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UPDATE:2015.6.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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アスガルドという北欧神話の舞台
――時間軸としては「冥王ハーデス編」と同じですが、舞台は劇場版『聖闘士星矢 神々の熱き戦い』と、それをベースにTVシリーズで展開した「北欧アスガルド編」 (『聖闘士星矢』第74話~第99話)になっています。もともとアニメ用オリジナル部分の続きなので、驚くと同時に嬉しかったです。これも最初から決まっていたことでしょうか?
古田
いえ、そこは知恵を出しあって決めたところです。全13話という限られた尺でキャラや舞台を新規で描くとなると、その説明だけで精一杯になってしまいかねない。アスガルド編の続きにすれば、説明もある程度省略できるし、設定も活かせると。「原作漫画とアニメ版、すべてあわせて『聖闘士星矢』だ」とも思ったので、そうした地続き感も出したかったですね。他の仕事をしている横で「北欧アスガルド編」を流し続ける日々を、2カ月ぐらいおくっていました。
――旧作を改めてご覧になられて、いかがでしたか?
古田
2クールと話数のある分、いろんな要素がつめ込まれているなと。キャラの背景も、ていねいに描かれていますし。やっぱり荒木伸吾さん(キャラクターデザイン、作画監督)の絵が美しく、感嘆してしまいました。『黄金魂』でも髪のなびきやポージングなど、荒木さんの絵はつよく意識しています。でも、どうしても荒木さんにしか描けない美しさがある。やはり特別なものなんですね。
――『黄金魂』のキャラクターデザインの本橋秀之さんは荒木プロ出身ですが、そのあたりを意識しての起用ですか?
古田
もちろん、そうです。キャラクターデザインのみのお願いとなりましたが。
――そうした美学へのこだわりは、ひしひしと感じました。
古田
結局、「みんなが観たい『星矢』」って、こういうことだろう」ということなんですね。何よりも、まず僕が観たい。であれば、いちファンとしても最低限のことはやらなければならないと、そんな気持ちでとりくんでいます。
――テンポ感などにしても、どこか懐かしいセルアニメ時代の雰囲気があります。
古田
実は編集 (カッティング)は、歴代のアニメ版『星矢』の手法を受け継いだ方にお願いしていて、間の取り方をかなり意識しています。最近のアニメだと、どうしても間をツメ気味にしてしまうんですね。でも今回は、たっぷり間をとってきちんと台詞を語らせることが大事。バトルシーンで「今のうちに攻撃しろよ!」とツッコまれそうなところでも、たっぷり間をとる。「星矢らしさ」を見せるため、そんなアプローチも心がけています。ただし終わったら一度リハビリしないと、他のアニメに復帰できないかも(笑)。
――連綿と続く『聖闘士星矢シリーズ』ですが、本作でプラスアルファとして付け加えようと思ったものはありますか?
古田
やはりこれまで「絡み」が少なかったキャラクター同士を、ぜひ絡めてみたいなと。アルデバランと童虎、アイオリアとムウなどは、これまで会話している印象が少なかったので、あえて組み合わせてみました。それと、過去の因縁にも少しは踏みこんでみたいなと。シュラはアイオリアに対し、どんな想いを抱いていたのか? アイオロスとサガは互いにどう思っていたのか? そんな気になるポイントも、要所要所で押さえています。「アルデバランって、アスガルドのことをすごく気にしていたんだなー」みたいな発見を楽しんでいただければ嬉しいですね。
――そもそものベースとなった北欧神話についても、改めて勉強されましたか?
古田
もちろん調べましたが、ジークフリートやトールなど北欧神話のおいしい部分は、だいたいTVシリーズ「アスガルド編」で使われていたことが分かりました。ですから、まず「まだ使われていないネタはどれだろう?」と洗い直し、使えそうな人物をピックアップしていきました。フレイも劇場版『神々の熱き戦い』で使用済み、なおかつ人気キャラだったのですが、どうしても使いたかったので別名の「フロディ」としてなんとか登場させました(笑)。そして神闘士は神話をモチーフとしつつ、北欧神話に登場する動物もとり入れています。
――世界的に北欧神話ネタが流行しているので、好きな方には嬉しいポイントですね。
古田
ええ、ぜひ楽しんでいただけたらと。
「バトルもの」の経験をフル活用
――『星矢』の魅力には熱いバトルシーンがありますが、本作で意識されたことは?
