クリエイターズ・セレクション

UPDATE:2017.4.7

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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独特の絵コンテ作成術
――第1シーズンは60分を4分割という企画でしたが、構成はどう考えられましたか?
松尾
コミックスを読んだとき、綺麗に分割するのは無理だと分かったので、いくつか順番を入れ替えることにしました。次の話数へ引きをつくる、これを次の話数のキッカケにするなど考え始めたら、偶然うまく行ったんです。その分、第2シーズンは何をやってもうまく行かなくて、異様に苦労しました。割りきって片方ずつメインにすれば楽でしたが、なるべくジオンと連邦、どちら側も並行して見せておきたくて。今回は最終的に1本になることが先に決まっていたので、意識せざるを得なかったです。
――第2シーズンの構成も、主役の2人を軸に考えているのでしょうか?
松尾
とは言え、イオ側が多いです。彼にビアンカという新しいパートナーができましたという話と、南洋同盟という存在が出てきて、今後は三つ巴の戦いになるという話。第2シーズンはコミックスの第4集からですが、第3集までとぜんぜん違うんですね。太田垣さんに聞くと、最初の第3集までは映画1本の感覚で連載を始めたと。第4集からはむしろTVシリーズだそうで、つくりが全然違う。アニメ側は変わらないのに(笑)。でも、なんとかしますと。劇場版『』と似たようなことをやって組み替えています。コミックスから個々のシーンでテキスト打ってプリントアウトして、ハサミで切り貼りして。
――やはり編集は物理的にやるものなんですね。
松尾
僕の場合、絵コンテもそうです。シナリオ上にここでカット割る、カット割るとマークして、A4用紙に小さいサイズで1コマずつ、だーっと書き出して画をつくっていくんです。そのとき文章はほとんど書かず、切り貼りで組み替えて棒つなぎにして、昔のフィルムの編集みたいに短冊の状態にするんですね。そうするとシーンの長さが見えるので、足したり引いたり、マスターショットはここの位置じゃないなとか検証してからコンテにかかるんです。
――映像の流れ、時間の可視化は大事ですよね。
松尾
でも僕以外には聞かない方法ですけどね(笑)。それはフィルム時代に得たヒントです。実写だと編集はアニメと違い、シーン単位でカットをクリップにはさんで吊して並べるんです。あれを見たとき、「これだ」と思いました。カメラでこっちから撮り、次のカットはもうちょっと寄り、みたいにまずカットを自分でいっぱい作る。それを組み替える。それが自分の中で一番楽な方法なんですね。そのとき、ファーストカットだけは先にクリアしておく。そうしないとカットが作れないので。
――カメラマンが撮ってから編集するのをシミュレーションしているわけですね。
松尾
『アメリ』のメイキングを観たら、ジャン=ピエール・ジュネ監督が仮の役者をインスタントカメラで撮って、そのプリントをテーブルに並べて入れ替えてたので、実写でも効率が良くなるんだと。最近はCGでもプリヴィズを作りますが、絵コンテはアナログなので、間違いない方法です。それで、コンテが完成したら元の短冊をゴミ箱に捨てるのが個人的に快感なんです(笑)。
追いつめられて際だつプライオリティ
――『サンダーボルト』の人間ドラマについても、うかがっていきたいです。
松尾
第1シーズンは基本的にメインのキャラクターがみんな勝手気ままに動いています。協調しているようで、いざとなったらバラバラ。だからスレ違いスレ違いで、いい結果を生まないという典型なので、なるべく絡まずそのスレ違いを描く。第2シーズンからはチームを作っていかなければならないので、コンセプトを変えてメンバーとの交わりを描く。
――そこが大きな違いですか?
