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UPDATE:2015.2.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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過去編を独立させてのスタート
――10年間連載された安彦さんの漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』が待望のアニメ化です。コミックス第9巻「シャア・セイラ編」からOVAとイベント上映でスタートさせた理由は何でしょうか。
安彦
ガンダムの原作者でもある富野(由悠季)氏の『ガンダム Gのレコンギスタ』がTVで始まることが決まった時点で、同時期にスタートはありえないと僕も思ったし、サンライズもそう思ったんでしょうね。落ち着くところに落ち着いたなと。
――漫画の中でも、安彦さんによるオリジナル性の高いパートです。
安彦
そこはやりたいと思っていたし。そんな想いも含めて結果オーライという感じで、いいところに落ち着いたんじゃないかと。「過去編」が異質なものだから、シナリオの隅沢(克之)くんと監督の今西(隆志)くんと総監督の僕の3人で扱いをどうするか、悩んでいたんです。時系列的にいきなり過去編から始めてしまうと初めて見る人は戸惑うし、だからと言って漫画のように途中にたっぷり入れると、「間延びしている」と言われかねない。「だったらOVAでとりあえず過去編からスタートしてしまおう」となった。そういう意味での、結果オーライなんですね。
――過去に映像化されていない部分から始めたことは、すごく良かったと思います。
安彦
ええ。「観たい人は観てね」ということだし、TVじゃないから視聴率も関係ない。ただしここで大きくつまずくと、後はない(笑)。途中で「売れないからやめようか」となったりするのだけは、勘弁してほしいなと。
――それはさすがにないと思いますが(笑)。それで何話まであるのでしょうか?
安彦
4話構成ですね。単行本は「過去編」が6巻分あって、たまたま単行本1冊分が1時間の映像になるという流れになっているけど、なんとか4本で入るんじゃないかと。だから過去編を全部やるかどうかは、わからんということです。
――ルウム戦役の一部は、アバンで先出ししていますよね。
安彦
あれは「ルウムまでは絶対やるぞ!」という意思表示ですよ(笑)。それと「ガンダムの話だぞ」という念押しというか前置きというか……。
――「モビルスーツ戦があります」という宣言に感じました。
安彦
いきなり本編始めてしまうと「どこがガンダムなんだ?」と言われかねないから、それで板野(一郎)君にやってもらったんです。
――去年、『劇場版機動戦士ガンダム』三部作のBlu-rayのとき板野さんにお会いしたら、「安彦さんから召集されちゃいました」と嬉しそうにおっしゃってました。
安彦
僕は「ご祝儀よこせ」って言ったんですよ(笑)。軽い気持ちで言ったのに、今は半端な仕事は誰もしないんだね。かなり長く引っぱってしまって、ちょっと彼には申し訳なかったかもしれない。
――板野さんとはファーストガンダムのTVと劇場以来のお仕事だと思いますが、どう進められましたか?
安彦
完全なお任せです。野暮なことはいっさい言わない。彼の絵コンテも一応読んだけど、「シャアのためのアバンだから、最後はシャアで締めてね」と言ったくらいです。あとは試写のときに「へー、こうなるんだー」「きれいだねー」なんて言って、完全にお客さん(笑)。本当に気楽なもんで。
――黒い三連星がヒート・ホーク使うところとか、安彦さんの漫画の印象どおりでもありました。
安彦
とは言え映像構成は、漫画とはそれなりに違う。特にアバンはその代表です。3分しかないから、あまり変えようのない部分だったということじゃないですかね。
――安彦さんのガンダム原画集を通じての板野さんとのご縁も、ものすごく不思議な感じがしています。
安彦
ええ。彼とは遠い昔に生き別れになっていたから、ご祝儀ぐらい要求してもいいだろうと(笑)。「大きくなったね」みたいな。
――現実世界で積んでいる時間が歴史になった感じと、本編で描かれる歴史的時間の積み重ねとがシンクロしている感じもしてきて、ものすごく興味深いんです。
安彦
そうですね。「長い間に、こんな感じになりました」という。
パズルのピースがハマる不思議な感覚
――そもそも『THE ORIGIN』の連載を始められたとき、安彦さんの漫画で再構成ということに興奮しました。それは歴史漫画をたくさん描かれてきた安彦さんなら、その側面をより濃密に描けるだろうという期待もあったんです。そこはいかがですか?
安彦
連載中にも何度か言ってたんだけど、引き受けたときはダイジェストだろうと。要領よくまとめてなるべく短い期間で、それでも3年はかかるよと言ってた。そのダイジェストの仕方に関しては、自分のアレンジも加えるという条件でスタートしたんです。ところが手をつけてみると、思っていたほど手軽なダイジェストにはできないことに気がついて。なおかつ描き足さなければならない部分もあるなと。それが過去編なんですけど、ダイジェストどころかさらに増やしてしまい、それで10年かかった。基本的に支持されたし、別に調子に乗ったというわけではないんですね。だから二転三転して、これは映像化もアリかなと。
――漫画を描く中で、かなり新発見があったということですか?
安彦
それも再三言ってるんだけど、なんていうんだろう……。いろんなピースがしかるべきところにハマっていく。それが非常に不思議というかね。「そういうことだったのか」みたいなことが多くてね。やっぱりファーストガンダムはよくできてたんだなと。「あのセリフってこの伏線だったのか」とか「非常に限られた情報なのに、こうするとちゃんとつながるんだ」とかね。富野由悠季氏はもちろん計算もしてるんだろうけど、計算を超えて世界が勝手に形を獲得していくという感じの、かなりレアな奇跡が起きていたんじゃないかなと。ちょっと大げさに聞こえるかもしれないけど。
――それは僕たち視聴者も感じていたことです。本当にあったことを切り取って見せてる感じがする。
安彦
「ちゃんと構成したぞ」とか思っても、結果そうじゃないものがあるでしょ。「世界観構想」なんて大学の講座でも「ハウツーはこうだ」とか教えている。「その単位とれば、私にも世界がつくれるのね」みたいな(笑)。それって大嫌いな傾向だけど、そんなもんじゃないよと。そんなふうに行ってたまるもんですか、という感じ。だって「もう一度、ガンダム世界に匹敵する巧妙にできあがった嘘世界をつくってください」と言われても、誰もできないと思うんですよね。できたら苦労しないよねと。
――やっぱり独特なものだったという感じでしょうか?
安彦
と、思いますね。何かが当時の富野由悠季に降りてきていた。そんな感じがするよね(笑)。
――やはりシャーマニズムというか降霊術的な要素があるんですよね。著名な漫画家の方からも近い話を聞きますし。
安彦
作家には時としてそういうことが起きるんじゃないですかね。ベストコンディションのときに、「あれ? こんなこと描いちゃったんだ、俺」みたいな。そういう体験をもてた作家は幸せでしょう。僕はガンダムの生みの親じゃなくて、サイドプレイヤーでやっていて、でもかなり富野由悠季の身近にいたと思ってるから、相当わかってるつもりだった。だから引き受けたんだけど、ところがやってみると、けっこうわかんないことも多かったんだなと。
――そこがいいんです。歴史もののように、本人じゃない立場から取材をするようなアプローチで、ガンダムを取材して描かれている感じを受けていました。
安彦
何の作品でも言えると思うんだけど、つくった本人がいちばん隅から隅までわかってるかと言ったら、そうじゃなかったりする。もちろん映画もそうですし、漫画もそう。そこがつくりものの不思議なところですよね。
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