クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2015.4.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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監督デビュー作『天空のエスカフローネ』
――そんな実験精神的なところは、初監督作品の『天空のエスカフローネ』(96)にも通じているなと思いました。
赤根
そうですね。TVシリーズで毎回CGを使った映像を入れたのは初めてでしょう。
――監督に就任されたきっかけは?
赤根
南雅彦プロデューサーに、その前の『疾風!アイアンリーガー』(93)のオープニングで呼ばれ、あまり時間のないところでやったその映像を気に入ってもらったようです。各話の演出も担当しているうちに、「監督やらない?」と当時ペーペーの自分に声かけてくれたんです。ビックリしたし、嬉しかったですね。
――河森正治さんの原作で、異世界ファンタジーという企画の印象はいかがですか?
赤根
あれは『美少女戦士セーラームーン』(92)がヒットした影響で、「少女漫画っぽいものにロボットものを足す」という「受けたものと受けたものを合体させる」という企画意図なんです(笑)。だから「占いロボットもの」的な言葉が企画書にあって驚いたんですが、南さんには「赤根ちゃんの好きにしていいから」と言われ、「ホント?」と思いつつ入りました。企画時は男の子のバァンが主人公で、ヒロインのひとみが占いでサポートしつつ戦う物語だったはずですが、「いっそ少女漫画でやればどうですか?」 と再提案したんです。キャラクターデザインの結城信輝さんとも、昔読んだ少女漫画の話をして盛り上がったり。
――イントロは初恋告白で、ものすごいインパクトでした。
赤根
当時さんざん罵詈雑言浴びましたよ(笑)。でも、原作者である河森さんのシナリオですから、変えられない。河森さんともだいぶやり合いましたが、面白かったです。シナリオまでは河森さんが見てるんですが、富野さんの仕事を見て育ったせいもあって、コンテ以後は僕が変えてしまうんです(笑)。富野さんは「シナリオまではプロットがあり、ライターが一生懸命アイデアを入れてシナリオにしててくれている。だったらコンテマンはさらにアイデアを詰めて、完成度をより高めたコンテを出さないといけない、アイデアを入れろ!」という感じでしたから。それが自分の中に残ってしまって。
――変えたりしてる風には見えないです。
赤根
完全にビギナーズラックで。シナリオから逸脱して自由にやると、ストーリーもキャラクターも当然いろいろ合わなくなってくるんですよ(笑)。それを必死につなぎ合わせて、ようやく完成できた感じです。よく最後まで持っていけたなと。河森さんとライターが投げつけてきた球をどう打ち返すか、そういうやり取りも良かったです。
――その経験が後にシリーズ構成をご自身でやられるとき、活きているのでは?
赤根
訓練になったかもしれません。そんなことを許してくれたプロデューサーの南さんに感謝です。やはり常々妄想してたのが良かったです。「監督になったらこんなのや、あんなの入れるぞ!」というアイデアが山のようにあり、次々に入れました。当時の若くて上手いアニメーターたちが入ってくれたし、アニメーションディレクターの逢坂(浩司)さんも絵をまとめてくれたし。彼とは『サムライトルーパー』からの付き合いで、いろんな相談にも乗ってもらいましたね。楽しかったです。
――改めて見どころは?
