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UPDATE:2017.12.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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不死者のアクションを少年マンガ的に極める
――すこし話を戻す感じになりますが、オーソドックスな少年マンガ的なところから始まるという話がありました。主人公の近衛刀太はどんなキャラとしてとらえましたか?
鈴木
なるべく大人っぽくせず、少年らしくですね。シリアスな展開やグロテスクなアクションもあるので、明るさは刀太で出して行きたいなと。配役も、あまり難しいことを考えずに元気を出せる人……ということで決めて、主役としては高倉(有加)さんにお願いしたことで、作品の勢いや明るさは刀太で出せたかなと思います。
――ヤンチャな感じは良く出てますよね。
鈴木
そこが同じ女性配役の少年でも、ネギとの違いですよね。中性感があったネギに対して、今回は少年っぽく持っていこうというのはありました。デザイン的に高校生ぐらいに見えるかもしれませんが、ホントは14歳くらいの年齢感です。
――わりと前向きにお話を転がしていく感じが、観てて好感もてました。
鈴木
主役が最初ということもあり、とにかく前に前にという感じが強くて物理的にマイクとの距離も近すぎたりしました(笑)。外見は女性的な方ですけど、中身は刀太そのものっぽいなと。リアルタイムで上手くなる感じも見られて、良かったですね。九郎丸の広瀬ゆうきさんにしても、みんなどんどん役に慣れて上手くなる感じが出てて、成長してる感がすごくありました。そういう体験も初めてだったんで、嬉しかったし新鮮でしたね。
――九郎丸は、性別を選べるみたいなラブコメ向きの特別な設定がありますよね。
鈴木
そういう設定って、赤松さんは思いきりよく、読者が求めてる方向にスッとシフトチェンジしちゃうんですよね(笑)。九郎丸も読み始めたときは「メインヒロインになるのかな?」と思っていたんですが、だんだん男の子に固定されていく感もあり。普通に考えればこれで何本でもつくれそうなのに、「もういいんじゃない」みたいな感じで。そういう意味では、改めてじっくり掘り下げて描いても、面白いものができるんじゃないかと思いますね。今回、わりといっぱい積み残しながら、短期で駆け抜けてしまった感はあるので少々残念ではあるんですが、また機会があれば。
――設定面では、不死者の能力のバリエーションが用意されています。描写的には、どうプランニングされていたんですか。
鈴木
いま主流の「能力バトル」みたいに、設定が前面に出てくる感じじゃないんです。死なないことそれ自体が無敵、みたいな。メインの刀太や九郎丸にそういう要素が強いので、異能力バトルというより「胴体真っ二つにされても平気な肉弾戦」みたいな感じです。突き詰めると面白そうな設定が多いんですが、能力を全面に出す戦いは桜雨キリヱの時間の流れぐらいしか入れ込めなかったです。その代わり、肉弾戦はあえてグロめでもいいかなと、血や欠損もあまり逃げずに描きました。演出を始めたころとは基準が変わってまして、血も赤くして大丈夫でしたし、本当に死ぬ展開ではなくあくまでファンタジーなので、胴体真っ二つも内蔵描かなければ大丈夫みたいな感じでした。最近はエンターテインメントとして成熟してきたこともあるのでしょうね。
――不死の主人公側に対し、敵側はどういうふうに考えてましたか。
鈴木
フェイト・アーウェルンクスのように、前作からの敵は新規の方にはなじめないかなと心配しましたが、超星仔という影から出てくるキャラクターは、逢坂良太さんがすごく乗って演じてくれたので、この方向の新キャラとして活かしていきました。ラスボスは『ネギま!』の設定と直結しているので構成のときにも悩みましたが変えてしまうわけにもいかないので。
――1クールしかない中、軌道エレベーターのような大きな設定は、どう描こうと考えられましたか。
鈴木
