クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2015.9.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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アニメーターから演出家へ至る道
――原画の後は、作画監督も経験されたのでしょうか。
西村
いや、『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』のOVAシリーズでメカ作監のお手伝いをした程度で、結局作画監督はやっていないです。魅力的な絵までもっていける画力がなかったし、僕が描くくらいなら他の人が描いた方がいいだろうと。
――その「人に振る」という考え方自体が、すでに演出ですよね。
西村
確かにそうですね(笑)。
――演出への興味はいつぐらいから?
西村
入社した当初から芦田さんには「演出もやってみたい」と言っていました。それで『魔神英雄伝ワタル2』(90)のときに「演出やりたい?」と聞かれたので、「やりたいです!」と即答。それでスタジオ・ライブに籍を置いたまま、サンライズに常駐して演出の仕事をさせてもらえることになったんです。
――実際に演出をされて、いかがでしたか?
西村
スタジオ・ライブは、作画スタジオだったんだなと痛感してしまい。要するに、知ってるようで知らなかった工程が、たくさんあるわけです。当然、演出のスキルもまるでなかったので、最初は愕然としてしまい(笑)。このままだと周りに大迷惑をかけてしまうのは明らかだったので、まず初めに「僕は何も分かりません」と白旗を上げたんです。
――変に突っ張らなかったのが良かったんですね。
西村
ええ。周りも「とんでもないヤツがきた!」となりながらも、教えないとひどい目に合うのが目に見えてるから、こっちの質問攻めに対しても、きっちり答えてくれるんですよね。そういうやり方で、なんとか最初の1話分は乗り切りました。特に編集作業がダメで、最初はバッツンバッツンに切られてしまい。「こうしたらこうなるよね」と編集さんに言われても、何も反論できないんです(笑)。そのとき悔しい経験をしたので、以降はタイムシート上でいかに編集段階まで自分がやってしまうか、それに気をつけるようになりました。2、3本経験したらなんとなくノウハウも分かってきたので、ようやく自分がやりたいことにもチャレンジできるようになっていきました。
――演出の仕事には、どんな手応えがありましたか?
西村
原画はなかなか結果が伴わなかったというのが、正直な実感です。ところが演出になったら、周りのウケが割と良かったんです。反応があったことが、いちばん嬉しかった。それでその後はまずウケを取ろうと、少しイヤらしい方向へ心がはたらき(笑)。
――やはりある種の芸人体質ですね(笑)。当時はまだセルとフィルムですよね。
西村
ええ、今思うとスタッフが一堂に会する初号フィルムの試写は「ひとつ仕事をやりきったぞ!」という区切りの場になっていました。今はDVDでバラバラに見ることも多いので、メリハリのないままダラダラ続けているような空気も、残念ながら感じます。
――かつては、初号で手応えやリアクションも得られたと。
西村
とは言え、今は今で制作が終わってからオンエアまであっという間だし、ネット時代になって視聴者の声がダイレクトに伝わってきます。それが初号と立ち位置が似ているかもしれません。なにしろフィルム時代はリテイクするにしても、再撮影した後に現像所を経由するから中一日はかかって大変なので、緊張感がすごかったです。撮り直しがきかないがゆえの撮出し(素材をまとめてシートをチェックし、フレームを決めて撮影に出す、演出のカナメとなる作業)の緊張感はかなりもので、自分は一発でOKを出すことに心血を注いでいました。制作からは「一発撮りにかけ過ぎて、ヒヤヒヤするからやめてくれ」とよく言われましたが(笑)。デジタル時代になってからは撮出しせず、「問題があったら後で修正すればいい」となりがちで、だいぶ変わりました。
『サイバーフォーミュラ』で得た演出の成功体験
――演出を始められた当時、印象に残っている作品をご紹介ください。
西村
ワタル2』では演出をやらせてもらった2本のどちらも脚本がとても良くて、それをきちんと映像化さえすればある程度のものができるという感じだったので、初めて自分なりの手応えを感じたのは、『サイバーフォーミュラ』です。自分なりの工夫ややりたいことを、それが初めて形にできたと思います。
――具体的に印象に残っている話数は?
