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<月刊>アニメのツボ

UPDATE:2014.6.25

クリエイターズ・セレクション「作曲家:川井 憲次 インタビュー」公開中!

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業界著名人がアニメ作品をオススメ!

『パトレイバーシリーズ』『ウルトラマンネクサス』『機動戦士ガンダム00』
『東のエデン』と有名作品の数々を手がける人気作曲家・川井憲次。
初期作品から現在に至る足跡を、作曲環境の変遷なども交えてお聞きします!


作曲家:川井 憲次 インタビュー

取材・構成:氷川竜介

クリエイター感覚で、アニメのツボを徹底的に刺激!自作にまつわる貴重なエピソードから、
子どもの頃に大好きだったアニメ、プロを目指すきっかけとなった衝撃の作品などなど、
魅力的なガイダンスを聞きだします!
世界に響いた『攻殻機動隊』の歌唱
――押井監督との作品で代表的なものとしては、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95)は世界的な作品となりました。
川井
押井さんの音楽に対する要求も、細かくなった作品ですね。付き合いが長くなり、お互い「こうに違いない」という読みができるようになってきたので、それをリセットして一からつくろうと。僕の方は最初はプリミティブな太鼓を「ドーン」と鳴らすところから始まりました。それだけだと表情がつかないので「歌を入れたいな」と思って、試しにブルガリアンボイスを乗せてみたら、すごく格好よくなったんです。でも、それだと自分たちではコントロールできない。それでたまたまそのときお囃子の方たちの声を知り、その歌声でやってみたらうまくいった。そういう流れです。「西田社中」という名前もまだなかったはずです。それで歌詞が必要だということになり、僕が図書館で古語を調べて作詞することになってしまいました(笑)。
――作品は翌年、アメリカでビルボードチャート1位になります。
川井
僕も押井さんも、いいものができたという手応えはありましたが、なぜか評価がなくて、「これでいいのかな」って不安でした。当時世の中に似たような曲がなかったから評価しにくかったんでしょうね。初号試写でも、誰も良いとも悪いとも言ってくれない。ただ一人、松竹の社長さんが「音楽すごく良かった!」と言ってくださり、ほっとしたのが最初でした(笑)。でもその後は誰に会っても、何も言われない。「ダメだったのかな? せめて悪いと言ってほしいな?」とずっと思ってました。ところが数年後、フランスに行ったら「あの音楽はすごく良いね!」と褒められて。それまでの何年かは不安な日々でしたね(笑)。
――川井さんの仕事歴で、もっとも世界に広まった曲ではないでしょうか。
川井
そうかもしれません。本当にありがたいことです。
――哲学的なテーマを含んだ作品ですが、音楽はどうアプローチされたのでしょうか?
川井
かなり難しいお話ですが、僕は単純に格好いいと思いました。ただ世界観を見せるだけのシークエンスがすごく新鮮で、ああいう風に俯瞰から音楽をつけることはあんまりないんですね。音楽だけが淡々と流れ、セリフはゼロ。香港も、ああいう視点で見たことのなかった街ですね。新しい街の見方、情緒感を発明した点が素晴らしいと思います。あの曲(曲名は「謡」)のスピリチュアル的なニュアンスがどうしてできたのか、いまだに自分でもよく分からないんです。もちろん押井さんの映像がなければあの音楽はできなかったと思うので、全部が自分のオリジナルだとも思えませんし。そんな風に、いつも映像が音を引き出してくれる感じなんですね。
淀んでいてもきれいな『スカイ・クロラ』の音楽
――押井監督との近作では『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(08)の曲も、新鮮な感じがしました。
川井
