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UPDATE:2015.7.27

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初の個展「THE変形 河森正治デザインワークス展」
――最新作『アクエリオンロゴス』が放送中で、舞台『ひと夏のアクエリオン』が上演され、杉並アニメーションミュージアムでは『アクエリオン展 part2-10年目の奇跡-~新たな「アクエリオン」降臨~』が開催中と、アクエリオン10周年で盛り上がっています。さらに手塚治虫記念館では「THE変形 河森正治デザインワークス展」が開かれています。まず個展についてお聞きしたいですが、企画のきっかけは?
河森
これまでの「マクロス展」は手塚プロさんの企画で、以前から「河森デザインの個展も開きたい」と言われていたんです。
――意外にも河森さんの個展は初で、デザイン決定稿だけでなく多彩なものが展示されています。
河森
全部で500点以上でしょうか。展覧会場の壁一面にズラッと並べていますし、立体物も広めのスペースを取っていただけました。
――マグマ大使のデザインは、手塚さんとのご縁ですね。
河森
ちゃんとロケットに変形するんですよ。実際の企画には採用されず、残念でしたね。今回の展覧会のために過去の資料をいろいろと発掘して、珍しいものもたくさん展示しています。ただし変形と合体が主ですね。ルールづけしないと、とても全部は展示しきれないので。『クラッシャージョウ』(83)のような例外もありますが。
――『クラッシャージョウ』は宇宙戦艦コルドバが接近する連続セル画が目を引きました。あれは河森さんの作画ですよね。
河森
当時、安彦さんの横でデザインしていて、「コルドバって線増やすと大変ですよね?」と聞いたら「いくらでも増やしていいよ」と言われていたんです。それでやっとOKが出たら、「はい、これは君が自分で原画も動画も描いてね」と無茶ぶりされて。その記念のセル画なんです(笑)。
――そんな経緯も含め、これまでを振り返るいい機会ではなかったかと。
河森
やはり懐かしいし、がむしゃらにたくさん描いていた時期もあったし、自分のサインの日付を見て「あ、このときコレやってたんだ」と思い出したり。完成稿だけでなく思考実験している時のラフも一緒に展示できたので、「これはここに気をつけながらやっていたんだ」と、当時の自分の考えの流れが再確認できたのも良かったです。最初の1、2年は絵柄がけっこう変化していて、特に『クラッシャージョウ』『マクロス』以後で絵がガラっと変わりました。ただそれ以降、実はあんまり変わっていないのが、自分としてはショックで(笑)。ゲームの『アーマード・コア』(97)で初めてディテールを細かく描きこんだと思っていたら、実はその前に実写用の『ガンヘッド』(89)で相当細かく描いていたり。節目だと思っていた作品が、実はそうでもないことも分かったりしました(笑)。
――アニメ、実写、ゲームなど、多彩ですが、メディアごとに描き方は変えていたんですか?
河森
ええ、手描きかそうでないかで線の描き方や面の取り方は、かなり変えています。たとえばVF-1バルキリー(『超時空要塞マクロス』(82))は「ここに線を引くと立体感が分かる」と、アニメーターが形を把握しやすいデザインにしています。でもCG前提となったVF-25(『マクロスF』(08))では、逆に立体を把握しづらいデザインとしました。ちょっと動いたときに肉筆の線の強弱の代わりになる面が出てくるような方法論を使って、手描きの味に対抗しているんです。でも、しばらくCG作品ばかりやっていると、手描き用デザインの仕方を忘れかけてしまうので、キャラクター性を意識したデザインとしては、その中庸をとることが重要だと思っていますね。
――なるほど、人が描きやすいということは、人の心に刺さりやすいということだと。
河森
そうそう、認識して覚えやすいということです。ただそのあたりのバランスは今だに難しいところで、今後の課題にもしていきたいです。
「文字と声」をコンセプトにした最新作『アクエリオンロゴス』
――それで最新作『アクエリオンロゴス』ですが、前2作と違って今回は監督ではなく、どのような形で関わられているのでしょうか。
河森
世界観構築やコンセプト段階までですね。今回は文字合体と声でやろうということ、それに合致する主人公たちのネーミングを決めました。
――「文字と声」というコンセプトは、河森さんらしい発想ですね。
河森
前作『アクエリオンEVOL』(12)は「LOVE」のアルファベットを逆にしたわけですが、なんとなく漢字を見たときに、ハッと気がついたんです。「偏(へん)と旁(つくり)って合体じゃないか!」と。冠も合わせれば「三体合体」もある。これって、かなりすごいことだなと。もともと「日本のマンガ文化」の発展も、文字体系が影響していると思っていました。ひとつの言語に「漢字、カタカナ、ひらがな、おまけにアルファベット」と4種類の文字が日常的に使用され、表意文字・表音文字が組み合わさっている。つまり「絵」と「文字」が混在しているマンガと同じ構造が、もともと日本語にあるから大きく発展できたのではないかと。特に漢字は偏と旁の組み合わせ次第で、ビジュアルも意味もまったく変わる……。まさに『アクエリオン』のエレメント・チェンジと同じで、テーマにも合致している。ならば今回は「文字」でいけるなと。
――なるほど、深いですね。「声」については?
