――すこし話を戻す感じになりますが、オーソドックスな少年マンガ的なところから始まるという話がありました。主人公の近衛刀太はどんなキャラとしてとらえましたか?
- 鈴木
なるべく大人っぽくせず、少年らしくですね。シリアスな展開やグロテスクなアクションもあるので、明るさは刀太で出して行きたいなと。配役も、あまり難しいことを考えずに元気を出せる人……ということで決めて、主役としては高倉(有加)さんにお願いしたことで、作品の勢いや明るさは刀太で出せたかなと思います。
――ヤンチャな感じは良く出てますよね。
- 鈴木
- そこが同じ女性配役の少年でも、ネギとの違いですよね。中性感があったネギに対して、今回は少年っぽく持っていこうというのはありました。デザイン的に高校生ぐらいに見えるかもしれませんが、ホントは14歳くらいの年齢感です。
――わりと前向きにお話を転がしていく感じが、観てて好感もてました。
- 鈴木
- 主役が最初ということもあり、とにかく前に前にという感じが強くて物理的にマイクとの距離も近すぎたりしました(笑)。外見は女性的な方ですけど、中身は刀太そのものっぽいなと。リアルタイムで上手くなる感じも見られて、良かったですね。九郎丸の広瀬ゆうきさんにしても、みんなどんどん役に慣れて上手くなる感じが出てて、成長してる感がすごくありました。そういう体験も初めてだったんで、嬉しかったし新鮮でしたね。
――九郎丸は、性別を選べるみたいなラブコメ向きの特別な設定がありますよね。
- 鈴木
- そういう設定って、赤松さんは思いきりよく、読者が求めてる方向にスッとシフトチェンジしちゃうんですよね(笑)。九郎丸も読み始めたときは「メインヒロインになるのかな?」と思っていたんですが、だんだん男の子に固定されていく感もあり。普通に考えればこれで何本でもつくれそうなのに、「もういいんじゃない」みたいな感じで。そういう意味では、改めてじっくり掘り下げて描いても、面白いものができるんじゃないかと思いますね。今回、わりといっぱい積み残しながら、短期で駆け抜けてしまった感はあるので少々残念ではあるんですが、また機会があれば。
――設定面では、不死者の能力のバリエーションが用意されています。描写的には、どうプランニングされていたんですか。
- 鈴木
- いま主流の「能力バトル」みたいに、設定が前面に出てくる感じじゃないんです。死なないことそれ自体が無敵、みたいな。メインの刀太や九郎丸にそういう要素が強いので、異能力バトルというより「胴体真っ二つにされても平気な肉弾戦」みたいな感じです。突き詰めると面白そうな設定が多いんですが、能力を全面に出す戦いは桜雨キリヱの時間の流れぐらいしか入れ込めなかったです。その代わり、肉弾戦はあえてグロめでもいいかなと、血や欠損もあまり逃げずに描きました。演出を始めたころとは基準が変わってまして、血も赤くして大丈夫でしたし、本当に死ぬ展開ではなくあくまでファンタジーなので、胴体真っ二つも内蔵描かなければ大丈夫みたいな感じでした。最近はエンターテインメントとして成熟してきたこともあるのでしょうね。
――不死の主人公側に対し、敵側はどういうふうに考えてましたか。
- 鈴木
- フェイト・アーウェルンクスのように、前作からの敵は新規の方にはなじめないかなと心配しましたが、超星仔という影から出てくるキャラクターは、逢坂良太さんがすごく乗って演じてくれたので、この方向の新キャラとして活かしていきました。ラスボスは『ネギま!』の設定と直結しているので構成のときにも悩みましたが変えてしまうわけにもいかないので。
――1クールしかない中、軌道エレベーターのような大きな設定は、どう描こうと考えられましたか。
- 鈴木
- 私自身、わりとSF小説が好きなんです。でも世界観的には100年後ぐらいですが、それほどリアルな未来感は出さないようにしました。すごく田舎っぽい風景から始まりますし、温暖化が進んで田舎と都会が二極化した世界なので、設定を突き詰めて未来感を出すより、原作の印象とズレないように気をつけました。SF方向に振りすぎずファンタジーっぽい部分はそのまま残し、未来ガジェット的なものは生活感の中に出さないようにしてます。車が空を飛んだりとかは昔のSFマンガみたいな感じで(笑)。ただ軌道エレベーターは、「UQ世界の記号」としてすごく使いやすかったです。外に出ればどこかに軌道エレベーターが見える世界みたいな、そんなお約束事にしています。
――改めて第1話からご覧になる方もいるかもしれないので、全体的にここがオススメみたいなポイントがあれば。
- 鈴木
- 今回は、やはりバトルアクションを観ていただきたいです。あとは通して観るときに微妙な部分ですが、役者がこなれてくる感じが分かると、面白いかもしれないですね。特に刀太と九郎丸は、最後のほうでは、かなり成長していることが伝わるはずです。そういう楽しみもあるのではないでしょうか。
――バンダイチャンネルは連続再生にしておくと、最終話までノンストップで観れたりするので……。
- 鈴木
- 成長や変化を見るにはいいですね。