あの場合は「ハープでいきたい」と押井さんがおっしゃったことが核になりました。アイルランドが舞台なので、最初はケルト的な音楽と思いましたが、それだとなんとなく明るい。そんなときにアイリッシュハープという楽器を発見して、有名なハープ奏者の朝川(朋之)さんに連絡して譜面を送ったら、すぐデモを送ってくれました。それが良かったので、アイリッシュハープと普通のグランドハープを組み合わせ、さらに押井さんのリクエストで西田和枝社中の声も重ねています。ただ声はワーッと前面に出てくるのではなく、遠くかすかに鳴っている。そんな感じにしました。
――空が地上界と違う世界で、天国に近いというコンセプチュアルな映画です。ハープはそれに関係していますか?
川井
押井さんの好みですね。弦とハープが好きで、金管楽器はホルンがお好きみたいです。楽器を選んでからドンと真ん中に据えて音楽を組み立てていく手法は、やりやすいです。ひたすら青空がきれいな作品ですが、音楽の雰囲気は澄みきってはいなくて、淀んでいたいと思いました。でもきれいに聞こえる。そんな矛盾をかかえた音楽になればいいなと。
――何回も死んでいるのに本人は気づいていないという、矛盾した世界観です。
川井
世界観を自分でつかめれば、わりとスムーズにいきますね。押井さんは、違うときは何が違うのかはっきり言う方ですし、「なんとなく違うんだよね」とは絶対に言わないんです。「なるほど」と思ったら修正を加えていく感じです。
神山健治監督との仕事
――神山健治監督の『東のエデン』と『精霊の守り人』についても、うかがいたいです。どんな印象でしたか?
川井
神山さんも音楽に対する明解な答えを持っている方ですね。素早いやり取りができるので、ものすごくやりやすいです。
――『精霊』は世界観がアジアンで、独特でした。
川井
日本風でもあり韓国風でもある。そんな世界観が良いなと。風景も綺麗ですし、それと哀しみの感情表現の仕方が秀逸だと思いました。
――『東のエデン』は現実の日本が舞台でしたね。
川井
東のエデン』なりの空気感を自分なりにどうしても出したいと思いました。ある意味での心地よさというのを追求したというか、理想として追い求めていた部分があります。もちろん芝居を支えつつになりますが、そういう心地よさを随所に散りばめられたらいいなと。今風の音楽から離れた音楽ですね。古いとか新しいとかではなく、ベクトルの違うところに音楽の軸足を置いて、それが情緒につながる感じ。言葉ではうまく言えませんが、作品全体の色合いを一個ずつフィルターを通すみたいな、そんな印象を出せたらいいなと。もちろんストーリーや画の感じを見たうえですが。
飯田馬之介監督作品について
――若くして亡くなられた飯田馬之介監督(2010年に49歳で物故)とのお仕事についても、お聞きしたいです。遺作になった『トワノクオン』(11)も川井さんですし。
川井
個人的にはとても仲が良い方で、「やりたいね!」と会うたびによく言ってました。本当にギャグ好きな方でしたね。「変なのつくって、変なの」と、よく言われました(笑)。どこからそれが生まれたのかと言えば、OVAの『デビルマン(誕生編・87年、妖鳥死麗濡編90年)』の次にギャグアニメとしてやった『CBキャラ(永井豪ワールド)』(90)のときなんです。あのとき、いっぱいつくった変な曲がものすごく楽しかったらしく、『おいら宇宙の探鉱夫』(94)のときも「変なテーマ曲にしよう」って。「つい笑っちゃうような曲がいいね」と言われました。
――それは「今までに聞いたことがない曲」の意味も含めてですよね。
川井
きっとそうですね。最後に『トワノクオン』をやりましたが、彼が何を求めていたのかというと、やはり「変な音楽」(笑)。かなり具合が悪くなってたころ、いっしょに食事をして、もう声も出ない状態なのに「どんな曲がいいの?」と聞くと、かすれた声で「変なの……」って答えるんです。おそらくそこに座っているだけでも体調がキツいはずなのに、驚きますね。作品的に普通はかっこいい曲や、感動できる曲が欲しいはずです。なのにそれでも一貫して「変なの」と言うので、もう感動してしまいました。結局は映像に合わせることになるので、たくさん「変なの」はつくれなかったですが……。
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