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クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2015.3.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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デザイナーとして参加した作品群
――デザインで参加された作品についてもうかがいたいです。まず、『鋼の錬金術師』(02)ですが。
荒牧
メインの仕事は水島精二監督からオーダーを受け、絵コンテ用に毎回十数枚の美術設定のベースを起こす作業でした。錬成陣はむしろオマケ的な作業で。以後、ボンズから似たような仕事が多く来るようになりましたね。僕は「こういう場所でこういうバトルやったら面白いよね」という舞台設定を決めながらコンテを切り、アクションと舞台のカラミを有機的に考えるのが演出の醍醐味だととらえているので、仕事としてすごく楽しいです。
――『機神大戦ギガンティック・フォーミュラ』(07)は、自分は「スーパーメカデザイナー大戦」と勝手に呼んでましたが、そうそうたるメンバーの集結です。他の参加者のお名前や機体の割り振りは聞いていたのでしょうか?
荒牧
出渕(裕)さん、石垣(純哉)さんとか何人かぐらいで。他のデザインがどうなっているのかは、基本知らされないし教えないというのがルールのはずでしたが、探ってる方もいたようです(笑)。僕へのオーダーは「エジプト」と国籍が決められていたのと「こういう系の武器」という程度です。「エジプトならツタンカーメンでスフインクスだな」と、実に短絡的なモチーフでデザインしました(笑)。世界観とストーリーの概要は知らされていますが、「誰と誰が対戦し、どっちが勝つ」というマッチングは教えてもらえないので、自分の機体が出てくると「負けるんじゃないか」とドキドキしてしまって。そういう目で作品を観たことなかったので、新鮮な企画でした。
――年代が前後しますが、荒牧さんで忘れてはいけないのが、『メガゾーン23』(85)のガーランドですね。これもバイク変形ロボで。
荒牧
あれはもともと『モスピーダ』の後番組用で、アートランドの石黒(昇)さんと板野一郎さんとアートミックの共同企画です。OVAになりましたが、当初からTV用に商品化を前提にデザインしていました。結局変形する商品は当時出なかったものの、10年近く前に突然「完全変形ガーランド」が出て、僕たちも「なぜ今?」と驚きました。かなり売れたようですし、デザイン当時は「こんなの変形できるわけがない」という批判もあったので、20年経って実証されたのが、ものすごく嬉しかったです。
――これもデザイン時に立体をつくられたのでしょうか?
荒牧
『モスピーダ』と同じモデラーに頼み、立体で機構的な検証をやってます。ただし木と金属を使ったザツなつくりですが、こんなジョイントを使えば脚がこう移動できる、みたいにツメています。バイク時に露出していたフィギュアが、ロボット変形時にはステップと手足、お尻を固定すれば自動的に収まる機構です。同じバイクでも『モスピーダ』は着用後に関節が動かなくなり、構図をとりづらいという問題が出ました。だったらロボットと人は別がいいなと。コクピット形状も、バイク時はまたがっていてロボットになると普通の座りポーズになる。そうした商品になったときのおもしろさを意識していたので、商品化できたのは良かったです。
――企画書にも関わっておられるんですよね?
荒牧
企画書はずいぶん書きこみ、大元のストーリーも出しています。今は宇宙船になっている舞台は、もともと地球に取り残された最後の街「オメガシティ」という設定でした。それだと当時の何かと企画がカブったので、「宇宙船にしよう」と言い出したのは石黒さんで、具体的な東京の街を舞台にしたのは板野さんのアイデアだったと思います。
――思い出深い作品だと思いますが、3本目では監督を担当されています。
荒牧
あの作品ではいろんなことがあり、僕が監督をやったのも政治的な判断だったのではないかと思います。2本目の時に板野さんが監督され、キャラが梅津(泰臣)さんで絵がまるで変わるなど、何かと挑戦的でしたね。パート2は僕も後半かなりの絵コンテを描いていて、特にアクションシーンを大量に描かせてもらいました。デザインもいろいろ手がけましたし、思い返すとも相当無茶なことやろうとしてたなと感じます。
常に新しいものに挑戦する姿勢
――ところでクレジット上での「メカデザイン」「プロダクションデザイン」「デザインワークス」という言葉の使い分けはあるのでしょうか?
