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UPDATE:2016.8.26

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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キャラクターやストーリーに魅了された『装甲騎兵ボトムズ』
――この連載では、クリエイターのみなさんがプロになる前にご覧になっていた作品などもうかがっています。虚淵玄さんの場合、その原点は何になりますか?
虚淵
今にして思えば、やはりガンダム世代なんですね。その流れで続々出てきたサンライズのロボットものに魅了され続けてきました。小学1年生のころ、自分でチャンネルを回して見られるようになって腰を据えて観たのが、再放送の『(機動戦士)ガンダム』(79)だったと思います。ガンプラが奪い合いになってて、親に頼み込んでやっと買ってもらえたのがゾックだったという(笑)。
――それは忘れがたい経験ですね(笑)。ガンダムではどの辺が印象的でしたか?
虚淵
やはりモビルスーツのアクションや見栄の切り方で、あの演出が強烈に焼きつきましたね。敵の同じ機体が繰りかえし繰りかえし、強烈な個性をもって出てくるところなどは、群を抜いたテイストでした。敵の側が格好いいと思えたのも最初だと思います。
――物語への関心は、いつぐらいからですか?
虚淵
小学校の5年生か6年生で『(装甲騎兵)ボトムズ』(83)が来て、そこでようやくロボットではなくキャラクターとストーリーに魅了され始めました。その前の『(太陽の牙)ダグラム』(81)になると僕には早すぎた作品でして、ハマって観ていたのはずなに、記憶が曖昧なんです。ところがボトムズになると、起承転結にいたるまでちゃんと覚えている。まさにそういう多感な時期の出逢いでした。
――それで、お話をつくることに興味を抱かれたのでしょうか?
虚淵
いえ、むしろプラモデルをつくる人になりたくて(笑)。ダグラム、ボトムズを中心に扱う「デュアルマガジン」(タカラ発行)という模型雑誌を購読し始めたんですが、そこに掲載された外伝小説『青の騎士(ブルーナイト)ベルゼルガ物語』(著:はままさのり、イラスト:幡池裕行)が活字との出逢いでした。モデラーさんたちから「かっこいいジオラマを作るにはドラマ性が必要でしょ?」というご指南があり、それを意識しながら小説を読み始め……その辺からですね、物語に興味が移り始めたのは。最初はモデラーにあこがれ、風景をつくることにあこがれ、そして気がつけば小説のほうに、という順番でした。その小説の文庫が、最初に自分のこづかいで買った本になります。
――外伝からとは渋いですね。
虚淵
当時、本編自体はノベライズなど活字媒体にはなっていなかったですしね。さらにボトムズ世界へ深く入りこみたくて外伝を買い、そこから同じ背表紙のソノラマ文庫をどんどん読んでみようとし始めた結果、菊地秀行さんや夢枕獏さんなどバイオレンスな伝奇小説に出逢いました。自分の下地は、ほぼその時期に出来上がっている感じがします。まだライトノベルなんて言葉もない時代でした。
――TVの『ボトムズ』は、どの辺に惹かれたんでしょうか?
虚淵
やはり世界観とロボットの存在が直結している部分ですね。主人公のロボットも敵と同じで、色分けだけで区別している。それが驚きであり、説得力もありました。性能ではないんだと。同じものに乗ってて強いなら、主人公の方が格好いい。操縦技術だけで生き残っていくヒロイズムに痺れました。キリコってかなり辛い勝ち方ばかりしてるんです。ボロボロになりながら最後には勝ち残る。そんなヒロイズムのある主人公として最初にあこがれたのは、キリコ・キュービィになりますね。
――では、そこからクリエイター方向へ舵を切ったきっかけは?
虚淵
高校生のころにはスティーブン・キング、ジャック・ヒギンスやクライブ・カッスラーなど海外冒険小説にハマり、学校の図書館に揃っていたので本の虫になり始めてましたね。その辺でいよいよ腹を据えてものを書く気になったと思います。世界観に関してはハヤカワ書房のSFでいろいろ魅了され、最初にフックしたのはウィリアム・ギブスンです。そこから日本人作家に移って神林長平に出逢い、観念としての世界観を描く点で強烈に響くものがありました。
――アニメはもうあまり観なかったですか?
虚淵
いえ、観てました。時代はOVA全盛期でいろいろ出てましたけど、あれもこれも會川昇さんが脚本を書いていたころですよ(笑)。
――まさかその會川さんと『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』でいっしょに仕事をすることになるとは。
虚淵
あれは光栄でした(第20話「終わりなき戦い」でゲスト脚本に参加)。會川昇さんの物語はどこかビターな感じで、そこに痺れてましたね。海外冒険ものにも通じるテイストだったと思います。アニメの王道とは違う魅力ですよね。
脚本デビューはゲーム『Phantom PHANTOM OF INFERNO』
――脚本デビューはニトロプラスのゲーム『PhantomPHANTOM OF INFERNO』(00)ですか?
