――「ガミラスと地球の同盟」という設定ができたため、『さらば』『ヤマト2』とは必然的に変わっていきますよね。
- 羽原
- 『2199』が共闘するかたちで終わったことで、ちょうど良くなったと思っています。時間断層という新しい問題に関しても、ガミラスは先見の技術をもっているはずなので、その面でも地球と共同開発していくというのは面白いですし、すごくいい感じにできつつあります。オブザーバーの中に背広を着たガミラス人がいるだけで、「これってどうなるんだろう」という感じが映像で表現できましたし。
――青い顔の人がいて、驚きましたね(笑)。
- 羽原
- 普通のモブだったんですが、「あの中にガミラス人がいてもいいんじゃない?」というアイデアが出たので、急ぎ青く色指定したものです。11番惑星のガミラス人の子どもふたりも最初は地球人の予定でしたが、ガミラスが開発した星という設定があるので、お父さんから「ガミラスを救ってくれたのはヤマトなんだよ」って聞いたことにできて。僕はガミラス人の子どもがヤマトのプラモを持ってると考えただけで、「これはいいな」と思って泣きそうになったくらいですから、『2199』の流れが生んでくれた新しい部分を継承することで、ものすごくいい感じに深みが出せたと思っています。
――キーマンという新キャラについては、いかがでしょうか。
- 羽原
- これはシナリオを読んだときから神谷浩史さんの声しか浮かばなくて、かなり早い段階からお願いをして実現したキャスティングです。名前を決めるときも誰からともなしに「やはりキーマンでしょう」と(編注:『ヤマトよ永遠に』(80)に登場するアルフォン少尉の仮名がキーマンだった)。福井さん的には「ガミラスではキーマンというと、鈴木とか佐藤みたいなありふれた名前なんだよ」ということでしたけど(笑)。
――彼がからむことで、テレザートに行くルートは同じでも展開が変わってきますね。
- 羽原
- ガミラス人がヤマトに乗るシチュエーションとしても、メルダとはまた違う感じが出せました。古代とのやりとりがどうなっていくか、それも楽しんでもらえるといいなと思っています。『さらば』のころは女性のヤマトファンも多かったですし。
――神谷さん、キーマンの性格と行動に合ってますよね。誠実そうだけど、ひと癖あるみたいな感じが。
- 羽原
- そこら辺にも追々、いろいろな仕掛けが出てきますので。
――ガミラス側ではデスラーの行方が気になります。現段階ではまだ語れないですか?
- 羽原
- はい。これはもう驚くこと間違いないですから、楽しみにしていただければと。
――第一章、ニ章、そして三章の予告と、大戦艦の活躍にも驚きました。
- 羽原
- スタッフ一同「大戦艦推し」なんです。これだけ出しておけば、大きいプラモデルも作ってくれるかなって。
――そういえばメカコレ(メカコレクション。当時100円売りの小型プラモデル)しか出ていなかったですね。
- 羽原
- ホン読みの初期から、みんなついついプラモの話をしてしまうんですよ。「メカコレの大戦艦って作りにくいよね。フィンが斜めについてるから折れちゃって」なんて話でものすごく盛りあがる(笑)。それで「じゃあ、大戦艦出すか」みたいな話になっていったんです。一章も驚いていただいたと思いますが、二章では六艦集まることでヤマトが大変なことになり、さらに三章の予告ではもっともっと大変なことになるという。
――「どうなるんだ、これ?」と思いましたよ。
- 羽原
- 予告に出していいか一瞬迷ったんですけど、ビックリしていただければと。
――『さらば』の魅力のひとつには、次から次へとガトランティスのメカが登場することがありますから、嬉しいポイントです。
- 羽原
- どんどん新しいメカが出てきて驚きましたよね。
――あれで敵メカのプラモデルをいっぱい出して売れたおかげで、ガンダムでも最初からザクやムサイのプラモデルを出すことができたんですよ。
- 羽原
- あっ、そうですよね。敵メカのプラモってそれまでなかったし、またガトランティスのメカがカッコよかったですもんね。
