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UPDATE:2015.4.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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最新作『コードギアス 亡国のアキト』
――いよいよ最新作『コードギアス 亡国のアキト』(12~)について、うかがいたいと思います。
赤根
亡国のアキト』もいろいろ詰めこみました。第3章まで完成して振り返ってみると、「これは26本欲しかったな」が正直なところです(笑)。それぐらいのネタを突っこんでいるので、これこそ「ながら」だとついてこれないでしょう。物語、世界観が難しいと思われるかもしれないけど、何回も観てるとヒントが感じられるかなと。  これも傲慢な言い方かもしれませんが、僕はフィルムを理解して欲しいとは思っていません。何かを感じてくれたらそれで良いと。自分もそんな風に他の映画を観てきたし、自分の中に残っているのは、そういうタイプの映画が多いです。「理解した」「あらすじ言えます」という映画が面白いかというと、決してそうではない。印象的なシーン、セリフ、音楽、何かがズドン! と心に残ってくれればそれでいい。 その意味で『亡国のアキト』は、いいところに行けそうなので、ぜひ食わず嫌いせずに観てください。TVシリーズの『コードギアス 反逆のルルーシュ』のファンにも楽しめるようにしていますので、そんな部分も発見してもらえるでしょう。「どうやらTVシリーズにつながってるらしいな」と思った人は、ぜひもう一回確認してください。そうしたらジュリアスやスザクがよりはっきり見えてくると思う。『亡国のアキト』はTVシリーズの『コードギアス 反逆のルルーシュ』の世界と行ったり来たり、グルグル回れるようにしています。その上で、『亡国のアキト』ならではの独特な世界観とテーマも打ち出していますので。
――そもそも赤根監督が参加されるきっかけは?
赤根
河口(佳高)プロデューサーに、「『コードギアス』の続きをつくりたいんだけど、赤根さんやりませんか?」という話をいきなり切り出され、ビックリしたのが始まりです。話を聞くと、大人の事情があるというよりは「『コードギアス』の世界観をもっと拡げたい」ということなんですね。だって商売優先なら「ルルーシュ」とタイトルつけて(谷口)悟朗ちゃんがやるのがベストですから、あえてそれをやらなかった点に、侠気も感じました。当然、最初はけっこう悩みました。『反逆のルルーシュ』はとても完成度が高いからです。しかも「『反逆のルルーシュ』と『反逆のルルーシュR2』の間を」と注文を出されて……。
――確かに条件的に厳しいことばかりですね。
赤根
ヒット作の続きをつくるのって、なかなか難しいです(笑)。特に『R2』の世界につなげないといけないところが……。スタートとエンド、入り口と出口は決まっていて、真ん中をつくれというのは難しい。でもパズルは嫌いな方じゃないので、つなげてみたい気持ちもあって、「やりましょう!」と言ったのが運のつき(笑)。なかなか自分でも納得できるところに行けず、ご迷惑をおかけました。でも、おかげさまでやっとピースがハマってきたかなと。
――赤根さんは、常にかなり深く考えられていますね。
赤根
まず『コードギアス』の世界観ですね。設定的に分かるのは当然としても、咀嚼して完全に自分のものにしないとキャラクターが動かない。ギアスというものが何か、神聖ブリタニア帝国とはどういう国か、当時のイレヴンはどういう状況なのか。その咀嚼に時間がかかりました。今は「何でも語れますよ」というぐらいにはなったので、スザクがどういう感情でここに来ているのかも、やっと自分に落ちてきて、つなげられるようになり。なおかつ、この世界でこういうふうに動いてほしいと思えるようになりました。  自分がいちからオリジナルでつくって積み上げた作品なら、過程をずっと見てるから咀嚼は必要ないし、乗っかっていけばいい。でも、『コードギアス』は他のスタッフが長年かけて積み上げてきたものですからね。
――加えてアキトという別の主人公を立てることも、難しかったのではないでしょうか。当然、「ルルーシュと違う」という反応になるので。
赤根
ファンの方々にクールダウンしてもらうのにも、時間を要しました。でも、それはパート2ものの宿命です。石つぶてをぶつけられても、ふんばり続けないといけない。そこで独自性が出せれば勝ちですし、次をつくる人たちが、さらに違う方向をめざすきっかけができればいいなと。
『亡国のアキト』でめざしたもの
――その最新作、第3章ではどんな挑戦をされたのでしょうか?
