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<月刊>アニメのツボ

UPDATE:2014.7.25

クリエイターズ・セレクション「監督:西村 純二 インタビュー」公開中!

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業界著名人がアニメ作品をオススメ!

『今日からマ王!シリーズ』『Simoun』『true tears』など幅広い作風とひと味違う演出術で知られるベテラン・西村純二監督。P.A.WORKSと組んだ最新作『グラスリップ』に至る波瀾万丈の作品歴について掘りさげます!

監督:西村 純二 インタビュー

取材・構成:氷川竜介

クリエイター感覚で、アニメのツボを徹底的に刺激!自作にまつわる貴重なエピソードから、
子どもの頃に大好きだったアニメ、プロを目指すきっかけとなった衝撃の作品などなど、
魅力的なガイダンスを聞きだします!
『うる星やつら』での押井守監督との仕事
――そして押井守監督の『うる星やつら』(81)にも各話演出として参加されます。
西村
最初に担当した回は忘れられないですね。シャコ貝の妖精が登場する話(第92話「ビンづめレター海辺の怪!」)で演出・絵コンテを担当しました。やまざき(かずお)さんとディーンの社長の長谷川(洋)さんに「一本描いてみない?」と誘われたのがきっかけで、「待ってました!」とばかりに一気に描き上げました。自分でも会心の出来だと思って押井さんに提出したら、ほとんど手直しはありませんでした。自信満々で「当然だ」と舞いあがってましたが、後にやまざきさんと長谷川さんに聞くと、「まだお前は廣川さんに教えてもらっていたから、不安で不安で。でも、人がいなくてさあ……」なんて言われ、実力が評価されてた分けじゃないんだと・・・・(笑)。
――『うる星』の演出では中核の印象があるので、意外ですね。
西村
ローテーションに入ると、今度は次第に演出さんがいなくなってしまうんです。ある日、押井さんに「西村くんね、実は演出ってさ、今は君と僕の2人しかいないんだよ」と言われて、「ハア?」って驚愕するわけです(笑)。そうなってからは、ひたすら2人でガンガン演出しました。あの「お母さんが夢見る話」(第101話「みじめ!愛とさすらいの母」)がありますよね。
――アニメ誌でも騒然となった屈指の問題作ですね。
西村
押井さんのシナリオだったんですけど絵コンテは自分で、そんな状態でした。案の定、「わけの分からない話だぞ」と大騒ぎになってしまい(笑)。でも結局、あれが『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(84)の元ネタですよね。
――その『ビューティフル・ドリーマー』でも、演出を担当されています。
西村
あれが直接の理由だったかは分かりませんが、「お前やらない?」と押井さんに誘われて、あこがれの劇場をやれたんです。廣川さん、今沢さん、押井さんと、みなさんには若いころに大変お世話になりました。
『プロゴルファー猿』で監督デビュー
――各話演出から監督になっていく、その経緯についても教えてください。
西村
うる星やつら』は3年目から監督が押井さんからやまざきさんに交代しますが、そのやまざきさんが劇場版で忙しくなり、TVシリーズの助監督に推薦されました。実際には現場監督に近い仕事なので、このあたりが監督業の始まりという感じですね。でも『らんま1/2 (熱闘編)』(89)でも『TVA 逮捕しちゃうぞ』(96)にしても、最初から僕のところに監督のオファーがあったわけではなく、他の方からの引き継ぎなんです。つまり「もうお前しかいない」と消去法で言われて途中参加(笑)。監督としてのカッチリとした仕事をやった感覚がある最初の作品は、『プロゴルファー猿』(85)です。これはTV局や制作会社のプロデューサー初号を観に来て意見も言ってくれて、充実してました。それより前は、みなさんあまり現場に関心がくて、その分「やりたいことをやってもオッケー!」みたいな空気でやっていたんですね。決してお金にはならないから、好きなヤツが一生懸命つくることで結果的に面白くなる、みたいな作り方で。
――細かくコントロールされている現在とは、だいぶ違いますね。
西村