河森
「文字」に生命を吹き込むのは「声」ということです。文字という記号で現実を表せるのは便利ですが、一方で現実そのものを見なくなってしまう側面もある。特にメディアの発達が著しい昨今、文字は非常にバーチャルな存在に感じます。通信や記録メディアのない時代はフェイス・トゥ・フェイスが基本で、音声の届く範囲のコミュニケーションでした。でも文字の誕生によって、声は必須ではなくなってしまう。それぐらい文字の発明は革新的でした。とは言え、何か得るものがあれば失うものがあるし、メリットもあればデメリットもあるだろうと。そこで思いついたのが「言霊(ことだま)」と言われるくらい、力のある言葉とそうでもない言葉があるなと。たとえば「どうでもいいことなのに、この声優さんの声で言われると説得力あるな」という場合もあるわけです(笑)。そんな風に「文字」に対応した「声」のパワーに、ものすごく興味が出てきたたんです。
――人物のネーミングを決められたのも、今のお話と関係ありそうですね。
河森
古い伝承や神話には「本当の名前を知られてはいけない」という話がよく出てきて、それぐらい名前には特殊な力があるとされていたんですね。そこでキャラクターの名前に使われる漢字を組み合わせて必殺技が出せるようにすれば、ものすごくアクエリオン的になるんじゃないかと。多様な技をつくれるように名前を設定したわけですが、キャラの組み合わせによって同じ文字の一部がプラス面にもマイナス面にも働くようにとこれは大変でした。ある意味これが「ロゴス」での自分にとってのアクエリオンデザインなんです(笑)。
――そして未来の架空世界ではなく、現実の阿佐ヶ谷を舞台にしています。
河森
芯の強い設定ができたから、むしろ舞台は漢字の使われている現代社会のほうが似合うだろうと。どうせだったら地元・阿佐ヶ谷にしようと。30年以上前、最初の『マクロス』TVシリーズの打ち合わせ場所が阿佐ヶ谷の喫茶店だったこともありますし(笑)。
――ベクターマシンやアクエリオンなど、メカデザインに関してはいかがですか?
河森
今回、デザインコンセプトまでしかやっていないです。変形機構を『EVOL』の応用にして、「若手に任せよう」と。あとは商品化を考えたときの監修ぐらいですね。あまり口出しすると、どうしても僕の好みが反映されすぎてしまうので(笑)。
――今回はある程度引いているわけですね。そんな河森さんから見た、本作のポイントは?
河森
自分の用意した「文字」と「声」などのコンセプトを、どう料理してくれるかが楽しみです。自分と同じイメージになるのか、そうではないのか……。舞台版『ひと夏のアクエリオン』も、完全に声ネタでやっていますしね。
舞台でも成立する『アクエリオン』の神話世界
――その『アクエリオン』の舞台化には、驚いた方も多いと思います。
河森
かなりユニークなものになったと思います(笑)。舞台だからこそできることにチャレンジしていて、ロボットをあえて出さずに生身で『合体』を表現します。バカバカしさが昂じて神話に変わる瞬間などは、ちゃんと『アクエリオン』に見えるはずです。別の「創世の書」に記されたパラレルワールドの世界で、一万二千年前から続く堕天使と魔導師との戦い、ヒロインであるハザマの巫女との恋を描きます。冴えない男子高校生に乗り移る堕天使を声優さんが演じ、ライブアクションの方は俳優さんが演じる。現代の人格に魂の声が憑依してくることを「合体」と呼んでいて、声優さんと俳優さんを組み合わせる2.5次元プロジェクト“The Fool”(2013年末に第1回作品『ノブナガ・ザ・フール』を公演、翌年TVアニメ化)の試みの延長にあります。従来のシリーズを知らなくても楽しめるよう、シンプルなストーリーにしました。
――舞台化で描きたいテーマは?
河森
一万二千年前の人たちに比べ、現代人はなぜこんなに劣化してしまったのか。テクノロジーを手に入れた結果、人類全体の文明はレベルアップしたものの、個々人の能力は昔の方が高かったのではと。現実でも地球が球体なのは大昔から分かっていて、もともと天動説だったのがそうでなくなったように、原理が分かっていることでさえ、宗教や政治など、さまざまな理由で塗り替えられ、見えなくさせられてしまう。
――固定観念が大事な本質を見えなくさせるみたいな現象は、気になります。
河森
ホントに不思議です。文字によって見えるようになったもの、逆に見えなくなったものがある。言語もそうで、風のよく吹く地方では風にたくさん名前があるし、寒い地方では雪にもいろんな名前がある。名前がつくと違いを細かく認識できますが、逆にそれに縛られるようにもなる。『(地球少女)アルジュナ』(01)のころから、ずっとそういう現象に興味があります。
――「人の認識」みたいなものですか?
河森
「認識」はとても気になりますね。30年ぐらい前に中国で一人旅をしたとき、自分の認識がアジア人ではなく、あまりにもアメリカナイズされていたことを思い知らされました。これは良い悪いではなく、集団催眠なんだと。さらに奥地の内モンゴル、シルクロードと雲南省を訪ねると、TVや電気がなくなって識字率も下がるんですが、どんどん子どもが活き活きしてくるんです。「あっ、人類って文字通り生きものなんだ」と知った驚きがありました。逆に日本では人間が生命力を失いかけているのではないかと、ショックを受けたんです。
――人間の原初の生命力は、『創聖のアクエリオン』でも描かれていました。
河森
アポロの嗅覚がすごく発達していて、動物のように歩いたりネズミを食べたりするのは、そんな生命力の表現ですね。
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