宮沢賢治は銀河鉄道を指して「不完全な幻想第四次の鉄道」といい、死者と生者が乗客として交差する鉄道を描きましたが、この作品では同じような意味を持つ空間を狐耳の少女達が働いている古い木造建築の旅館とその周囲の場所によって描いています。賢治の表現を借りるなら、この作品は「不完全な幻想第四次の旅館」についてのお話とでも言えましょうか。
かわいらしい狐の女の子たちを愛でる作品として見ることができますが、細かく描かれた背景美術やそれによって表現される季節の移り変わり、まるで仏教説話かと思わせるような心温まるお話のつくりなど、味わう要素の多い作品です。わたくしなどはOPの旅館の木目の表現を見ただけでノスタルジー的な何かに悶えてしまします。