喪失と回復の物語である。そして、どんなに複雑な筋の物語でも多くはその変奏としてみられる。思えば、多くの物語は何かの不在や喪失から始まり、代替物となる新しい「何か」を探究するお話となることが多い。大デュマの『ダルタニアン物語』のオマージュの作品のように始まるこの物語は血沸き肉躍る冒険と謀略と謎で最後まで惹きつけられる。最初は、だれが、ポトスでアラミスで敵役のリシュリューなんだろうと、わくわくした。しかし、それは現代的に味付けられた『三銃士』だった。「朕は国家なり」という王政。個が国家を表すものから、「自由・平等・博愛」という権利が個人個人に認められた時代に移行する先触れを表すように。その謎や誇りや愛や義務のために自由意志をもった登場人物が各々の役割を全うし、歴史の流れの中に消えてゆく。喪失は、さらなる大きな喪失へと向かい、その「回復」は大きなタナトス(滅び)へと向かう・・・これは、名作。