クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2016.5.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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ダンスするバルキリー
――バルキリーが躍るビジュアルには驚きましたが、どんな発想だったのでしょうか?
安田
ハヤテの初期設定に「ダンサー志望」というのがあって、その名残りもあります。とにかく、いろんなことが器用にできてしまう少年。なのに、これといった具体的な目標がない。それがバルキリーと出会って空を飛ぶ楽しみを得て、「ここが俺のいる場所だ」と思い始める。ところが戦争状況の中で、「ただ楽しく飛んでいるだけでは済まない」という現実を突きつけられて、「だったら、何のためにどう飛ぶのか?」というのを見つけていく。そんな成長が大きなテーマになっています。
――実際のダンサーを参考にしているワルキューレもふくめ、作品全体でダンスがキーワードになっているのかなと。
安田
たしかにワルキューレの何曲かは振り付けのプロの方にお願いし、フォーメーション組んだ踊りをつくって組みこんでいますので、面白く描けていると思います。ハヤテに関しては、絵コンテで「バルキリーがダンスをするように弾を避ける」と書かれていてCGスタッフが困っていたので、うちの制作でダンスのできる人間がブレイクダンスを踊って映像を撮り、それを参考にしたんです。
――今は学校でダンスを教えていますから、今後は踊れる世代中心になっていくでしょうね。
安田
自分らの世代は人前で踊るなんて恥ずかしくてできないですけど、時代は変わっていくでしょうね(笑)。この「バルキリーのダンス」も今までやってなかったことですから、マクロスファンからどんな評価を受けるのか、気にしていました。面白いと言ってくださる方が多く、ハヤテというキャラクターを表現するのにマッチした動きだったので、うまく行ったと思います。
――空間騎士団の側には、どんな特徴があるのでしょうか?
安田
要は「イケメン集団」ということです(笑)。結果としてキャラクターが増えてしまいましたが、最初の発表会でお見せしたキービジュアルでは、あえてハヤテもミラージュも情報を隠し、「イケメン軍団 vs ワルキューレ」というグループだけを見せたんですね。敵側にも年配のベテランパイロット、マスターヘルマンもいて、スタッフ的には非常に人気があります。彼がどういう価値観で生きてきたのか、そうした部分を描くことで、次第に向こうの事情も明らかになる。そうした厚みをもたせつつ、毎回毎回、新しいものを出していきたいです。
――シリーズの軸になるのは、どんな要素でしょうか。
安田
「プロトカルチャーの謎に迫る」という部分が、大きなテーマになっています。そこにどのキャラがどう絡んでいくのか。歌手の美雲がずっとミステリアスに描かれていますが、彼女が今後どう行動していくのか。敵側の戦う事情や価値観に、主人公たちがどう接して乗り越え、立ち向かっていくのか。派手な戦闘シーン、歌のライブシーンも見せつつ、青春の成長ストーリーとして楽しく観ていただきたいですね。「一瞬一瞬を大切に、無駄なく生きよう」というテーマもあるので、さまざまなメッセージから何かを感じとってもらえればと。
――人間同士の戦いとした意味は、その辺でしょうか。敵側の死も描かれていますし。
安田
そこは避けては通れないところだと思いました。もちろん悩んだ部分でもありました。自分の勝手な気持ちで「人間の敵がいた方がいい」と言ったわけですが、「人を敵にするというのはこういうことなんだ」と、次第に感じていったわけです。
マクロスシリーズの長大な歴史を拡げる試み
――マクロスシリーズも作品を重ね、かなり長い歴史を描いていますね。
安田
歴史がつながっているので、年表も相当なものになっています。シナリオ打ちでは小太刀(右京)さんが文芸として参加され、設定面のフォローをしています。「何年には何々が起きたから、移民船は何番がここにいるはずです」と言われるたびに、「歴史のある作品の大きさって、こういうことなんだ」と感じています。過去作のメカのような小ネタもファンの方が面白がってくれるので、歴史ある作品の面白みがありますね。
――『F』から8年ぶりということで、CGも技術的に進化しています。
安田
だから昔のCGモデルもそのままでは使えず、ディテールアップしないといけないんです。そこに時間をかけるか、本編のクオリティを上げるのに時間をかけるのか。天秤が常にあります。ライブシーンも8年前の『F』を越えないといけないし、時代的にはプロジェクションマッピングやバーチャルリアリティが身近になっているので、その現実のさらに先を行かないといけない。そこもひとつのテーマなので、どんどん挑戦していきたいです。
――「Δ」という文字は直球の三角形の象徴だと感じたのですが、いつごろ決まったのでしょうか?
安田
しばらくは『マクロスΔ(仮)』だったんですが、いろいろ検討したところ、一周回って「Δ」が決定になりました。長くするよりもシンプルですし、スタッフの中で仮題がすでになじんでいましたし。結果的に作品を象徴するいいタイトルになりました。
――今後は、どんな感じになっていくのでしょうか?
安田
1クール目の締めに向かって盛り上がっていきます。次第に敵の攻撃も激しくなって主人公側が追いこまれていく中で、どう立ち向かっていくのか。物語的にスピードアップしていきつつ、だが単純に終わらない物語がこの後も待っている……みたいな感じでしょうか。「温泉回」みたいなひと休み話数がまったくないので、毎回毎回たっぷり楽しめるかと。もし観返してもらえれば、どこがどうつながっているのかが見えてきますので、そこも楽しんでもらえると。
――繰り返し視聴して面白さが出てくるというのは、いいですね。
安田
ここが伏線になっていたのかとか、驚いていただければと。オリジナルの強みで、1回書いたシナリオをさかのぼって書き直すなど、頻繁に伏線を積みかさねているんです。通常の2本分近い内容があり、密度を高めて1本のシナリオにした、みたいな感じです。毎回ボリュームのあるシナリオを、さらに圧縮して絵コンテにしてますから、本当に盛りだくさんですね。
――最後に、みなさんへのメッセージをお願いします。
安田
マクロスシリーズ』は最初のTV放送から34年になろうとしていて、歴史があるタイトルです。そこに新しく『マクロスΔ』という作品が加わります。今回は『マクロス』の歴史の中にひとつ新しい歴史を加えるだけではなくて、プロトカルチャーの謎に突っこんだりして掘りさげますし、ウィンダミア人などいろんな星の人びとを描くことで、世界観を拡げる試みもしています。『マクロスΔ』は、まさに制作真っ最中ですけど、『マクロス』の世界は終わることなく続いていくんだろうなと、そんな想いもこめています。『Δ』をきっかけに入ってくださる新しいファンも大勢いると思いますが、『マクロス』は今後もずっと楽しんでいただけるタイトルだと思うので、末永くお付き合いをお願いします。


PROFILE
安田賢司(やすだ・けんじ)
1972年、栃木県生まれ。1995年にスタジオ・ファンタジアに入り、OVA『女神天国』の制作進行でキャリアをスタート。その後、シャフトにて『宇宙海賊ミトの大冒険』(99)で絵コンテ・演出を担当。『ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom』(00)の助監督を経て『ノエイン もうひとりの君へ』(05)で副監督を担当。以後はサテライト作品を担当。監督の代表作は『しゅごキャラ!』(07)と同作シリーズ、『異国迷路のクロワーゼ The Animation』(11)、『アラタカンガタリ ~革神語~』(13)、OVA『創勢のアクエリオンEVOL』(15)など。佐藤順一監督の『M3~ソノ黒キ鋼~』(14)では副監督を担当。新作『マクロスΔ』(16)では監督として河森正治総監督とオリジナルを立ち上げ。シリーズの世界観拡大をめざしている。


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