バンダイチャンネル

クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2015.12.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

  • ツイートする
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

世界ごとのロジックで変化するビジュアル
――主人公側の世界観は、どんな感じでしょうか?
高橋
神、悪魔、妖怪などが空想上の生きものではなく、実在することが常識となった世界です。カードゲームの方では大自然の獣たちの世界、妖怪がいる黄泉の世界、神々や天使が住む信仰の世界など、複数用意された世界が、すべて別々のロジックで存在しています。ビジュアル的なアクションの見せ場としては、その別の世界から敵のようなものが襲ってくると、周辺にはパラドクスゾーンという空間が拡がって、そこだけ異世界風に変わります。たとえば敵がこの部屋(会議室)に現れると、人間のテーブルのロジックが変わり、神々のテーブルのように外観が変化してしまったりする。
――それはインパクトのあるビジュアル変化ですね。
高橋
他にも独自の設定としては、身体が実は千枚のロジックカードで構成されているとしています。異世界ロジックに支配された空間に行くと自分のロジックが剥がれてしまい、悲しみの感情や記憶、言葉、筋肉、いろんな要素が欠落するという代償がある。
――主人公たちの戦いには、何か大きい動機や目的があるのでしょうか?
高橋
異世界から侵略してくる敵から自分たちの街を防衛する。それが、彼らロジカリストの役目です。まさに王道なヒーローですね。先天的に能力をもった者で、二十歳未満の若者しか覚醒できない。能力が発動すれば、強制的に特殊組織に招集されて街の防衛を余儀なくされる。それがスタートラインになります。たとえばトップアイドルを目指していた子が、突然戦わなければならなくなる。等身大の夢や悩みを抱えていた若者たちが、急に街を守れと言われたとき、どう自分の人生を選択していくのか。実際には選択肢はなくて、やらざるを得ないんですが、そんな状況での成長物語も用意してあります。
――アフレコに立ち会われたそうですが、声が入ってみてどう感じられましたか?
高橋
今をときめく声優陣がそろっていますね。キャラクター的にも、その声優さんが経験していないようなことを味つけしていますので、生き生きとしたキャラクターになったと感じます。ほぼオーディションでイメージに近い方を選んで演じていただいていますが、実際の声を聴いて変わる部分も当然あります。たとえばヴァルキリーというキャラは男の子っぽい女の子という設定でしたが、「小見川(千明)さんの持ち味なら、より可愛らしさを出したほうがいいな」と。そんな微調整をしています。
――方向性としては、どんな感じの作品になりますか?
高橋
アクションと笑いと涙、ですね。ものすごく贅沢ですが、総合エンターテイメントであり、さらに王道のファンタジーアニメを目指しています。ものすごく明るい世界観になったので、そのノリを楽しんでもらいたいと思います。
――今まで高橋さんの脚本歴では、どんな位置づけなのでしょう?
高橋
僕なりに思う「美少女アニメ」ですね(笑)。高橋版美少女を見てほしいなと。『ルパン三世』(放映中の新作)でも新ヒロインを書きましたが、あの作品は世界観がダンディズムでしたから、今回はズバリ「美少女アニメ」というところに挑戦しています。今までにない美少女たちに見えればいいかなと。
――具体的には、どんな部分ですか?
高橋
主にちょっと変な「笑える個性」を意識しています(笑)。玉姫というキャラクターは、真面目で学級委員長タイプという点では定番ですが、かたやヴィーナスは誰でも口説いてしまう性格(笑)。そんなふたりがトランスすると、玉姫は真面目なスクールガールなのに露出が激しくなって恥ずかしい。それでも戦わなくてはいけない。そんな「組み合わせの妙」を工夫しています。そこから個性、魅力を引き出すようにしたいなと。
キャラクターを中心にした発想
――高橋さんは、常にキャラクターを大事にされている印象があります。
高橋
はい。これまで手掛けた作品でも、キャラクターをつくることにこだわっていました。どこかで見たことのあるキャラではなく、新しいキャラクターをつくり掘り下げていく。『ラクエンロジック』でも「僕がやる意義は?」と考えたとき、コミカルなヒーローものの女子版、そんな切り口を意識しました。自分なりの裏コンセプトという感じですが。
――「バディもの」という点でも、共通していますよね。
高橋
ただヒーローを扱った作品の多くは、顔が隠れるスーツを着てアクションするヒーローものですよね。今回は合体(トランス)という形で、人間と神の半分ずつを持ち寄ったビジュアルに一体化するという点に特色があります。顔も露出していますし、違うパートナーと組むとビジュアルがガラリと変わったりします。
――では、高橋さんとしてのアニメ版のみどころは?
高橋
僕なりに面白いキャラづけをした部分が多々あるので、キャラクター同士の会話のやり取りを楽しんでいただければと。千明孝一監督と動画工房さん、2Dチームと3Dチームのスキルが結集したアクションも、大きなみどころですね。でも「みどころ」と聞かれると、やはり「全部」としか言いようがないですけど(笑)。
――千明監督とはどんな風に進められているのでしょうか?
高橋
監督は、かなり柔軟にいろんな提案を受け入れてくださる方なので、自由にやらせてもらっています。「笑えるキャラクターにしたい」という部分も、「ぜひぜひ」という反応で、ものすごく柔軟な考え方を持っている監督だなと。
――逆にビジュアル面で、「こうなるのか!」と感じられた点は?
高橋
