピソードの意味をわかってもらえるよう工夫しました。
――書いていて楽しいキャラはいましたか?
吉岡
やっぱり主役の孫策伯符です。考えないでまっすぐいっちゃうキャラクターは、書いててすごく楽しいです。そう考えると、このころから子ども向け的なキャラクターが好きだったんでしょうね。
ツンデレの代表作『ゼロの使い魔』
――ヒット作では『ゼロの使い魔』(06)はファーストシーズンだけ担当されています。
吉岡
初めてライトノベル原作をやった作品です。これも続編のない前提で始めたので、完結させるために後半をかなり調整する必要があり苦労しました。一話はゲームのアニメ化を応用し、主人公目線で進む原作をひっくり返して、異世界メインのAパートではヒロインのルイズ目線でお話をつくり、Bパートでは逆に異世界に召喚された主人公目線で書いたんですが、これが原作のヤマグチノボルさんに大変喜んでもらえたのが、印象深いです。
――まだライトノベル原作自体が数多くない時代、ツンデレ的な代表作になりました。
吉岡
たしかにまだ世間でも「ツンデレ、ツンデレ」と言ってなかったですね。この後、いろんな作品で似たようなセリフを書くようになってしまって、困りました(笑)。原作のキャラクターに寄りそって書いただけで、あまり「ツンデレ」という意識自体なかったですね。2期は自分も監督の岩崎(良明)さんも次の作品に入っていたので、残念ながら1期だけの参加となりました。
設定を深く掘りさげた『スカイガールズ』
――その次の作品が『スカイガールズ』(07)です。
吉岡
これは初の2クールのシリーズ構成担当で、しかも完全オリジナルなんです。水着の美少女がメカを背負ってマッハで飛ぶわけですが、「これ、死んじゃいますよね。サイボーグですか?」「生身です」という会話から始まり(笑)。「どういう設定なんですか?」と聞いたら「考えてください」「えぇ!?」と無茶振りされて、その設定を作ることから全ての物語を拡げていき、シリーズ構成を組みました。『ダイミダラー』は、この時の経験の応用なんです。
――無茶振りに応えるのも芸風みたいです。
吉岡
逆に「やってやろうじゃねーか」と燃えるところがありますし、まず楽しいんですよ。勝手に色々な解釈をつくって矛盾点を自分でうまくフォローする設定づくりは、マニア心をくすぐりますよね。やりがいはあるし、印象にも残ります。
――「ミリタリー+少女」としては『ストライクウィッチーズ』(08)の直前でした。
吉岡
雑誌企画としては『ストライクウィッチーズ』が前ですが、たまたまアニメ化はこっちが先になりました。岩崎良明監督作品なので、さわやかな女の子に対する優しい目線がいっぱい入っていて、すごくマジメな作品になっています。「殺伐としたのは避けてね」と言われましたしね。やはり監督の持ち味、やりたいことを実現させることが脚本の仕事だと思っていますから。
――そうした持ち味は、監督さんとよく話しあうことでつかむものでしょうか。
吉岡
もちろんです。私は監督が責任をもつ以上、作品は監督のものだと思っています。まず監督がやりたいことが初めにあり、どう現実化するかをこちらが考えて提案します。脚本は設計図とも言われますが、監督から「洋風なこんな家で、間取りはこうで」という要望が出てきたら、自分は「水回りや電気配線をどうするか、人の動線を考えて扉の開け閉めをどうするか」と、見えない部分や住みやすさを考える。そんな分担でとらえています。監督の意向は最優先。さらに脚本としての完成度を高められたらなと。
――全話書かない場合、構成には別の期間をとることになるんですか?
吉岡
いや、ほとんどいっしょなんです。各話ライターに発注するために、まず前半の構成をつくり、「各話こんな感じでお願いします」となるわけですが、スケジュール的にはほぼ同じなので、自分の負担は確実にあります。自分ひとりの場合はスケジュールが大変になるから、どっちもどっち。『スカイガールズ』はオリジナルなので、ザックリ過ぎると他の方に伝わらないため、シリーズ構成表というよりは全話プロットを書いていた感じでした。原作ものだったら「ここからここまで」と割れるんですけどね。
あこがれの永井豪原作『鬼公子炎魔』
――主だったところは聞きましたが、永井豪とダイナミックプロ作品ということで『鬼公子炎魔』(06)についてうかがいたいです。
吉岡
エルフェンリート』の後、また神戸監督と組んでやった作品です。OVA全4話ですが、やはり自分が好きなものは仕事にすべきじゃないなという反省があります。原作の『ドロロンえん魔くん』は、読み返す必要がなかったくらい大好きでなんですよ。でも「大人向けの『えん魔くん』でホラーもの」という発注条件があったので、かなり違うものにしなくてはならなくて。原作の主人公が持つヤンチャな要素を分離させるのが辛くて辛くて。話が来たときは死ぬほど嬉しかったんですが、結果的に苦戦しました。もちろん、あこがれの永井豪先生とお会いしてお話もできたし、良いこともたくさんあったし。そしてホラーとしては本気でやっているので、とても面白くできたと思います。
――ホラーもジャンルがありますが、どの辺が指標でしたか?