西村
世間的に評価をいただいたのは、やはり最終回直前の第36話(「三強激突!日本グランプリ」)ですね。ただし個人的な満足度で言えば第24話(「誕生!父の残したニューマシン」)になります。36話は僕の想像以上のものができてしまい、ダビングの現場で音がついたものを観て、自分でも思わず震え上がってしまったくらいですから、「みなさん評価してくれてありがとうございます」と思いつつ、自分の手からも、離れている気がするほどなんです。その一方で、24話は「演出的にきちんとコントロールできたな」という手応えがあったんです。
――36話は実にすばらしいです。「映画の神様が宿った」みたいな感じですか。
西村
ホントにそんな感じです。当時いっしょに演出をやっていた芦沢剛史氏に「西村くんは、今後この回の十字架を背負って生きていくことになるんだ」なんて言われたんですが、事実そのとおりになってしまい、今でも引き合いに出されます。「あのエピソードを越えなければ仕事をしてることにならない」というニュアンスはプレッシャーです。
――でも、得がたい体験だったのではと。
西村
ええ、演出を初めたばかりでこんな素敵な成功体験をさせてもらい、とても幸せに思っています。
バカ銃と光にこだわった監督デビュー作『TRIGUN』
――監督デビュー作は『TRIGUN』(98)になりますが、そのきっかけは?
西村
マッドハウスからのオファーですね。原作漫画はまだ2巻ぐらいまででしたし、それまでやったことのないテイストの作品なので、正直躊躇しました。それで『みどりのマキバオー』で一緒に仕事をさせてもらった阿部記之監督に相談したところ、「それは良い経験になるから、絶対にやるべきだ」と助言されまして、「よし、やってみよう」と。
――原作もスタートして間もない時期、どのようにアニメ化されようと考えましたか。
西村
連載中ですから、当然ストーリーの着地点は分からないわけです。そこに脚本の黒田(洋介)さんがいろいろと提案してくれて、そこから逆算して設定を考えたり、「こういうエピソードがあれば成立するんのでは?」とディテールを練っていきました。原作では後に描かれるナイブズとバッシュの因縁や、プロジェクトSEEDでどのようなことが行われるのかなど、いろいろとアイデアを出させてもらいましたね。
――この作品は、アメリカでの人気が非常に高いです。
西村
自分もビックリしました(笑)。海外はまるで意識していなかったし、いまだにどうしてウケたのか、イマイチよく分かっていません。
――ウェスタンの本場だからでは?
西村
それもあるかもしれませんね。“外国人が抱くちょっとズレた日本人像”の逆パターンかと思いきや、どうやらそうでもないらしいし。
――本場に通じるこだわりは、何かありましたか?
西村
「銃」の扱い方ですね。男の子ならよくあることだと思いますが、高校ぐらいの時期に銃やモデルガンに憧れをいだき、『Gun』や『コンバットマガジン』などの雑誌をひと通り読んでいました。それで銃の基礎知識はあったので、さりげなく作品に取り入れようと。たとえば人に銃を渡すときには、いったんシリンダーから弾を抜き、銃口ではなくグリップから渡すとか。やたらむやみにトリガーに指をかけるべきではないとか。日常生活における銃を取り扱うマナー、それは徹底しようと……。
――なるほど。アメリカは銃社会なので、そのあたりの細やかさが響いたのかも。
西村
そのかわりに出てくる銃は、僕らは「バカ銃」と読んでましたけど(笑)、「こんなの誰がつくったんだよ!?」とツッコミたくなるものばかりで。打ち合わせでも「今度のバカ銃どうしようか?」って、いかにヘンテコな銃をつくれるか、アイデアを競い合ってました。「5方向に発射できる銃はどう?」「そんな非実用的なの、どうするんだ!?」「いや、だからこそ出そう!」ってな具合いですね。
――集団でノリが出てくるのは、アニメならではの楽しさですよね。
西村
アイデアは荒唐無稽なだけに、機構はちゃんと成立するよう、バランスは気をつけています。銃器デザインの神宮司訓之さんが形にするわけですが、かなりの無茶ぶりでしたね。ヴァッシュの銃も一風変わってて、シリンダーの下から弾を撃ち出す構造で、神宮司さんにはオーダーどおりデザインするとブサイクになる物を、最終的には主人公が持つに値するカッコ良さにリボルバー特有の美しさをうまく落とし込んでくれて、すごく感謝しています。かなり大変だったと思いますが。
――その他、何か演出上で気をつけたところは?
西村
陽の光ですね。砂漠の星という設定ですから、直射日光が強くて屋外ではカゲは濃く落ちる。でも、屋内でそのままの色を使うとハイコントラスト過ぎて、おかしく見えるんです。だから屋内と屋外で色指定を変えることになり、ものすごく設定が大変になってしまいました。今はデジタルですから、カット単位でバランスを調整することも難しくなくなりましたが、当時はセルに絵の具ですから。特に大変なのは屋内と屋外の境界のところで、「どの時点で色を変えるのか?」という問題も浮上してしまい。でも、なんとかやり抜きました。
――光源のせいか、ウェスタンの雰囲気はよく出ていると思います。
西村
色彩設計をやってくれたスタジオOZの磯崎昭彦さんが銃好きだったこともあり、率先してやってくれて助かりました。僕はむしろ「さすがにこれは……」とやめようとしたところで、「面白いからやろう!」なんて。
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