松尾
たぶん第1シーズンのほうが、ここで立ち位置を入れ替えるとか、カメラのイマジナリーラインをまたぐとか、上手下手(画面に向かって右側・左側)を変えることが多かったはずです。でも第2シーズンはそういうシーンをあまり多く作らず、仮に上手下手を変えるときもトリッキーにせず、自然な演技の中で変えるようにしています。でも、トリッキーな変化を封じると尺を食うんですね。
――第1シーズンでは、どんどん悲惨なことになっていく印象もあります。
松尾
自分がひどい情況に置かれたとき、自分のプライオリティって隠しておけなくなるんですね。要するに格好つけてられなくなる。それが自分をマッシュアップしてイイと思ってる人もいれば、イヤだなって思う人もいる。マッシュアップに気づかない人すらいる。結果的にみんな自分勝手になっていく話だと思いました。これは戦争末期にはとてもいいなと。「だからこういう人たちは負けていくんだ」みたいなことが伝わればいいと思ってます。
――第2シーズンは、その辺どうなるのでしょうか。
松尾
第2シーズンからはジオン側の着ているものがバラバラになり、ラフな服装になっていく。ベトナム戦争のときの米軍がまさにそうで、形勢が不利になると次第に統率が取れなくなるということなんですね。第1シーズンのジオン側は、固まってなんとかしようとしている。連邦は足並みが揃っていないから、頼りになるガンダムがやられると、ザクがやってきただけで右往左往してしまう。チームワークが作れない。だから負けちゃうんだなって。
――第1シーズンの最後、被害者っぽいダリルが逆転するのも面白かったです。
松尾
ダリルが勝たなければダメだし、仲間がちゃんといて後でちゃんと助けに来るし、犠牲になって死守する作戦もうまく行った。だから勝てたんですね。ガンダム1機に頼る連邦とは違う。そのコントラストを強調しています。ジオン側はピラミッドみたいに人間関係を積んでますが、その点、連邦側は殺伐としてていいですね。艦長と副長が仲悪いとか、交わらないほうが尺食わないんです(笑)。パッと見で「こいつらダメだ」ってわかる。そういう落差をコミックスから感じたから、なるべくそこを強調して切り詰めてコンパクトに見せています。その方向性を阻害しそうな部分は削りました。イオが少年たちといっしょに写真に収まるのをカットしたのも、個々のユニットになるべくつながりがないようにしたかったからです。曖昧なものがはいると感情が枝分かれして、雰囲気がその一瞬、壊れるんですね。これがTVシリーズなら「こんなエピソードもあったね」と入れられますけど。
舞台は宇宙から地上へ移行する
――そうした判断は、どういう基準で決めているのでしょうか。
松尾
富野さんが日常会話の中から「ここはちゃんと拾うんだ」ってのを見たことが大きいです。カミーユが「クワトロ大尉ってシャアなんだ」っていうあたりを、映画の短い尺でいちいち拾っているんです。それがラストで一年戦争の英雄2人が再会する瞬間につながっている。しかも、「TVシリーズのラストとは、ちょっと違ってくるのかもしれないぞ」という予感になっている。物語をやっていくときには、どうしても作戦で線路を引こうとするんですけど、それだとキャラクターが置いてきぼりになることがあるんです。でも、富野さんは絶対そういうことをやらないんですね。そういうところが実に良くできているんです。TVシリーズから映画一本作ろうというとき、普通なかなかできないことですね。
――第1シーズンは宇宙中心でしたが、第2シーズンは舞台が地上に降りてきて、海中も出てきます。
松尾
だいぶシチュエーションが変わりますので、第1シーズンで宇宙空の色味を変えてやってたことを、時間帯や場所の違いで表現しています。なるべく花を入れるなど画のバリエーションを作れるメリットもあって、シーンチェンジのときにうまく利用させてもらってますね。そこは宇宙より楽です。
――宇宙に比べて地面を入れるだけで大変になると、他の作品でも聞いています。
松尾
大変ですよ。しかも作画は重力があるだけで面倒くさくなります。宇宙なら止めの1枚で引けば済むのが、いちいち歩かなければ動けない。大変は大変ですが、普通は当然それをやらなければいけないわけだから、仕方ないですね。それと、お台場に実寸大ガンダムが来たおかげで、ますますウソがつけなくなってしまい……。
――みんな自分の身体で大きさを把握してしまいましたね。
松尾
そうなんです。ガンダムのサイズをリアルに体験した。ただ、ダイバーシティの中にSEED(ストライクフリーダムガンダム)の上半身があって、あのほうが参考になりましたね。どれくらいの高さなのかなとか、ここにいたら頭はどう見えるのかなとか、演出を考えるときにはそういうほうが重要ですから。頭って意外に小さいんですよ。