――冒頭の空母ナスカの回り込みも、オマージュっぽくて良かったです。
- 羽原
- なかなか気づかれないことですけど、手前をよぎるアップのところには僕がちょっと作画の線を足しているんです。やり過ぎるとノイズに見えるので、気持ちだけ足させてもらいました。単なる自己満足ですけど(笑)、そんな細かい部分にもこだわっていければと。
――手描きとCGのハイブリッドはいいですよね。
- 羽原
- 他のこだわりとしては、オープニングでアオリのヤマトがいい感じでうまくできました。
――都市帝国の集中砲火を浴びるカットですね。オリジナルでは友永和秀さん作画の。
- 羽原
- 勢いで「このままのタイミングでやってください」と注文したら、ホントに忠実に再現してくれました!現段階では最良の出来だと思います。
――オープニングは、ものすごく良かったです。
- 羽原
- コンテにする前の段階から麻宮(騎亜)さんとふたりで「こういうカットにしよう」って話し合いながら作りあげたオープニングです。実は『復活篇』でも「ヤマト作るまでを見せませんか?」と提案したんですが、諸事情で無理だったんです。それで「クルーとは違う名もなき男たちが、一所懸命ヤマトを再建するところをいつか見せたい」と、ずっと思ってて(笑)。麻宮さんにはアングルのアイデア出しから始まり線画のクリンアップまで、たくさん描いていただきました。美術監督の谷岡(善王)さん自らが色をつけ、ハーモニー処理(背景のテクスチャに線画を重ねる手法)を実現しています。キャラクター部分のハーモニーに関しては、谷岡さんは麻宮さんのイラストを研究して同じ筆致を再現したりと、ホントにいろんな人の魂が入って、良いオープニングにできたと思っています。
――宮川彬良さんの音楽収録にも立ち会われたのでしょうか?
- 羽原
全部ではないですけど、BGMの主なところを。言うまでもなく素晴らしかったです。
――パイプオルガンはどうですか、ご本人の演奏は?(『さらば宇宙戦艦ヤマト』では、若き宮川彬良氏が演奏している)。
- 羽原
- 見に行きました! そこはもう外せなかったんで。何曲かあるパイプオルガン曲を、ご本人と別な方が弾かれてました。気づかれた方もいると思いますが、ホールの広さが違うこともあって、下の音域の響き方がまったく違う感じで響いて聴こえるんですよね。今回、低音だけが響く別テイクがものすごい低く、かなり不気味な感じです。パイプオルガンで特別な演奏をした曲は他にもありますが、これはまだお話できないですね。
――最後に今後の展開、期待してほしいポイントなども、ぜひお聞かせください。
- 羽原
- まずは「波動砲問題」でしょうか。イスカンダルとの「封印の約束」に関して今後どうなっていくのか。そしてピンチに陥ったままのヤマトはどうなるのか。これはちょっと楽しみにしていただきたい点です。それと第三章は古代と雪の行く末、二章で描かれた感じを受けて、はたしてどういう行動に出るのかという部分に期待してほしいです。
――そういえば『
2199』では偶然切れ目がいいところに来て、各章のまとまり感がありましたが、『
2202』は逆に「つづく」というヒキが強くていいですね(笑)。
- 羽原
- 確かに『2199』は一章ごとに「観終えたな」って満足感がありましたが、『2202』では、本当に「これから」ってところで終わらせました。
――『
2199』は熟知したメインルートの中身を膨らませるようで良かったんですが、今回『
2202』はルート自体が未知で驚きが多く、予想するのが楽しくていいですね。
- 羽原
- 第三章も、思いきり引いて終わります。シリーズ構成の福井さんがイベントで「海外ドラマのシーズンごとの終わりって、ひどいくらい引いて終わるじゃないですか。それに合わせました」みたいなことを語っていたくらい、すごくよく考えられたラストばかりなので、しばらく各章の終わりで「お楽しみに!」が続くと思います(笑)。
――ますます楽しみになりました。ありがとうございました。