クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2015.3.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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最新作『アップルシード アルファ』での挑戦
――デザイナーの経歴をずっと聞いていたいんですが、現在の荒牧監督はリアル系CGの旗手だとも思うので、話を一気に飛ばして、新作の『アップルシード アルファ』についてぜひお願いします。
荒牧
僕にとっては『アップルシード』の3作目になりますが、「流れ」は特にないんです。アメリカのソニー・ピクチャーズと『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』(12)を作った結果、先方が次回作に『アップルシード』をリクエストしてきたのがきっかけです。でも、本格的にやるとなると「オリュンポスの半数がバイオロイド」「戦闘サイボーグもいる」「戦後のこんな世界情勢」と、ベースになる設定が複雑なタイトルなんです。もちろんそこが面白いわけですが、やはりフォトリアル系のフルCGを極めたいとなると、具体的に描くのが大変で。
――CGはコンピュータが勝手に描いてくれるわけではなく、設定の数だけモデル開発とレンダリング時間が必要。この物量感が世間ではあまり理解されていない感じです。
荒牧
なので街を描くだけで物量がかさみ、コストが折り合わないんです。だったら違う切り口で何とかできないかなと検討したとき、廃墟の街並みや砂漠をデュナンとブリアレオスの2人でさまよう最初のシーンのイメージが浮かび、これをロードムービーみたいに仕立てれば、なんとかなりそうだと。『マッドマックス2』(81)のころ流行した「世界大戦争後の荒廃した地球」というパターンも応用しつつ、現在なりの角度で荒れた舞台でキャラに絞った話を丹念に描けばCG的にもクオリティ高く描けるし、フォトリアルを極める意味も出てくるぞと。今までと全然違う切り口が見つかったことで、俄然やる気が出ました。
――そもそも『アップルシード』と荒牧監督の出会いは漫画からですか?
荒牧
士郎正宗さんの単行本が1985年で、業界に入りたての時期なんです。その前に同人誌版の『ブラックマジック』も見ていて、今までと全然レベルの違うものを描いてる、そんな衝撃を受けました。士郎さんから影響を受けて吸収したという自覚もありますし、存在としては大きいです。一方で、「あの密度感はアニメじゃ無理だよな」ともずっと思ってて。描きこみだけでなくて、空間描写もすごい。だとすると、これはCGでやる意味がものすごくあるな……と、1本目の映画のときに思ったんです。それから10年経った『アルファ』は、むしろもっとキャラ寄りにして、シンプルでストレートな物語にしたいと。前の2本は説明を散りばめつつ話を進行する構成に反省もあり、もっとイケイケで飛ばして描いていきたい。それが一番やりたかったことですね。ちょうど僕が違うスタジオでやっていた『キャプテンハーロック (-SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-)』(13)という作品が完成し、2010年に設立したスタジオ、SOLA DIGITAL ARTSでもリアル系を極めたいという欲求が盛り上がり、それに向いた題材を探していたところなんです。現場と僕の想いが一致したことも、すごく大きかったですね。
――今回のように、洋画のリアル俳優をCGに置き換えたみたいな路線は、そんなに数多くないので、まだまだ可能性がありますよね。
荒牧
でも「誰もついてこないな」って感じもあるんですよ(笑)。でも、10年前に『アップルシード』の一本目つくったときも同じ印象だったので、そんなものかなと。
――セルルック3DCGが定着するまで10年間必要だとは、当時応援した私も思ってませんでしたが、ようやくという感じもあり。そしてフォトリアルとセルルックの二者択一みたいに思われがちですが、実は世界的にはフォトリアル系CGはキャラはリアルでなくカートゥーン系が主流なので、その対立でもないと思っています。
荒牧
CGにもいろんな軸があるし、中間も当然ある。だから、いまは組み合わせをもっと試した方がいいんですよ。アメリカで何本かリアル系をやったロバート・ゼメキス監督にも、ぜひ話を聞きたかったですね。この前『アバター』のジェームズ・キャメロン監督と話したら、「これは実写と呼ばれているけど、ごく一部しか本物の人間が出てこないし、役者の顔が出るか出ないかの違いだけで、僕も君と同じようなことをやってるんだ」と励まされましたね。実際、『パシフィック・リム』や『GODZILLA』も巨大ロボットや怪獣がキャラクターだと思えば、戦闘シーンはフルCG映画ってことですし。
――なるほど。今はさらにその先を考える時期でもあるわけですね。
荒牧
デュナンの顔に役者をハメたとたん、これも実写映画だと呼ばれようになるのなら、それは面白いからやってみたいなと思います(笑)。宣伝用にデュナンとブリアレオスのコスプレをつくってもらったとき、「これなら行けるんじゃないかな」と思いましたし。
実写のように見せる映像的工夫
――映像的なこだわりは、世界観より存在感みたいなところでしょうか。
荒牧