虚淵
ラノベの新人賞に何度か送ってみましたが、そこでは芽が出なかったんです。それでニトロプラスで「小説家を目指して書いていたことがあります」と自己申告して、シナリオを手がけたのが『Phantom』でした。それでいざやってみたら、後に引けなくなった。というか、他の生き方ができなくなりました。充実感というか生きがいというか、これは多少貧乏してもやり続けるしかなかろうと、覚悟が決まりましたね。
――ゲームのテキストを書くときは、どれくらいビジュアルを意識されましたか?
虚淵
背景はセットだと思ってなるべく何度も使おうとか、そんな心遣いをしたぐらいで、小説に近いイメージでした。一人称を絶対に使わないというシバリも課しましたが、効果があったかは疑わしいところです。でも、「お客さんが選択肢を決めていく」という点で小説とは大きく違うものなんですね。物語展開には半分ぐらいお客さんが責任をもつ。読ませ方の圧倒的な差があるんです。無理な展開だとしても「だってその選択肢を選んだのはあなたですから」と委ねられるので、多少は許されるんですよ。そこは今でも通じるゲームならではの利点ですね。「次の行を読みたい」というお客さんのモチベーションによってリターンキーが押され一歩ずつ駆動される物語ですから、展開も常にお客さんと共犯関係にあるんです。
――その『Phantom』は、2回アニメ化されました(全3話のOVA『Phantom PHANTOM THE ANIMATION』(04)、全26話のTVシリーズ『Phantom ~Requiem for the Phantom~』(09))。
虚淵
やはりゲームを流しっぱなしの映像コンテンツに移し替えても、うまく行くわけはないと常々思っていますから、「作り直しだと思ってください。むしろ原作に準拠しない流れになるよう」って、制作してくださった方々にこちらからお願いしたくらいです。
現場の熱気に感化された『BLASSREITER』
――そしてアニメ作品にも参加されることになります。
虚淵
GONZOさんに『BLASSREITER』(08)で呼んでもらいましたが、監督が板野一郎さんで、やってみたら「これは面白いぞ」って……。それ以来、映像にベッタリとハマりっぱなしです。
――その驚きのある面白さは、どんな点にありましたか?
虚淵
実はアニメ業界をかなり誤解していたんです。ビジネスライクで収益優先の冷たい場所かな、みたいに。ところが最初にくませてもらったのが板野さんというのが大きくて、熱いクラフトマンシップを見せつけられました。情熱の通じる現場にいろんな人の才能が集まり、次第に作品がかたちになっていく。その刺激は強烈でした。
――やはりアニメーションづくりって、集団作業が醍醐味ですよね。
虚淵
ええ。明らかに自分の想像したものを上回るものが出来上がってくる感動って、アニメならではのものなんですよね。ゲームの場合は半分プロデュースに片足突っこんでいるので、どうしても限界を見極めてしまうんです。この辺でブレーキ踏まないと、予算を超えるとか納期を過ぎてしまうとか、そんなコントロールも課題なんです。でも、そこを誰かに託した上でものづくりができるのが新鮮でした。いち要素に過ぎない脚本家として参加させていただき、どう具体的に回すかという知恵を他人にお願いするのが、結果的に自分の性格に合ってたなと。もちろん素晴らしい方々とばかり組ませていただいたという幸運さもありましたが。
――板野一郎さんのすごさは伝説級ですが、虚淵玄さんからはどう見えましたか?
虚淵
ものづくりのために、生命を削っているんです。身体ボロボロになろうがお構いなしで、先陣切って突っこんでいく。みんなその背中見てるから、がんばってついていくしかない状態で、後にも先にもあれだけの熱量のある現場はなかったなと思いますし。それが初経験の現場ですから、もう特別なんです。それだけの情熱を受け止めてもらえる場所がある。そこにものすごく励まされましたし、素晴らしいものができる理由も分かって、アニメに対する見方はガラリと変わりました。
――『BLASSREITER』のみどころは、どの辺でしょうか?
虚淵
板野さんがオリジナルで監督をつとめた作品は、実はこれぐらいではないかと。日本のアニメの立役者でもある板野さんの哲学、メッセージ性がこめられたオンリーワンの作品なんです。強烈なインパクトがあるのは、観てもらえればすぐ分かるかと。板野一郎というカリスマのすべてを観てほしいですね。僕はお手伝いさせてもらった程度ですが、つくり方のイロハも板野さんから教わりましたし、過酷だったがゆえに、他の現場でも大丈夫になりました。
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