吉岡
神戸監督とホラーものを集中的に観たとき一致した意見は、ビデオ版の『呪怨』が一番だねと。Jホラーもブームでしたし、ワッと驚かせるのではなく、ジワジワと生理的な感覚に訴えるものにしたいと。ただしセルアニメは色味がパキッと明るいのでギリギリの線で暗くするのが難しく、監督はずいぶん苦労していました。ジワジワ来るホラーはアニメでは珍しいと思いますし、そういうのがお好きな方はぜひ。
もっとも本数を多く書いた『HAPPY★LESSON』
――最後に初シリーズ構成の『HAPPY★LESSON』(02)についてもお聞きかせください。
吉岡
最初はこれもOVAで設定だけがあって、「教師でママの5人と男の子がいっしょに暮らしています」「言ってる意味が分かりません」みたいなプロデューサーとの会話から始まり(笑)、結局はOVA、ラジオドラマなど全部合わせて30本近く、もっとも多く本数を書いた作品になりました。ハーレムものと見られがちですが、実はお母さんですから恋愛要素は乏しいんですね。それでもキャラを可愛く魅力的に描こうというのが、ひとつの挑戦でした、いまだに「これでアニメファンになりました」とよく言われますし、代表作ととらえている方も多いようです。最近も、あるスタッフさんから「中学校のとき大好きでした」と言われてちょっとショックを(笑)。
――なるほど、ちょうど今は20代半ばぐらいでしょうか。
吉岡
そういう反応は嬉しいですし、思ってる以上にいろんな人が観てるものだと、感慨深いものがあります。やった甲斐がある一方、悪い道にハメてしまったかなあと(笑)。私は誰もが知っているような大きい作品はほとんどやっていませんが、やはりお客さんがいないと書けないので、「観てますよ」と言われてお客さんの喜んでいる反応をいただけるのが、最高のモチベーションになります。
脚本を書き続けること
――すごい作品数なので、全部触れられないのが残念です。これだけの仕事量が続けられる秘訣のようなものは?
吉岡
そのときそのときいつも一所懸命なだけで、秘訣は特にありません。アニメの脚本だと来るもの来るもの内容もテイストも違っていて、本当にいろんな作品がある。自分の作家性だけにこだわると自家中毒を起こしてしまいかねません。自分は最初宣伝マン、コピーライターから出発しているので、「お客さんありき」なんでしょうね。お客さんがいないと書けないし、むしろお客さんさえいれば、書けます。きっとそこでしょうね。
――エンターテイナー的な精神が感じられます。その方向で目標にしている方は?
吉岡
やはり三波春夫でしょう。「お客さまは神様です」は名言です。違った意味にもとられていますが、「お客さまがいるからこそ、自分の芸も高められる」という意味ですよね。たぶん自分の目指すべき境地は、あれでしょう。
――先ほど言われた長屋の感覚と日本の伝統芸的なものにも通じますね。とは言え、今後挑戦してみたい分野などありましたら。
吉岡
やはり殺伐としたものではなく、のんびりしたものがいいですね。キャラクターが多すぎない、下町人情的なものをもう一回やりたいです。そして私は怪獣と妖怪とロボットが大好きなので、どれかが混ざってると嬉しいかなと。さらに自分で自分に無茶振りできれば、なお良しという(笑)。そんな感じで。
――最後にメッセージ的なことは?
吉岡
こちらからは特にないんですけど……。
――私としては、まず作品の多さにビックリしてくださいと。
吉岡
もう、自分でもビックリですよ(笑)。配信が終わっているのも含めると、一般作はほとんどバンダイチャンネルさんにお世話になってるかもしれませんね。
――今も並行して何本もやられていると思います。
吉岡
『ハイスクールD×D』の第3期や未発表のものを含めると合計4本並行してますが、とにかく今は『四月は君の嘘』を、ぜひ多くの方に観ていただきたいなと。それがいちばん言いたいことです。本当に自信をもって勧められる良い作品だと思いますから。
――本日はどうもありがとうございました。
PROFILE
吉岡 たかを(よしおか たかを)
茨城県境町生まれ。脚本家。専門学校卒業後、制作進行としてシンエイ動画に入社。ゲーム会社で宣伝の仕事を経て、フリーライターとして幅広く執筆活動を開始する。ゲームのシナリオ執筆から脚本家としてのキャリアをスタートし、『下級生』(98)以降、TVアニメの脚本を数多く手がける。シリーズ構成の代表作は『HAPPY★LESSON』(02)、『一騎当千』(03)、『エルフェンリート』(04)、『吉永さん家のガーゴイル』(06)、『ゼロの使い魔』(06)、『鬼公子炎魔』(06)、『スカイガールズ』(07)、『セキレイ』(08)、『いちばんうしろの大魔王』(10)、『ハイスクールD×D』(12)、『健全ロボ ダイミダラー』(14)など。フジテレビのノイタミナ枠で現在放映中の『四月は君の嘘』(14)では、シリーズ構成と全話脚本を担当している。なお写真はNGで露出はなく、現在インターネット画像検索でトップに出る画像は別人のものである。
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