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UPDATE:2016.6.27

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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大勢で1年間かけて作りあげたシリーズ
――まずアミノ監督の代表作『疾風!アイアンリーガー』(93)から、うかがいたいと思います。監督の作品は非常に長く愛されていますよね。忘れられないものがあるのではないかと。
アミノ
もう20年以上前ですが、その辺は何となく意識してましたね。「本当の子ども向け、本当のアニメーションはこうなんだ!」みたいなね。僕自身も一所懸命答えを見つけながら作っていて、見つけられたかどうかは分かりませんが、20年後も観ていただけているのはすごく嬉しいことです。たとえばその時々でいろんなものが流行して、それに合わせて作るということをしますよね。でも僕は少しでも違うもの、忘れられている切り口みたいなものを見出したいんです。それを「本当の本物」と、日本語としては問題のある言い方をしてますが、ひがみでもありまして(笑)。
――えっ、ひがみですか?
アミノ
うん。「本物を出してやる」って、ひがみですよ。だからその時代では「毛色が違う」と言われたりする。でも長い年月が経つと、「あれ? 意外と自分のほうが本道だったのかな」なんてね(笑)。でも、なんと言っても大きいのはスタッフのみなさんが乗っかってくれたことです。「監督がやりたいって言うからやろうぜ!」みたいなノリがなければ、アニメーションってできないんです。みんなが次々に「俺ならこうだ」ってことを押し出して、集合体として作品にまとまる。先にいろんなものを固める今とは、少し違うんですよ。「先がどうなるか僕も分からないよ」って感じですから、何かのきっかけで新しい道ができたり、いろんなお試しもできる。『アイアンリーガー』も1年間全52話という長いスパンでやってましたから、のびのびとできた作品です。
――その『アイアンリーガー』は、最初まるで違う企画だったそうですが。
アミノ
野球選手やサッカー選手の格好してるキャラが、何か事件があったらエージェントとして駆けつける、『スポルジャー7』という「7人の特命隊」みたいな企画でした。でも、「犯罪もので活躍するロボット」って、しっくり来なかったんですね。だってサッカーボール爆弾を敵にぶつけて爆発させるとかバットで叩くとか……。
――なんだか殺伐としてますね(笑)。
アミノ
ねえ。「だったら普通にスポーツ選手でやろうよ」って言ったわけですが、そうやって変えられる柔軟さがあったんですね。ロボットの形とモチーフが変わらなければ、ストーリーには自由度があった。だったらスポーツを追求したかと言えば、決してそんなことはない(笑)。ひとことで言えば「がんばる物語」です。野球、空手、サッカーその他がひとつのチームって、そもそもおかしいですが、逆にそれぞれ特技があるとか、実は兵器のために作られたロボットだとか、深いバックボーンも入れられました。当時初プロデューサーだった南雅彦氏の「単なるスポーツものだと深みがない」という言葉から出たことですが。
――アミノ監督が、そうした要素をまとめていく感じですか?
アミノ
まとめるのはシリーズ構成のオタケさん(鈴木良武氏)ですね。彼にいろいろ注文して組み立ててもらったものを、ライターさんとプロデューサーと僕とで打ち合わせして膨らませていくんです。「だったらこうしたい」みたいな個々のライターさんの話も慎重に聞いて、その場で考えつつ打ち合わせに臨んでいました。そういう「場」があったことが大きいんですよ。「第何話はナニナニで」みたいな細かい構成ではなく、アバウトに「だいたいこんな話だけど、やりたい人?」「はい!」みたいな感じです。
 もちろん「流れ」はありますよ。「シルバーキャッスルというチームがあって、こんな事件が起きて、最後は優勝する」みたいな。後半の「はぐれリーガー編」も最初から考えていたわけではなく、「後半どうする?」「そりゃあ、旅でしょう」みたいな安直な発想です。そこから「リーガーなのに、はぐれてしまった連中は今何をしているのか」みたいな展開を考える。ほぼ「生き物」として扱ってますし、僕はストーリーよりもむしろ味わいを組み立てていった感じです。
――すると「スポーツ根性もの」とは違ってきますよね。
アミノ
違いますね。でも「スポ根もの」だと思っている人はいっぱいいます。スタッフでも投球ポーズとか、スポ根をイメージしながら作ってる人がいましたし。僕自身はスポ根ものがどうも苦手なもので(笑)。
――どこがダメなんですか?
