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UPDATE:2015.11.27

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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大河ドラマ的構成でアニメ化に挑戦した最新作
――まだまだ演出時代の話を聞きたいところですが、元永監督は多作ですから、逆順で監督としての最新作からうかがっていきたいと思います。放送中の『うたわれるもの 偽りの仮面』(15)は、まずどんなきっかけでしたか?
元永
WHITE FOXの岩佐(岳)社長から連絡があって「前にアクアプラスの原作をやったことがあったよね、何か問題は?」と聞かれたので、「いや、ないです」と即答。「じゃあ、お願いね」なんて調子で(笑)。
――ものすごい即断即決ですね(笑)。
元永
アニメーションプロデューサーの吉川(綱樹)くんとも旧知の仲だったし、作画チームも知り合いばかりで、「これは久しぶりに無茶っぽいこともできるかな」と、多少の打算もありました(笑)。
――人気シリーズの続編になりますが、そのあたりいかがでしたか?
元永
即決で引き受けたものの、「これは大変だぞ」と(笑)。テレビアニメの前作も非常に完成度が高く、最初のうちは「あれを超えないといけないのか……」と気負いがありました。でも結局、自分らしいスタイルと違うアプローチでつくろうと開き直りまして、そこに到達するまでに、けっこう時間がかかりました。
――今回、アニメ化の手がかりとなったのは?
元永
まず、ゲームのシナリオを読ませてもらいました。これをアニメにするなら足りない部分があると思ったので、そこをどう補うか、ですね。特にゲームよりも人間の感情面を積み重ねていこうと。大河ドラマのように一本の大きな流れをつくり、骨太なドラマを描きたいと思いました。
――原作ゲームの発売とアニメ初回放送は同じタイミングなので、平行して制作されていたのでしょうか?
元永
ええ。場面写真などゲームの素材も見せてもらいつつ、アニメはアニメでどうドラマチックにもっていこうか、練っていきました。
――原作ゲームをプレイされてから取りかかったのでしょうか?
元永
いえ、あえてプレイしないようにしています。自分の場合は視野が狭まり、他の面白い要素が見えなくなってしまう危険があるので。これはゲームだけでなく、漫画やライトノベルも同じで、いつもある程度原作から距離を置くよう気をつけています。のめり込み過ぎてつくってしまった作品が以前あって、その反省もあり。
――先ほど大河ドラマ的構成というお話もありましたが、ポイントは?
元永
キャラの感情の流れです。どんな作品にも共通しますが、キャラが突然変なことを言い出すのは避けたい。最終的なゴールまで気持ちの流れを整理して導いていく。そういう作り方です。ただし、この作品は回を追うごとにヒロインが増えていくので、大変でした(笑)。新キャラが登場したことで埋もれるキャラが出ないよう、ライター陣には気をつけてもらっています。特にクオンはヒロインとしてちゃんと立たせてあげたいなと。
――監督の作品を振り返ると、いつもキャラクターの関係性をていねいに積んで描かれている印象があります。
元永
それが好きなんでしょうね。変な言い方かもしれませんが、作品のキャラクターたちと遊んでいるような気持ちなんです。コンテ作業中に、頭で考えたものと手で描き出したものがズレてしまい、「なんでこうなったんだ?」と不思議に思うことも多くて。家内には「お前が描いたんだろ!」とツッコまれたりしてます(笑)。作品世界に入りこんだり逆に冷静に客観視したり、その二面性があるんでしょうね。
――キャラクターが出会い、他人同士なのに次第にかけがえのない存在になっていく。そんなプロセスを重視されてますよね。
元永
そこはていねいに描きたい。作品をつくるときは、いつも裏テーマとして“居場所探し”があるんです。僕は映画やアニメが大好きな人間なので、視聴者の方にも「恥ずかしがることないよ、好きならずっと観てたらいいじゃん、君はここにいていいよ」と言ってあげたいんですね。
――さて、謎多き主人公・ハクのキャラクター像は?