荒牧
「メカデザイン」だと車、飛行機、ロボット等なんですが、メカ絡みの背景を演出面も考えてデザインするようになったので、ハリウッド映画を参考に「プロダクションデザイン」とした方が格好いいかなと。おそらく「世界観デザイン」に近いイメージですね。たぶん『バブルガムクライシス』からです。
――それって河森さんを筆頭に、「なぜメカデザイナー出身の監督が多いか」という話にもつながりますね。つまり世界観が分からないとメカがデザインできない。なので、世界観もデザインする。となると、世界を全部コントロールできるのは監督で……という感じでしょうか。
荒牧
詳しい分析はおまかせしますが、つい最近出渕(裕)さんと久しぶりに会ったときにも、やはりそういう話になりました。庵野(秀明)さんも「メカデザイン」という肩書きをもってますし、最近はカトキ(ハジメ)さんが監督をやりましたよね。ただ、アメリカ映画でもデザイナーが監督になることは時々ありますし、ギレルモ・デル・トロも近い存在ですよね。ジェームズ・キャメロンも、『ターミネーター』では監督の他にプロダクション・デザインやメカデザインを手がけてますし。
――その『バブルガムクライシス』は、荒牧さんにとってどんな作品でしょうか。
荒牧
いまでも海外に行くと人気があり、「サインしてくれ」とリクエストされるほどで嬉しいですね。おかげさまで、昔は描けなかったハードスーツが描けるようになりました(笑)。デザインは園田(健一)くんですが、「映りこみがきれいに見えるスーツ」をやりたかったんです。改めてCGにしたら夜景がハードスーツに映りこんで流れて、きっと美しいだろうなと。当時はセルアニメの限界があって、かなり苦労しましたが。
――あれもバイク変形ですよね。
荒牧
そればっかりやってましたね(笑)。どこへ行くにもバイク乗ってましたから。いまではすっかり乗らなくなりました。
――お仕事の量が多いので駆け足になりましたが、今後の予定などお願いします。
荒牧
やはりCGを使った作品を中心にしていくと思います。日本では全体にどんどんそっちに向かってますし、すでに何本かは進行していると思います。自分としては、TVシリーズを一本やれるといいなと。
――それはぜひ期待したいです。ああいったフォトリアルの質感でシリーズというのは、また可能性がありそうで。
荒牧
手づけでアニメっぽいトゥーンシェード(セルルック)のフルCGアニメをやっている会社が多いので、まったく逆行したものをぜひやりたい。あえてキャプチャでやりぬくとか、そうした挑戦ができればと。また誰もついてこなくなると思いますけど(笑)。
――そこに鉱脈があるかもしれませんし、3Dプリンターなど新しいものも急速に立ち上がっているので、それにマッチした企画、商品化があるかなと。
荒牧
そう思います。僕が最先端かどうかは分からないですけど、世間とはベクトルがまったく違う、誰もついてこれないような道を、ひとり行きたいと思います(笑)。
――でも10年経つと、それが世間の標準になるかもしれないですよ。
荒牧
そうなったら、それはそれで楽しいかもしれないですね。
――今後に期待しています。どうもありがとうございました。


PROFILE
荒牧伸志(あらまき・しんじ)
1960年生まれ。福岡県出身。岡山大学在学中に自主制作アニメを手がけ、上京後メカデザイナーとして活動開始。アートミックに所属し、TVアニメ『機甲創世記モスピーダ』(83)、OVAでは『戦え!! イクサー1』(85-87)や『メガゾーン23』シリーズ(85-89)では企画・デザインを担当。 1988年にOVA『メタルスキンパニック MADOX-01』で監督デビュー。続いてOVA『メガゾーン 23 PART III』(89)を監督。デザイナーとして数々の作品に参加後、2004年にセルルックのフル3DCG映画『APPLESEED アップルシード』を監督。トゥーンシェーディングに加え、主役デュナンを通常演技、アクション、表情と3人の女優が演じるモーションキャプチャで描くなど、当時画期的な映像表現で国内外に衝撃をあたえた。2007年には続編『EX MACHINA』を発表。2010年に映像作品の企画から制作まで一貫して行うスタジオ“SOLA DIGITAL ARTS”を創業し、『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』(12)でフォトリアル表現かつリアル系キャラのフルCG映画を監督。東映アニメーションで監督した『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』(13)は欧米で大ヒットした。最新監督作『アップルシード アルファ』(2014)は、フォトリアル系CGのクオリティを追求した映像で高く評価されている。


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