「実写っぽく見せる」ということに尽きますね。ドラマ部分で意識したのは安定感のある画づくりで、芝居も奇をてらわないようにして、きちんと感情を見せて物語をしっかり見せて行こうと。後半の激しいアクションシーンでは、大胆なカメラワークにする。全体のメリハリにも気を遣ってます。最近のエンターテイメント超大作って、ずっと派手なクライマックスが続いていると思いませんか? ちょっと前の映画だと、淡々と始まって最後には「ドーン!」とデカイのが来て、「これはガマンしたかいがあったね」なんて楽しさがあったりする。だから「途中の意味があるダレ場」というシーンをきちんと作って、見せ場を集約するつくり方をねらっています。
――北米大陸独特の光線と空気感がすごく印象的でした。私もアメリカのアリゾナ州に住んでいたので、むしろ西部の感じを思い出したり。
荒牧
ありがとうございます。設定的にはニューヨーク近傍ですが、ロスの北部も草の生え方とか昔はあんな感じで。これは細かく指示したわけではなく、参考になる映画を観てもらったくらいで、アメリカに行ったことのないスタッフが一所懸命やった結果です。失礼ながらあそこまでのクオリティになるとは思ってなくて、「ロケハン行かずにあれだけつくれるなら、もう行かなくていいね」とつい言ってしまったら、「次は行かせてくださいよ」って涙目になってました(笑)。こんな風に、同じスタッフと続けて作ると、予想以上のものが上がってくることがあって、その辺が楽しいです。
――確かにスタッフも若いし、がんばった結果が目に見えるのはいい体験ですね。
荒牧
参考に見せたもののクオリティに本気で挑戦してくれる。それが、かなり嬉しいことです。アートミック時代は、企画とデザインをキチンとやればある程度のものができるだろうと思ってましたが、いま考えると現場に対するインプットは全然足りてませんでした。CGの現場を自分で持つと、毎日いっしょにきっちり話をしながら接することで、やりたいことがお互い共有しやすいです。その結果、レベルも上がっていく。監督としては、この「共有」が越えられない「壁」だと思っていたので、スタジオをつくって3~4年経ち、やっと実現できるようになったのが嬉しい成果です。
――CGにはコンテどおりにブレイクダウンする、という印象もありますが、決してそうではなく、密に話しあって詰めていく感じでしょうか。
荒牧
モーションキャプチャもありますし、コンテどおりに芝居してもらうのは逆に大変なんです。役者の芝居優先で次々に撮っていき、後でカメラマンがポジションを決める。そんな進め方です。もちろん何も指針がないとできないので、一応のベースになるコンテは出しますが、現場で臨機応変に良い感じにして撮っていく。いろんなところに「いっしょにつくっていく感じ」があるので、いまそれがすごく面白いです。
――となると、アドリブっぽい部分もあるのでしょうか?
荒牧
「ここまで押さえて」とコントロールするぐらいで、基本的にアドリブは歓迎です。CGでつくる場合は何かと決めこまず、ライブ感が出る方がいいなと。ワークフローとしても、それをうまく取りこめるようにしたいなと。手づけのアニメーターで決まりきった芝居を越えられるうまい人は大勢いますが、キャプチャでも似たようなことができないかと。せっかくワークフローがまだ固まっていないCGの製作現場なので、自分なりにフローを少しずつ組み換えて、そこから何か新しいものが産み出せないかと思っています。
2004年にセルルックのフルCGアニメへ挑戦
――『アップルシード』に関しては、荒牧監督が2004年に手がけられた第1作目も配信中です。もう11年前になりましたが、当時これは衝撃的なフルCG作品でした。
荒牧
これも不思議なきっかけで。当時、TBSの曽利(文彦)さんと別のTV用企画をフルCGで進めていて、それとは関係ないところでフルCG版『アップルシード』が動き出そうとしていたんです。
――フィギュアにつけるプロモ用CGを観たことがあります。
荒牧
それですね。あのプロモには僕は無関係なんですが、「なんとか映画にできないか?」と頼まれてしまい、曽利さんからはいきなり「荒牧さん監督やりませんか?」と振られたんです。なにせ『アップルシード』ですから「ぜひやりたい」と即答で、「瓢箪から駒」みたいに始まった映画でした。
――深いご縁があった感じのスタートですね。
荒牧
シナリオも何もない真っ白な状態から完成まで、1年半ぐらいしかなかったはずです。CG演出は短いゲームムービーの経験があったくらいで長尺は初めてですし、CG制作も黎明期でフローが全然確立してない。僕も監督として何すればいいのか分からない。もちろんアニメと同じ部分、デザインや脚本を固めたり、絵コンテを切るのは分かりますが、モーションキャプチャをあれだけの規模でやるのも初ですし、わけの分からないことの連続でしたね。よく完成できたなと思います。
――とはいえ、セルルックのCGにこれまでにない手応えを映像から受けました。
荒牧
とにかくカメラワークが自由なことが大きかったです。そもそも僕はアニメに特化したコンテの描き方を学んでいないので、毎回のように「このコンテじゃ無理だよ。誰が描くんだよ!」と怒られつつ、半分ぐらい切られて欠番を出してましたから(笑)。それは知らない強みで、イメージをストレートに出していたからでしょう。ところがCGは、こちらで描いたカメラワークどおりにグイグイ動く。「あっ、CGだったらできるんだ」と、ものすごく楽しかったです。ただしCGなりにいろんな制約も当然多くて、キャプチャにしても、かなり手で直したと思います。
――撮っておしまいじゃなく、かなりの手調整が必要だとはよく聞きました。
荒牧
よほど確度の高い動きをしてくれれば別ですけど、絶対に修正は必要です。フェイシャル(表情の演技)のキャプチャも、感度的に実用レベルではなかったし。当時は宣伝材料だったので、あまり言えませんでしたが(笑)。いまはかなり良くなっています。
――黎明期には他にどんな苦労がありましたか?
