私見では、この作品のおすすめできる最大の魅力は、物語の進行に伴ってとんでもない世界が立ち現れてくるプロセスです。美しい日本の田舎を描いているふりをしながら次第にディストピアが明らかになってくる過程を、どうぞどきどきしながらお楽しみください。ただ、注意が一つ。時々あらわれる歴史の説明の場面などを除いて、物語は主人公の女の子が認識したものと感じた情緒を読者に伝えることに終始しています。世界を見る観点が固定されているのです。こういう場合、アニメにすると視聴者は主人公と認識のみならず情緒まで共有しがちです。感情移入というやつです。主人公の情緒が作者の言いたいことと連動しているのであればそのまま単純に楽しめるのですが、どうやらそうではない気がします。視聴者が主人公とは別のことを感じ、別の価値判断をしていいし、むしろそうした方が、この作品、楽しめると思うのです。