赤根
とてもひとことでは言えませんが、アキトたちのキャラクターも深堀りしたし、いろいろな手応えがありました。ギッシリと詰まった情報量の中から、主人公の感情をピックアップしているので、それを拾いあげてくれると嬉しいです。僕はステレオタイプの物語はつくれない。なぜならば、人間の感情はステレオタイプには動かないから。だから「どうしてかな?」と疑問に思ってくれる方がいいですね。「こういう感情って、あなたの中にもあるでしょ」と、気づくこともあるでしょう。それは映像と音楽のコラボレーションで示せていると思いますし、なるべく大音響の劇場で観てほしいです。バンダイチャンネルなら、ヘッドホンで音量をあげて……。
――アニメで音の役目は、すごく重要ですよね。
赤根
自分の中でも大事にしています。セリフも自分にとっては音です。どういうリズムでセリフが来て、どう音楽が受けて、SE(効果音)がどう入ってくるか。自分の中で演出的に計算してあるので、音から感じてもらえたらと。
――ナイトメアフレームのCGアクションも迫力があります。
赤根
CGを担当しているオレンジには、「今回はこういうテイスト、こんなテーマで」とお題を出して毎回挑戦してもらっています。第3章は、ダークサイドに堕ちたランスロットが魔神のように動く姿。それもダークサイドに堕ちたからこその美しさを出したいと。薄ら寒い感じなのに透明感がある。そんな美しさがうまく出たので、普通のCGとはまったく違った印象です。
――第1章ではどんなお題があったのでしょうか。
赤根
主人公メカは美しくカッコよくがステレオタイプですが、そうしたくないので、第1章のアレクサンダも「ダークサイドから来た主人公メカ」というテーマにしました。「気持ち悪い」と思われたら正解(笑)。地獄の底から這い出てきた四足歩行の悪魔のような姿が、最後には真っ白な天使に変わる。でも、その天使が人を殺している。敵をやっつけた瞬間は、なぜか美しく見える。縦横無尽に咆哮していく画をつくろうと。
――人間の生理に訴えかける感じがしました。
赤根
恐さって、CGではなかなか出せないような気がしたから、むしろそれをやってみたいなと。特殊な照明にしたり、薄暗い森の中から何が出てくるか不安な感じにしたり。進んでいくと湿地帯があり、なおかつ朝焼けに染まった美しい水辺で戦う。自分がアクションをやるときは、「痛みを感じる戦い」にしたいんです。「俺はこのロボットに乗って戦うのはイヤだ!」と思ってもらえたら成功と。戦いってそういうものでしょ? 自分が殴られたら痛みを感じるし、相手の痛みも伝わってくる。そんなアクションが達成できたと思います。爽快感はないかもしれませんが、むしろ存在感を楽しんでほしいなと。
――第2章のお題は? サイズ感がよく出てました。
赤根
街中での戦いをお題にしました。ナイトメアは4.5メートルから5メートルぐらいの大きさなので、ひょいっと建物に隠れられるサイズです。18メートルのガンダムとはまったく違うロボット戦闘の感じを出せたらなと。さらに延々と戦い続け、限界までアクションをつなげたい。それも3Dならではのカメラワークをつけ、手描きでは難しいアングルを多用して。それでいてアクションには日本のアニメーション特有のダイナミックさがある。他ではなかなか観られないアクションをディレクターの井野元(英二)くんがつくってくれました。技術ではなくクリエイターのセンスで見せているので、たぶん何年経っても古くならないと思います。今後の章も、さらに新しい方向性にチャレンジしていきます。
――第3章、キャラクターのドラマはどうでしょうか?
赤根
これはすべて感じとってほしいところですが、アキトとレイラがどうなるかお楽しみに。シンも良い具合におかしくなっていくし(笑)。
――そのあたり、極限状態的な心情を描きたいという想いがあるのでしょうか?