――想像とはだいぶ違いますよね。
松尾
なるべく顔の近くで演技させると画になります。格納庫のシーンでも必ず整備員がいるような画にしていて、それだけでメカ単体よりも臨場感が出て、巨体が身近に感じられると思うんです。これも地上になるとタラップをつけたり枠を組んだり、やはり大変。宇宙ならスーッと動くだけですが。
――水陸両用モビルスーツの登場も、大きな変化です。
松尾
あれをなんとしても泳がせたいなと(笑)。そこは配信版とディレクターズカット版と違う部分で、ゴッグが泳いでいるシーンは楽しみにしてほしいです。ガンダムも水陸両用ですから、モビルスーツが海の中では早く動けるのを表現できればいいなと。海の中は無重力に近いのでスライドも使えますしね。
――戦闘も単調にしないように工夫されているんですね。
松尾
宇宙でも、遠いところから撃って避けて、撃って避けて、みたいなのだけじゃなく、取っ組み合うことをなるべく意識しました。それも地上のほうがやりやすいと感じています。モビルスーツで格闘戦って何なんだと思うけど、憎たらしいやつはぶん殴ったり蹴飛ばしたいって感じますから。
荒々しいフリージャズで凶暴さを表現
――音楽についてもお聞きしたいです。第1シーズンはフリージャズを現実音として聴かせてました。
松尾
ラジオを聞いている設定でやってましたが、今回はもっと音楽シーンに寄せていますし、前回よりスムーズに聞こえると思います。全部新曲ですから、せっかく覚えたテンポがリセットされてしまいました。音楽先行だと思われがちですが、後から上がった音楽を編集で四苦八苦して貼っています(笑)。
――曲のイメージは、どうやって決められましたか?
松尾
フリージャズにしたいというのは、菊地成孔さんからの提案ですね。コミックスではコルトレーンですが、スタンダードだとテンポも遅いし、ポップスとの差がつけづらいなと。イオの側をもう少し凶暴に見せるなら、フリージャズの荒っぽい音でどうだろうと。菊地さんのCDライブラリーを片っ端から聞かせてもらって選んだときのテンポ感で、戦闘シーンの編集を切っていました。変にタメを作ったりせず、「撃つ、爆発する、ここで飛ぶ」みたいなタイミングを編集でつくってやると、「ここでドラム、ここでトランペット」みたいなテンポ感と合ってくるんです。
――ジャズ特有の使い方があるんですね。
松尾
でも、ジャズじゃないほうがやりやすいです。途中でリズムが微妙に変わったりするので、音の方を編集できないからです。僕自身はジャズをぜんぜん聴かないんですが、前に『坂道のアポロン』を1本だけ絵コンテ切ったとき、どこで切るかまるで分からなくて四苦八苦したので、あれで免疫ができたかもしれません。最初は不安でしたが、自分で貼ったおかげでテンポ感が身についたのか、第2シーズンのほうが苦労してないですね。
――今回、新しい宗教団体も出てきて、音楽の雰囲気も変わりました。
松尾
今まではジャズとポップスのラインだけでしたが、もうひとつラインができたということです。菊地さんも過去に宗教音楽を作っていたので聞かせてもらったんですが、むしろ宗教的な楽器はあまり使わないでほしいと伝えました。既存の宗教に聞こえてしまったら、つまらないですからね。なのでアレンジは電子音にして、お経みたいなのを歌うようにしました。
――コミックスでは梵字みたいな読めない文字で書いてあるやつですね。
松尾
『地獄の黙示録』も「ワルキューレの騎行」が有名ですが、音楽の基本はシンセサイザーで、あの電子音がカーツの作った帝国の雰囲気を出しているんです。そのほうがチャレンジでいいぞと。今回初めて知りましたが、声優さんの中でお経ができるグループがあるので、実際の住職の方も交えてお経っぽく唱えてもらったら、すごくいい雰囲気になりました。南洋同盟の人たちを音楽で表現してくださいと、菊地さんにぶん投げたので、セリフはなく全部音楽なんです。相当苦労したようですが、仕上がりは良かったです。
――ものすごい異物感がありました。
松尾
なんか違うもの来たぞって、はっきり分かりますからね。連邦とジオンのモビルスーツを組み合わせて使ってる連中なので、ジムの頭にザクの胴体みたいに、ルックはあまり変わらないんです。だったら第三勢力として、音がはっきり立つようにと。ジャズやポップスはクラシカルな60年代の音楽だったので、もっと80年代的な音楽にしようというのがコンセプトです。
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