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春夏秋冬代行者 春の舞 第陸話(24分)
還る場所
――いらない。この方の傍に居る権利以外、何もかも。雛菊が帝州での春顕現を進める中、さくらの心は乱れていた。十年前、雛菊が攫われる原因となった冬の里襲撃事件。責任の一端を負っている冬主従の存在を、主が憎むことなく慕う言葉を言い続けるからだ。さくらは再び過去を追走する。主が賊に誘拐されてから、さくらは冬の里に身を寄せるも、ある日飛び出し、一人で健気に雛菊を探していた。そこでもたらされる雛菊の帰還の報は、さくらに歓喜をもたらしたが、同時に悲劇の始まりでもあった。「もとの、ひなぎく、は、死んじゃった。今の、ひなぎく、は、ちがうひと」 機械のような辿々しい喋り方をする雛菊。「みんな、『あの子』が死ぬの、待ってた、んでしょ。なら、そうしてあげる。そのうち、今の雛菊も、死ぬ、から、放って、おいて」 あまりにも世の中に絶望し、自暴自棄になっている彼女に、さくらはそれでも告げる。「さくらの還る場所は、一つです」 代行者の始まりの物語は、以下のように続く。――厳しい暑さの夏は自分を疎んだ大地への嘆き。段々と生命の死を見せていく秋は自分をまた受け入れてもらう為の時間として。大地がそれを受け入れたので、季節は春夏秋冬と巡るようになったのである、と。