私自身、わりとSF小説が好きなんです。でも世界観的には100年後ぐらいですが、それほどリアルな未来感は出さないようにしました。すごく田舎っぽい風景から始まりますし、温暖化が進んで田舎と都会が二極化した世界なので、設定を突き詰めて未来感を出すより、原作の印象とズレないように気をつけました。SF方向に振りすぎずファンタジーっぽい部分はそのまま残し、未来ガジェット的なものは生活感の中に出さないようにしてます。車が空を飛んだりとかは昔のSFマンガみたいな感じで(笑)。ただ軌道エレベーターは、「UQ世界の記号」としてすごく使いやすかったです。外に出ればどこかに軌道エレベーターが見える世界みたいな、そんなお約束事にしています。
――改めて第1話からご覧になる方もいるかもしれないので、全体的にここがオススメみたいなポイントがあれば。
鈴木
今回は、やはりバトルアクションを観ていただきたいです。あとは通して観るときに微妙な部分ですが、役者がこなれてくる感じが分かると、面白いかもしれないですね。特に刀太と九郎丸は、最後のほうでは、かなり成長していることが伝わるはずです。そういう楽しみもあるのではないでしょうか。
――バンダイチャンネルは連続再生にしておくと、最終話までノンストップで観れたりするので……。
鈴木
成長や変化を見るにはいいですね。
原作の印象に近づけた監督デビュー作
――鈴木監督の作品もいくつか見放題配信になっていたりするので、この機会にみどころなどをお願いします。まず、『変態王子と笑わない猫。』(13)は初監督作品ですか?
鈴木
そうですね。まだ全然分かってなかったので、むしろ周囲に支えてもらった作品です。原作のイラストがカントクさんで、ものすごくキレイな絵を描かれていたので、なるべくそれに近づけたいなと。この時期から髪の毛にグラデーションを入れたり、そういう流れが出始めました。この作品でもかなりがんばって、イラストの再現度を高めることを努力しています。
――あれは、撮(影)処理なんですか。
鈴木
撮処理です。作画で塗り分けておくと、撮影で間をボカしてくれる。そんな処理が流行し始めたころで、やり方はいろいろですね。最近は『ガンダムGのレコンギスタ』(14)でやってた線を鉛筆っぽくする処理も加わり、かなりリッチな方向になっていると思います。『変態王子』は「ライトノベルものなら挿絵に近づけよう」という方向性が出始めたころなので、同時期の他の作品と見比べていただけると、歴史的な研究にもなると思います(笑)。どんどん作業が多くなって、現場はツライ面もあるんですけど。
――撮影にかかる負担は、年々増えてますよね。
鈴木
弊社でも水島努監督の『監獄学園(プリズンスクール)』(15)で、キャラのグラデーションを原作に合わせてかなり激しく入れる試みをしていました。『変態王子』の場合、髪の毛のボカシの具合はある程度オートでしたが、カットによってキレイに出なかったりするので、ワンカットずつの調整もあり、撮影にかなり負担がかかりましたね。そこはがんばっていただいた点なので、みどころです。
キャラの心情と関係性を重視した優しい世界
――『うらら迷路帖』(17)は今年監督作が3本続いたうちの1本目ですが、色彩がキレイなので毎週楽しみに観ていました。
鈴木
美監(美術監督)が奥村泰浩さんという何本目ぐらいかの若い方なんです。もともと原作の水彩っぽい感じは再現しづらいなと思ってましたが、美術からものすごく近いものが上がってきたので、だったら色もなるべくそれに合わせて原作に近づけようと。絵的にすごく原作ニュアンスが出せた作品になって良かったと思います。画面処理系の話が多くて、申し訳ないですね。
――いえ、撮影ご出身らしく興味深いです。
鈴木
最初は「日常系だよ」と言われたので、「やったことがないな」とものすごく構えてしまい、他の作品をいろいろ参考に観させていただきました。「キャラクターを成長させてはいけないのかな」と思ったりしましたが、やってみたら普通の成長譚というか友情譚みたいな感じなんですね。逆にやりやすく、ものすごく楽しかったです。
――こういう傾向の作品は、キャラクターに寄り添う感じなのでしょうか。
鈴木
