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<月刊>アニメのツボ

UPDATE:2014.7.25

クリエイターズ・セレクション「監督:西村 純二 インタビュー」公開中!

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業界著名人がアニメ作品をオススメ!

『今日からマ王!シリーズ』『Simoun』『true tears』など幅広い作風とひと味違う演出術で知られるベテラン・西村純二監督。P.A.WORKSと組んだ最新作『グラスリップ』に至る波瀾万丈の作品歴について掘りさげます!

監督:西村 純二 インタビュー

取材・構成:氷川竜介

クリエイター感覚で、アニメのツボを徹底的に刺激!自作にまつわる貴重なエピソードから、
子どもの頃に大好きだったアニメ、プロを目指すきっかけとなった衝撃の作品などなど、
魅力的なガイダンスを聞きだします!
P.A.WORKS初の自社制作『true tears』
――その『true tears』(08)もP.A.WORKS初の制作第1作目、なおかつオリジナル作品ということで大きな話題となりました。
西村
きっかけは何度か話してますが、社長の堀川(憲司)さんからの電話です。その時点ではタイトルしか決まってなくて、監督を指名した理由を聞いてみたら、「『風人物語』(04)の監督インタビューで冗談を飛ばしている姿が気にいった」と(笑)。監督としての技量だけじゃ駄目なんだと。当時の設立間もないP.A.WORKSの若いスタッフの中で全体をギクシャクすることなく、現場を上手くコントロールしてまとめながら動かしてくれる監督がいいと。そういう意味なんですね。
――結果的にP.A.WORKSの名を高めた作品になりました。
西村
「一本立ちして初めての作品をつくるぞ!」という意気込みは強かったですね。自分にも「オリジナルでお話がつくれる」という点に高揚感があって、それも見事に合致したし、何かとタイミングが良かった作品です。ストレスもほとんどない状態でしたから、だからこそあれだけのものにできたんです。監督がいうのも何ですが、いま観返してもいい仕事だと思います。自分で言うの何ですが、いま観返してもよくできてるなと。
――反響は、いかがでしたか。
西村
杉井ギサブロー監督にアニメ雑誌で取りあげていただき、それがすごく嬉しかったですね。「良作だけど、何が良いかと聞かれると、何が良いのか言えない。シナリオなのか演出なのかキャラなのか作画なのか音楽なのか撮影なのか……。いや、それらがすべてが相まっていいんだ。総合芸術である映画のつくり方として素晴らしい」。だいたいそんな感じで、たしかにどこかが欠けたらダメになっていた作品だと思います。
――丁寧な画づくりの一方で、第5話では同じシーンを別の視点から繰り返すなど、挑戦的な演出もありました。
西村
前に別の作品で同じ演出をしたときにはミスだと思われました(笑)。この作品では他にも無茶ぶりをかなり要求しましたが、快くやっていただき、すごく自由だと感じました。自社制作の一本目なら冒険せず、ちゃんとつくってほしいと思うはずです。でも同じレベルで、監督にもやりたいことをやってほしいと。そんな想いを感じて、非常に感謝しています。
――『true tears』で、P.A.WORKSの方向性が決定づけられた感さえあります。
西村
高校生の日常を描く作品が多いとはいえ、ドラマ仕立てで構成して、なおかつリアルな心理描写でつなげていくような作品は、他にあまりないですよね。P.A.WORKSの新作が発表されると、お客さんも「『true tears』的な作品がまた来るぞ、これは観たいぞ」と、待ち構えているのではないかと。堀川さんはサービス精神あふれる人ですし、自分自身も求められるものを提供したいという気持ちが強いですから、そういう方向にはなります。そしてその中で「違うものをやって驚かせたい」という想いも強いんですね。
P.A.WORKSとの最新オリジナル作『グラスリップ』
――その最新作の『グラスリップ』で、6年ぶりにP.A.WORKSでオリジナル作品の監督を担当されます。どんなところが出発点だったのでしょうか?
西村
現代の高校生たちのリアルな恋愛模様を、奇想天外、荒唐無稽の方向に振れることなく、心理描写のつながりとして描いてほしい。そうお願いされました。となると『true tears』的なものを思い浮かべますが、さすがにそのままというわけにはいかない。新たなアレンジを加えつつ、物語の舞台と話の内容を練っていく流れで始まりました。
――舞台は福井県の「三国」です。ロケーション選びのポイントを教えてください。
西村
東京から離れすぎると大変ですから、新潟、仙台、京都ぐらいまでの範囲になります。あとは一定の狭い空間のなかに色んなものがある土地がいい。なおかつそこに歴史や文化がある程度根づいていてほしい。歴史や文化を登場人物たちが体現する必要はありませんが、世界観が俄然膨らみますから。