元永
ハクは“普通のおじさん”として描きたいなと。酒を飲んではクダを巻くような可愛らしいキャラ。周囲にはそんなハクを認める仲間たちがいて、でも仲間の中で突出している“上の人”とは見ていないし、むしろきっと下に見ているはず(笑)。対等な存在でも、存在感は明確にある。そんな感じで仲間が増えていくわけですが、そのあたりを強調して描きたいです。
――この作品は、声優さん同士が楽しげに演じられている印象があります。
元永
ええ。ハク役の藤原(啓治)さんも、アドリブをどんどん入れてきますしね。こちらはブースの外で爆笑しながら、どんどん採用する。キャストさん同士のいろんな化学反応がフィルムに出てきて、自分でも面白いなと。
――中盤には入浴シーンも多くて、サービス精神も旺盛ですね。
元永
入浴シーンになると、作画スタッフみんなが気合を入れて描いてくるんです(笑)。でも不思議なんですよ。女の子ではなく男の肌に力が入っていて、「おっかしいなー」と(笑)。肌色成分多めなシーンでは画力も試されるものなんですが、スタッフは楽しみながらも、きっちり描いてくれます。
――作画面では日常シーンも丁寧に描かれていますし、美術が大変美しいです。
元永
酒飲んだり、飯食ったり。そういう日常をていねいに描くことで、非日常的な出来事がより活きてくるので。美術は『ヨルムンガンド』(12)と同じ美峰さんですから、こちらのオーダーをうまく汲みとってくれています。「もうちょっと描きこめないかな……」という無茶なお願いにも応えてくれるので、大変ありがたいです。
――アイヌ的であり、和風の雰囲気ただよう世界観については?
元永
まずはリアルとファンタジーを両立させることです。全体としては和風テイストでありつつ、SF的な要素もある。ただし本作は前作と舞台となる国も違っているので、その差も出したいなと。かなり難しいオーダーを出していますが、設定を考えぬかれた絵があがってくるので、演出として利用させてもらったり。美術スタッフのおかげで予想以上に面白い画づくりができました。撮影のT2 studioさんにも「フィルターはもっと派手に」と無理を言ったり、とにかくすべてのセクションにワガママを言いっぱなしで……。
――そういうとき、やはり笑顔を忘れずに?
元永
そうそう(笑)。けっこう無茶なお願いをしているとは思いますが、現場の雰囲気はとても良いです。それがフィルムに出ている気がします。
――では、今後の見どころを教えてください。
元永
中盤までは日常描写が主体でしたが、後半には大合戦などスペクタクルシーンも用意しているので、ご期待ください。ハクが戦をどう受け止めたのか、クオンは何を考えてきたのかなど、キャラクターの内面にも注目してほしいです。もし最初から観ていただければ、いろんなことが観えてくる工夫をしていて、いろんなところに伏線が散りばめてあります。ぜひ繰り返し観直してみてください。
ドロドロのソープオペラを目指した『School Days』
――さて、いくつか代表的な作品についてもうかがっていきたいです。まずは『School Days』(07)。泥沼の三角関係や衝撃的なラストで、放送当時に大きな話題を呼びました。
元永
TNKのプロデューサーから「いちばん悲惨なバッドエンドをアニメ化したい」と言われ、よく分からないままに引き受けたら予想以上にショッキングな内容でした(笑)。シリーズ構成の上江洲(誠)と相談して、昼下がりに放送されるようなソープオペラにしてしまおうと。一度転がり出したら止まらないジェットコースタームービー的な見せ方で、ラストまで持っていこう。そんな発想でした。
――最終話の容赦ないバイオレンス描写に驚愕した視聴者も多かったはずです。
元永
人間が追いつめられていく過程を真っ正面から描いていたので、観終わったあとの破壊力とカタルシスはかなりのものだったでしょう。特に和気あいあいとしたラブコメ、ハーレムものを楽しんで観ていた方からするとね。でも、よく観てもらえれば分かるんですが、血しぶきがブワっと出ているだけで、決定的な瞬間は描いていません。裏話になりますが、もっとも制約が厳しい局のために、専用バージョンもつくりました。学校の校舎をPANしていく中、音声だけ聞こえてくる。実はそれがいちばん怖かった(笑)。描かれない分、逆に想像してしまい。それがオンエアされる機会はなかったんですけど……。
――あらためて見なおして欲しいポイントは?
