――物語やドラマ、キャラクターの立ち位置、流れが優先となると、演出的な話もかなり含んでいますが、演出を担当されるようになった経緯は?
- 錦織
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最初に処理(演出処理)を担当したのは『トップをねらえ2!』(04)の第5話です。作監(作画監督)することは決まっていたんですが、鶴巻監督から「演出もやったら?」と軽く言われ、「いいんですか!?」と思いつつ、鶴巻監督の仕事を間近で見れるならと決心しました。そのころ社内に撮影の部署ができて、演出さんとのやり取りを見て「楽しそうだな」と思っていろいろ勉強したくなってた時期でしたし。
とは言え、なかなか最初は演出の掴みどころが分からなかったですね。(タイム)シートをチェックするのは作画の時でも書いているのでできるのですが、使う脳みそが違うというか…。作打ち(作画打ち合わせ)も、どう説明すれば自分の思う通りの原画があがるか分からない。自分で描き直すこともできますが、限られた時間をどう配分してどう対処するか、何を一番大事にするかなんですね。その辺はいまだに難しいです。
――同時期に、キャラクターデザインも担当されるようになります。
- 錦織
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これも自分から手をあげたわけではなかったんですが、『グレンラガン』のときに会社側から言われて、チャンスだから引き受けたという感じでした。しかもいきなりオリジナルで、あとあと考えるとゾッとします。今石(洋之)さんや吉成(曜)さんが中心の企画の中で「お前、誰だよ!?」と思われたでしょうし(笑)。
自分がキャラクターデザインに向いているのかは、いまだによく分からないですね。ニュアンスの方を大事にしているのでカットによっては平気で顔を変えますし、割と自分でデザインを壊していく方かもしれません。ともかく作品やキャラクターの魅力につながることを優先に考えるようにしています。今石さんもそういう部分を汲んだ上で、好きにやらせてくれたので感謝しています。
――キャラはポイントを押えればいいというのは、ガイナックス流ですよね。
- 錦織
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ええ。どうせ絵は変えてくるので(笑)、誰が描いても最低限判る記号だけは入れておこう、と。今石さんの好きなアニメは、作監によって絵が変わることがむしろ良かった時代のものですし。とはいえドラマがしっかりある作品なので、この回は総作監入ってシメて、この辺はユルくても大丈夫、この回はすしおさんだから、多少処理やキャラが変わっても演出に沿って力強い絵があれば大丈夫だろう、みたいに作品にとって最終的にいい感じになればと思って進めました。観ている方の感覚とは違うので、作品のスタンスとしてクレームを言われる覚悟はあってのことだったと思います。6年経った今でも「好きです」と言ってもらえるのは、嬉しいですよね。