バンダイチャンネル

クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2016.7.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

  • ツイートする
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

『キンプリ』のルーツにあたる『プリティーリズム』の3作品
――他に配信されている作品では『プリティーリズム』の3作品(『プリティーリズム・オーロラドリーム』(11)、『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』(12)、『プリティーリズム・レインボーライブ』(13))があるので、もしオススメなどあれば。
菱田
『キンプリ』から入って改めて『プリティーリズム』に興味を抱いた方が大勢いらっしゃるようなので、ぜひご覧になっていただければと。特に『レインボーライブ』に関してはキンプリと地続きの作品ですから、キャラクターのバックグラウンドもよく分かりますし、『キンプリ』の次の展開が決まるまでに見ていただけると嬉しいですね。
――どういう風に見るのがオススメですか?
菱田
初めて入った人にとって、『キンプリ』はとても特異な目で見られがちですが、実はああいう変なことって昔からやってたんだよと、そこを改めて見てほしいです。『レインボーライブ』を見ると、そこに至るまでの2作品のつながりも分かりますし、そこに新しい発見がいっぱいあると思います。ぜひ一気見していただきたいですね。
――『陰陽』は男玩(男子向け玩具)ですが、女子向けならではの工夫はありますか。
菱田
男の子って虫を殺すなど本能的に残酷さを持ってるので、敵を倒すような部分に爽快感をもたせていました。ですが、女の子は違うと思います。むしろ「カワイイ・キレイ・オモシロイ」みたいな要素中心に描くようにしていました。ただ玩具販促アニメという点では、根本的な手法は変わらないですね。
――クライマックスにはバトル的な見せ場がある、みたいなことですか?
菱田
そうですね。やはり何を一番見てもらいたいかということが決まっているので、そこはちゃんと毎回見せるようにしてます。
――それとキャラクターを描くことを両立する点はどうでしょうか。
菱田
実はそこで苦労したことは、あまりないような気がしています。そもそも『プリティーリズム』も『陰陽大戦記』も、こんなに深くキャラクターを描かなくてもホントはいいはずなんです。でも僕がやりたいからやっている。なので特に苦労したつもりはなく、むしろ僕がこんなことをやってしまうせいで、皆さんに迷惑をかけてばかりではないかと。玩具が売れたら胸を張れますけど、売れないと肩身が狭くて。シリーズ的には『プリパラ』が大ヒットしたのが良かったです。僕の無念というか、やり残したことは、全部『プリパラ』でやりきることができたので、そこも含めて良かったです。
子ども向け作品で、やがてアニメファンになる「苗」を育てる
――今日は『陰陽』がいかに大事な作品か分かって嬉しかったです。
菱田
ラブライブ!』の京極(尚彦)監督と『おそ松さん』の藤田(陽一)監督も『陰陽大戦記』で育ったスタッフなんですよ。藤田くんは当時新人の演出で、京極くんは新人のCGオペレーターで2Dの撮影でした。印を切るときに漢字のエフェクトが出るんですけど、他の人よりもでかくつけてきたオペレーターがいて、それが京極くんだったんです。それで翌年ぐらいから京極くんがコンテを描いて「見てください」と持ってきて……。
――かつての菱田さんのように、ちゃんと人が育っているわけですね。
菱田
そうなんです。その後彼を『∀ガンダム』と同じ1スタ(第1スタジオ)に連れていき、『結界師』の演助にとお願いしに行きましたから。僕にとって藤田くんと京極くんはもう……あの新人のころに潰しておけば良かったと(笑)
――ヒットメーカーは、監督にとってライバル、敵ということですか(笑)
菱田
『マリオカート』のたとえ話だと、ようやく自分のゴーストを追い抜いたと思ったら、クッパからは踏みつぶされ、キノピオみたいなのがヒューンと抜いていき(笑)。でも、今後とも地道にがんばります。『陰陽』は僕にとっては伏魔殿の奥底に隠していた作品だったので、「ついに封印を解いてしまいましたね……」という感じです。
――ところで、すでに多く語られているとは思いますが、『キンプリ』の大ヒットについてはどんな感想をお持ちですか。
菱田
赤字になったらマズイので、興収1億円ぐらいまでは「良かった良かった」という感じでした。それ以降は、僕の思惑とは違うところで盛り上がっていきましたね。何十回どころか、150回見たっていう方もいるんです。単純計算でチケット代だけで24万円なんですよ。そういう方は映画の中よりも、おそらく応援上映の「今回はどうだった」と観客を見ていることが多いのかなと。僕もその輪に入りたいなって(笑)。京極くんも『ラブライブ!』がヒットしたとき、「途中から違う世界です」と語ってましたが、そのとおりだと実感しますね。1日ごと1週間ごとにどんどん状況が変わってグラフが右上がりになっていくのを現在進行形で見てて、すごく面白かったです。最初は自分の作品と思ってましたが、今はお客さんのものです。そこには若干寂しい気持ちもありましたが、でもヒットするとみんなが笑顔になるってのは間違いないです。それは、よく分かりました。
――その原点がここにあるという話が今日いただけたのは、なかなかよかったです。
菱田
上映から配信までのタイムラグも短くなり、次第に映画館に行く必要がなくなってきた中で、新しい鑑賞スタイルを示せたのは良かったなと。これが終わらないよう、僕らだけでなく、サンライズ作品やバンダイナムコ作品でも続けてほしいです。そしてずっと残っていけば、実は最初にやったのは『キンプリ』だったぞとみんなに分かってもらえれば、もう勝ったも同然だと(笑)。そんな菱田が最初に監督したのが『陰陽大戦記』だってところまで行ってくれれば、すごくありがたいです。
――「アニメ史に刻まれるべき重要な作品」ということですね。最後に今後のご予定などがあれば。
菱田
僕は玩具ものをずっとやってきたので、『キンプリ』みたいなハイターゲット作品は監督として初めてなんです。子どもに向けて、いつかはアニメファンに育つ「苗」を作ってましたが、一番美味しい果実はずっとハイターゲットものに取られていたんですよ(笑)。でも、それにメゲることなく玩具もののアニメを作り続けて、将来のアニメエリートを育てていきたいなと(笑)。やはりガンダムからもらったスピリッツを大事にしたいです。「小さな子に夢をもたせる」という点を外してはいけないと思うので、やれる限り続けたいと思っています。
――どうもありがとうございました。

サンライズフェスティバル2016 満天

【『陰陽大戦記』話数セレクション】。
上映話数
第1話降神!白虎のコゲンタ
第26話大鬼門開放
第40話極めし力、白虎新生
第52話巡る節季(とき)の中で


PROFILE
菱田正和(ひしだ・まさかず)
1972年、宮城県生まれ。サンライズに制作進行として入社後、『∀ガンダム』(99)で演出助手に。その後フリーとなり、『陰陽大戦記』(04)で初監督を担当。『古代王者 恐竜キングDキッズ・アドベンチャー』シリーズでは演出チーフ、『ヤッターマン(第2作)』(08)では第18話以降の監督を手がける。監督としての代表作は、『プリティーリズム・オーロラドリーム』(11)、『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』(12)、『プリティーリズム・レインボーライブ』(13)とシリーズをヒットさせ、『劇場版 プリパラ み~んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ』(15)を経て、通称『キンプリ』こと『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(15)の応援上映がロングランとなり、近年マスコミからも注目が集まっている。


前へ |  |  | 
菱田正和 関連作品

プリティーリズム・オーロラドリーム
▶視聴はこちら

プリティーリズム・ディアマイフューチャー
▶視聴はこちら

プリティーリズム・レインボーライブ
▶視聴はこちら