業界著名人がアニメ作品をオススメ!
紙使い、神様になった中学生、カッコよくないカッコよさをめざすヒーロー等々、 型にハマらないアニメで大活躍の脚本家・倉田英之氏。 その視点で、アニメの魅力が語られます。 新作『龍ヶ嬢七々々の埋蔵金』に至る道。その幅広い活動の奥底に迫ります!
脚本家:倉田 英之 インタビュー
取材・構成:氷川竜介
クリエイター感覚で、アニメのツボを徹底的に刺激!自作にまつわる貴重なエピソードから、
子どもの頃に大好きだったアニメ、プロを目指すきっかけとなった衝撃の作品などなど、
魅力的なガイダンスを聞きだします!
原点となったアニメ体験の思い出を交えつつ、クリエイターが自身と自作を振り返る連載。今回はシリーズ構成の最新作『龍ヶ嬢七々々の埋蔵金』が4月から放送中の脚本家・倉田英之さんにお話をうかがいます。
スタジオオルフェに所属。非常に幅広いジャンルの映画、ドラマや小説の知識をもち、アニメの脚本だけでなく漫画原作や小説、エッセイでも活躍。ユニークな工夫のある設定と、奥行きのあるキャラクター造型で多くのファンをもつ達人です。
『 R.O.D』や『 かみちゅ!』など独特の味わいがあるオリジナル作品は、どのような発想から生まれるのでしょうか? そして若手によるライトノベルの映像化は、どうシリーズ構成をされているのでしょうか? 今月も、作品のツボを探っていきましょう!
アニメの隆盛を目の当たりにした思春期
――まず、倉田さんのアニメ原体験となった作品とは何になるのでしょうか?
- 倉田
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記憶がある最初の作品は『タイガーマスク』(69)です。1968年生まれですから、まだ2~3歳でTVがモノクロからカラーになった時期ですよね。血がバンバン飛ぶので恐いなと思いつつ、「どうして絵が動いているのかな?」というのが不思議で。
――どんな子ども時代でしたか?
- 倉田
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本しか読まない子で、完全なインドア派です。初孫だったもので祖父母からおもちゃや絵本など浴びるように与えられて、すっかり飽きっぽい性格になりました。次から次へと物を欲しがる性格も、そのときに形成されたわけですね。やがて「おもちゃは大きくなったら飽きるな」と判断し、本の方にガッツリのめり込んでいきました。
――改めてアニメを意識して観るようになったのは、いつぐらいでしょうか?
- 倉田
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やはり劇場版の『宇宙戦艦ヤマト』(77)や『銀河鉄道999』(79)などアニメブームの時期です。それまではアニメより特撮派でしたが、『ヤマト』で戦艦を見て意識が変わり、アニメに興味が移りました。それ以後はひたすら泥沼ですよ(笑)。『うる星やつら』(81)で美少女が好きになり、『超時空要塞マクロス』(82)に『風の谷のナウシカ』(84)、そして『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(84)と、次から次へと新しいアニメ作品が登場してきて飽きませんでした。
そのころビデオデッキも普及したので、コマ送りして研究したりエンディングテロップでスタッフをチェックするようになり、面白い回には同じような名前があることを発見するわけです。たとえば「出崎統さんと崎枕さんという人の回は良いな」とか。後に同一人物だと気づくわけですが(笑)。
――そのときは、どんな役職に興味があったんですか?
- 倉田
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やはり最初は監督ですね。富野由悠季さんが、毎年ロボットアニメの新作を出していた時代ですから。雑誌も『アニメック』などを熱心に読み、監督のフィルモグラフィを追って研究したりしました。まだそれぞれのパートが何をやっているかは正確に知らなかったし、ましてやシリーズ構成なんて想像もつかなかったです。映画と同じように監督が脚本家からシナリオを受け取り、作画の人が監督の指示を「ふむふむ」と聞きながら絵にしていくのかな、ぐらいの想像力です。
倉田さんオススメの80年代アニメ
――そんな倉田さんが80年代アニメをオススメするとしたら?
- 倉田
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やはり富野監督作品でしょう。特に『伝説巨神イデオン』(80)と『戦闘メカ ザブングル』(82)ですね。『イデオン』は「世の中良いことばかりじゃないぞ」という絶望感みたいなものがありますよね。逆に『ザブングル』は元気いっぱいのハチャメチャな作風で、美少年・美少女がいなくても面白いアニメはできるぞと教えられました。一人の作家に色んな作風があると認識できるのも、面白いと思います。
――ロボットアニメ以外だと?
- 倉田
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『ペリーヌ物語』(78)です。これは泣けるんですよ。ペリーヌの正体が明らかになる直前の回を食い入るように観ていたら、エンディングテロップで絵コンテが富野さんだと知って、「またやられた!」と(笑)。あとは『とんがり帽子のメモル』(84)で、名倉靖博さんの名前を覚えた作品です。当時は美少女漫画誌で『メモル』のイラストを見ることがあって、「都会ではすごいことが起きてる!」とムーブメントを感じたのも面白かったです。
――劇場映画だと?
- 倉田
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『銀河鉄道999』(79)が大好きです。少年が年上の女性に連れられて旅に出て、ちょっとだけ大人になって帰ってくる。途中でネジにされそうになる恐怖も含めて、男のロマンがあります。ストーリーは今にして思えばムチャクチャな部分もありますが、よくこんなに詰めこめるなというのが驚きです。世界観も「リアル」ではなくとても美しいし、細やかに作りこまれています。やはり富野監督と松本零士さんは僕の中では大きな存在ですね。
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