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<月刊>アニメのツボ

UPDATE:2014.1.25

クリエイターズ・セレクション「監督:森田 修平 インタビュー」公開中!

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業界著名人がアニメ作品をオススメ!

『SHORT PEACE 九十九』が米国アカデミー賞候補に!
和風でユーモラスな世界観をデジタル映像で魅力的に描く森田修平監督。
代表作『FREEDOM』そのままの豪快で自由闊達なクリエイションに迫る!

監督:森田 修平 インタビュー

取材・構成:氷川竜介

クリエイター感覚で、アニメのツボを徹底的に刺激!自作にまつわる貴重なエピソードから、
子どもの頃に大好きだったアニメ、プロを目指すきっかけとなった衝撃の作品などなど、
魅力的なガイダンスを聞きだします!
真摯に「妖怪」と向き合った『九十九』
――次はいよいよ話題の短編アニメーション『九十九』です。
森田
コイ☆セント』をつくってからは完全に吹っ切れ、『SHORT PEACE』(13)で短編のオファーがあったときも、短編・長編にこだわることなく素直に引き受けることができました。
――本作では和風の「妖怪」をCGで描かれています。何か挑戦されたことは?
森田
分かりやすいエンターテインメントとして「妖怪」を描こうとすると、「百鬼夜行」や「妖怪合戦」みたいに大群で出そうと考えてしまうものなんです。「妖怪大軍団を出したい」という想いが先行してしまうと、ストーリーが二の次になって無理矢理話をつなげようとして歪んでしまうと。短編ですし、「妖怪とは何か?」をテーマとして描こうと思いました。前に黒史郎さんたち妖怪好きの方と付きあっていた経験も活かしつつ、自分なりに「妖怪とはこういうもの」というイメージを突き詰めています。
――本作も『カクレンボ』同様に民話がモチーフです。どんな部分に民話の魅力を感じられますか?
森田
民話をたくさん読むと、かなり似た話や地続きになった話に当たることがあります。そうした「つながり」も、古くから伝わる民話のひとつの魅力だと思います。3歳になる僕の子どもは恐いものは嫌がりますが、『九十九』の妖怪は「恐いけど好き」と言ってくれます。やはり妖怪ってそういうものなんですね。作品としても、単純に恐いだけでもユーモアだけでもない、自分が目指した独特の空気感を出せたと思います。
――今回、アカデミー賞ノミネート候補となって、いかがでしょうか?
森田
父から電話があって、「棚からボタ餅もあり得るぞ」なんて言われたんです。実にいい表現をしているなと(笑)。まさにそんな心境です。実は制作直前、自分がレッドカーペットを歩いている夢を見たんですよ。それで土屋(康昌)プロデューサーに「アカデミー賞取るかもしれないですよ」と言ったんですが、まさか正夢に近づくとは(笑)。スタッフみんなが喜んでくれたのが何よりです。この朗報をきっかけにして、より多くの人に『SHORT PEACE』の全体像を楽しんでいただけたらと。
『武器よ さらば』のミリタリー描写
――オムニバス映画『SHORT PEACE』では、第4話「武器よさらば」で演出としても関わられています。
森田
先行していた『九十九』が終わったいいタイミングだったので、やらせていただきました。演出だけの担当は初になりますが、カトキハジメ監督の中にあるものをいかに自分が消化し、面白く見せていくかということに専念しています。ビジュアルイメージはカトキ監督に引っ張ってもらいつつ、現場との橋渡し役ですね。
――カトキさんとのお仕事は、いかがでしたか?
森田
ミリタリー系のテレビ番組や映画、ビデオをたくさん見せられて洗脳されました(笑)。たとえばアニメでミサイル、ロケットランチャーというと「板野サーカス」みたいに煙がモクモク出るものを連想しますが、カトキさんはしきりに「煙は出ないんだ」と言うわけです。煙が出たら敵に察知されてマズイんだと。でもやってみたら画として成立しなかったので、煙はつけたんですけど(笑)。そこでカトキさんが伝えたかったのは「何も考えずにアニメのマネをするのではなく、ちゃんと考えて、ものをつくってほしい」ということだと解釈しました。そうしたルーチンや過去に囚われない思考が大事ということを、僕もスタッフも教えてもらいました。
――大友克洋さんによる原作漫画は30年以上前、多くの読者に衝撃をあたえた作品です。映像化にあたって工夫したことは?
森田