当時はオンエアしたらそれで終わり、つくった作品が放映後にもお金になるという発想自体、ほとんどなかったですから。やはりアニメのビジネスがビデオパッケージを売って儲ける方向にシフトしていった結果、「誰がつくる?」「どうやってつくる?」「丁寧にしないと」などなど、ガチガチに固まっていきましたね。
――『プロゴルファー猿』では、今川泰宏さんの大胆な演出も話題になりました。
西村
最初は「ガンダム的なコンテ」があがってきて驚きました(笑)。それまで富野作品をだいぶ経験されているので、当然だとは思いつつですが。
――具体的には、どんな部分が違うのでしょうか?
西村
これは、完全な伝聞ですが富野さんは「カット頭とカット尻は必ず動いていなければならない」と指示なさったらしい。「引きセルでもカメラワークでも何でもいいから、とにかく動かせ!」と。『機動戦士ガンダム』にしても、枚数は使えないからそんなに動かせない。その代わり、カメラを動かす。つまり画角の大小も動きのうちだと。まずドーン! と広い画を構えて、グッとアップになったときには作画で動いている。とにかく常に画面が動き続けていて、躍動している。そういう画を頭からケツまでつなげていく。そんなコンテが来たので、「いやいや、この作品は違うから」とお願いしましたが、たしかに彼の参加で方向性も固まりました。
――手応えや周囲の反応はいかがでしたか?
西村
今川さんや須永(司)さんなど、実力のある演出が参加していますし、原作をリスペクトして忠実に再現しているという自負もありました。何より原作者の藤子不二雄Aさんがものすごく気にいってくれて、「ああ、方向性ほ正しかったんだ」と監督としての自信につながりました。
初のオリジナル作品『Simoun』
――時間的にはだいぶ飛びますが、初のオリジナル作品『Simoun』(06)について、ぜひうかがっておきたいです。
西村
実は諸事情でメインライターだった小山田(風狂子)さんが1クール目で降板され、すでにオンエアも始まっていた状況だったので、後半は岡田麿里さんと自分でお話をつくっていきました。シナリオ書き始めからコンテUPまで3週間という厳しいスケジュールだったにも関わらず、岡田さんが侠気(おとこぎ)を見せてくれて、ものすごい勢いで書きあげる。なおかつ僕のシナリオも的確に修正してくれたので、ものすごく助かりました。キャラクターデザインの西田亜沙子さんも侠気のある女性で、お話を気に入ってくれて、秘蔵のキャラやアイデアをいっぱい出してくれました。あの2人の女性の勢いのおかげで、最後まで突っ走ることができた作品です。
――物語内容に関してはいかがですか?
西村
自画自賛もどうかと思いますが、実に面白かったです。女性しか生まれない国があり、17歳になると男になるか女になるか自分で選択する。神につかえる巫女でありながら、Simounを操って兵士として最前線で戦う女性たちがいる。前半では戦闘中心のハードな物語が展開されますが、責任を問われてSimounのメンバーが地方に飛ばされてしまう後半は、岡田さんメインです。そっちでは女同士の愛、姉妹の禁断の愛などが描かれ、とんでもないことを口走るヤツまで登場してくる。岡田さんなりのハードさが前面に出てきて、相乗効果でものすごく世界観が拡がりました。そこに自分の歌舞伎系、ケレン味ある演出が加わった感じでしょうか。
――出崎統監督作品で多用される「ハーモニー(セルの線に背景の質感を重ねる技法)」が、本作では印象的に使われていました。
西村
あれは出崎統さんのハーモニーとは別ものです。出崎演出は形だけ真似しようと思っても、絶対にムリ。自分だけの付加価値が必要なんです。自分としては、そういう考えでハーモニーの演出を以前からやってきました。でも『Simoun』では美術が小林プロダクション(小林七郎美術監督の会社)だったので、ひと味違いましたよ。解体した『Simoun』の中をのぞくカットでは、真っ白なハーモニーが上がってきて、つまり『あしたのジョー2』のラスト(矢吹丈が真っ白な灰に燃えつきる)とまったく同じタッチなわけです。「これはすごい!」と、狂喜乱舞(笑)
――改めて作品を振り返ってみて、いかがですか?
西村
初のオリジナルということもあり、忘れられない作品となりました。シナリオにもローテーションで参加できましたし、岡田さんとの仕事はその後の『true tears』にもつながっていきます。
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