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<月刊>アニメのツボ

UPDATE:2013.9.25

クリエイターズ・セレクション「新海 誠 監督 インタビュー」公開中!

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業界著名人がアニメ作品をオススメ!

『ほしのこえ』の鮮烈デビューから11年。
集大成『言の葉の庭』が大ヒット中の“映像の詩人”

新海 誠インタビュー

取材・構成:氷川竜介

クリエイター感覚で、アニメのツボを徹底的に刺激!自作にまつわる貴重なエピソードから、
子どもの頃に大好きだったアニメ、プロを目指すきっかけとなった衝撃の作品などなど、
魅力的なガイダンスを聞きだします!
懐かしい名作の思い出と共に、クリエイター自身が自作を振り返る新連載。今回は最新作『言の葉の庭』が大ヒットし、あらためてその映像美に注目が集まっているアニメーション監督・新海誠さんの登場です。
かつて『ほしのこえ』で詩情あふれる美麗な風景に繊細な心情を語らせ、ほぼ一人で制作した点含めて話題を呼んだ新海監督。そのルーツはどんな作品から来ているのか、独特の発想の文脈はどう形成されたのか。その上で、次にどこへ向かおうとしているのか……。
それらが魅力的な新海誠作品をつらぬき、最新作へと収斂していく相互関連性が、面白さのツボとして見えてくるでしょう。
冒険ものに興味をひかれた少年時代
――まず、原体験になったアニメ作品からお聞きしたいのですが。
新海
僕は長野の山間の地域出身なので子どものころはTVの民放が1~2局ぐらいしか映らず、限られたアニメしか観ていません。その中では『銀河漂流バイファム』(83)が突出して思い出深い作品です。親が仕事用に買った8ビットパソコンが僕のおもちゃになった時期だったので、ロディたちがマニュアルを読みながらロボットを操縦する感覚とシンクロし、パソコンで可能になる未来へのあこがれが宇宙と直結してしまいました。性の目覚めみたいな描写もあって、小学校高学年の自分の成長時期とも合っていたので、ドキドキしましたね。それとNHKで放送していた『太陽の子エステバン』(82)が南米のオルメカ、アステカ文明に絡んだ冒険物語で、夢中で観てました。未知の世界を自分の手で切り開いていく感覚にワクワクしていて、『星を追う子ども』の原体験とも言えるかもしれません。
――となると、宮崎駿監督の作品もお好きだったのでは。
新海
僕が映画館で観た初めてのアニメーション作品が『天空の城ラピュタ』で、すでにそのとき宮崎駿さんの名前を意識していました。『ルパン三世 カリオストロの城』のTV放送は、地域的に入らない局からだったため音しか聞こえず、画はモノクロのノイズ混じりにちょっとだけみたいな状況で観たんですが、それでも物語は完全に理解できて、カセットテープに音だけ録って繰り返し聴きましたし、後に1万円以上したビデオソフトを買ってもらったときも、すりきれるまで観てました。
――世代的にはガンプラブームだったのでは?
新海
周囲は『機動戦士Zガンダム』(85)や『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88)で盛り上がってましたが、僕のところでは、そもそもTVシリーズが映らなかったので「別に」なんて思っていました(笑)。むしろ高校のときにNHKで放送した『ふしぎの海のナディア』(91)が僕にとっては大きな存在ですね。『エステバン』や『ラピュタ』につながる要素もあるし宇宙が出てくる点では『バイファム』的で、庵野秀明監督の名前も『ナディア』で意識するようになりました。大学に入って上京してからは、むしろ興味の対象はパソコン中心になっていきます。押井守監督の『機動警察パトレイバー』の劇場版1作目(89)はすさまじく面白いと思いましたが、大学時代に観た2作目は正直よく分からなくて(笑)。後にゲーム会社に就職してからもう一度観て、「これはすごいものだ」と改めて感心しました。ジブリ作品では『海がきこえる』(93)が良かったです。氷室冴子さんの原作小説も繰り返し読みましたし、絵本に近い体裁に短文を添えた近藤勝也さんのイラストストーリー(「僕が好きなひとへ」)も、なんてすてきな本だろうと。あれは自分の中の何かを成している気がします。僕のアニメ体験って、薄いですよね(笑)。
――いえいえ、逆に純度が高い気がします。アニメをつくるきっかけの作品は?
新海
大学4年の時の『新世紀エヴァンゲリオン』(95)で、特にラスト2話ですね。まるで動かず声だけなのにものすごく緊張感があって、ショックを受けました。同時に「これなら手間的に自分も作れるんじゃないか」と(笑)。庵野監督の『彼氏彼女の事情』(98)も弟に貸してもらい、あのエッジの効いた演出の学園ものと『エヴァ』のラスト2話の手法は、『ほしのこえ』をつくる直接的なきっかけだと言えます。ただそれ自体は「アニメをつくりたい」という意識ではなかったんですね。当時は仕事でゲームのオープニングムービーをつくっていた中で、次第に自分自身を出した作品をやってみたいという表現欲求が高まって、自主制作の『彼女と彼女の猫』をつくり始めたんです。なのできっかけというより手法や発想の影響を受けたんですよね。劇場版『パトレイバー』も念頭にあって、レイアウトや風景だけで見せたり、動かさずに30秒の長台詞にするみたいな点で、「最低限の物語さえあれば、アニメっぽい映像ができるかも」と思いました。今考えるとかなり浅はかな受け取り方で、ホントに恥ずかしいんですけど(笑)。
――小さいころからパソコンに触れていたことでの影響はありますか。
新海
むしろ就職してからPhotoshopに出会い、のめりこんだことの方が影響は大きいです。いちばん嬉しかったのは、空が綺麗に描けるようになったことなんです。パソコンの表示できる色数が少ない時代から、空は描いていましたが、描くだけで終わりで、物語につなげたり、作品となることはなかったんです。やはりゲーム会社で技術を身につけたこととパソコン自体の性能が上がったことで、自分で映像らしいものをつくれるようになってきたことが大きいです。そういう過程があって子どものころから関心のあったことが、最終的に『ほしのこえ』のようなアニメーションとして結実したわけです。
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新海 誠 関連作品

言の葉の庭
(HDクオリティ)
▶視聴はこちら

星を追う子ども
▶視聴はこちら


秒速5センチメートル
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雲のむこう、約束の場所
▶視聴はこちら


ほしのこえ(新海Vo)&彼女と彼女の猫
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