赤根
ラブストーリー中心と思われてますが、実は壮絶なアクションものなんです。絵柄から女性ファンが多く、男の子があんまり観てくれなかった。ところが最近、ようやく男の子から「『エスカフローネ』って面白いですね!」と言ってもらえるようになった。今なら先入観なしにロボットアクションものと観てほしいです。僕もアクション好きで、徹底的にやってますから。剣劇もので、手描きの限界にも挑んでますし。
――オープニングの1コマ打ちでチャンバラしているところが衝撃でした。
赤根
「1コマで」というアイデアは作監の佐野浩敏さんで、マントなびかせながら戦うロボットが良かったですね。菅野よう子さんのデモ曲では間奏だったメロディラインがものすごくカッコよく聴こえたので、「ぜひTVサイズの中にも入れてほしい」とお願いしたら、ちょうどその1コマの戦い部分に来て、最高の感じになりました。(坂本)真綾の透明感のある歌声も印象的だし。
――坂本真綾さんは当時まだ学生、デビュー作ですよね。
赤根
高校生なので、アフレコには制服で来ていました。当時から彼女の芝居は独特の存在感があってよかったです。可愛らしかったし(笑)。2クール目頭ぐらいに中野サンプラザで開催されたイベントが、たぶん坂本真綾が人前で歌った最初だと思います。ファンの反応がダイレクトに分かって良かったですね。客席が女の子ばかりで、まずビックリ(笑)。「今日来られなかったスタッフにも、ファンレター送ってくれると嬉しいな」なんて言ったら、翌週からドカッ!と届いたり。手紙は中学3年生ぐらいの女子が一番多く、そのあたりなんだと分かって喜びましたね。来年20周年と聞いて衝撃です。
『エスカフローネ』の実験精神と劇場版
――『エスカフローネ』ではデジタル処理についてもうかがいたいです。
赤根
今はD.I.D.スタジオの古橋宏くんがメインのCGディレクターでした。主にMacintosh上での処理で、いろいろ実験的なことも試しましたね。透明マントも普通なら消えるときにヒラヒラさせるところを、水みたいな波紋が空間に広がるようにしたら、すごく面白い効果になって。後にハリウッドでもやり始めましたけど(笑)。向こうは計算速度の速いコンピュータを使いますが、こちらはパソコンですから、波紋みたいな分かりやすい記号を浮かべる知恵で勝負です。それが案外アニメに馴染みがよかったんです。
――第1話でセルのベタ塗りの部分にテクスチャ貼りつけたのも斬新でした。
赤根
「龍の鱗の質感を出したい」というのがリクエストで。アメリカは『ジュラシックパーク』でCGの恐竜を出してますが、これも知恵で勝負して「テクスチャを貼るのはどう?」と。これもやってみたら案外良かった。とにかくモーフィングなど、分かりやすい効果を多く見せるようにしました。映像のプロは「素人に分かったら終わりだ」と自然に見せたがるんですが、デジタルだと予算も手間もかかるので、はっきり分からせないとデジタルをアニメに使うという方法論自体がなくるかもしれないと思い。結果的に『エスカフローネ』というフィルムの特徴になったので良かったです。
――少し後に、劇場版『エスカフローネ』(00)も監督されています。
赤根
あれは自分的にはいろんなアイデアを入れたつもりなんですけど、反省もある作品ですね……。今から考えると、燃えつき症候群になっていたのかな。TVシリーズは自分の120パーセントでやりきり、終わった直後は物足りなささえありました。だから、南さんから劇場のオファーがあったとき、「やり残したことがいっぱいあったからやる!」と即答でしたが、きっと1年間走り切った直後で頭がランナーズハイみたいな状態だったんですね。なかなか組み立てが上手くまとめきれなかったです。
――表現やテーマを深く掘り下げた感じもありました。
赤根
自分がやりたいと思ってたこと自体は、嘘ではないんです。キャラクターの関係性だけをそのまま使い、まったく逆の別世界をつくろうと考えました。後の『ノエイン』の発想に近いところもあり、要するにもうひとりのひとみ、そしてバァンを描く並行世界です。ただ当時はうまく消化しきれず、分かりづらくなってしまいました。『ノエイン』で「いろんな並行世界が混ざりあっていく」というのができるようになったので、決して無駄ではないものの、いろいろとご迷惑をおかけしてしまいました。それとエンディングテーマ曲の『指輪』は大好きな曲で、今でもこれを聴くと目頭が熱くなる名曲。これを聴けただけでも『劇版エスカ』はやった価値があります。
――みどころも、ぜひ紹介してもらえれば。
赤根
TVシリーズは学園の女の子から入りますが、劇場版では生きるか死ぬか男たちが常に考えつつ戦っている……そんなハードな世界設定なんですね。その男たちの話の中に、何もできない女の子が入ってくる。当時の僕の方法論では、映画一本にまとめるのは難しかったですが、ハードファンタジーにしています。
――ガイメレフの描き方も変わりましたよね。もっと生物的になって。
赤根
その辺は、いろいろ詰めこんだアイデアのひとつですね。エッセンスはすごく良いので、懐かしい想い出の作品として見ていただければと。
オリジナルの代表作『ノエイン もうひとりの君へ』
――原作も担当された点で『ノエイン もうひとりの君へ』(05)は赤根監督の代表作だと思います。その企画のはじまりは?
