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UPDATE:2014.8.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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思い出話を交えつつ、クリエイターが自身の体験と自作を振り返る好評連載。
今回は劇場版『モーレツ宇宙海賊』(2014年2月公開予定)が絶賛制作中、『機動戦艦ナデシコ』が代表作の佐藤竜雄監督にお話をうかがいます。
TVアニメでオリジナルのシリーズを構築するためには、何が必要なのか。劇場映画とTVシリーズでは、何がどう違うのか。亜細亜堂という日本のアニメづくりの伝統をもつスタジオ出身で、かつ数々のオリジナル作品にも携わった佐藤竜雄監督の発想は、実に刺激的です。
「人のつながりと面白さ」を描く演出の面白さのツボを探っていきましょう。
亜細亜堂のアニメーターから演出家へ
――佐藤竜雄監督の場合、アニメを目指すきっかけは何だったのでしょうか。
佐藤
高校までは陸上をやっていたので、アニメ業界に入るというのは、まるで考えていませんでした。でもケガで陸上を諦め、治療の間に知り合ったのが漫研、映研、美術部、つまり文化部系の怪しい連中なんですよ(笑)。美術室に誘われ、『ガロ』(作家性の強い漫画雑誌)を読まされて興味をもち、漫画なら小学生時代に描いていたから、久しぶりに描いてみるかとリレー漫画なんかを授業中に。大学時代にアニメ研に入ってしまったのも、活動内容を知らずに漫研と似たものだと思いこんで……。
――実際の活動内容は、どういったものでしたか?
佐藤
セルアニメをつくっていたので衝撃を受けましたが、カメラやエディターをいじるのが面白くて4年間やり続けました。3年のときにアニメ研のサークルノートにいきなり「ガイナックスの○○といいます。『王立宇宙軍』という劇場アニメーションを制作中です。スタッフ募集中!」と、ガイナの制作さんが書きこんだことがありまして。原画として参加していたOBの方が言うことには、まだ20代の自主制作やってる人たちがバンダイさんに億単位の金を出させて映画をつくってるという。その話を聞いて僕は、「アニメの世界では若くてもそういう大きな仕事ができるんだ」とすっかり勘違いをしちゃった(笑)。かくしてそのOBのツテで亜細亜堂の試験を受け、業界にはいったわけです。
――プロの仕事は、実際どうでしたか。
佐藤
当時の亜細亜堂は『まんが日本昔ばなし』や『きまぐれオレンジロード』を作っていたので、スケール的にはイメージが違うんですよ(笑)。僕の初動画は『エスパー魔美』で「雪の中の少女」という回です。魔美が雪山で遭難している人にケーキを超能力で運ぶんですが、その箱の動画を定規で描いたら「手で描かないとダメだ!」と動画の先輩に怒られまして、フリーハンドで描き直して原画さんに持っていくと「なんで定規を使わないんだよ!」と言われてしまい(笑)。そんな理不尽なところすら楽しみつつ、1年ぐらい動画をやっていました。
――どの時点で演出になったのでしょうか。
佐藤
もともとフィルムを作りたかったクチなので、やるなら演出かなあと。でも、「絵から入った方がいいよ」と言われてアニメーターをやってみたものの、自分は絵が下手で向いてないなと思い、小林治さん(亜細亜堂の創設者)に「早く演出になりたいです!」と直訴したら、ちょうど小林さんが『かんからさんしん』というアニメ映画の監督をやるということで、演出助手として潜りこみました。今にして思うと周囲の方たちからはヒンシュクを買っていたんじゃないかと(笑)。
早い時期に劇場映画の演出を経験
――演出を始められた後は、いかがでしたか。
佐藤
学生時代はアートアニメーションにも興味がありましたが、TVアニメでもやれることはたくさんあると分かったので、いまだにこの世界でやっています。最初に『ちびまる子ちゃん』(90)の第1期で1年以上ローテーションに入った経験は大きいです。特に湯浅(政明)くんも原画で参加していた 「まるちゃん南の島へ行く」(31、32話)という前後編の演出で高い評価を頂いて、それがきっかけで劇場版の『ちびまる子ちゃん 大野君と杉山君』の演出をやることになります。この作品で「劇場の演出は違う」という経験をしたのは、後々大きかったです。
――そのTVと劇場版の違いとは?
佐藤
情報量の制御、画面の密度感なんです。『ちびまる子ちゃん』ですら、スクリーンサイズを計算しないと画面が成立しない。特にセルアニメでは、どういう素材の組み合わせで画面をつくっていくか設計作業は大変でしたが、すごく面白かったんです。画面設計を担当した湯浅くんのレイアウトは、画面がキャラクターのシルエットで構成されていて、それ自体がグラフィックとして成立いるんですよね。まる子のキャラで広角のパースが成立するのがものすごく印象的で、勉強させてもらいました。その後、とある劇場版で監督を任され、作品世界を最初から構築していく醍醐味を味わったのですが、完成はしたけれど、諸事情で公開されませんでした。これは落ちこみましたね。そして少々冴えない時期を経て、『赤ずきんチャチャ』(94)のローテーションに入るんです。
――『モーレツ宇宙海賊』の原作者・笹本祐一さんも、その作品で佐藤竜雄という名前に注目したとおっしゃってました。
佐藤
グループ・タック(アニメーション制作会社)のプロデューサーの方も僕に興味を持って頂けたようで、結果『飛べ!イサミ』(95)の監督を依頼されたし、さらにそれが大月(俊倫)さんから『機動戦艦ナデシコ』を持ちかけられるきっかけになりました。『イサミ』はTVシリーズ初監督なのに、まったくのオリジナルで1年放送分の50話つくりました。早いうちにいろんな経験を積ませてもらえたのが大きな財産になって、それが今に活きている気がします。立ち上げ時は総監督として杉井ギサブローさんがいて、「しんせん組は幼稚園児(初期設定)じゃなくて小学生で行こう。後はおいおい──」という辺りで別の作品の監督に掛かり切りになってしまい、初めての本読み(脚本打ち合わせ)も僕以外はみなさんベテランライターで、どう進めていいかまったく分からないまま始まりました。他にもオリジナルの難しさを多々知ったので、これも今となっては貴重な体験ですね。
――TV初監督の手応えは?
佐藤
1年の間にキャラクターが育ち、現場スタッフたちも思い入れが涌いてきて「こうしたらどうでしょう?それじゃあこれは──」と膨らませていく瞬間を何度も見られたのが良かったです。特に黒天狗党の幹部連中は僕の方でもある程度は考えてたけど、育てる余地は多々あったので、声優さんもふくめて寄ってたかってつくっていきました。最初から自分の中だけでカッチリとしたものをつくり過ぎてもいけないし、かと言って何もないと誰も乗れない。濃いフィルムは監督ひとりではできなくて、みんなの力を借りないと。とはいえ、芯になるものは監督がつくらないといけないんです。
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