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UPDATE:2016.12.26

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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テレビ番組という意識の強い『タイムボカン24』
――新番組では、『タイムボカン24』についてもうかがいたいです。これはレベルファイブさんからの依頼でしょうか?
加藤
実はまずタツノコさんで動いていたリメイクの企画にお声がけいただきました。そんななか、日野(晃博・レベルファイブ代表取締役社長/CEO)さんなら絶対に『タイムボカン』が好きなはずだという確信みたいなものもあって、「ご興味ありますか?」とうかがったのが最初です。実際に日野さんも大好きだとおっしゃっている作品で、ご一緒でて大変ありがたいです。
――あのシリーズは「テレビ番組としてのアニメ」の最たるものですよね。
加藤
笹川ひろしさん(当初のシリーズ総監督)との会議も面白かったです。面白いことはどんどんやってしまえばいい。それを徹底している。もうナチュラルにそう思われている感じで、「こういう方だからあれだけの作品を生み出せたんだ」と実感できて、すごく楽しかったです。「困ったことがあったら何でも言ってね」と言ってくださったのにも感動しました。
――昭和の『タイムボカンシリーズ』には、ライブ感がすごくありました。お便りを読んだりして……。
加藤
ナマな感覚が多くて、テレビ番組っぽいですよね。僕の見たのは再放送ですが、それでも変わらず引きつけられるものがありました。それって地続き感なんじゃないかと。アニメのキャラが語るというより、すごく近いところでしゃべられてる感じなんです。
――その感覚は特に敵側の三悪(さんあく)の方が強いですよね。
加藤
やはり「三悪が主人公」とすら言えてしまうシリーズなので、彼らが柱という部分は確実にありますね。時代は変わっても、三人の黄金のバランスは変わらない。やはり後続のいろんなものに影響を与えた大発明かなと。
――ツブヤッキーの名前など現代のネタも取り入れられてますね。時代と寄り添う感じも意識されてますか?
加藤
それもよりどころのひとつですね。いまのネタとくっつけたとき、ある種の説得力が生まれるかなと思っています。今回の放送枠は近年にしては狙うべき視聴率が高めな枠なんですよ(よみうりテレビ系:毎週土曜日夕方5時30分)。ニュース番組から続けて見てくれたらいいなという想いで、情報を多く盛り込んでいこうと話しています。よみうりテレビさんもすごくテレビ番組的なアニメを求めていますし。その点では、一般のアニメづくりとは少し違ったことを気にしています。
――「24」というキーワードについては、いかがでしょうか。
加藤
これは日野さんからのアイデアで、メカが24種類あるということです。いまのベースとなった企画書は日野さんが出してくださったもので、ものすごく面白かったんです。それを見た時にみんなでものすごく盛り上がりました。日野さんの凄さを改めて目の当たりにした感じでしたね。
――シリーズ構成的には1話完結を基本に考えているのでしょうか。
加藤
はい。少しだけつながってる部分もありますが、基本1話完結です。
――そういう場合、1話分の展開ではどんなことに気をつけていますか?
加藤
なるべく大人でも見られるようにということですね。ずっと戦ってるシーンが続くと、大人はチャンネルを換えてしまうんです。もはや『タイムボカン』は二世代を超えたコンテンツですから、むしろお父さんがメカを欲しがって買っているなんて聞くのも嬉しいです。
――ギャグに親子で笑いあったりする点は、『妖怪ウォッチ』にも共通性を感じます。
加藤
「面白ければアリ」と考えて、「子どもにわからないからこのネタやめようよ」としない点は、両方共通かもしれません。素直な面白さがあれば、パロディかどうかは関係なく笑ってもらえると思います。親はそれをパロディとして見るから、二重構造になってくる。そのとき昔の何のネタを引っ張ってくるかはその場その場で考え、僕らのキャラがやって面白いかどうか、自分たちが面白いかどうかが、最大の判断基準になりますね。極端な話、子どもたちにとってはパロであろうがなかろうが、初めて見るものとして同じな部分もあるんです。確実に笑いをわからせるため、振りを作ってちゃんとボケてちゃんと突っ込むということを、セリフでも絵でもしっかり見せていく。どこかどうして面白いのか、多くの方にわかりやすい笑いにしたいと考えています。まず自分たちが楽しいものを見つける。そうすれば、どう分かりやすく伝えるかはかなり工夫できる。だからまず自分たちが会議で笑えたらアリ、という感じですね。
テレビの特性を活かした作品づくり
――ネタとして出た笑いをどう転がしていくか、その膨らませ方には興味があります。
加藤