赤根
サテライトで仕事をしているときにアニメーターの岸田隆宏さんの絵を見る機会があり、彼の絵が大好きになったことがきっかけです。すさまじい画力と表現力で、いわゆる天才です。彼といっしょにアニメーションをつくってみたい。岸田さんのキャラでつくるならどんな話にしようか。そんな始まりですね。
――岸田さんのテイストに見合う物語がジュブナイルSFということですか。
赤根
それはあったかと。ヒットをねらうなら、高校生を主人公に萌え系にしたほうが成功率は高かったでしょう。でも根がひねくれているから、そんなことはやりたくない。小学生高学年の女の子にしたのは、大人になるきっかけ、「大人としての自分」の発生原因は、あれぐらいの世代にあると思ったからです。だったら、大人の自分と子どもの自分を対話させるストーリーはどうだろうと。
――そこにSF的な設定が必要とされるわけですか。
赤根
次に「大人の世界と子どもの世界を同時に表す世界ってなんだろう?」と。ドラマの中に過去の回想がはいるのは、あまりにもダサいと思っていました。そんなときに量子力学の本を読んで「並行宇宙」という言葉が目についたんです。確率論的な世界観で分岐する宇宙。これを描いてみようと。主人公は最愛の人が不幸になる世界ばかりを見てしまう。だけど、そうならない世界はないのかと探し続ける物語。最愛の彼女が幸福になるためには子ども時代にさかのぼり、何か原因を見つけてあげる必要がある。かなりややこしい設定ですが、好きな人は好きになってくれて。
――現在でも評価は高いと思います。
赤根
玄人好みにしすぎた反省はあって、なぜか漫画家さんに褒められるケースが多いんです。ゆうきまさみさんから大好きだと言ってくれて『鉄腕バーディー DECODE』(08)をやるきっかけにもなったし、今回の『コードギアス 亡国のアキト』のときもCLAMPさんが好きだと言ってくれたり。自分としても、ひとつ違う世界に踏みこめた手応えがありました。
――空中戦などアクションも見応えがあります。
赤根
「岸田さんといっしょにやりたい」というスーパーアニメーターが、たくさん集まってくれたからですね。だったらスーパーアクションを手描きアニメならではのダイナミズムでやってみようと。自分も観ていて、すごく気持ち良かったです。サテライトならではのCGもたくさん使っていて、その混ざり具合も面白かったし。
――これから観る方へポイントをお願いします。
赤根
傲慢に聞こえたら申し訳ないですが、「ながら」でなくじっと集中して観て欲しいです。1カット1カットにちゃんと理由があり、ストーリー的な謎解きの答えもその中に入っている。セリフでは語ってなくても、画や音で語ってるところがあるので、3回目ぐらいに気づくことがあることかもしれない(笑)。
――濃密に練りこんであるということですね。
赤根
自分は欲張りなので、ぎゅっと詰めこむんです。『エスカフローネ』はルック、パッケージは少女漫画だけど、中にはいろんな要素が詰まっている。『ノエイン』も同じです。少年少女向けSFと思われがちですが、そうでないものも詰まっています。大人が見れば痛い話も入っているので、ぜひいろんな発見をしてもらえると嬉しいです。もう10年前の作品だと知って、ショックですが(笑)。
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