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<月刊>アニメのツボ

UPDATE:2013.11.25

クリエイターズ・セレクション「監督・演出家:佐藤 竜雄 インタビュー」公開中!

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業界著名人がアニメ作品をオススメ!

『機動戦艦ナデシコ』や『モーレツ宇宙海賊』など宇宙もので知られる佐藤竜雄監督。
幅広い作風と柔軟な演出力、笑顔いっぱいのユーモラスな作風の裏にあるものを、
たっぷりとご紹介!

監督・演出家:佐藤 竜雄 インタビュー

取材・構成:氷川竜介

クリエイター感覚で、アニメのツボを徹底的に刺激!自作にまつわる貴重なエピソードから、
子どもの頃に大好きだったアニメ、プロを目指すきっかけとなった衝撃の作品などなど、
魅力的なガイダンスを聞きだします!
多種多様なスタッフとキャラをまとめた『機動戦艦ナデシコ』
――その次が佐藤竜雄監督の代表作となる
『機動戦艦ナデシコ』(96)です。
佐藤
クセのある人たちが勢ぞろいした作品なので、いろんな方向を向いて変なベクトルを持つ尖った金平糖のようなものが、ひっかかりを生みながらものすごい勢いで駆け抜けた。そんな印象ですね(笑)。スタッフもキャラクターも同じ印象で、リンクしてます。ですから「あの頃のカオスな感じで」と言われても、「奇跡の組み合わせだからムリ!」と答えるしかないです。僕にしても、OVAから派生してきた「業界」の先入観なしにどうまとめていくかに集中して、オーソドックスなアニメのつくり方をしていたのが良かったんでしょうね。まずは作品にすることが第一ですから、反発覚悟で自分のやり方で進めてみて、最終的に認めてもらった形です。
――そのやり方の違いは、どういう部分でしょうか。
佐藤
今はカオスな状態なので出身や流派も意識されませんが、当時のジーベックは葦プロの流れのスタジオですから演出という役割からして違っていて、スケジュール管理など制作管理を強く要求されるんです。だから基本、コンテ以降は作画に任せていく流れです。僕はコンテで構図と演技をカッチリ決めこみ、作画も演出チェックして見る進め方でしたから、現場は戸惑ったと思います。でも劇場版『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』(98)ができたのも僕の方法を納得していただいた結果です。演出で決めこまないかぎり、あの密度の画面にはならないし、それに加えて後藤圭二さんが壮絶に作画に手をいれたので、HDリマスターしても時代の差を感じさせないほど緻密な画づくりになりました。今のデジタルであの密度感を出すためにはどうすればいいかと、今回の劇場版『モーレツ宇宙海賊』でも苦労している真っ最中です(笑)。
――そこにつながるわけですね。
佐藤
最近は劇場でアニメを観るお客さんが増えていて、ありがたいです。それだけに今回の大テーマは「劇場をちゃんとやること」なんです。劇場経験のスタッフがほとんどいないため、演出チーフで中山勝一さん(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ副監督)に入ってもらいました。やはり劇場でやるなら今はこれぐらいの密度にしないとダメなんだよなということを確認し合いながら進めています。TVをちょっと丁寧にしたくらいでは、劇場にならないんです。
――具体的にはどこが違うのでしょうか?
佐藤
さっきも言いましたが、大きなスクリーンで観た場合の絵や音の「情報量の制御」ですね。TVはお話さえ流れていれば段取りだけで20分間観てくれますが、映画でそれは通用しません。いかに90分という時間軸を制御してお客さんを乗せていくか。特に今のお客さんは短い音楽に合わせて流れていくPV的な映像に慣れているので、「長いお話をじっくり見せる」ということを突きつめてみたい反面、そうしたら観てくれないかもしれないと、非常に怖いんです。
人間らしさ、人としての愛嬌がポイント
――TVの『ナデシコ』のお話をもう少し聞きたいのですが、これから観る方へのガイドなどがありましたら。
佐藤
折り返し手前の13話から桜井弘明さんが助監督に入り、そこからフィルムのタッチが明るくなるあたりですね。現場のムードも明るくなったし、作画で和田高明さんが入ってきてギャグ調の表現も入ってきて、「明日の『艦長』は君だ!」(第19話)というルリが歌う回が楽しさのピークでしょう。以後は火星との戦いで重たくなりますし。ゲキガンガー含めて真面目にやっているのかふざけているのか、あの振れ具合が当時は「よく分からない」と言われましたが、十何年経った今では「ナデシコみたいな」と例えられる、ある種ジャンル扱いです(笑)。それだけ生き残れたのは、すごいことだと思います。
――佐藤さんから見た「ナデシコらしさ」とは?
佐藤
スカしたやつがいないことでしょう。みんな泥臭いんですよね。誰もが何かしら抱えて生きている。その生っぽいところがいいなと思います。アキトにしても、言っていることとやっていることが違ったりする部分がありますよね。でも「アキトはいいヤツなんだよ」と桜井さんが言った一言に尽きるわけです。そう考えてみると、みんないいヤツじゃないかと(笑)。どこかしらイビツであっても、そこがかわいい。ルリにしても感情表現を知らないだけで、根っこの部分はものすごく人間臭いですから。
――そういうキャラクターの捉え方は亜細亜堂時代からの連綿としたキャリアにつながる部分でしょうか。
佐藤
まる子の頃、芝山努さん(『ドラえもん』シリーズ監督)に「キャラクターには愛嬌がないとダメだよ」と言われたことがありました。じゃあ、その愛嬌って何だろうと。当時、先輩の女性演出家に「君には女の気持ちが分かっていない!」と言われたことがあって生意気にも反発したりもしましたが、じゃあ分からないなりにどういう形で自分は切りこんでいけばいいのか、ずいぶん考えました。「知らないからできない」ということでは演出家は務まりません。「逃げちゃダメだ」というのは有名な言葉になりましたが(笑)、実にそのとおりだと思います。上っ面ではダメで、食いこんで作品の中に入っていかないと、どこかで無理が出てきてフィルムがフィニッシュまでいかない。作品にしがみつく形で参加する。これって、できそうでできないことなんです。たいてい振り落とされますから。
――『ナデシコ』では個性的なキャラがたくさん出てくるので、入りこむのも大変だったと思います。
佐藤
描くべきこと描きたいところとスケジュールとの戦いでした。どういう状況でも僕が笑っていられるようになったのは『イサミ』と『ナデシコ』の2本のおかげですね。でも今に至るも、自分なりの方法を模索してばかりなのでいつも苦労しています(笑)。僕の作品が好きな人たちって、「佐藤竜雄のフィルムだから全部観よう」というファンでなく、あれこれ試行錯誤した結果のそれぞれの作品のファンでしょうね。もちろん共通する僕のカラーというものもありますが、こういう特集でもない限り、「えっ、この作品もやってたの?」というタイトルが多いと思います(笑)。
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