――地形的にはどうでしょうか。
西村
『true tears』の海に加えて、山もあるところがいいなと。それでまず日本海側の港町を探しました。堀川さんには「北陸制覇の野望」があるようなので(笑)、それも加味しつつ候補を絞っていく中で三国を発見したんです。謳い文句が「日本三大花火のひとつ」ということで「お祭り」が欲しいなと思っていたから、ちょうどいいなと。
――実際にロケハンされて、いかがでしたか?
西村
ものすごく良かったです。最初は「日本三大花火」という謳い文句に、すいません正直、半信半疑だったのですが。衝撃的でした。素晴しかった。防波堤の先に船を並べ、打ち上げを海岸から見ていたので距離も近く、「花火って火薬の爆発なんだ」ということを実感しました。すぐ目の前で爆発がたてつづけに起こり、すさまじい煙が同時にブワーッと吹き上がる。すぐ次の爆発が始まり連発になっていくと、海の上に煙幕ができて次第に何も見えなくなるんです。ものすごい爆発音が鳴ってるのに、花火は見えない(笑)。風向きが変わると、煙がぶわーっと流れていく。花火そのものもドデカいので、ダイナミックさにひたすら圧倒されました。第1話にその花火大会が出てきますが、主に煙の描写に反映しています。3DCGスタッフにも力説して、良い感じで再現してもらいました。
――物語についても、教えてください。
西村
とある女の子がいて、小さいころから光をまぶしいと感じると、モヤモヤしたものが見える。何だろうと疑問に思っていたところに駆(かける)という転校生が現れて、「それは未来が見えてるんだ。実は俺も未来が聞こえる」と教えてくれる。そんな2人が次第に近づいていくというお話です。駆くんにはモデルがいます。風来坊っぽいところは宮沢賢治の『風の又三郎』。駆という名前は 笠井潔さんの『アポカリプス殺人事件』という推理小説の主人公の名前で、例によって承諾は得ておりませんが(汗)いつか同じ名前の少年を主人公にしたいなと思っていました。
――『グラスリップ』というタイトルも独特ですね。
西村
オリジナルの場合、タイトルは簡単に決まるか難航してなかなか決まらないか、どちらかですね。今回は後者で、なかなか決まらない。最後の最後にポロッと出てきた題名ですが、制作がいざ始まると、いかにも本作のためにあったかのような印象になっていくんですね。今となってはこれ以外考えられない感じです。
――実際の監督作業はいかがでしょうか。
西村
内容から少し離れますが、ある事情で20歳前後の若い学生を前に「演出技法」という講義を1時間半、8回担当しました。それで基本になるイマジナリーラインとモンタージュ理論を教える中で、映画理論がどうやって構築されてきたか改めて振りかえることで、日本のアニメも先人たちのつくりあげてきた蓄積に乗っかっているということをしみじみと実感しました。演出家としては、そこに自分なりの持ち味を少しでも乗せない限り、先はない。『グラスリップ』に、そんな想いが反映していると感じていただければと。
――西村監督の演出は、画づくりがよく考えられていると思います。『true tears』のムックで、そんなことを書かせていただきました。
西村
あれは読み込んでいただいて、嬉しかったです。「言葉にしてしまったら壊れるものがある」ということを書かれていたはずですが、ホントにそのとおりだと思います。映像でこそ伝わる部分をどうやって楽しんでいただけるか。アニメはそれがすべてと言って過言ではないです。決して画面情報の密度だけで決まるわけではないんですね。
――P.A.WORKSの作品は単純な密度感だけでなく、ある種の持ち味を一本ずつ積み重ねている印象があります。
西村
そう思います。それにはやはり堀川社長のキャラが大きいですね。いまだラッシュ段階で全カットに目を通していますから(笑)。
――楽しみにしています。ありがとうございました。
PROFILE
西村 純二(にしむら・じゅんじ)
佐賀県東松浦郡呼子町(現:唐津市)生まれ。アニメーション監督、脚本家(西村ジュンジ名義)、演出家。明治学院大学卒業後、制作会社「にしこプロダクション」に入社し、制作進行を経て『宇宙戦士バルディオス』で演出に。監督作の代表は、『プロゴルファー猿』(85)、『らんま1/2 熱闘編』(89/第70~143話)、『スーパーヅガン』(92)、『逮捕しちゃうぞ(TV版)』(96)、『逮捕しちゃうぞ the MOVIE』(99)、『風人物語』(04)、『今日からマ王!シリーズ』(04)、『Simoun』(06)、『true tears』(08)、『ぬらりひょんの孫』(10)など。最新作『グラスリップ』では監督とシリーズ構成を担当し、注目が集まっている。
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