アミノ
「手に汗握り、涙し」みたいな部分ですよ。「ウダウダ言ってないで、さっさとやれよ!」って(笑)。自分として一番見せたかったのは、「最下位チームが一丸となってがんばれば、陽の目をみるだろう」という部分ですね。そういうテーマがシリーズ全編通して入っています。キアイリュウケンが「自分とはなんぞや」みたいに覚醒するのを、おバカなセリフで語らせたりしてますよね(笑)。つまり、教えられるのではなく、自分で気づくところに意義がある。それでお互いが分かるというね。一丸とがんばっているうちに、個々のルーツが見えてくるものなんです。
達観した主人公の影響で周囲が変わっていく
――第1話から、その大きなテーマは打ち出されてますよね。
アミノ
悪の側の総裁ギロチ自体もそうなんですよ。単なる悪かと思ってたら、実はスポーツ好きだと開眼しちゃうとか。僕は悪役を悪としてしか描かない作品に、疑問があるんです。悪いヤツを明確な悪として描き、そいつをやっつけてカタルシスを得る。そんな風に悪い面だけを見せるのって、ものづくりとしては反則じゃないかと思うんです。
――人間、決して一色ではないってことですね。
アミノ
ええ。実は子猫好きないいヤツだったとか、悪くない部分も描いていく形にしたんです。そもそもスポーツものなら「良い悪い」じゃなく、「勝ち負け」でしょうと。そこにルールがあるから掟破りもある。そんなストーリーですが、僕はいまだに「悪を描く」というのが、余り上手くできないんです。
 悪の別の側面を描くことができたのも、本数のおかげです。ネット配信もないから、毎週お待たせするわけです。すると「今週忘れて見れなかったぜ」とか「52話のうち30本ぐらいは見たぜ」なんて人が出てくる。だとしても、何となく分かってくれるようにと。
――マグナムエースが現れることによってみんな少しずつ変わっていく。そこがすごく魅力的ですよね。
アミノ
僕の作品には達観したヤツが出てくるって、時々言われます。そいつがイニシアチブを握り、周囲に影響を与えて少しずつ変えていく。迷った時には「こいつのいうこと聞いてみようか」と安心できる存在で、ある種の救いです。マグナムエースも最後の方では兄貴が現れて悩みますけど、「主役は主役」みたいな感覚をもっていました。迷って混沌としたまま行くと、アニメーションとしては大人っぽすぎるかなと。
――ファーストガンダムのアムロのように、主人公がだんだん成長していく作劇もありますが、それとは対極ですね。
アミノ
あれってヒーローものとしては確かなスタイルなんですよ。グジグジしたヤツが成長していくみたいなね。でも、僕はあのグジグジ感がイヤでイヤで(笑)。
――そこを飛ばしたいという気持ちは、分かります(笑)。
アミノ
ホラー映画も好きなんですが、「来るぞ来るぞ来るぞ、キター!」みたいのが大嫌い。あとはクイズ番組で答えが出る直前、CMに入るのとか。「こういうところで人をじらすのはよくない」という考え方の持ち主なので、「演出のお約束」ではなく、お話を盛り上げて引っぱっていきたいと。『アイアンリーガー』はそういう作りになっているはずです。コンテマンに「これって3本分の内容じゃないですか」って言われたこともあります。必殺技オンパレードで、「必殺技ひとつで1話は無理だろう」みたいな話をした結果です(笑)。「悪をこらしめるカタルシス」とか「じらし構造」みたいな演出論的なセオリーとは違うところにいきたくて、あえて排除してますね。
――シリーズ中で何か特筆すべきエピソードはありますか?
アミノ
第2期で旅をする始まりですね。ボーシップ号っていう帽子の格好をした宇宙船が出てくるんですけど、マグナムエース役の松本保典が「あいつがボーシップ号です!」っていうセリフを笑って言えなかったんです。こっちは「何をいまさら。どこが悪い!」みたいな(笑)。「アイアンリーガーはそういう世界なんだから!」って。
お互いに刺激しあった制作現場
――そういう愉快なムードの中に、兵器の話など重い話も入ってきます。
アミノ
強制引退とか、重たい要素も入れといて良かったですね。ただの兵器という「モノ」を脱却して自己を求める。一度仲良くなったはずが、人間の作為でケンカするとか。要は修羅場に投げ出してるんですけどね(笑)。でも、それをどう乗り越えていくか、そこを見たいし見せたい。そういう点では「熱血」なんです。僕は僕でライターさんへ大胆に丸投げしてストーリー作りをしてもらうわけですが、七転八倒して出されたものから、フィーリングジャストな部分をいただいて作っていくんです。ストーリーをガチガチに決めていないので、「さてどうなるか?」って見守る感じもあります。
――スタッフに自由度があったんですね。
アミノ
もちろんライターさんなりに好きなことも書いてくるし、スタッフの誰も想像しない方向に進むこともありました。たとえ始まりと終わりが決まっているにしてもね。ホン読みも、毎週ライターほぼ全員参加ですよ。そうでないと、前の回がどうなってるか分からないですから(笑)。
――制作中、監督にとって一番意外性があったのは?