古田
必殺技を叫んだり罵りあいつつも、最終的には気持ちが強いほうが勝つ。そう描くことが、もっとも『星矢』らしいと考えました。回を追うごとにアイデア不足となりそうでしたが、自分もそれなりにバトルものをこなしてきたので、引き出しの中から次々と引っぱり出しては入れ込んでいます。
――たしかにご経歴でも、「バトルもの」は数多いですね。
古田
もともとサンライズに制作進行として入り、そこから演出家になったので、バトルものの比率は高いです。すぐ思い出せるだけで、『犬夜叉 完結編』、『機動戦士ガンダムAGE』、『TIGER & BUNNY』、『ガンダムビルドファイターズトライ』、『超速変形ジャイロゼッター』、最近では『七つの大罪』など。「バトルの人」と思われ始めているようなので、自分では毛色の違う作品もやりたいなと思っています。今回は、サンライズのカラーを東映アニメ作品にぶち込んで見ようという想いもありました(笑)。というのも、僕が演出デビューした『ケロロ軍曹』という作品には、佐藤順一さんがサンライズに東映の血を注いだ感覚があったので、その逆ですね。今回は『バディ・コンプレックス』の監督を務めた田辺(泰裕)くんや『機動戦士ガンダムAGE』の助監督だった酒井和男さんなど、サンライズ寄りの方を投入しています。
――古田さんご自身が、プロになる前に何か影響を受けた作品もうかがいたいです。
古田
バトルものではないですが、『COWBOY BEBOP』は大好きで、サンライズに入ろうと思ったきっかけです。『THE ビッグオー』も大好きでしたね。子どものころは『魔神英雄伝ワタル』や『魔動王グランゾート』、「勇者シリーズ」などが大好きで。もちろんいずれもサンライズ作品だと知らずに、ですが。僕が演出を教わった近藤信宏さんは『ワタル』の井内秀治監督のもとでサンライズの子ども向け作品を数多く手がけられていたので、その血の流れが僕にも強く入っているかもしれません。
――『ワタル』は、どういった部分に惹かれていたのでしょうか?
古田
キャラが魅力的なのは当然として、メカがしゃべって個性的だったところですね。必殺技もカッコいいし、毎週飽きさせない魅力がありました。普段はボケてるけど決めるところはしっかり決める。そんなところも絶妙で、ひょっとすると『黄金魂』のデスマクスの描き方にも影響しているかもしれません。
――当時だと、主人公と年齢的に近かったのでは?
古田
たしかに、龍神丸を粘土でつくって勾玉はめたらそれが実体化するというアイデアには大きな影響を受けて、実際に粘土をイジったりしていました。
――話は戻りますが、制作進行から演出家へはどのような経緯で?
古田
ケロロ軍曹』1期目に制作進行として関わりましたが、4~5年を経て演出をさせてもらえるようになりました。そしてフリーとなり、『犬夜叉 完結編』や『GIANT KILLING』などで声をかけていただき、次第に仕事の範囲も広がっていきました。『ラブライブ!』、 『ハイキュー!!』、『キューティクル探偵因幡』、『デビルサバイバー』、『ダンボール戦機』、現在放送中の作品では『えとたま』など。最近は絵コンテだけの仕事も多いです。監督業務があるとなかなか時間が取れませんが、僕はコンテを描くスピードが割と速いので、特急仕事が舞いこんむことも多いです。
――ジャンルや制作会社を問わず、幅広い作品を手がけられています。
古田
少年漫画系は多いですね。実は女の子がたくさん登場するアニメはそれほどやっていないんです。初監督作の『マンガ家さんとアシスタントさんと』は女の子だらけと言いながら、主人公の男の子がセクハラ発言で女の子にぶっ飛ばされる作品ですから(笑)。経歴的にキャラクターものが多く、いわゆるハイエンドものはあまりやっていないです。演出家としての幅を広げるためにも、ぜひチャレンジしてみたいですね。
――ハイエンドものとは、どういう違いがあるのでしょうか?
古田
やはりつくり方ですね。予算や期間が限られていると、どうしてもやれることに幅が出なくて、ワンパターン化しかねないんです。ハイエンドものなら多少は無茶な要求でも応えてくれるスタッフを集めることも可能ですし、演出としてできることも違ってくるだろうと、別の可能性を求めています。
――撮り方の工夫などは、いつも意識されているのでしょうか?
古田
なかなか映像を観る時間がとれませんが、「何か使えるアイデアはないか?」と探すようにしています。特にミュージックビデオやCMからヒントを得ることが多く、副監督を担当した『ノブナガン』のオープニングには、そうした要素を入れています。コメディ的な作品をやる機会も多いので、深夜バラエティで笑える要素や間を研究したり。自分にないもの、新しいものを取りこもうと、常に意識しています。
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