巨大変身ヒーローの代名詞とも言えるウルトラマンシリーズ。今なお脈々と続く、その原点、ずばり『ウルトラマン』。特撮による巨大ヒーローと怪獣の戦いは、子供たちの胸をときめかせ、“怪獣ブーム”をも引き起こした。そんな『ウルトラマン』の魅力に迫る!
宇宙怪獣ベムラーを追って地球を訪れ、怪獣や宇宙人から地球を守って戦った。 スペシウム光線を始めとした数多くの必殺技を持つ。M78星雲・光の国が故郷。強さだけでなく、罪無き怪獣をいたわるやさしさも持ち合わせている。地球での姿は科学特捜隊のハヤタ隊員。『ウルトラ兄弟』の一員でもある。
66年の前作『ウルトラQ』から始まった本格的特撮TVドラマは、『ウルトラマン』で、それまでに無かった新機軸「巨大ヒーロー対怪獣」を打ち出した。変身する巨大宇宙人VS怪獣(宇宙人)という、現在では定番となっている構図は、本作が生み出したものである。そして、東宝の特撮スタッフが数多く参画した『ウルトラマン』は、映画並みのクオリティのバトルシーンを、毎週、お茶の間に提供し、瞬く間に人気番組になっていったのである。
『ウルトラマン』のポイントは、『ウルトラQ』からの流れで多くの映画人が製作に参加したのに加え、TV制作で育っていたスタッフが実力を発揮し始めたことにある。造形の高山良策、美術監督の成田亨の、異能ともいえる才能は本作で開花したといえる。また『ウルトラQ』で導入されたオックスベリー社の光学合成機の性能も、カラー作品の本作で、十二分に引き出されることになった。従来の映画技術導入だけではなく、独自のTV特撮を確立し、まとめあげていったのが、監修者である特撮監督・円谷英二の厳しい目であったことは言うまでもないだろう。
71年に復活した『帰ってきたウルトラマン』に、ウルトラマン、ウルトラセブンがゲスト出演したことで、やがて「ウルトラ兄弟」の設定が誕生。平成以降も独自のシリーズ展開を見せており、さらにそれもパラレルワールド的設定として組み込むことで、ウルトラ世界は「サーガ」とも呼べる巨大な物語に発展していった。現在、展開されている『ウルトラマンギンガ』も、「サーガ」の一翼を担っている人気作品である。『ウルトラマン』は、こうしたウルトラ世界の起点となった、重要な金字塔的作品なのだ。
【テキスト:幕田けいた(大衆文化研究家)】