カトキ監督が気にされていたのは、「原作そのままだと、若い観客があの衝撃は味わえない」ということでした。無人歩行戦車や偵察用ドローンも当時は新鮮でしたが、その後フィクションでも似た描写が増えましたし、現実もそこに近づいている。無人歩行戦車のGONKも、僕は新規デザインに変えていいと思ったほどですが、カトキさんは元のデザインを残しつつ、装甲やセンサーを追加することで、現代風にアレンジしてきたので驚きました。作品全体の方向性も、まったく同じですよね。大友さんの原作漫画を尊重しつつ、新しい要素をつけ足して今に合わせていく。そうやって古くからのファンにも楽しんでもらいつつ、新たなお客さんにも新鮮に観てもらえるようにと。
――森田さんもカトキさんも、大友克洋ファンという点では共通しています。
森田
それはもちろんですが、好きな部分が微妙に違うんです。たとえばプロテクトスーツの中で嘔吐するという表現がありますが、僕が大友作品で好きなのはそんな「リアルの面白さ」で、あのシーンにはこだわりました。リテイクが3回目になったとき、アニメーターに「自分で吐かないとあのリアルは描けないよ」と話していたら、本当にやってくれていて(笑)。カトキ監督には「なぜそこまでこだわるんですか?」と言われましたが、僕としては譲れなかったですね。
――では、最後に今後の展望についてお願いします。
森田
演出家、監督として、もっと作品を観てもらえる環境にしたいと思っています。こだわりを持って作品をつくっているので、とにかく作品を観てほしいですね。なので、今後はTVにも積極的に関わっていきたいなと。
――TVシリーズでは、『革命機ヴァルヴレイヴ』(13)の絵コンテを担当されていました。
森田
監督の松尾衡さんは『FREEDOM』第4話で演出を担当していただいたつながりもあったので。同時期に『ガッチャマン クラウズ』(13)の CGI監督も担当し、大変な仕事になりましたが、やり切ることができてよかったです。TVシリーズで活躍されている方々とごいっしょして、自分ももっと活躍したいなという気持ちが強くなっています。
――今後も発展的な仕事をとことで、期待しています。
森田
現在、いくつか新企画が進行中です。近く発表できたらなと思っています。
PROFILE
森田修平(もりた・しゅうへい)
アニメーション監督、演出。奈良県大和高田市。
京都造形芸術大学在学中から映像制作グループ「神風動画」に参加。卒業後にSTUDIO4℃でCGI監督となる。2003年に独立、自主制作で短編アニメーション『カクレンボ』に着手。2005年に完成し、東京アニメアワード公募作品一般部門の優秀作品賞、カナダ・ファンタジア映画祭ショートフィルム部門金賞などを受賞。監督に抜てきされた連作OVA『FREEDOM』(06)では日本映像技術賞アニメ・ビデオパッケージ部門・技術奨励賞を受賞。短編OVA『コイ☆セント』(10)の監督・脚本を経て、オムニバス映画『SHORT PEACE』(13)では第1話『九十九』の監督・脚本、第4話『武器よさらば』の演出を手がける。『九十九』は米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされ、デジタル世代のクリエイターとして注目が高まっている。
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森田 修平 関連作品


SHORT PEACE
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FREEDOM
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FREEDOM SEVEN
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カクレンボ
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コイ☆セント
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ボトムズファインダー
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革命機ヴァルヴレイヴ
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ガッチャマン クラウズ
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