何が起こっていくのか、ドラマ中心に見せるというよりも、そのときの心情描写なんですね。あとはよく言われる「関係性」をメインに見せています。何か出来事をフックにして、「この子とこの子がどういう感じで仲良くなったりするのかな」と注目してもらうみたいな……。関係性と言っても、つらいライバル関係みたいな強力な関係性はない。何かイヤなことがあり、戦って乗り越えた結果仲良くなるというよりは、基本的にはみんな仲がいいんです。そんな優しい世界なんですね。それは現実にはないことですから、ある程度年齢がいってからみると心地いいんです。試練はあるにせよ、悪意のある人がいない。そこが、やっててすごく良かったですね。
視点を変えて印象を刷新した10話のバトル
鈴木
ファンタジーものは、『ゼロの使い魔』(06)などいろいろ手伝いましたが、監督としてガチンコのファンタジーものを手がけるのは初めてでした。ただ、受け手だった時期から『スレイヤーズ』(95)などファンタジーものは多く観てきたし、特に『ロードス島戦記』(90)は参考になるので、見直したりしました。あれはOVAだったのでいいんでしょうけど、テレビでこの品質のバトルラインをやるのかと(笑)。今回はベースになったのが外伝ですから、本編がわりと成長譚なのに対し、最初から強い人たちが最初から超人バトルする作品ですから、それで12本やるのか……という軽い絶望感から始まってます。
――絶望感ですか(笑)。
鈴木
直前まで悪意のないふわふわ世界にいただけに……(笑)。本当は前作やってる間に手をつけたいと考えてたんですけど、諸事情でほぼ直結してしまいました。ふわふわ世界が終わって三日後ぐらいにはもう血みどろの世界に突入ですよ(笑)。なかなか切り替えが大変でした。コンテを描いてても気を抜くとふわふわ感が入ってきて、あわてて消すみたいな(笑)。山川(吉樹)さんが監督された前作とスタッフはだいたいいっしょですし、世界観が出来ているところに乗っかった分、楽はさせていただきましたけど、物量が大変で……。特にアクションがすごかったです。あと1年ぐらいほしかったです(笑)。監督としては「2期もの」自体が初で、すでにあるものに入っていくのも、わりと新鮮な体験でした。山川さんはだいぶ独特な方で、理屈はわからないのに面白いみたいな動きとカットが多く、これを再現しようと思ったら失敗するなと(笑)。ある程度自分の色にしてみて、うまくいったかどうか分からないにせよ、なんとか物量はこなせたかなと。
――特にオススメの話数などありますか?
鈴木
10話は血みどろだったんで、いいんじゃないかと。前作の『ダンまち(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)』(15)の本編とほぼ同じ時間軸で同じ出来事をやってるんで……実は、1/3ぐらいどこかで見たことがあるような(笑)。
――え? (笑)。結果的に似ちゃったということなんですか。
鈴木
前作もバンダイチャンネルさんに入ってるなら、ぜひ観比べていただけると(笑)。どうやっても同じ内容ですからね。前のシリーズでは主人公が敵のボスと戦ってるんですけど、今回それを一歩引いたところからみんなが見て感動してるというか、ちょっとショックを受けてる。ということは、前の画をそのまんま見せないと通じない。出来も良かったし、だったらもう一回観ようよ、みんなで……なんて(笑)。でも、編集を変えているんですよ。同じ素材でも編集と音響で全然印象変わるんだなと、すごく勉強になりました。ただ、そこで節約した予算も、結局他の物量ですべて泡のように溶けて消えたので、見逃していただければ(笑)。
――一つの出来事をふたつの視点で観るのって、わりと楽しいと思うんですよね。
鈴木
理想で言えば、完全に別視点で同じタイミングで描き直せば、もっと面白いんでしょうけど。そうしなくても編集と音楽のつけ方で全然違って見える。それってオタク的には面白いことだと思いますよ。という感じでこれからも、いろいろお安くつくっていく方法を編み出すと、みんな幸せになれるんじゃないでしょうか(笑)。
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