荒牧
特に難しかったのは、レイアウトです。アニメなら完成の画が見えるレイアウトが来る。でもCGだと、表情も何もない人がボーっと並んでいるだけ。なのに「これでカメラ決めてください」って言われるので、「決められるわけないよ!」みたいにモメる(笑)。カメラに写る範囲のものだけつくりたい、余計なものは予算的にも時間的にもムリという事情は分かるんですが、カメラと被写体、壁との遠近感など判断のつかない状態で決められるわけもなくて、かなりやり取りを重ねました。実を言うと今もそこは大きくは変わっていなくて、前より必要な情報が増えただけです。これはアニメからCGに来た演出家が、共通して悩むことだと思います。
――CGのメリットとしては、時間軸のコントロールが新鮮でした。カメラワークの途中で急にスローになったり、パッと切り返したりするメリハリとか。
荒牧
スローが自由にできるのは、CGの強みですね。ただし『マトリックス』も1作目のバレットタイム(カメラが静止した被写体の周囲を回る技法)は一眼レフカメラを何十台も並べて大変な作業だったのに、2作目以後はCGですよね。そこでありがたみが薄れて見えたりするので、難しいところです。『アップルシード』の場合、「これはアニメの絵柄では見たことないな」と思ってもらえたのが良かったです。全体にかなり粗っぽく見える映画だと思いますが、すべてが手探り感の中で、よくあそこに着地できたなと、そんなタイプの新鮮な面白さがあるかもしれません。
――実際、パイオニアとしての勢いを感じました。
荒牧
当時のスタッフは、おそらく20代後半から30代頭が大多数だったはずです。僕も40代そこそこで、いろんな意味で活きが良く、恐いもの知らずなところがあった。制作期間の短かさ含めて、随所に勢いがあります。勢い余ってる部分も多いですけど(笑)。
――そんなあたりに、やはり80年代OVAの威勢がいい血が流れてるみたいですね。
荒牧
僕も映画全体をしっかり監督したのは初なので、ずっとやりたいと思ってきたことをすべて詰めこみ、ワーッと出せたという達成感がありました。絵コンテも悩んだ記憶がなく、1週間ぐらいで各パートを終わらせるほどアイデアがいっぱい出てきて、いま思うと幸せでしたね。
――空中落下するデュナンにパワードスーツが追いついてくるところは燃えました。
荒牧
あれはプロデューサーに「やめた方が良いんじゃない?」って言われ、「これやれないなら降りるよ!」ぐらい強引にやらせてもらったシークエンスですね(笑)。もちろん『バブルガムクライシス』などで散々やってきたわけで、「またやってるよ!」と言われるのを覚悟の上で、「ここでやんなきゃいつやるんだ!」ってやつです。
――多脚砲台も『アルファ』につながってる感じがします。
荒牧
それも原点回帰ですね。1本目も最後に多脚砲台が街を壊しながらガンガン行くのは、どうしてもやりたかったことで。当然、「これは大変過ぎるからやめられないか」と言われましたが、僕としては「『アップルシード』やるならこれでしょ!」ということです。でも多脚砲台の主砲を撃たなかったことが心残りだったので、『アルファ』では「今度は主砲撃ちまくるぞ!」と、そんなモチベーションですね。1作目は夜景で怪獣映画っぽく撮り、街中だからスケール感も出せましたが、今回は白昼堂々砂漠に出てくる。それでもデカくリアルに見せようと、空気遠近法を筆頭にいろんな技を駆使しました。
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