それこそニュースと同じで、「情報を出す順番」がすごく大事になります。少しでもわからないことがあると、笑いに集中してもらえなくなる。なので笑うための情報の与え方は、笑える部分を確実にキャッチできるように調整しておかなければいけない。全体の構造自体は、ものすごくシンプルにわかりやすくする。そうでないと、余計なことが頭に残ったりするんです。そうした情報の出し方についてはかなり細かく精査して、シナリオ段階でネチネチ直してます。情報の出し方を精査するのは、笑いでなくても同じですね。『ドリフェス!』も、そんなプロセスで煮詰めた物語です。
――完成品ではシンプルに見える部分も、調整がいっぱい入っているということですよね。
加藤
結局わかりやすくできているかできてないかで、笑えるか泣けるかの度合いは大きく変わります。不純物なく情報を伝えることで、感動的なところへ人をもっていける。それは、なるべく大勢の方に観ていただきたいエンタメとしてすごく大事なことかなと。
――うかがっていると、放送作家時代からお話の意識が一貫しているように思えます。
加藤
そうですか? 僕としてはアドリブの繰り返しという気持ちなんですよ(笑)。どうしても思いつきをモノにしていく仕事ですから。でも、そのアドリブの繰り返しを誰にでもわかるように変えていくのが、僕の仕事のひとつかなと思います。決めゼリフをパッと思いつくには放送作家っぽい瞬発力がいるかもしれませんね。でも、ネチネチ直していくときには、瞬発力とは逆の力が必要です。
――あたえる情報の操作には、時間配分も重要ではないでしょうか。
加藤
30分番組としての時間配分には気をつけていますね。必ず気をつけているのはアバンです。オープニングの前に「今日は何する話」というのが伝わるようにする。これはどの番組でも気をつけています。
――『アイカツ!』や『ドリフェス!』もアバンがサマリー(要約)で、まず結論から語るという手法ですよね。
加藤
「今日はこの話」で引きを作ってからオープニングに行く。これも海外ドラマから学んだ発想です。放送作家出身ということもありますが、テレビで流すからにはお客さんが「いつでも見るのをやめられること」を意識しますね。いつでもチャンネルを変え、消されてしまう。そのタイミングを作らないことが、放送作家としての大事な使命なんです。なので「終わってしまう」という収束感を作らない。ついなんとなく醸し出した収束感でも、人は離れていきます。もっと言えば、アバンに引きがないと、オープニングの間にチャンネルを換えられるとも思っていますね。
――そうした点も「番組」らしい考え方だと思います。
加藤
地上波の番組としてかける以上は「偶然そこで見てしまった人」も大勢いる。だとしても、なるべく最後まで見てもらえるようにしたいなと。これはCMのまたぎ方も同じですね。ちゃんと引っ張って、収束感を出さない。シナリオ監修の際も、そこに気をつけています。テレビにはツイッターなどをせずにネットでは見えないお客さんが山ほどいると考えています。マスになればなるほどそのようなライトな層も増えていく。なので、情報の見せ方をより丁寧にしたほうがいいと思います。
――その結果、開かれた大衆的な作品になれるということでしょうか。
加藤
小さめのストライクゾーンめがけて思いきり投げる作品もあると思いますが、僕はやはりマス向きのほうが得意なんです。『妖怪ウォッチ』でも、お父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃんと、子どもの後ろにいる人たちがどんどん入ってきました。あの感じを意識して作っていくことが大事かなと。僕の子どものころの原体験に戻ると、『アニメ三銃士』や藤子不二雄作品は、やはり家族で見ていたんです。そういう場がいまでもあればいいなと思うし、そこが次のアニメ世代の入り口になるだろうと。特にいまの子の親の世代は、アニメを見ること自体への抵抗はまったくないはずですから、そこはやりがいのある部分ですね。
――テレビというメディアは、もともとそういう大衆、万人に向けて拡散していくものでした。その特性を取り戻しつつあるとなると、面白いなと感じました。
加藤
いまはYouTubeでアニメを見る子どもが増えている時代ですが、それでもやはりテレビの強さは、とても感じますよ。
――貴重なお話を、どうもありがとうございました。


PROFILE
加藤陽一(かとう・よういち)
1979年、東京都生まれ。大学在学中からラジオ番組、テレビ番組の放送作家として活動を開始。2003年に『まっすぐにいこう。』でアニメ脚本家、シリーズ構成としてデビューする。その後、『ミラクル☆トレイン~大江戸線へようこそ~』(09)、『宇宙兄弟』(12)、『ムシブギョー』(13)、『デュエル・マスターズVS』(14)など、数々の作品でシリーズ構成・脚本を担当している。近年では『アイカツ!』(12)、『妖怪ウォッチ』(14)など商品と連動しながら、キレ味のいい決めセリフやユニークなキャラで大人気作品のシリーズ構成を担当。ヒットメーカーとして注目が集まっている。最新作は『タイムボカン24』、『ドリフェス!』等でシリーズ構成を務めている。


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