赤根
人間がそうなるには理由がある。人と人との関係や愛情だったり……愛することも憎悪につながる。憎悪になるか喜びになるか、自分の安定になるのか。その辺ですね、描きたいのは。第3章ではどのキャラクターがどういう感情になるか、何が原因だったのか、うまく表現できたと思っています。ぜひ、ご自身に置き換えて感じてもらえると。そして自分の中では物語がずっと続いているので、一気に観ていただければ分かりやすいと思います。ぜひバンダイチャンネルで第1章、第2章を観てから第3章を観てください(笑)。
――ありがとうございます。
赤根
第3章はエンディングで席を立たず、最後の最後まで観てほしいですね。仕掛けもしてあるし、予告がまた刺激的な映像になっているので。
――『鉄腕バーディー』も、ゆうきまさみさんの原作をDECODE(解読)するところから始まったということですから、ちょっと『アキト』に似てますよね。
赤根
いっしょですね、『亡国のアキト』は自分の総決算でもあるんです。『エスカフローネ』で知り合って「すごいな」と思った(坂本)真綾がレイラ、『鉄腕バーディー』のとき「良い役者だな」と思った(入野)自由くんがアキトで、シンは『ヒートガイジェイ』のとき出逢った松風(雅也)。演出も自分が今までやってきた経験値を全開にしたし、CGもここ10年ぐらいやってきた井野元くんと「ロボでCGを徹底的にやろう」と前から話していたことを実現したし。自分が良いと思うものを全力投入です。気合いが入り過ぎた部分があるかもしれない(笑)。音楽の橋本一子さんは、今回新しい発見でしたね。
――物狂おしい感じの、独特な表現力がありますよね。
赤根
人間の性(さが)みたいな独特のものが詰まってる音楽で、最初はビックリしました。でも何回も聴いているうちに「これはアクションだな!」と見えてきて。主人公のアキトが戦いで表現する彼の内面、本能の部分にちょうどいい。画に合わせてみるとCGとも絶妙なマッチングになって、『亡国のアキト』独特のにおいがついたので、感謝しています。第3章は世界観が今までと違うところにいくので、わがままを言って新しいイメージで新曲をつくってもらいました。
――音楽の力は大きいです。
赤根
人肌のにおいとかキャラクターの感情など、音楽で代弁してもらえた部分も大きいです。笑ってるけど楽しいシーンではない、みたいなニュアンスも音楽で出せればいいなと。すごいアクションでスピーディーで気持ち良さそうに見える戦いも、「それは違うよ」みたいな……。橋本一子さんの深みのある音楽から、そんな部分を感じ取ってもらえればと。自分にとっても、音楽と映像の新たなコラボレーションが発見できました。
――第3章が5月2日、第4章が7月4日と続々とリリースされます。
赤根
今後はポンポンと行きますので、ぜひ連続して最後までお楽しみください。
――期待しています。ありがとうございました。


PROFILE
赤根和樹(あかね・かずき)
1962年生、大阪府出身。千葉工業大学卒業後、1985年にサンライズへ入社。『機動戦士Ζガンダム』などで制作進行を担当した後に、1988年に『鎧伝サムライトルーパー』で演出に。1996年に『天空のエスカフローネ』で監督デビューし、当時先端のデジタルを採り入れた斬新な映像と少女の心情を軸とした作風が話題となった。サテライト制作の『ジーンシャフト』(01)、『ヒートガイジェイ』(02)、『ノエイン もうひとりの君へ』(05)では原作・監督・シリーズ構成を一貫して手がけ、オリジナル作品へ挑戦。特にジュビナイル風の作品『ノエイン』では幅広いファン層を獲得した。ゆうきまさみ原作の監督作『鉄腕バーディー DECODE』(08)では原作の諸要素を「解読」してアニメ化。2012年から連作劇場アニメ『コードギアス 亡国のアキト』で監督・脚本を担当。2015年5月の第3章以後、続々と公開が予定されている。


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