ここがみどころ
仕事に疲れ、帰宅して観る深夜アニメには「癒し系」と分類できる一連の作品がある。その典型と言える本作は、『R.O.D.』『かみちゅ!』の升成孝二(ますなりこうじ)監督がそんな作風を究めた記念碑的作品だ。主人公こそメイド服の司書という萌え系のルックをしているものの、作風は叙情的で実にハートフル。事件未満の日常のささやかな出来事に揺れ動く主人公こころの行動と心理を、柔らかい音楽や美しい風景とともに追っていくうちに、画面から目がはなせなくなっていく。斎藤千和の鈴を転がしたような声質も優しいテイストと親和性が高い。これはどんな嫌なことがあっても、すべて洗い流してくれる心の栄養剤なのだ【アニメ評論家 氷川竜介】