オリジナル作品で、まだどうなるか分からない時点で最初にあがってきた島崎麻里さんのキャラクター原案が、実に良かったです。ものすごくデザイン性があり、キャラクターの魅力や特色が活きたデザインという印象を受けました。いろんな異世界が存在するので、神や悪魔やメカがミックスされると、絵的にすごく混乱して見えかねない。それで島崎さんは共通のビジュアルイメージとして、緑のラインを衣装に入れているんです。人と神が合体する部分は直球のファンタジーですが、そこにひとつルールづけすることで、ロジックという世界観のあることが分かるのがすごいです。ただ、ロジカリストたち各自にパートナーがいるし、合体後の原案も必要になりますから、デザインの分量がものすごいことになってしまい(笑)。その分、絵的にもいろんな楽しみがあり、贅沢な仕上がりになったと思います。
――敵側はどんなビジュアルになるのでしょうか。
高橋
安藤賢司さんがクリーチャーデザインを担当されていますが、異なるロジックを持つ異世界の敵としての魅力がありますね。単純に恐いだけではなく、やはりちょっと愛される敵でもあって、ユーモラスさを意識したテイストが入っています。
――全方位的に魅力たっぷりな感じですね。
アニメに関わったきっかけと原体験
――話題は変わりますが、そもそも高橋さんがアニメに関わるきっかけは?
高橋
アニメのデビューは『TIGER & BUNNY』です。作家としてまだ作品をやれていなかった時期で、アニメに関わらせていただいたのは初めてでした。ありがたいことにヒットしたおかげで、『曇天に笑う』ではVAPさんからお話をいただき、初めてシリーズ構成を担当しました。その次が『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』ですから、「もう『ルパン』やっていいの?」という戸惑いもありつつで。
――その『ルパン』は、どんなきっかけだったんですか?
高橋
小池健監督が、「実写ドラマのライターがいい」と思われたようですね。あの作品が熱烈に支持されたので、新シリーズのときにも呼ばれたのかなと思います。
――アニメを手がけられる前は、アニメのことをどう思われていましたか?
高橋
子どものころから、漫画やアニメは大好きでした。でもどちらかというと、真ん中からちょっとだけオタク寄りなポジションでしたね。もちろん、いつかはやってみたいという想いもありました。
――ちょいオタクというのは、どういう感じなのでしょう?
高橋
少女漫画が原作の『ママレード・ボーイ』とか見てました(笑)。他は王道の『ドラゴンボール』や『幽☆遊☆白書』とか、少年ジャンプ系ですよね。高校のときに「少年マガジン」の『金田一少年の事件簿』にハマったのも、今にして思えば運命的でした。ドラマ版に関わることができましたから。それとゲームが大好きなので、RPGでは『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』などをやりこみ。中学高校では『RPGツクール』というパソコンソフトにすごくハマっていた時期もあります。自分でセリフを書いたりダンジョンをつくったり。まだ町とダンジョン1個つくっただけなのに、友だちにプレイしてもらったり。町人のセリフや主人公のセリフ、キャラクターをオリジナルで考えるのがものすごく好きになって、アニメなど僕の原点はそこにあるのかなと思っています。
――その時期から、「人に見せて楽しんでもらう」という意識があったんですね。
高橋
そうですね。小学校では漫画も描いてみましたが、近くにものすごく絵が上手な友だちがいて、「これは絵でやっていくのは無理だ」と子どもながらに挫折しまして(笑)。ゲームならビジュアルはコンピュータがつくるから、僕はストーリー、キャラのセリフ、性格、テキストを考える方向にいこうと(笑)。絵がうまければ、漫画家を目指していた可能性もあるでしょうけど。
――そのころから、興味はキャラクター中心なんですね。
高橋
ええ、キャラクターが大好きです。オリジナル作品で自分がもっともワクワクするのは、キャラクター設定を考えてるときなんです。名前は何、年齢はいくつ、どういう外見で、好きな食べもの嫌いな食べもの、趣味は何々。そういう細かいパラメータふくめて考えていくのが一番楽しいです。
――原作がないオリジナルキャラクターをこの世に産み落とすとき、どこを手がかりに創造していくのでしょうか。
高橋
やはり、お客さんに対する「ツカミ」の性格からですね。いわゆる「おてもと企画」と同じで、箸袋の裏に書けるような短いお題ありきです。「マジメな娘なのに恥ずかしい格好させられる」みたいなワンシーンのイメージがまず浮かび、それにパラメータで肉づけしていく。今回の主人公の剣 美親というキャラクターの場合は、王道のヒーローものの主人公です。でも、正義感にあふれた直球勝負の主人公像は語り尽くされている。すると天才肌とかクールとか、変化球的なキャラクターになりかねない。でも、今回はあえて正義感あふれるヒーローにしようと。そのままだと面白くないので、過去の王道ヒーローが言いそうなセリフを口にすると、周囲から「ベタなこと言いやがって!」とツッコまれる。そんなキャラクターにしました(笑)。メタフィクションっぽいですが、こういう情景が浮かんだ瞬間、「じゃあこんな性格で」というイメージが生まれたりします。
――やはり脚本的な発想ですね。そこにたどり着くまで、大変では?
高橋
いえ、キャラクターを考えるのは大好きなので、そんなに時間は。むしろ、どうストーリーに落としこんでいくかです。自分なりに面白いと楽しんでつくったキャラクターとはいえ、どんな世界観の中でどういう信念を持って生きる物語になるのか……。そして世界観の設定には苦労しています(笑)。プロジェクトのスタッフのみなさんのアイデアをいただきながらの構築なので、ものすごく時間がかかりました。
前へ |  |  |  | 次へ
高橋悠也 関連作品

ラクエンロジック
2016年1月9日23:00より
配信開始



TIGER & BUNNY

▶視聴はこちら

曇天に笑う
▶視聴はこちら