元永
ヒロインである世界の言動です。つねに姑息とは言え純粋さもあり、感情がどんどん膨れ上がって、最終的には誠を殺すとこまでいってしまう……。誠は自業自得と言ってしまえばそれまでですが、あのぐらいの年ごろで女の子に言い寄られたらしょうがない。最終的には何もできない状況になってしまったわけで。あの結末に至るまでの流れは、かなり緻密に練られているので、そのへん観直していただくと面白いと思います。「普通の学園ものなら、こうはならないよね」ということばかりで、本当にドロドロのソープオペラですから(笑)。
1時間枠用の構成が難しかった『刀語』
――続いては『刀語』(09)です。こちらは珍しい「1時間枠」の放映でしたが、これは企画時から決まっていたことでしょうか。
元永
いえ、もともとは30分枠で全24話を想定していました。どう構成するか話しあっていたとき、「全12巻なら、1話1巻ずつやっていったら?」という案が浮上し、それが本当に通ってしまいました(笑)。尺が2倍なら苦労も2倍かと予想していましたが、まさかあそこまで大変なことになるとは……。
――30分枠と比べて、何が違ったのでしょうか?
元永
起承転結のメリハリなど、ルールがまるっきり違いました。尺が長い分、いつも以上に飽きさせない工夫が必要になって、会話やバトルの配分などかなり気を遣いました。ハリウッド映画の脚本術みたいに「何分目には何々が起きて」みたいな黄金率を探っていく感じでしたね。でも、大変なりに楽しかったです。当時、WHITE FOXは新しい会社でしたが、「自分たちが納得できるものをつくろう」というスタンスなので、「1カット300枚」とか、無茶なことを要求する僕に一生懸命ついてきてくれたのも良かったです。
――その1カット300枚は、どの場面ですか?
元永
第1話「絶刀・鉋 」で、七花の必殺技・七花八裂を引き絵で見せたカットです。原画の担当は『うたわれるもの 偽りの仮面』で絵コンテ、演出、原画を担当している碇谷(敦)くんです。彼の原画はとても艶があってカッコ良いんです。
――西尾維新さんのアニメ化第2弾としても注目を集めました。
元永
とにかく第1話で状況説明をキャラクターに全部語らせる。原作の第1巻が刀について説明があったあと、七花の一撃で終わるという構成でしたし。もちろん西尾維新さん独特の会話劇をどう映像化するかポイントですが、『化物語』(09)と同じ方法は使えない。ならば、僕たちはフィルムとして王道でつくっていこうと。
――変体刀によるアクションも、カッコいいものから笑えるものまで多彩でしたね。
元永
チャンバラでありながらチャンバラではない。そういう発想ですよね。でも、剣の構えや七花の虚刀流の構えは、理にかなったものとしています。各話演出さんも徹底してくれて、説得力あるアクションとなりました。
――最終話、とがめの最期は胸に迫るものがありました。
元永
あのシーンは西尾維新さんに「舞台を朽ちた神社にしたいです」とお願いして、原作と少し変えさせてもらっています。左右田右衛門左衛門の後ろにそびえ立つ城と、七花たちの後ろにある朽ちた神社を対照的にして、両者の立場を絵でうまく象徴できたと思っています。原画の担当は『うたわれるもの 偽りの仮面』でキャラクターデザイン・総作画監督を担当している中田(正彦)くんですが、説得力のある絵でしたね。とても感謝しています。
――全体を振り返ってみていかがですか?
元永
王道的につくりながら、実験的なことにもチャレンジできて面白い仕事でした。自分自身、「こういう風につくれるんだ」と気づくことがあって、後の作品づくりにも大きな影響がありました。
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