アミノ
作画さんのノリでしょうね。これは僕のイマジネーションを超えていました。ユルめのキャラだから、作画さんのノリで自由に描いていました。だから、お互いの刺激にもなってたようですね。ストーリーも先行しているとはいえ、そういう絵を見てしまうと、「これができるなら、こういうのやりたい」って気持ちもライターさんに出てくるので、間に合うかぎり入れ込んでいきました。途中のエピソードは本当に自由にやってもらったので、僕の主旨に多少合わなくても、ある程度の流れを組み立ててしまう。そういう意味での異質感は、僕の中ではなかったですね。
――スポーツ選手を見守るチームの監督っぽい感じもします。
アミノ
「自由にやらせるけど勝手は許さん」みたいな、よくわからない感覚でした(笑)。やはりスタッフが独立心を持ってたっていうことかもしれません。
――ファンには「名セリフが多い」という印象も、残っているようです。
アミノ
それは人間の主人公たちだったら、「言わねえよ!」って削るセリフなんですよ。でも「こいつらだから!」と逆に盛り上げていった結果でしょうね。「俺のオイルが熱く燃えるぜ!」なんて、意味分からないでしょ(笑)。いろいろ置き換えつつ人間として描いてますが、見た目はロボットだし、だったらはっきりものを言うでしょうって感覚ですね。ただし「言うからにはちゃんと言おうぜ」ってところは押さえつつで。
――そんなセリフに、子どもの胸に刺さる正しさ、伝えたいメッセージが盛り込まれている感じがしています。
アミノ
そこがさっき言ってた「本物を見極めようぜ!」みたいな部分でしょうね。自分の中で、当時はそれほど意識してなかったんですけど、今は「ものすごくドラマチックにやってたんだな」と思いますね。不必要なほどに(笑)。
複数ライターで煮込んでいく味わい
――特に印象に残っているエピソードがありますか。
アミノ
ちょうど今年の「サンライズフェスティバル」用に選んだところです(★インタビュー末にリストを掲載)。これって実は「娘セレクション」なんです。僕の作品の中では、なぜか『アイアンリーガー』だけ気に入ってくれて、中身も僕よりよく知ってるんですね(笑)。
――ここで特に挙げておきたいのは?
アミノ
S-XXX(エス・スリーエックス:第10話)ですかね。あれは異質で、完全にロボットなんです。マグナムエースがアイアンリーガーだと目覚めさせようとするけど……という虚しい話で、でもあの悲しさが好きなんですよね。ちょっとだけアダルトかもしれませんが、そういう話が要所要所に入ってくることで、2頭身キャラが生きてくるんです。「幻のチャンピオン」(第31話)というボクシングの話も好きですね。「洞窟で何してたの?」みたいなバカバカしさ含めて、なんだかアイアンリーガーの真骨頂が描かれている気がするんです。ワンクールだと、絶対に入れられない話ですしね。
――チームワークで達成したバラエティ豊かな作品なんですね。
アミノ
ああいうものづくりの仕方って、忘れちゃいけないと思います。漫画連載に近いように進めていく中での変化は、あったほうがいいかなと。主人公さえブレなければ。
――作り手自身も、それを一緒に見つけていく感じですか?
アミノ
ですね。ライターさんが何人かいるのもいいことです。一人だと主人公や脇役など特定キャラにのめり込んだりして、感情がどんどん一直線になってくることがあるんです。でも何人かいると、必ずバラバラになる。そこから調整していくのが、シリーズものの醍醐味になるんです。
――いろんな具材のはいった鍋物みたいなイメージです。
アミノ
まさにそうですね、なんだかごった煮的にね。単に雑然としてもダメだけど、それを整理するために監督がいるわけだし。ライターさんもいろんなものを書いたほうが勉強になるし、自分が何が得意かも分かるし。ひとつのステップとしてアリなんですよ。
――今改めてアイアンリーガーを見る方に、メッセージはありますか。だいぶ大人になっているわけですけれど。
アミノ
昔、見てた人は当時のいろんな感情を思い出してほしいですね。大人になるといろんなものにモミクチャにされ、なかなかピュアではいられないと思うんです。でも、ここでは一直線でいいんだよって。もし今の若い人が新たにご覧になるチャンスがあれば、負けてぶっ倒れてもいいんだ、それでも先に突き進むんだっていう、あの感じを受け取ってもらえるといいなと思います。
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